寄稿(2019年1月)                                                     ホームへ

老朽原発運転延長阻止を突破口に原発全廃を!
若狭の原発を考える会
木原壯林


   


     
 原発は、事故の多さ、事故被害の深刻さ、使用済み燃料の処理や保管の困難さなど、あらゆる視点から、人類の手に負える装置ではない。また、一たび重大事故を起こせば、生活を奪い、職場を奪い、農地を奪い、海を奪い、故郷を奪い、人の命と尊厳を奪い去る装置であることを、チェルノブイリ、福島の原発事故が大きな犠牲の上に教えている。一方、福島事故以降の経験によって、原発は無くても何の支障もないことが実証された。そのため、脱原発、反原発は圧倒的な民意となっている。
 それでも、政府と電力会社は、圧倒的な民意を蹂躙して、川内原発、玄海原発、伊方原発、高浜原発、大飯原発の再稼働を強行している。

 ●1章 脱原発・反原発運動は勝利しつつある

 原発再稼働を許したことは、悔しいことではあるが、それでも我々は、脱原発・反原発の行動は一定の勝利を収めていると総括している。それは、次の①~③の理由による。
 ①我々の行動も含めた広範な反原発の闘いのために、傲慢な電力会社といえども、多額の費用を要する安全対策を施さざるを得なくなり、それが、原発重大事故を防いでいると言える。大衆運動がなければ、電力会社はロクな安全対策もせずに、原発を次々に動かし、重大事故の確率は格段に高くなっていたと考えられる。
 ②電力会社は、安全対策費がとくにかさむ老朽原発の廃炉を決意せざるを得なくなっている。民意を無視し続ける関西電力(関電)でさえ、一昨年一二月に大飯原発一、二号機の廃炉を決定し、全国では、福島原発事故以降に、老朽原発一〇基を含む二〇基の廃炉がすでに決定され、五四基あった稼働可能な原発は三四基に減少している。
 ③脱原発、反原発の大衆運動は、国内だけでなく世界にも拡がり、世界的にも安全対策費を高騰させ、原発産業を成り立たなくさせている。最近では、三菱がトルコの原発建設計画を断念し、日立が英国での原発建設計画を凍結した。安倍政権は、海外での原発建設を「インフラ輸出の柱」として推進してきたが、その全てが頓挫したことになる。

 ●2章 老朽原発運転延長は、「大資本にのみ奉仕する国、戦争できる国」をつくるため

 関電は、来年以降、四〇年超えの老朽原発高浜一、二号機と美浜三号機を運転延長・再稼働させようとしている。原発の運転延長は「例外中の例外」としていた政府はこの約束も平気で反故にしている。
 それは、出力が小さい原発や安全対策ができそうもない原発は切り捨て、残る既存の原発全ての運転を六〇年まで延長し、二〇三〇年に原発電力をベースロード電源(基盤電源)として20~22%にしようとする安倍政権のエネルギー基本計画に迎合するためである。関電はその露払いをしようとしているのである。
 エネルギー基本計画は、①使用済み核燃料、核廃棄物の保管費や事故による損失を度外視すれば、安上がりな原発電力によって、電力会社や大企業を儲けさせ、②原発輸出によって、原発産業に暴利を与え、③核兵器の原料プルトニウムを生産するための計画である。もう一つ、注意しなければならないのは、この基本計画では、原発の他に、再生可能エネルギーを22~24%にし、二酸化炭素(CO2)の排出量の多い石炭火力まで26%にしようとしていることである。これは、④戦争になり、天然ガスや石油の輸入が途絶えたときの基盤電力を国内で調達できる電源である原発、再生可能エネルギー、石炭火力で確保するためである。
 すなわち、老朽原発の再稼働は「巨大資本に奉仕する国造り、戦争出来る国造り」の一環として行われているのである。許してはならない。

 ●3章 原発再稼働時に頻発するトラブル
原発老朽化の深刻さ、規制委審査の無責任さ、日本資本主義の倫理と技術の凋落を露呈


 原発の再稼動を進める電力会社は、傲慢で、事故だらけで、たるみ切り、トラブル続きの企業である。再稼働時のトラブルも目に余る。
 二〇一五年八月に再稼働した川内原発一号機は、再稼働一〇日後に、復水器冷却細管破損を起こし、高浜原発四号機は、二〇一六年二月の再稼働準備中に、一次冷却系・脱塩塔周辺で水漏れを起こし、発電機と送電設備を接続した途端に警報が鳴り響き、原子炉が緊急停止した。さらに、伊方原発三号機は、再稼働準備中の二〇一六年七月、一次冷却水系ポンプで水漏れを起こした。昨年三月に再稼働した玄海原発三号機は、再稼働一週間後に、脱気装置からの蒸気漏れを起こした。配管に直径1cmの穴が開いていたという。昨年八月末に再々稼働した高浜原発四号機は、八月一九日に、事故時に原子炉に冷却水を補給するポンプの油漏れを起こし、二〇日には、温度計差込部から噴出した放射性物質を含む蒸気が原子炉上蓋から放出されるという、深刻なトラブルを起こした。
 このように、再稼働を進める全ての電力会社がトラブルを起こしている。トラブル率100%である。原発の点検・保守や安全維持の困難さを示唆し、配管の腐食や減肉、部品の摩耗などが進んでいることを示している。また、傲慢で安全性を軽視することに慣れ切り、緊張感に欠けた電力会社が原発を運転する能力・資格を有していないことを実証している。さらに、原子力規制委員会(規制委)が適合とした多くの原発が再稼働前後にトラブルを起こした事実は、原発の再稼働にお墨付きを与えた「新規制基準」が極めていい加減な基準であり、規制委の審査が無責任極まりないことを物語っている。
 ところで、大企業や大組織のトラブルは、電力会社に限ったものではない。東芝の放漫経営、神戸製鋼、三菱マテリアル、スズキのデータ改ざん、日産、スバルの不正検査、日本鋳鍛鋼の強度不足製品生産、JR新新幹線台車の亀裂、KYBの免振装置データ改ざんなど、枚挙にいとまがない(このうち、東芝、神戸製鋼、日本鋳鍛鋼、KYBなどのトラブルは原発に深く関わっている)。このトラブル続きは、金儲けのみに突っ走る日本資本主義の倫理や技術は崩壊し、地に落ちていることを物語っている。岸、佐藤、中曽根、小泉、安倍らが、五〇年以上にわたって続けた人間性無視の政策、すなわち、極端な合理化、派遣労働、非正規雇用の助長、過剰な科学技術依存、後先考えぬ教育破壊、労働組合破壊、農業破壊、社会構造破壊の付けが回ってきたのである。このような社会構造の下で、原発を安全に運転できるはずがない。

 ●4章 原発の危険度は、運転期間とともに高くなる
老朽高浜原発一、二号機、美浜三号機を今すぐ廃炉に!


 原発は事故の確率が高い装置であるが、老朽化すると、重大事故の確率が急増する。例えば、次のような理由による。
 ①高温、高圧、高放射線(とくに中性子)に長年さらされた圧力容器、配管等では、脆化(ぜいか:下記【1】を参照)、金属疲労(下記【2】を参照)、腐食(下記【3】を参照)が進んでいる。中でも、交換することが出来ない圧力容器の老朽化は深刻。電気配線の老朽化も問題。
 ②建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当と考えられる部分が多数あるが、全てが見直され、改善されているとは言えない。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物、配管の中で交換不可能なもの(圧力容器など)。最近、安全系と一般系の電気配線の分離敷設の不徹底なども指摘されている。
 ③建設当時を知っている技術者はほとんどいないので、非常時、事故時の対応に困難を生じる。また、建設当時の記録(図面など)が散逸している可能性があり、原発の安全管理の支障となる。
 ④高浜三、四号機(運転開始後三三年超え)のようなウラン燃料対応の老朽原発でウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用することは、炉の構造上、問題山積である。
 以下に、脆化、金属疲労、腐食について簡単に説明する。

 ▼【1】老朽原発圧力容器の脆化

 原子炉本体である圧力容器は鋼鉄で出来ていて、運転中は、約320度、約150気圧の環境(加圧水型=PWR=の場合)で中性子などの放射線に曝されている。この鋼鉄は、高温ではある程度の軟らかさを持っているが、温度が下がると、ガラスのように硬く、脆くなる。
 圧力容器は原子炉運転期間が長くなると、硬化温度(脆性遷移温度)が上昇する。例えば、初期にはマイナス16度で硬くなった鋼鉄も、一、一八、三四年炉内で放射線に曝されるとそれぞれ35、56、98度で、四〇年を超えると100度以上で硬化するようになり、脆くなる。圧力容器が脆化していれば、原子炉が緊急事態に陥ったとき、冷却水で急冷すると、ガラスを急冷したときのように、破損する危険性がある。初期(使用前)の鋼鉄は、脆性遷移温度が零度以下であるから、水冷では破壊されない(水は零度以下にならないから)。圧力容器の老朽化に伴う脆化は、圧力容器が銅、リン、炭素などの不純物を多く含む鋼鉄で出来ている場合、とくに深刻である。なお、脆化の機構は解明途中であり、脆性遷移温度の評価法にも問題が多いことも指摘されている。

 ▼【2】老朽原発の金属疲労

 金属疲労とは、金属材料に繰り返して「力」を加えたとき、はじめ小さな傷が生じ、やがて大きな破壊に至る現象。「力」は機械的に加わるだけでなく、温度変化の繰り返しによって加わることもある。金属が高温で膨張し、低温で収縮するためである。一九八五年八月の日航ジャンボ機墜落(御巣鷹尾根)事故は、後部圧力隔壁の金属疲労が原因とされた。 
 一九九一年二月に美浜原発二号機で蒸気発生器伝熱細管がギロチン破断(刃物で断ち切ったように真っ二つになること)して一次冷却水が二次側に漏洩した事故の原因は、高サイクル振動による金属疲労と判定された。この事故は、メルトダウンにつながりかねない深刻なもので、国内の原発で緊急炉心冷却装置(ECCS)が動作する最初の事例となった。金属疲労による損傷は、ポンプやタービンによる機械的振動や配管を水や水蒸気が流れるときに生じる振動が長期にわたって加わったときにも生じる。

 ▼【3】老朽原発の金属腐食

 金属の腐食とは、金属が接触している他種の金属、液体あるいは気体と化学反応して溶けたり、腐食生成物(いわゆる「さび」)を生成すること。表面が一様にさびる「全面腐食」、弱い部分から腐食が進行し、孔が開いたりする「局所腐食」がある。原子炉内ではいずれの腐食も生じるが、老朽原発でしばしば問題となるのは「局所腐食」の一つ「応力腐食割れ」。代表的な発生部位は、圧力容器内で燃料集合体、制御棒の周囲に円筒状に配置されているシュラウドと呼ばれる部品、再循環系配管、炉内計装管台など。一九六〇年代末から一九八〇年代初頭にかけて、とくに沸騰水型プラントでは共通する不具合として問題になった。当時発生した応力腐食割れの大半は炭素含有率が比較的高いステンレス配管の溶接部近傍(数mm以内)で発生した。ステンレスは、鉄に10~20%のクロムを混ぜて、さび難くした合金であるが、溶接時に600度~800度に加熱された部分ではクロム炭化物が生成し、クロム濃度が周囲より低くなる欠乏層(結晶粒界)が生じる。この部分に溶存酸素を含んだ炉水が接触しつつ引張応力(材料が引っ張られたとき、材料内部に生じる抵抗力)が加わると、応力腐食割れが発生、進展する。
 「エロージョン・コロージョン」と呼ばれる腐食も生じるが、メカニズムは確定されていない。「エロージョン」とは、局所的沸騰(キャビテーション)あるいは液滴や固体粒子の衝突によって材料表面が徐々に脱離する現象(腐食:コロージョン)とされている。
 一九八六年一二月、米国のサリー原発二号機(加圧水型軽水炉で一九七三年五月に運転開始)の二次冷却系配管でギロチン破断事故が発生した。この事故は、給水ポンプ入口側の90度エルボ部(湾曲部)で生じた。破断した配管の材質は、板厚12・7mmの炭素鋼(鉄と炭素の合金:加工が容易で廉価)。破断の原因は、エロージョン・コロージョンによる配管の減肉。この事故により破断部の近くで工事を行っていた四名が死亡し、二名が負傷した。
 二〇〇四年八月、美浜原発三号機(一九七六年三月に運転開始)の二次冷却系の復水系配管が突然破裂し、高温高圧の二次系冷却水が大量に漏れ出して、高温の蒸気となって周囲に広がった事故の原因もエロージョン・コロージョンによる配管の減肉。この配管は、直径55cm、肉厚10mmの炭素鋼製で、破裂箇所の上流側には圧力差から流量を計測するためのオリフィスと呼ばれる狭窄部が設けられている。オリフィスで生じた渦流によるキャビテーションは、徐々に配管内面を削り、運転開始から二八年後の事故当時には、配管は肉厚1・4mmにまで減肉していた。この状況で、配管は、150度、10気圧という運転圧力と振動に耐えられず、大きく破裂したと考えられている。
 本来は肉厚4・7mmまで減肉する前に予防措置をとるという内部規則があり、一九八九年には配管を検査し、一九九一年には取り替えることになっていたにもかかわらず、関電と検査会社の見落しで、点検台帳に登録されず、この個所は稼動以来二八年間一度も点検されていなかった。この事故では五名が死亡し、六名が重軽傷を負った。国内初の運転中原発での死亡事故であった。

 ●5章 規制委の審査は無責任で、科学とは縁遠い
老朽原発審査は、さらに手抜き

 老朽高浜原発一、二号機運転延長認可の発表にあたって、当時の規制委員長・田中俊一は、「あくまで科学的に安全上問題ないかを判断するのが我々の使命だ」と述べている。
 しかし、科学とは、実際に起こった事実を冷静に受け入れ、丁寧に調査し、検証・考察して、その上に多くの議論を重ねて、結論を導くものである。規制委の審査は、この過程を無視しており、科学とは縁遠い。
 実際に起こった最も重大な事実は福島原発事故である。福島原発に関して、事故炉内部の詳細は今でも分からず、事故の原因究明が終わったとするには程遠い状態にある。「科学」を標榜するのなら、福島事故の原因を徹底的に解明して、その結果を参照して、原発の安全性を議論・考察するのが当然である。
 しかも、老朽高浜原発一、二号機、美浜原発三号機の再稼働審査は、とくに無責任かつ杜撰であった。杜撰さを、高浜一、二号機審査を例に紹介する。
 ①関電が、高浜一、二号機の新規制基準への適合審査を申請したのは二〇一五年三月であるが、二〇一六年四月に設置許可、六月一〇日に工事計画認可、六月二〇日に運転延長認可と、他の原発の審査に比べて、異例の短期で審査を終えている。審査会合も二七回と川内、高浜(三、四号機)、伊方原発審査時の約半分。しかも、先に申請し、終盤を迎えていた他原発の審査を止めての拙速審査。規制委からの認可取得期限が二〇一六年七月七日に設定されていたために、規制委が審査を早めて、この期限に間に合わせたのである。規制委には、特に慎重であるべき老朽原発審査に対する誠意は感じられない。
 ②審査の手抜きも目立つ。例えば、この審査では、ケーブル、コンクリート、目視可能な鉄筋など、簡単に点検や補修できる箇所については審査しても、点検が困難な冷却細管、点検・交換が不可能な圧力容器については、十分審査しているとは言えない。また、蒸気発生器の耐震性は美浜三号機の実証データで代用し、通常なら審査段階で行う耐震安全性の詳細評価を審査後で可とし、実証試験を使用前検査時に先延ばしにした。このように、調査や改修の困難な部分については手抜きする審査は、「科学的」に安全を保証するためのものではない。

 ●6章 原発再稼働で増やし続ける使用済み核燃料
処理・処分法はなく、永久保管はもとより、中間貯蔵すら引き受ける場所はない


 原発を運転し続けると、核燃料内で核分裂反応を起こすウランやプルトニウムの量が減少し、核分裂反応に必要な中性子の発生数が低下する。また、核燃料中に運転に不都合な核分裂生成物(中性子を吸収する希ガスや希土類など)が蓄積し、核燃料の持続的な反応しやすさ(余剰反応度)が低下し、制御棒による核分裂反応の制御が困難になる。さらに、核燃料被覆材は、腐食や熱、振動などによるストレス(応力)によって変形する。したがって、核燃料を永久に使用することはできず、一定期間燃焼させると、新燃料と交換せざるを得なくなる。そのため、使用済み核燃料がたまる。
 使用済み核燃料は、交換直後には高放射線、高発熱量であるから、原発外に移動させることはできず、原子炉の上部横に設置されている燃料プールで三年~五年ほど保管・冷却される(MOX燃料では、さらに長期の水冷保管が必要)。このプールは深く、燃料の上部の水深は7~8m程度あり、水によって冷却されるとともに放射線が遮蔽されている。プール内には、ラックと呼ばれる仕切りがあり、使用済み燃料集合体間の距離を一定以上離している(燃料集合体が近づき過ぎると核分裂反応が起きるから)。
 水冷期間が過ぎて、放射線量、発熱量が低下した使用済み核燃料は、乾式貯蔵容器(キャスク)に保管することになっている。キャスクでは、水や電気を使わず、空気の自然対流(換気)によって燃料を冷却する。このキャスクの取りあえずの保管(中間貯蔵)場所が中間保管地である。
 国の核燃料サイクル計画では、中間保管地の使用済み核燃料は順次、核燃料再処理工場(青森県六ヶ所村)に移送して、高濃度・高温の硝酸で溶解した後、化学的分離法によってウラン、プルトニウムを取り出し、MOX燃料として再利用し、ウラン、プルトニウム以外の放射性物質はガラス状固化体の高レベル放射性廃棄物とする。その後、地層中に処分することになっていたが、再処理工場の建設はトラブル続きで、すでに二兆二千億円をつぎ込んだにもかかわらず、完成の目途は立っていない。そのため、使用済み核燃料の多くは、各原発の燃料プールに溜めおかれている。なお、核燃料再処理工場は、1300kmもの配管を持つきわめて危険な化学工場で、重大事故が起これば、原発事故とは比較にならないほど多量の放射性物質を放出する。再処理工場の運転を許してはならない。
 現在、日本には使用済み核燃料が1万8000トン近くたまり、原発の燃料プールと日本原燃の再処理工場の保管スペースを合計した貯蔵容量の75%以上が埋まっている。原発が順次再稼働した場合、数年後には満杯になる。
 福井県にある原発一三基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設の容量は5290トンであるが、その七割近くが使用済み燃料で埋まっている。高浜原発、大飯原発を運転し続ければ、六年程度で貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなる。
 それでも、関電は、高浜原発三、四号機、大飯原発三、四号機を次々に再稼働させ、老朽高浜原発一、二号機、美浜原発三号機の再稼働を企て、行き場のない使用済み核燃料を増やし続けている。しかも、高浜原発三、四号機では、MOXを燃料に用いる危険度の高いプルサーマル発電を行い、大飯原発のプルサーマル化も企てている。MOX燃料が使用済み燃料になったとき、ウラン燃料に比べて、放射線量や発熱量が下がり難いため、長期の保管を要する(四倍程度の長期の水冷保管とそれに引き続く長期の乾式保管が必要)。
 なお、関電の岩根社長は、一昨年一一月、使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、「二〇一八年内に、福井県外で具体的な計画地点を見出す」と西川福井県知事に、記者団の前で約束したが、昨年一二月二六日になって、候補地提示を断念したことを知事に伝え、謝罪した。この約束は、大飯原発三、四号機の再稼働への知事の同意を取り付けるための、何の成算もない「口から出まかせの約束」であったことは明らかである。

 ●7章 使用済み核燃料を保管する燃料プールは「むき出しの原子炉」
一刻も早く空にしよう!


 燃料プールは、上部が開放されたプールで、閉じ込め効果はなく、極めて脆弱で、メルトダウンする危険性が高い施設であり、「むき出しの原子炉」とも言われる(原子炉本体である圧力容器は、高温高圧にも耐える鋼鉄の閉じ込め容器である)。燃料プールには、倒壊の危険性も指摘されている。実際、福島第一原発四号機の燃料プールは、支柱の損傷によって倒壊寸前であった。それでも、原発重大事故に関して、燃料プールに起因する重大事態の可能性についてはあまり関心が払われていない(原子炉本体の破滅的な事態の防止は重要な課題として検討されている)。例えば、原子炉は、炉心溶融を避けるために、バックアップ用のポンプ、電源供給システム、冷却システム、炉心溶融時の放射性物質封じ込めシステムを持っているが、燃料プールは、それらに比較できるほどのシステムを持っていない。
 いま、燃料プール内で放射線量や発熱量が減少した使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、空いた燃料プールに新しく発生した使用済み核燃料を入れて、原発を継続運転しようとする企みがある。燃料プールの危険性は、発熱量や放射線量が大きい使用済み燃料を入れれば、さらに高まる。一刻も早く燃料プールを空にするためにも、使用済み燃料を増やす原発を廃止しなければならない。