寄稿(2018年11月)                                                     ホームへ

10・10~14 インドネシアIMF・世銀年次総会反対
国際共同闘争に参加して
(AWC会員)

   


     
 インドネシアのバリ島で国際通貨基金及び世界銀行の年次総会に反対する民衆世界会議が一〇月一〇~一四日に行われたので中途参加した。
 一〇日と一一日の前段の分科会は、警察の指示を受けた会場施設側が契約を一方的に取り消して開催できなくなっていた。会議側は元会場予定地のホテルの前と年次総会会場で抗議行動を行った。以上の情報を得て、本会議初日の一二日昼にバリ島に到着した。しかし反弾圧の観点からだろう、インターネット上には会議場所が載ってない。事務局の連絡先に電話とメールを送ったが返事がこない。闘争が完全に封殺されたのかもしれないという懸念を抱いてタクシーに乗り、元々の会議場所があるデンパサル市内に向かった。
 宿に着いた後、何とか連絡が付き、会場に到着できたが、会議はすでに終わっていた。ここでフィリピン人活動家と話した。前日フィリピンのミンダナオ島にある住友フルーツが経営するバナナ農園で、労組弾圧を続ける会社が暴力業者を雇い、ピケを張る労働者を襲撃させ、組合事務所を破壊し、多くの労働者が負傷したという。民衆世界会議は次のような声明を出した。
 「民衆世界会議(PGC)の各国代表者らは、フィリピン・ミンダナオのNAMASAFUでストライキ中の労働者に対する暴力的攻撃を非難する。住友フルーツコーポレーション(スミフル)をはじめとする多国籍企業は、国際金融機関が作った新自由主義政策に基づいて、労働者の権利を意図的に無視し抑圧している。国際通貨基金及び世界銀行からの借金に支えられているフィリピン政府は、独占資本主義の金融機関が土地を手にし、反労働者政策を実施し、環境破壊活動を実施することを許してきている。私たちはストライキ中の労働者と同じ立場だ! 国際通貨基金と世界銀行を粉砕しよう!」
 紙に包んだナシゴレン(焼きめし)の夕食を取り、他の海外参加者とともに移動して「連帯の夕べ」に参加した。禁煙ではないようで、紫煙が立ち込める中、国内外の発言が続く。AWC日本連の旗を会場横に掲げたところ、大いに注目された。数人の参加者が「どこから来た?」と声を掛けてきたので応答した。後半はプロの歌手・グループの公演が続き、皆起ち上がって盛り上がった。
 翌朝、事務局からメールが届いていた。警察が全てのホテルを管理下に置くとともに活動家を厳しく監視している、民衆世界会議は以後の取り組みと日程を取り消す、参加者個々人との連絡は今後できない、またいつかともに活動できることを楽しみにしている――という趣旨だった。非公然闘争もここまでか。反対派が姿を現し声を上げることが完全に封じられた。しかし一般市民はいつもと同じ日常を過ごしている。これが独裁でありファシズムなのだ。民主主義を国是の一つに掲げるインドネシアは、民主主義とは何かを、「民主主義国家」の支配がどういうものかを赤裸々に示した。
 ナシ(飯)チャンプルー(はインドネシア語)を食べて宿に戻ると事務局と連絡が繋がった。歩行者と自転車が殆ど見られず、庶民の足であるオートバイと六、七人乗りの車で込み合う道路をすり抜けて会場に向かった。途中迷子になり、炎天下で一時間さまよった挙句に着いた会場では会議が始まっていた。
 労働者分科会と案内されたが実際は女性分科会の部屋で、三つの討論の輪のうち「労働」に参加。続いて、通訳なしの反原発分科会に参加。途中で話しかけてきた学生活動家と話した。地元の人間を装った警察が運動団体事務所に恫喝をかけ、ネット上で私たちに対する誹謗中傷を流している。数日前にスマトラ島で学生たちが年次総会に反対するプラカードをもって抗議行動をしたところ、警察が五分後に暴力的に排除した。これがジョコイ政権だ。ジョコイ政権はフィリピンのドゥテルテ政権と同じだ。多くの人が彼を改革派で民主的だと思っているが、実際は違う。新自由主義政策を進めている点では両者はそっくりだ。原発についても既に数基が稼働中で、新設計画も進んでいる――。
 労働分科会が始まるというので移動。フィリピンの活動家が第四次産業革命に関する世界銀行のレポートを批判するプレゼンを行った。意義深い内容だった。会議が終わり、歌った。当初の予定では翌日にデモ行進をすることになっていたが、何も決まっていないという。
 一四日、年次総会会場近くで青年活動家約五〇人が奇襲デモを貫徹した。警察が暴力的に押し込めたが、抗議のシュプレヒコールは止まらなかった。
 一八カ国九三組織約一五〇人が参加した「国際通貨基金・世界銀行に反対する民衆世界会議」は以上の如く、ジョコイ政権・インドネシア警察の戒厳態勢の中、重弾圧に屈することなく、これを跳ね返して闘争方針を基本的に貫徹した。自国の資本家と地主、それらを支援し操る帝国主義の打倒を掲げて不屈に闘い続けるインドネシア労働者階級労働者人民と連帯し、帝国主義を世界史的に打倒しよう。