投稿(2017年6月)                                                     ホームへ
5・5第41回米軍岩国基地航空祭から見えるもの、考えたこと

AWC山口会員より
   


    

 第四十一回目の航空ショーは、海自と米軍岩国海兵隊の共催で開催。アメリカ陸軍のパラシュート部隊『ゴールデンナイツ』、空自によるブルーインパルス、MV―22レベルⅢデモ飛行、近接航空支援、空中給油のシミュレーションのほか、海兵隊の航空機が実際の遠征展開先の環境で実施するさまざまな訓練・演習をショーとして見せるものであった。F/A―18C/D、AV―8B、MV―22、F―35B、KC―130J(米軍岩国基地所属)KC―135、UH―1、F/A―18E、E―2Dなど(外来機)A―とF―16(在韓米軍)などの、かつてない大規模な展示とともに、U―36A、F―15、MCH―101、SH―60K、KC―767などが自衛隊から参加し、海上自衛隊の救難飛行艇US―1Aが海上着水時におこなう低速飛行など企画満載のショーを演出するとしている。また、これに興じた家族連れとマニアが全国から二十一万人来場したと発表されている。
 だがしかし。如何に日米市民交流、日米同盟の強固さをアピールしたとしても、その悪辣さは際立っていた。
 北東アジア地域、朝鮮半島における日米韓軍事統合の動きを色濃く反映させたど派手な航空ショーと裏腹に、終えたばかりの朝鮮半島における米韓合同軍事演習を明示させる。米韓合同軍事演習・マックスサンダーに参加した岩国基地所属AV―8Bハリアー戦闘攻撃機による歩兵部隊を支援する模擬爆弾攻撃を実際に見せたり、フォールイーグル演習に参加した在韓米軍の対地攻撃機A10の展示など、あからさまに対地攻撃能力を誇示することをメーンにするショーに興じさせるのであった。
 また、朝鮮民主主義人民共和国への最初の一撃や、五〇三〇作戦(攪乱飛行)に活用されるであろうF35B(岩国基地主力戦闘機)の展示。新型で、ステル機能を持ち電子戦をも遂行する軍事機密満載であるにも関わらず展示して見せ、その圧倒的軍事力・技術を誇示する。
 これまた、米原子力空母艦載機部隊移駐を象徴するFA―18E(スーパーホーネット)展示とデモ飛行、米軍主力戦闘機F―16戦闘機によるアクロバティックな飛行を見せつけ圧倒的軍事能力をこれでもかと誇示する飛行が繰り返される。

 ●異様な状況で開催された航空祭

 四月十九日、基地内滑走路破損を修復する訓練。五月四日リハーサルの際、模擬爆弾投下で火災が発生し消えない。ハリアー戦闘機が燃料を噴出しつつ緊急着陸し、消防車が出動する事態が発生し、朝鮮半島情勢と直結した事態を想起させる。
 また、米軍捜査官が、建物撮影を行っていた来場者を一時拘束し映像を消去させ、基地外へ締め出す事態も発生するなど、「日米フレンドシップ」とは異質な市民弾圧が見受けられたのだ。こればかりではない。
 山口県は四月二十四日、県内十九の自治体の危機管理の担当者を集め、「ミサイルの発射は頻発し、予断を許さない状況だ。危機管理態勢の確認など緊張感もって臨んでほしい」、また、岩国市も「市民の不安が高まっていると改めて感じた。これまでミサイルの投下を想定していなかったが迅速な情報伝達ができるよう抜かりのないよう万全の体制を築く」と喧伝し、防災訓練を実施予定だという。
 米韓合同演習、日米共同演習が意図的に重なりあいながら、日本政府が対中国、対朝鮮民主主義共和国への戦争当時国へと変貌を遂げ、かつ、護衛艦「いずも」が、東アジア諸国を寄港しながら、日米印軍による七月共同軍事演習への参加へと突き進む事態の中で〝戦争ショー〟を強行したのである。
 福田市長は、わざわざ五日基地を訪問し、「フレンドシップデーのイベントは米軍、自衛隊との良好な関係を築いている象徴だ」述べ、基地との共存政策を猛アピールした。
 安倍自公政権は朝鮮半島での軍事衝突の危機を煽り、しかし、閣僚は外遊、議員は選挙区を固めるという戦争ごっこ内閣ぶり。それと対を成し、福田市政の、防災訓練ごっこと裏腹のフレンドシップへのパフォーマンスにはうんざりだ しかし、二十一万人来場者というが、到底その半数くらいにしか見えない。ミサイル落下の防災訓練の喧伝もあり、さすがに岩国市民の来場はめっきり減っている。大型ピザの購入を楽しみにしている常連や様子を見に来た若者を見る程度である。来場者のほとんどは、県内の岩国市以外と全国からの航空マニアと家族づれがデモンストレーション飛行に興じる姿である。それは、いま、日本が戦争当時国になっていることに対して不見識か、無関心を装う姿なのである。

 ●基地との共存を拒否し、「基地の街イワクニ」から「平和な街イワクニ」へ

 この間、三団体連名での情宣活動が午前中に取り組まれている。
 『ピースリンク広島・呉・岩国』『住民投票の成果を活かす市民の会』『リムピース岩国』によるチラシ(「軍用機百五十機、嘉手納も凌ぐ巨大基地!こんな基地との共存を、市民は望んでいません」)が配布され、「チラシを読んでしっかり基地を見学してください」「基地の意味、岩国の現実を知ってください」と来場者一人一人に呼びかける。同様のアピールが各地からの情宣参加者からもなされる。
 米軍基地正門前での岩国基地強化、戦争の出撃拠点基地化に抗議するこの行動は、毎年取り組まれているが、今年は、福田良彦岩国市長の「基地との共存政策」に批判が向けられていた。
 いま、岩国市民は、愛宕山を見守る集いを抵抗拠点としてうち固め、二〇一七年米軍再編完了攻撃に抗して、二〇〇六年住民投票での民意を受け継ぐ取り組みを強めている。また、「愛宕山を守る市民連絡協議会」を開催し、「 空母艦載機部隊の移駐容認に向けて、福田岩国市長が動きを始めました。岩国市民の声を聞くことなく、市民の安心・安全を交付金や振興策で、一方的に手放すような市長の姿勢を認めることは出来ません。 もっと市民の声を真摯に丁寧に聞くことが市長の最大の責務だと考えます。 艦載機部隊の移駐の賛否を問う住民投票を成功させたように、今日の時点で市民の声を総結集する運動を模索したいと考えています」(4・17会合呼び掛け抜粋)を五団体による討議の下、確認し、市民全体に向けた連続学習会を目指していくこととした。五月二十一日、第一回目講演「朝鮮半島情勢と米軍岩国基地」と「基地との共存」で市民の生命が守れるかを考える集いを開催した。こうした、岩国市民の平和と希望をつくる取り組みに繋がり、同時に、米軍基地撤去を掲げ米軍岩国基地を包囲する反基地・反安保闘争の継続した取り組みをひろげたい。「平和な街イワクニ」へ向けた取り組みを岩国市民と全国の人々の協同で!