■『戦旗』1694号(2026年9月5日号)

以下に紹介するのは、AWC日本連絡会議が呼びかけた今年の6月アジア共同行動に寄せられた、フィリピンのテオドロ・カシーニョさんからのビデオでの報告の翻訳である。

現在、新民族主義者同盟(BAYAN)の議長を務めるカシーニョさんは、各地の集会での講演を予定していたが、訪日ビザが発給されず、来日を断念した。

この報告は、日米帝国主義のフィリピンへの介入と支配の現段階を理解する上で極めて示唆に富んでおり、編集局の責任でここに掲載する。なお、見出しは編集局で適宜つけた。

資料
「アイランドチェーン」と「バリューチェーン」の交差

日比の安全保障関係とアジアにおける平和への闘い

テオドロ・カシーニョ
フィリピン新民族主義者同盟(BAYAN)

軍国主義や帝国主義の侵略に反対し、世界の平和を求めて闘う友人・同志の皆さん。

本日は皆さんとお話しする機会をいただき、ありがとうございます。残念ながら日本への入国ビザが発給されなかったため、直接参加することはできませんでした。しかし、テクノロジーのおかげで、こうしてビデオを通じて皆さんと共にいることができます。

私はフィリピン人です。フィリピンは、米国、そしてそのアジアにおける「ジュニア・パートナー」である日本と、極めて複雑な歴史的関係にある国です。私たちは一八九九年に米国に植民地化され、一九四一年には日本による攻撃と占領を受け、一九四四年に米国によって「解放」され、そして一九四六年には多くの条件や制約を伴う形で独立を認められました。

本日は、急速に変化しているフィリピンと日本の防衛・安全保障関係について話したいと思います。単にアジアの二国間外交関係として論じるのではなく、軍事戦略、経済戦略、技術戦略を融合させ、中国を封じ込めるために日本とフィリピンを利用しようとする米国の新たな動きという、より大きな文脈の中でこの問題を捉えたいと思います。

今日、米国は、世界における主要な戦略的競争相手である中国を打ち負かすために、軍事的な「列島線」戦略と、経済的な「バリューチェーン」戦略を組み合わせようとしています。

「第一列島線」とは、日本から沖縄、台湾、バシー海峡、フィリピン西岸を経てインドネシアに至る、米国が構想した防衛ラインのことです。米国はこのラインを通じて、西太平洋における中国の海軍の動きや、軍事的な展開力を抑制しようとしています。

今日、この軍事的な「列島線」(アイランドチェーン)は、他の「チェーン」(鎖)と融合しつつあります。すなわち、半導体バリューチェーン、AIバリューチェーン、重要鉱物チェーン、物流チェーン、そしてデジタルインフラ・チェーンです。つまり米国は、この地域を単に軍事作戦の舞台として準備しているだけではないのです。また、それは「ライバルである超大国としての中国の台頭を阻止する」という目的を果たすために、われわれの経済を再編する動きでもあります。

加速する日比の軍事協力

この動きの重要な構成要素となっているのが、ここ数年で劇的に加速しているフィリピンと日本の軍事協力です。

二〇二五年九月には日比円滑化協定(RAA)が発効し、自衛隊とフィリピン国軍が演習や作戦のために互いの領土に入ることが可能になりました。これによって、日本はフィリピンに持続的な軍事プレゼンスを維持するための法的枠組みを得ることになりました。

これに続いて、両国は兵站や補給面での協力を深化させてきました。今年一月には調印された、燃料、食料、輸送、物資、役務などを相互に提供し合うことを可能にする「物品役務相互提供協定」(ACSA)はその一例です。

両政府はさらに、情報共有や機密防衛情報の保護に向けた取り組みも進めています。

日本は「政府安全保障能力強化支援」(OSA)プログラムを通して、フィリピンへの防衛支援を拡大しており、レーダー、海洋監視装置、哨戒用装備、インフラ整備支援などを提供しています。

こうした関係の拡大・深化は、昨年五月にフィリピンのマルコス大統領が訪日し、日本の高市早苗首相との間で、両国関係を「包括的戦略的パートナーシップ」へと格上げする共同声明に署名したことで確認できます。

今年の米比合同軍事演習バリカタンでは、日本の自衛隊がより実戦的な軍事シナリオに参加しました。日本はフィリピン領内で行われた海上実弾砲撃演習において、88式地対艦誘導弾システムを展開さえしました。これは、かつての単なる専守防衛政策からの重大な歴史的転換に他なりません。

多くのフィリピン人にとって、これは極めて繊細な問題です。日本はかつてフィリピンを占領した国だからです。米国主導の安全保障体制下にあるとはいえ、日本の軍隊がフィリピンの領土に再び足を踏み入れるという事態は、ありふれた出来事として片付けられるものではありません。歴史的記憶は重要です。アジアにおける日本軍国主義の犠牲者たちは、無念だと思います。

しかし、問題は単に日本の軍国主義にあるわけではありません。むしろ、米国主導の帝国的な戦略の中で日本が再軍備化しているという点が問題なのです。

先月、フィリピンと日本は、バタネス諸島や台湾、そして日本の南洋諸島に近いルソン島北部の海域での海上境界の画定に向けた協議を開始しました。形式上、これは海洋法に基づく法的な問題です。しかし地政学的な観点から見れば、そこは世界で最も繊細な海域の一つ、すなわちルソン海峡とバシー海峡を包含しています。

これらの海域は、南中国海と西太平洋を結ぶ極めて重要な航路です。潜水艦の移動、海軍艦艇の通行、監視活動、海底ケーブルの敷設、そして台湾有事の際の対応など、あらゆる面で不可欠な場所です。したがって、フィリピンと日本がこの地域の海上境界線について協議することは、いわゆる「第一列島線」における法的な地理的枠組みを構築することに他なりません。中国はこのことを理解しており、強く反発しています。

軍事戦略と経済戦略の交差

ここで、これらすべてを「ルソン経済回廊」の構想と結びつけて考えてみましょう。

米国、日本、フィリピンの三カ国は、ルソン経済回廊の開発で合意しました。これは、インフラ、輸送、港湾、デジタル・システム、エネルギー、先端製造業といった分野を通して、中部ルソンのスービックやクラーク、マニラ、そして南部ルソンのバタンガスを連結するものです。

最近の発表では、米国とフィリピンは、「パックス・シリカ」連合の枠組みの下、ニュークラーク・シティに一六〇〇ヘクタール規模の「経済安全保障区域」を設けることについても協議しました。この区域は「AIネイティブな産業ハブ」と位置づけられており、半導体、重要鉱物、コンピューティング、先端製造業、そして「信頼できるサプライチェーン」と密接に結びついています。

表面的には、これは純粋に経済的な取り組みのように聞こえます。しかし、米国の当局者が「経済安全保障」について語る際、その真意は、米国の戦略的優位性を確保するためのサプライチェーンの確立にあります。「信頼できるサプライチェーン」と言う場合、それは米国の地政学的ブロックと足並みを揃える国々で構成されるサプライチェーンを指しています。また、「レジリエンス」(強靭性・耐性)という言葉が使われる際、そこには多くの場合、戦争、制裁、輸出管理、あるいは技術的な封じ込めに対する耐性という意味が込められているのです。

スービックとクラークが、かつて米本土以外で最大級の米軍基地であったことは特筆すべきことです。クラークは、既存および将来の軍事物流の拠点に近い位置にあります。スービックは、水深が深く大型船の寄港が可能な優れた港湾機能を備えています。バタンガスとマニラは、主要な商業・輸送のハブです。これらが一体となって、民間商業と軍事物流の双方を支え得る、経済的に豊かで人口の密集した回廊を形成しています。

これこそが、「第一列島線とバリューチェーンの交差」という言葉が意味するところです。

米軍基地や施設、商業港、鉄道網、デジタルインフラ、エネルギー・システム、半導体区域、AI拠点、物流回廊などが、一つの戦略的構造へと統合されつつあります。フィリピンは単なる軍事的な前哨基地としてだけでなく、中国に対抗する日米主導のサプライチェーンの拠点としても位置づけられようとしています。

日本もまた、その位置づけが変わりつつあります。日本の民衆は、安全保障のために軍事化が必要だと説かれています。しかし実際には、フィリピンを含む第一列島線の強化と重武装化を通じて、日本は米国の戦争準備の最前線へとさらに押し出されているのです。

主権、連帯、平和のために

こうした状況は、私たちの国や民衆にどのような脆弱性をもたらすのでしょうか。

米国による対イラン戦争の事例は示唆に富んでいます。米国がイランを爆撃した際、イランは報復として米本土を爆撃することはありませんでした。その代わりに、米軍基地や部隊、施設を受け入れている近隣諸国を攻撃したのです。

フィリピンにとって、その危険性は明白です。現在フィリピンには、巡航ミサイル・トマホークが発射可能なものを含め、三種類の米軍ミサイル発射装置が配備されています。また、数多くのドローン関連施設や指揮・情報センターも存在します。もし米国と中国の間で、とりわけ台湾や南中国海をめぐって公然たる紛争が勃発すれば、ルソン島北部、国内九カ所のEDCAサイト(米比防衛協力強化協定にもとづく米軍駐留拠点)、スービック、クラークなどの戦略的エリアが標的となる可能性が極めて高いでしょう。フィリピンは、自らが引き起こしたわけではない戦争に巻き込まれることになるのです。私たちのインフラは容易に軍事転用され、港湾、飛行場、工業地帯は日米の戦争のための兵站の延長として扱われる可能性があります。

日本にとっても、その危険性は同様に深刻です。沖縄や琉球弧はすでに高度に軍事化されています。米軍を受け入れている日本の基地は、いかなる紛争においても核心的な役割を担うことになるでしょう。もし日本がフィリピンや台湾周辺での作戦上の役割を拡大すれば、日本の民衆は、報復や事態の激化、そして破滅的な戦争への巻き込まれるという、より大きなリスクに直面することになります。

そのような紛争において、その代償を支払わされるのは、フィリピンや日本の一般市民です。

労働者、農民、漁民、学生、女性、先住民コミュニティ、そして基地周辺の住民が、真っ先に被害を受けます。政府の指導者たちは「封じ込め」や「抑止力」について語るでしょうが、民衆は強制立ち退き、監視、弾圧、環境破壊、そして爆撃の脅威にさらされることになるのです。

したがって、私たちは誤った選択の押し付けを拒絶しなければなりません。

米国による支配か、中国による支配か、そのどちらかを選ばなければならないわけではありません。アジアの未来がこれらの大国のみによって決定されることを、受け入れる必要もありません。私たちが目指す道は、民衆の主権、紛争の平和的・外交的解決、非軍事化、そして正義に基づく協力です。

友人・同志の皆さん、私たちが直面している課題は一刻を争うものです。

フィリピンと日本の人々は、共に戦争の苦しみを味わってきました。私たちは軍国主義が何をもたらすかを知っています。帝国主義が何をもたらすかも知っています。だからこそ、私たちは抵抗しなければならないのです。

彼らの軍事同盟よりも強固な民衆の連帯を築きましょう。彼らの列島線やサプライチェーンよりも強固な平和の回廊を築きましょう。声を大にして言おうではありませんか、「アジアを戦場にするな」と。

軍国主義と帝国主義の侵略に反対し、民衆のための真の主権、連帯、そして平和を実現するために闘いましょう。

ありがとうございました。