共産主義者同盟(統一委員会)






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 最低賃金制度による地域格差を許すな!

  生きるために声をあげ、立ち上がろう

                           内田加奈子

 

●① 最低賃金法の制定

 一九五九年最低賃金法制定から日本の最低賃金制度は始まる。それ以前は一九四七年制定の労働基準法に基づく規定はあったが、ほとんど機能しなかった。最低賃金法制定後も、業者間協定による中卒女子初任給水準を追認するレベルであった。その後、一九六八年に法が改定され、業者間協定方式を廃止し、最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金と労働協約に基づく地域的最低賃金の二方式に変更される。
 一九七一年ILO二六号(最低賃金決定制度の創設に関する条約)と一三一号(開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約)を批准し、「最低賃金の年次推進計画」が策定される。その中では一九七五年までにすべての労働者に最低賃金の適用を目指すことや地域別最低賃金の活用が目標とされた。一九七〇年九月の「今後における最低賃金制度の在り方について(答申)」では「……最低賃金の適用は、現在中小企業労働者の約三分の一に達しているところであるが、……」とされている。一九七二年には全都道府県で地域別最低賃金が設定された。

●② 全国一律最低賃金の闘い

 一九七五年三月二五日、野党四党が全国一律最低賃金に関する「最低賃金法案」を国会に提出し、三月二七日には労働四団体が「全国一律最低賃金の確立」を要求しストライキを予定。三月二六日に政府は、中央最低賃金審議会に全国一律最低賃金制度の問題を含めて「今後の最低賃金制のあり方について」諮問する旨の見解を表明してストライキは回避された。
 一九七五年五月には、「(一)経済も安定成長へ転換しているが中小企業問題・賃金格差も残されている。最低賃金制が労働者の労働条件改善に果たす役割は重要性を増してくる。(二)今後の最低賃金のあり方について、全国一律最低賃金制の問題を含め、調査審議を求める」との諮問が出され、一九七七年一二月に「今後の最低賃金制のあり方について(答申)」が出された。そこで、「全国的な整合性を確保するために」として全都道府県をランク分けして中央最低賃金審議会から地方最低賃金審議会に対して「目安」を提示することとなり、一九七八年から目安制度か始まった。一九七八年に出された最初のランク別目安について、当時の目安小委員会報告は、「中小企業の春季賃上げ状況を考慮。引上げ率は、消費者物価上昇率を下回らないようにする必要があると判断した」と述べている。

●③ 最低賃金制度による地方間格差の拡大

 一九七八年当時の最低賃金最高額と最低額の格差は84・5%だった。二〇〇四年には85・4%とやや格差が縮まったが、その後の推移は格差を広げる結果になっている。グラフ①の折れ線は左の目盛り(単位:円)上から東京都の最低賃金、全国加重平均、最下位の複数県の最低賃金額となっている。二〇〇二年当時の差は時間当たり一〇四円(85・3%)だったが、二〇二二年は二一九円(79・6%)であり、〝全国一律〟を目指していたはずのランク別目安制度は、現実には大きな格差を生んでいる。格差が拡大し続ける状況に対して、最低賃金の低い県から異議申し立てが相次いでいる。二〇二〇年一二月には自民党の「最低賃金一元化推進議員連盟」が政府に意見書を提出し、労働運動側からも「最低賃金を全国一律に!」との申し入れが、毎年、各地の労働局や厚労省に続いている。
 グラフを見ると二〇〇七年以降、差(棒グラフ)が大きくなっていることがわかる。これは、二〇〇七年の最低賃金法改正で、第九条第三項に「生活保護との整合性」が規定され、生活保護を下回る地方の是正が進んだことと、安倍政権下で政労使の「成長力底上げ戦略推進円卓会議」、「骨太方針」などで最低賃金の引き上げを〝政治主導で〟進めることとなった結果でもある。最低賃金の引上げ目標を設定するのは良いが、全国加重平均の数字合わせに終始し、東京などの大都市部での引き上げで加重平均があがるため、労働者人口の少ない地方の最低賃金引き上げが置き去りにされたのである。

●④ 法に基づく制度が地方の衰退を招く

 かくして広がり続けた最低賃金の地方間格差は、社会全体に深刻な影響を与えている。地方からの人口流出と衰退、都市への人口集中である。低賃金で働く技能実習生を含む外国人労働者も当然にも最低賃金の高い都市部での就労を強く希望しているが、職業選択の自由をしばる技能実習制度の下では働く場所や仕事を選ぶことは容易ではない。脱走の多発もやむを得ない事であるが、現在の入管制度の下ではこれを犯罪扱いしてしまうことになる。
 地方の人手不足はますます深刻だ。グラフ②を見れば、最低賃金の高い都道府県は転入超過となっており、低い県では転入超過数はマイナスになっており、大きな影響が出ていることがわかる。

●⑤ 最低賃金決定の流れ

 毎年、一〇月になると最低賃金が変わる。各地の労働局も最低賃金改定の告知はポスター掲示やHPでの案内、各事業所への文書通達など周知努力を行っている。最低賃金法第八条で「最低賃金の適用を受ける使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない」と定められている。
 では、改定までの流れはどの様なものだろうか。
 例年のケースでは、春季の賃金交渉の大勢を受けて、毎年五月中旬に、厚生労働大臣から中央最低賃金審議会に対し、地域別最低賃金額改定の目安について諮問する。中央最低賃金審議会は、同審議会に設けられる「目安に関する小委員会」に具体的審議を付託する。小委員会は、六~七月にかけて、賃金改定状況調査結果や春季賃上げ状況等の各種関係指標の動向について検討し、目安額を中央最低賃金審議会に報告。中央最低賃金審議会は、七月下旬に厚生労働大臣に対して答申する。この答申は各地方最低賃金審議会に提示され、具体的な審議を実施し、概ね八月中旬までに各都道府県労働局長に対して答申する。その後、所要の手続きを経て、概ね一〇月中旬までに、新しい地域別最低賃金が発効する。という流れになっている。

●⑥ 物価高騰対策として一日もはやい最低賃金改定を

 四〇数年ぶりと言われる昨年来の物価高騰は、とりわけ低賃金労働者の生活を直撃している。政府は物価対策と称して、選挙前にバラマキ給付や電気・ガス料金の補助などを打ち出したが、一時しのぎの対策で生活は改善されるわけではない。
 最低賃金法第一二条では「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金について、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をしなければならない」と定められている。必ずしも一〇月でなくとも、もっと早い時期に改定することも不可能ではない。
 各地の労働局や厚労省には一〇〇件を超える最低賃金再改定(早期改定)を求める申し入れが昨年秋から殺到している。物価高騰で生活破綻に瀕している労働者の悲鳴である。しかし、この間の物価高騰に対しては、各地の労働局も厚労省もかたくなに「(改定の)必要がある」ことを認めようとはしていない。一日でも早く最低賃金の改定をするように声を上げ続けよう。

●⑦ 目安全員協議会報告のごまかしを許すな!

 さて、冒頭に紹介した「目安制度の在り方に関する全員協議会」報告である。最低賃金に関する注目度が高まる中で、四ランクから三ランクへの変更というわかりやすい変化はマスコミにも大きく取り上げられた。地域ごとの格差の是正や、岸田内閣が目標として打ち出した「一〇〇〇円」(加重平均)への到達に期待を寄せる声は大きい。報告書のなかでも期待を持たせるような表現が随所にちりばめられている。
 例えば、「これまでの目安額で下位ランクが上位ランクを上回ったことはなかったが、法九条二項の三要素データー次第では下位ランクの目安が上位ランクを上回ることは理論上ありうる」だとか、発効日についても一〇月にこだわらず各地方の審議の結果で決まる。春闘の賃上げ結果を未組織労働者に速やかに波及させるとか、労使の意見の両論併記もあるので、結論ではないが期待を抱かせる内容が盛りだくさんである。しかし、現状では何も変わっていないことをしっかり確認する必要がある。
 なぜ、全都道府県をランク別に分類するのか、合理的な理由は何もない。しかし、ランク制は今後も必要で維持すると主張している。格差是正ではなく差別化することの宣言ではないか。ランクを再編したからと言って、格差が自動的に是正されるわけではない。ランク変更は基本的にCランクとBランクを統合したものである。
 そもそも、ランク別の引上げ目安額は一律化を目指していたはずだが、一九八〇年以降は各ランク同率の引き上げが続いてきた。率は同じでも元の額が異なるために、引き上げ額が異なり、どんどん差が開くという真逆の結果を生んできた。地方間格差を是正し全国一律を目指すなら、低いランクの引き上げ幅を相当に大きくすべきである。これからの改定審議に向けて下位ランクの引き上げ幅を大きくせよ! と求め続けていかなければならない。同様に、一日も早い改定と、物価高騰に負けない引き上げ額を要求していく必要がある。
 また、物価高騰に対応できない最低賃金の問題性を、低賃金労働者の生活実態をふまえて、強く訴えていく必要がある。審議会では二〇もの経済指標を並べて「目安額の合理的説明」をつけようとしているが、結局のところ「三要素」といわれる、①地域における労働者の生計費、②地域の賃金、③通常の事業の賃金支払能力、によって決定されており、その際最も強力な要素は「通常の事業の支払い能力」になっている。とりわけ中小企業事業者の強烈な抵抗が予測される今年、それを上回る労働者・労働運動の力を発揮して①労働者の生計費をこそ、基準にすべきだという事を訴えていこう。最低賃金の役割は、まさに労働者の生活の底支えにある。全国で奮闘しよう!

 

 


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