■『戦旗』1694号(2026年9月5日号)
空港拡張反対! 強制収用粉砕!
市東さんの南台農地を守り抜こう!
10・11三里塚全国集会に結集しよう
三里塚芝山連合空港反対同盟は本年七月、結成から六〇年を迎えた。一九六六年七月四日の閣議決定、運輸省―空港公団の空港建設強行との真正面からの闘いをもって、反対同盟は空港建設を阻止してきた。
空港公団を引き継いだ空港会社は、大木よねさんへの強制収用を謝罪し、「二度と強制的手段は用いない」と誓約せざるをえなかった。これは、反対同盟が国家権力の暴力に屈することなく闘い抜いて、引き出してきたものである。三里塚闘争六〇年の今日に至って、この社会的な約束を反故にすることは許されない。
しかし、空港拡張工事の「用地」問題で窮地の追いつめられた成田空港会社は七月一〇日、土地収用法の強制収用の手続きに踏み込むことを正式に表明した。この暴挙を絶対に許してはならない。反対同盟と三里塚勢力、そして、周辺住民の新たな闘いが結びつき、強制収用攻撃を全力で粉砕しよう
第1章 強制収用攻撃を粉砕しよう
(1)強制収用方針の正式決定
成田空港会社は七月一〇日、四者協議会(成田空港会社、国、千葉県、周辺九市町)を成田市内で開催し、土地収用法に基づく強制的な用地取得手続きを開始すると表明した。熊谷知事や各市町の首長は「苦渋の決断」などと言いつつ、成田空港会社の強制収用手続きの正式表明に同意した。
空港会社は、B滑走路延伸の「用地」の大半を取得したが、第3滑走路(C滑走路)の「用地」は10・4%が未取得だと説明した。この第3滑走路「用地」の未取得分一〇五ヘクタールを対象に土地収用法の手続きに入ろうとしている。
成田空港会社は今秋にも、土地収用法に基づく事業認定を国土交通大臣に申請しようとしている。
(2) 破たんした空港会社の計画
成田空港会社は昨年五月二五日、本社ビルにおいて空港機能強化工事の「鍬入れ式」まで行なって本格着工を大宣伝してきた。この工事を二〇二八年度(二九年三月)までに完成すると宣言していた。そのために、空港会社は本年三月末までに「用地」問題のめどをつけるとしていた。
しかし、それが完全に困難であることは、二月の段階ですでに明らかになった。二月末時点での「用地」確保率は88・4%であり、二〇二九年三月末に完成としてきた計画は、「用地」取得問題で破産した。
計画を全面的に見直さざるを得なくなった。「用地」の大半を取得したとするB滑走路延伸ですら完成は遅れ、「二九年度内」と発表し直した。しかも、第3滑走路「用地」確保のめどが立たないため、B滑走路のみを「先行使用」する方針に切り替えた。
空港会社が「強制収用」を表明したからといって、土地収用法の事業認定申請から始める以上、即座に「用地」を確保できるわけではない。仮に空港会社の想定どおりに進んだとしても、第3滑走路の「完成」は二年から五年遅れる事態になる。
この強制収用方針の決定過程が狡猾である。かつて反対同盟から脱落し空港推進派となり果てた輩が、本年三月末の段階で、任意買収の限界、強制収用の必要を主張し始めた。空港会社は、この「地元の要請」をくみ上げるような形式をとって、「強制収用」に言及し始めたのだ。
「成田空港と地域の繁栄を目指す有志の会」は地元で配布したリーフレットの中で「新成田空港30年度開港実現」と打ち出し、次のような主張をしている。「地権者の皆さんにできる限りの協力をお願いするのは当然ですが時が限られているのも現実です。『事業認定』を始めとした法的措置など新たなステージも合わせて進めていかなければならないことも事実です」と。
強制収用方針の表明でありながら、「事業認定」とだけ書いて土地収用法の手続きであることは明記せず、「新たなステージ」などという言葉を用いて強制収用を主張していることを隠しているのだ。
(3) 強制収用に対する地域住民の憤激
成田空港会社と空港拡張工事推進派の圧力が強まるのに抗して、空港周辺地域の住民は、空港拡張工事と航空機騒音の殺人的拡大に対して黙ってはいなかった。多くの住民が、普通に眠って生活できる環境という当然の権利を要求している。
地域住民の生活を破壊し、生命を奪うような航空機騒音を拒絶して立ち上がった人々は、空港拡張工事のために土地を手放そうとは思わない。六〇年もの間、代を継いで、成田空港建設の暴虐を見てきたのだ。空港拡張工事「用地」の任意買収が、空港会社の思惑どおりに進むわけがない。
「成田空港騒音被害訴訟団」と「成田空港の航空機騒音から生活を守る周辺住民の会」は六月三〇日、空港会社と千葉県知事に対して、土地収用法に基づく強制収用をしないよう求める要望書を提出した。その後、県庁において記者会見を行なった。
七月一日には、住民と有識者の五団体が、芝山町菱田の中郷公民館において記者会見を行って「土地収用法適用(事業認定)策動に反対する声明」を発表し、芝山町に提出した。国、成田空港会社、千葉県、周辺市町に対しても声明を送付した。五団体は「成田空港から営農と地球環境を守る会(芝山町)」、「郷土の空を考える会(芝山町)」、「航空機騒音から生活を守る会(横芝光町)」、「新利根を住みやすくする会(茨城県稲敷市)」、「成田空港の人権侵害を許さない学者・弁護士・市民の会(代表・纐纈厚)」だ。
さらに成田空港会社が正式表明を行った直後の七月一二日には、朝刊に折り込まれる形で、空港周辺地域にこの共同声明が配布された。
(4) 新たな住民運動の開始と三里塚闘争
現在の成田空港の航空機騒音は、その深夜・早朝の制限時間が徐々に短縮されることによって、周辺地域住民に健康被害を引き起こしてきていた。しかし、「第二の開港」と銘打った空港機能強化においては、さらに人間の生活とは共存できない飛行制限時間短縮がなされようとしている。これを阻止するための裁判がすでに始まっている。
昨年、空港拡張工事本格着工の中で、空港拡張差し止め訴訟が拡大してきた。反対同盟が千葉地裁に提訴した訴訟と、成田市・芝山町・横芝光町・茨城県稲敷市の住民三〇名が提訴した機能強化・新滑走路建設差し止め訴訟が、千葉地裁で併合され、同じ法廷で裁判闘争が闘われてきている。
住民による意見陳述も行なわれている。住民自身の体験、地域関係、家族関係の中で起こってきた事実をもって現在の航空機騒音を断罪し、新たな騒音の拡大被害を許さない決意に満ちた訴えであった。
このような新たな運動のつながりが、空港会社の強制収用攻撃に対しても、新たな憤激と共闘、団結を生み出している。反対同盟の一斉行動、フィールドワークの地道な闘いが、新たな住民の闘いを生み出し、結びつく基盤となってきた。
(5) 「第2の開港」による廃村化攻撃の激化
国土交通省と成田空港会社、千葉県、周辺市町の首長、そして、空港拡張工事の利権に群がる推進派の連中は、第3滑走路建設とB滑走路の再延長、深夜早朝の離着陸制限時間の短縮という空港機能強化策を「第2の開港」として、その実現に突き進んでいる。その先には、ターミナルビルを一つに集約するワンターミナル構想など二〇三〇年以降の空港整備まで構想している。一九七八年に一本の滑走路だけでむりやり開港して、増築を繰り返してきた成田空港を、全面的に建設し直そうというのだ。さらに、この空港拡張工事に伴って、都心および羽田空港との新たな交通アクセスを計画している。空港拡張に合わせて、東関東自動車道と圏央道の二つの高速道路の新たな出入り口の建設であり、京成電鉄、JRの成田空港へのアクセス強化の計画である。
成田空港会社は、格安航空会社(LCC)と航空貨物を積極的に誘致することを経営的に位置づけてきた。金額ベースでは「日本最大の貿易港」となっている。この成田空港の拡張工事に合わせて、物流業界は、成田空港とそれに接続する高速道路を全面的に利用する物流拠点を建設しようとしている。
米作も畑作も畜産も盛んであった北総地域の農村を、空港と高速道路網、物流倉庫群に置き換えることで、空港中心の経済発展が進むかのような夢想が「エアポートシティ構想」なるものである。空港拡張を翼賛する千葉県や成田市、芝山町、そして、その利権に群がる空港推進派の輩どもが騒ぎ立てているものだ。
しかし、これが本当に、地域の発展であろうか?
これまで暮らしてきた住民の生活が豊かになり、農村地域の自然環境が保たれるような発展では決してない。これまで地域に住んで農業を営み生活してきた人々に、カネと政治圧力で移転を強いる。抗う人々に対しては土地収用法の強制収用で暴力的に叩き出す。集落のつながりも、地域の文化も、みな破壊される。
空港中心に物流拠点を建設し、空港会社と航空会社、物流資本が必要とする労働力を集め、そこに働く労働者の居住地域に置き換えてしまおうとする計画だ。
農業を軸にした地域の暮らしを全面的に破壊し、空港と高速道路を利用した物流拠点と位置付け、産業構造そのものを作り変えてしまう計画だ。資本が収益を上げるための構想であり、住民にとっては徹底した廃村化攻撃だ。
第2章 市東さんの農地を守り抜こう
(1) 耕作権裁判控訴審闘争の勝利を
市東さんの南台の農地を成田空港会社が「不法耕作」と決め付けて農地を強奪しようとしている裁判=耕作権裁判では昨年三月、千葉地裁・斉藤顕裁判長が、市東孝雄さんに対して「土地明け渡し」を命ずる反動判決を出した。市東さんと弁護団は控訴し、東京高裁第一四民事部で進行協議がなされてきている。九月一六日に次回協議がなされる予定となっている。今秋、今冬にも控訴審が始まろうとしている。
千葉地裁裁判長・斉藤は、市東孝雄さんの父東市さんと地主藤崎との間には農地賃貸借契約書があり、賃借地の面積が記載されているが、具体的な場所、範囲の記載が特定されていない等の理由をもって、市東孝雄さんが土地の賃借権を主張することは認められない、として、市東さんの耕作権を否定したのだ。
斉藤は判決において「賃貸人藤崎が小作人の賃借地の場所等に関心があったとはうかがえず」などと勝手に決め付けている。地代を取り続ける地主が、自分の土地のどこを賃借人が耕作しているかについて興味がない、などということはありえない。
父・東市さんの時代から孝雄さんまで、同じ土地を耕作し続けてきて、地代を払い続けてきたのであり、地主はその耕作地をはっきり確認していたのである。
成田空港会社側が証拠とした文書類は作成過程の立証をできなかったために認められず、裁判が長期化した。このような裁判において、むりやり空港会社側の「勝訴」判決としたがゆえに、誤りを重ねた不当判決となったのだ。こんな判決で、農民の生活の糧である農地を奪うことは絶対になされてはならない。
(2) 農地法裁判―強制執行をやめろ
市東さんに対する農地法裁判での二〇一六年の判決は、天神峰の畑と南台の畑の一部に対するものだったが、二〇二三年の強制執行で暴力的に強奪されたのは天神峰の畑だけだった。南台の畑の一部は、現在も市東さんが耕作を続けている。
成田空港会社は、「明け渡し」判決の後一〇年間もこの土地を放置した状態となっている。時効で判決の効力が失われることを恐れる空港会社は、判決の効力を再確認する裁判を新たに起こした。この時効をめぐる裁判が一〇月一日に始まる。
耕作権裁判控訴審を前にして、空港会社は農地法裁判での農地強奪判決を「有効」にしようという魂胆なのだ。
南台の畑をめぐって、二つの裁判がなされることになる。市東さんの農地の強奪を絶対に許してはならない。
(3) 農地を守り抜く市東さんの決意
市東孝雄さんは本年四月の共産同(統一委員会)政治集会へのメッセージで、「耕作権裁判第一審判決は、南台の農地に対する権利が私にないという内容でした。千葉地裁の斉藤裁判長には、怒りを通り越してあきれ果てました」とした上で、「ですが、私は農業をあきらめません。安全でおいしい野菜を作り続けることが、農民としての私の闘いです。体が続く限りがんばります。声を出し、あきらめずに、最後の完全勝利まで闘っていきます」と、その決意を述べている。
市東さんの農民としての怒りと闘いは、市東さん自身の営農、生活、生命を守るためであると同時に、新たな強制収用攻撃が着手されようとする中で、北総地域の民衆の闘いの最前衛となっている。市東さんの農地をめぐる現地闘争、裁判闘争が、成田空港建設阻止の闘い全体を左右する意義をもっている。
農民として生き闘う市東さんの言動が、今あらためて空港機能強化阻止に立ち上がった人々を勇気付けるものとなっているのだ。
第3章 10・11全国集会に総結集しよう
高市政権は、七月二一日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)」の中に、成田空港の機能強化を位置づけた。
「骨太の方針」の2章1節「『強い経済』の実現」の3項「強い地域経済の構築」の内容である。そこには、高市政権の掲げる「成長投資」を支える基盤としての道路、鉄道、港湾、空港などが列挙されている。
その中で「成田空港の機能強化、道路・鉄道アクセス整備、周辺の産業集積、農林水産物輸出拠点化を省庁横断的に進める」という文言をもって、成田空港の機能強化だけが個別具体的に記され、政府の経済財政政策に位置づけることを明示しているのだ。
高市は、国家財政を注ぎ込んで経済成長を進めることが「強い経済」を実現するのだと主張している。その拡張経済政策の具体的一項目として成田空港機能強化を位置づけたのだ。
高市政権の際限なき財政政策と支持率確保目的の「減税」政策が財政赤字を拡大している。結果として、円安に歯止めがかからず、さらにインフレが昂進し、労働者人民の生活困窮を深めることになっている。まさに、民生を損壊する高市の経済政策の一角に、成田空港機能強化工事はある。
政府は、軍事基地の新設・増設ばかりではなく、民間使用している全国の空港・港湾五七施設を「特定空港・港湾」と指定して、「武力攻撃事態」「存立危機事態」には軍事施設として使用する準備を進めている。
この戦争準備状況の中で、千葉県は八月三日、国民保護法に基づく弾道ミサイルなどの武力攻撃に備えた緊急一時避難施設として成田空港の地下施設を指定した。「エアポートシティ」構想を進める一方で、戦時に空港をどう利用するのかという観点をもって、政府、行政は空港を捉えているのであり、成田空港もその一環なのである。
成田空港建設六〇年の今日、闘争が始まった当時の三里塚芝山連合空港反対同盟員が羽田空港の米軍チャーター便を見て、三里塚に建設される空港を成田軍事空港と喝破し、自らの空港反対闘争を反戦闘争として闘い抜いてきたことは、現在に至って、その正しさをしっかりと確認することができる。
反対同盟は、沖縄の辺野古新基地建設反対闘争をはじめとして、全国の反基地闘争、反戦闘争、反原発闘争としっかり結びつき、現在の闘いを進めている。部落解放運動、障害者解放運動をはじめとして差別排外主義と闘う人々が三里塚闘争に参加し、共闘してきた。さらに現在、セクシャル・マイノリティの解放、セックスワーカーの解放を闘う人々が三里塚に結集している。反戦・反基地闘争、反原発闘争、反差別共同闘争が、三里塚闘争とともに反権力闘争としての展望を拓く場となってきている。
あらためて、反帝闘争の拠点として三里塚闘争の意義を確認し、10・11三里塚全国集会に総結集しよう。