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 ■『戦旗』第1647号(11月20日)6面

    被爆二世集団訴訟控訴審

  地裁判決に抗議し、国家補償に基づく

  被爆二世の援護を勝ち取ろう!

  

被爆二世解放委員会  


はじめに

 親が被爆した後に受胎し生まれた被爆二世が、二〇一七年二月一七日広島地裁、二〇日長崎地裁に、被爆二世の援護を求め提訴した。被爆二世は親の被爆の影響で病気になるのではないかと健康不安を抱えている。実際、ヒト以外の動植物では遺伝的影響が出ている。被爆二世の中にも幼くして白血病などの病気に罹り亡くなった方もいる。全国被爆二世団体連絡協議会(全国被爆二世協)は、一九八八年の結成以来、厚生省(現厚労省)交渉を続けてきた。被爆二世に援護を求める署名運動では、三七万筆の署名を集め、厚労省に提出をした。しかし、被爆二世の援護に繋がることはなかった。

●1 現在国が被爆二世に行っていること

 現在、国が行っている被爆二世への制度は年一回の健康診断である。内容は視診、問診、聴診、打診及び触診による検査、血液検査(CRP定量検査・血球数計算・血色素検査)、尿検査(ウロビリノーゲン、蛋白、糖、潜血)、血圧測定だ。医師が必要と認めた場合、血液検査に肝機能検査(AST、ALT、γ―GTP)及びヘモグロビンA1c検査が加わる。
 また二〇一六年より、被爆二世が希望すれば血液検査の中に多発性骨髄腫検査を加える事になった。被爆者にはガン健診(胃ガン、肺ガン、大腸ガン、多発性骨髄腫、乳ガン、子宮ガン)が年一回行われる。しかし、被爆二世にガン健診はない。二〇一五年、国は被爆者が受けられるガン健診の中で市民健診では受けられない多発性骨髄腫のみを被爆二世健診に追加すると発表した。ただ被爆二世が希望した場合という条件を付けている。そのため、多発性骨髄腫の検査が受けられることを知らず希望しなかった被爆二世が多数いる。

●2 広島地裁不当判決抗議! 被爆二世を第五の被爆者として認めよ

 全国被爆二世協は二〇一六年の総会で裁判によって日本政府に被爆二世の援護対策を求めることを宣言した。その後、学習会を繰り返し行い、親が広島で被爆した場合は広島地裁へ、長崎で被爆した場合は長崎地裁に提訴することにした。そして、二〇一七年二月一七日広島地裁、二〇日長崎地裁に提訴をした。その後、毎年三~四回の法廷が開かれ、被爆二世本人の意見陳述や科学者の証人尋問などが繰り広げられた。期間中、コロナ禍となり、原告さえ傍聴が出来ないこともあった。
 二〇二二年一二月一二日長崎地裁で不当判決が下された。
 翌年二月七日、広島地裁の裁判長は「原告の請求を棄却する。裁判費用は原告の負担とする」とだけ述べ、法廷を後にした。およそ六年続いた被爆二世の援護を求める集団訴訟は、一分足らずの判決で終結したのだ。国が被爆二世に対し、被爆者援護法に基づく援護をしていないのは、憲法一三条違反の国の立法不作為であり、被爆者と同等の援護を被爆二世にしないのは、憲法一四条第一項違反だとする私たち被爆二世の主張は、退けられた。
 しかも、その判決内容を見るや、理解に苦しむ言葉がならんでいる。弁護団長は、「初めに請求棄却ありきの判決だ。きわめて悪い判決で、説得力に欠ける判決だ。昨年一二月一二日に下りた長崎地裁の判決よりも、もっと後退した判決だ」と批判した。
 この裁判の争点は二点ある。ひとつは、放射線被害の遺伝的影響をどう評価するかで、もうひとつは被爆者援護法第一条三号の被爆の趣旨をどう理解するかだ。
 まず、二点目の被爆者援護法の第一条第三号の趣旨は何かということだが、これは黒い雨訴訟の判決と争点が重なる。黒い雨訴訟の高裁判決では、黒い雨に打たれた人が被爆者援護法の第一条三号に該当するということで援護の対象として救済をした。私たちは、その判決で展開されている原爆放射線による健康被害の可能性がある人が第三号被爆者だとする趣旨からすれば、同じ立場にある被爆二世についても、第三号被爆者と認定できるはずだと主張した。しかし、裁判所の言い分は、直接被爆していない被爆二世は、第三号被爆者に該当しないと新たに規定して、除外した。裁判所の言う「直接被爆」とは、原爆が投下された当時実在していたことで、まだ実在していない被爆二世は直接被爆していないというのだ。
 一点目の二世の遺伝的影響については、否定できないものだから、「ヒトに関する放射線の遺伝的影響があることが通説的見解や有力な見解として一般的に認識されているとは認められていない」と、ほ乳類であるマウスを使った動物実験で放射線の遺伝的影響が証明されているにも関わらず、それを否定した。
 また裁判所は「放射線被曝の遺伝的影響による健康被害の可能性が科学的に明確に否定されているとはいえない現状からすると、被爆二世である原告らが自らの健康等につき不安を抱くのは自然なことである」といいながら、援護の対象者については「国会の合理的な裁量的判断に委ねられている」としている。私たちはこれまでも、厚労省交渉や署名活動をしてきた。それでも援護の対象とならなかったから提訴したのだ。
 裁判の報告集会で、原告の一人が「僕たちは、実験動物なのか。自分たちの体でもって人間への影響を証明しろと突き付けられた」と怒りをあらわにした。
 原告側の遺伝学の証人となった医師は、「裁判所の方こそ科学的でない。体細胞と生殖細胞の違いを理解していない。直接被爆した生殖細胞によって生まれてきたのが被爆二世なのに」と痛烈に判決を批判した。
 長崎、広島の両原告は即刻控訴した。

●3 福岡高裁、広島高裁での裁判始まる

 二〇二三年六月二九日、福岡高裁において被爆二世集団訴訟(長崎)の第一回口頭弁論が行われた。原告による意見陳述では五月に亡くなった原告の陳述を原告団長が代読した。裁判後の報告会で、亡くなった原告の遺族が「最後まで裁判に参加するつもりだった。一日の終わりにカレンダーに斜線を引きながら、『後、○日』と一生懸命に生きていた」と語った。長崎の原告は既に二名が亡くなっている。いずれも遺族が継承した。この日、国側は弁論終結を求めたが、裁判所は、証人尋問の必要性も含めて検討したいと言った。しかし、一〇月一七日の裁判で、証人申請については却下した上、「弁論終結」を告げ、次回判決の言い渡しとなった。期日は二〇二四年二月二九日午後二時三〇分である。
 広島高裁第一回口頭弁論は一〇月二四日だった。二人の原告が意見陳述を行い、法廷後、原告代理人、被告代理人、三人の裁判官で進行協議が行われた。原告側からは証人尋問の必要性などを提出することになる。次回期日は二〇二四年三月八日午後二時からだ。

●4 被爆二世は訴える

 地裁判決は、被爆者の定義を原爆投下時に存在していたかどうかを新たな基準とし、黒い雨訴訟の原爆放射線による健康被害の可能性がある人が被爆者だという高裁判決の核心を否定した。それは、いつ親と同じような病気に罹るのではないかという被爆二世の健康不安や、実際に白血病やガンをはじめとする様々な病気に罹って苦しんだり、亡くなったりしている被爆二世の原爆被害の現実を切り捨てたことに他ならない。放射線被曝の遺伝的影響を否定できないにもかかわらず、原爆被害の責任を被爆者・被爆二世(三世)に押しつけるこの地裁判決を私たちは絶対に許すことはできない。
 また被爆二世集団訴訟は、原爆被爆二世の問題にとどまらず、世界の核被害者の次の世代の問題解決につながる。核兵器の非人道性の最たるものの一つが放射線の次世代への影響であることが世界の共通認識となれば、核(原発も含む)を廃絶する大きな力になるはずだ。
 私たちは、決してあきらめない。核と人類は共存できないことを告発すると同時に、被爆二世の国家補償に基づく援護を実現するために闘う! また、被爆二世の原爆被害の現実を多くの民衆に知らせる中から、被爆二世問題が核時代を生きる全ての人々の課題であることを強く訴える。
 アメリカは原爆投下が戦争犯罪であることを認め、被爆者・二世・三世に謝罪と補償をしろ! ロシアは核兵器を使うな! 核保有国とその同盟国は核保有の連鎖を生む非人道的な核抑止力に依拠するのではなく、核兵器禁止条約をこそ批准しろ!

 


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