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■『戦旗』1623号(10月20日)6面 岸田政権の反動に抗する産別労働運動の前進を 遠井玲子 ●1 国葬―大軍拡と一体の労働運動への弾圧 九月二七日、日本武道館で元首相安倍晋三の「国葬」が強行された。 「国葬」には海外要人約六〇〇人を含む約四一〇〇人が参列。近くの公園に一般献花台が設置され、弔意を表する参加者は約二万三〇〇〇人。他方、国葬に反対する市民の集会・デモが武道館周辺や国会前、日比谷公園などでおこなわれた。国会前では一万五〇〇〇人が集結、全国各地で二万数千人が集会・デモに立ち上がった。 今後の日本社会をどのような方向に進ませていくかの分裂が示された格好だ。 国葬は、日本国憲法では捨て去られた戦前の天皇制国家の「国葬」=天皇儀式を再現するものだった。自衛隊音楽隊は黙祷に際し靖国神社の国家神道を讃える「国の鎮め」を、天皇勅使の拝礼時に「悠遠なる皇御国(すめらみくに)」を演奏、日本国憲法を真っ向から否定する〝天皇が治める国〟の国葬としたのだ。 この場に「連合」芳野会長は労働者代表として参加した。過半数を超える反対民意も国会も無視し、日本国憲法を否定する国葬に、である。それは「連合」労働運動の行き着く先を示すようだ。民衆の利益に背を向け、権力にすり寄る姿勢を明確にしたのだ。 国葬を強行した自民党政権―岸田は、安倍、菅から一貫して統一教会のような民衆を食い物にする超反動勢力に支えられ、アメリカ帝国主義との同盟を強め侵略戦争国家への法整備を着々と進めてきた。もちろん労働者の権利はく奪も進めてきた。教育基本法・三法改悪、特定秘密保護法、労働者派遣法、集団的自衛権行使容認―戦争法、共謀罪など、並べあげればきりはない。ウクライナ戦争を契機に大国間の権益争いが激化する中で、軍事費の倍増が叫ばれ、岸田政権は、コロナと低賃金で疲弊した日本経済を「戦時経済」へと転換することを宣言した。労働者、社会的弱者を待ち受けているのは、社会保障・福祉削減、増税への道であり、戦争体制への管理統制・動員である。 侵略戦争国家にとって、民衆の利益に立ってモノを言う政党・労働組合、市民団体や被差別大衆の解放運動(組織)はジャマモノである。戦後を貫いて、組合つぶしの国家的不当労働行為をくり返してきた日帝―自民党政権は、戦後階級闘争・労働運動の枠組みを破壊し、この数年は、関生弾圧に見られるような憲法も労働法もかなぐり捨てた官邸・警察・検察・裁判所一体となった闘う労働運動への攻撃をおし進めてきた。 労働組合への弾圧・封じ込めの下で、労働現場では資本(経営)の専制・横暴が深まり、無法状態、労働者分断・対立の激化、社畜化が進んでいる。さらには、自営・委託・フリーランスなど、労働法から除外された労働者が増えてきている。闘わなければ生きていけない時代が来ているのである。 ●2 介護労働運動の横断的団結を 労働者は教育からも情報からも闘う術を奪われている状況であるが、闘う労働組合、階級的労働運動を現場から構築していくことが、今ほど重要な時はない。少しずつであるが、低賃金・非人間的労働条件の現場から、例えば公務非正規女性労働者やアマゾンの配送労働者などの横断的団結の動きが起こり始めている。技能実習生の闘いも、ユニオンとともに取り組まれている。 コロナ下でエッセンシャル・ワーカーと呼ばれた労働者の組合も、社会の運営にとって止めることができない労働でありながら、低賃金と劣悪環境はいっこうに改善されず、これを変えていくための様々な努力を続けている。今回とりあげたいのは、ケア関係労働者たちの横断的連帯と賃金・待遇改善をめざす動きである。 岸田首相は、「新しい資本主義」(意味不明)がめざす〝投資と分配〟のモデルケースとして「介護労働者の待遇改善」をうち出した。その詐欺っぷりと本性が、すでに露わとなっている。今年二月には官製春闘の先駆けとして、介護労働者の九〇〇〇円賃上げが掲げられたが、介護労働者の賃金と全産業平均賃金には、月額八万円から九万円の差がある。「ヒトケタ違う」という怒りと嘆きの声が出されたが、事態はもっとデタラメだった。賃上げ開始は二月からとされたが、急な打ち上げ花火に間に合うわけもなく、支給は六月からで立て替えのできない小規模事業所には、〝賃上げは一円でもいい〟というお達しが回る有様である。それも国庫補助は一〇月までで、後は利用者に負担させる「処遇改善加算」という方式になる。 いま介護保険制度改定の審議が関係省庁で行われている。介護保険制度は三年ごとの制度見直しが行われるが、今までにも増して、厚生労働省がたじろぐほど福祉削減が露骨に示されている。 軍備増強の戦時経済を政権が主張する中、財務省は、経済界と足並みをそろえ、「財政制度等審議会財政制度分科会」(四月一三日)に一一の提言をおこなった。紙面の関係で詳しいことは省くが、福祉・社会保障削減に沿ったひどいものである。まず利用者負担増強(原則一割から二割へ)、軽度者の保険制度からの除外、AI導入による人員基準要件の緩和(三人に一人から四人に一人へ)。もちろん介護労働者の賃金・待遇改善はなく、利用者負担増と生産性向上(労働強化)を極限まで推し進めよ、とするものである。 介護現場では、コロナ第七波の八月には週に七〇〇件を前後するクラスターが発生し、それは現在でもおさまっていない。人手不足に追い打ちをかけるコロナ対応で、現場は疲弊しきっている。そんな状態であるが、九月には、〝介護崩壊 待ったなし! 低賃金・人手不足もう限界〟と東京・大阪を会場にケア関係労働者の全国集会がおこなわれた。中心になっているのはケア関係の労働組合である。 今後の介護制度を検討する社会保障審議会では、全国老人福祉施設協議会やケアマネ協会、認知症の人と家族の会などが、現場からの切実な声をあげて、財務省案とやりあっているが、労働組合が労働者・利用者の立場をもって声を上げ始めている。国の報酬単価や人員基準が、賃金・労働条件を決定するケア関係労働者にとって、横断的団結と連帯による社会的・全国的力の集結は労働組合としてなくてはならないものである。 戦後の日本労働運動では、産業全体の労働者(企業・雇用形態を問わず)の利益を守る産別労働運動は、全港湾と全日建以外に育つことはできなかったが、この生存権破壊の時代に業種別のような形で新しい動きが粘り強く取り組まれている。 民衆の利益に背を向け権力にすり寄る姿勢を明確にした「連合」労働運動に代わって、小さくともこれらの闘いが前進していくことこそが希望である。 |
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