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                                                                2024年11月

 以下は、米大統領選でのトランプの勝利を受けた国際民衆闘争同盟(ILPS)米国支部の声明である。
 声明は、民主党―ハリスの敗北の根拠を示すと同時に、トランプの勝利が大衆の「右傾化」を意味するものではないことを指摘している。そして、予測される民衆運動に対する弾圧の強化に抗しつつ、戦争と抑圧に対する闘いを強化することを呼びかけている。(佐々木涼)

翻訳資料  

米大統領選についての

ILPS米国支部の声明

 

 

                  

次の四年間
民衆の闘争を防衛し、前進させよう!
台頭するファシズムと闘おう!


 ドナルド・トランプは、米国の二つの支配的政党が帝国主義的な誤った解決策を示し続けた一年間を経て、二〇二四年の米大統領選挙での勝利を宣言した。この事実は、米国の独占資本主義がその最も明白な擁護者に再び栄誉を与えたことで、困難な道のりが待ち受けていることを示している。再びのトランプ政権の下、アメリカ帝国主義の危機はいっそう明らかになっていく。国際民衆闘争同盟(ILPS)は、米国と世界の民衆に対して、この瞬間を利用し、帝国主義とあらゆる形態の反動を打倒するために民衆を組織しつつ、次の四年間に備えるよう呼びかける。

 トランプの再選が米国の大衆の「右傾化」を主に意味するものではないことをはっきりさせなければならない。そうではなく、それはバイデンとハリスが率いる民主党が、民衆に真の解決策を提供できなかったことを示している。民主党は、性と生殖に関する健康や周縁化されている社会集団の制度的機会の平等など、合法的な民主的権利を擁護したにもかかわらず、国内では生活必需品の価格を高騰させ、労働運動を攻撃し、民衆運動を弾圧し、海外では終わりがないように見える戦争を圧倒的に増加させた。民衆にとっては、ハリスにはこれまで通りに企業オリガルヒと戦争利得者たちのための政治を続けながら、バイデンの空約束を継続する以外に戦略がないことが明らかになった。

 トランプが権力を握ったのは、彼の選挙運動のレトリックが民主党の反民衆的政党としての本質を暴いたからだ。トランプ自身の悪意に満ちた反民衆的政策と、最も裕福で最も権力のある独占資本家たちへのあけすけな支持を考えれば、トランプの当選は、民衆の権利を守り、公正で平等な社会を実現するという民衆自身にとっての真のオルタナティブを構築することの差し迫った必要性を示すものである。きたる数年間、真の変化を求めながらも民主党の誤った解決策にうんざりしている民衆を組織化することが、ILPS米国支部の最も重要な任務となるだろう。

 トランプ政権の下、国家および非国家勢力の双方からの反民衆的な攻撃が大きく増加し、とりわけテクノロジー、エネルギー、金融、不動産、兵器産業の少数の独占資本家たちへの権力の集中が進むだろう。トランプは「米国史上最大の国外追放」を約束しており、その民族差別的、外国人排斥的な選挙運動での言動や、仲間たちが今も動揺している国境の軍事化政策を考えれば、トランプの発言を真剣に受け止めるべきだろう。トランプは聖職者ファシストのキリスト教・ナショナリストのエリート層と手を組み、LGBTQIAの権利、女性への平等な賃金と機会に反対する社会的に保守的な政策を受け売りし、一九五〇年代の「マッカーシー」と二〇〇〇年代の対テロ戦争期の反社会主義、反イスラムの魔女狩りを激化させている。

 トランプの大企業の仲間たちは、広範囲にわたる企業の規制緩和の恩恵を受け、おそらく前回の政権時のように閣僚ポストに就くことになるだろう。電気自動車、宇宙打ち上げ技術、ソーシャルメディア・プラットフォームの独占的オーナーで、世界で最も裕福な人物の一人である熱烈なトランプ支持者のイーロン・マスクもその一人だ。ヘリテージ・プロジェクトのシンクタンクによる極秘計画「プロジェクト2025」は、トランプ勝利のために特別に作成されたもので、まさにこの目的のためにあらゆる規制措置を連邦政府から剥奪するためのロードマップを提供している。これは労働者の組織化に対する大規模な攻撃をもたらす一方で、労働の柔軟化と労働者の人工知能による管理の増加により、労働時間と賃金のさらなる低下をもたらすだろう。トランプのアメリカ第一主義のレトリックにもかかわらず、残っている数少ない製造業のさらなる海外移転が進み、より多くの米国労働者が単調なサービス産業の重労働に従事し、より多くのグローバルサウスの労働者が超搾取的な状況にさらされることになる可能性が高い。それはまた、燃料、食料、家賃などの生活必需品価格の引き続く上昇、金利の上昇、医療、教育、住宅所有権の金融化によって、大衆をさらに貧困化し、借金に陥らせることになるだろう。

 トランプは「力による平和」を約束し、軍事力を使って衰退しつつあるアメリカ帝国主義の超大国としての地位を維持するとしている。彼はフィリピン、韓国、ハワイなどの民衆の主権と安全を犠牲にして、中国への攻撃をさらに強めると脅し、シオニストによるパレスチナ人の大量虐殺とイランへの戦争策動に対する資金援助を継続し、メキシコ侵攻の可能性もあるとしている。トランプはNATOを公然と批判し、ウクライナでの戦争をめぐってはロシアとの和平を結びたいとしているが、ヨーロッパで権力を握っている極右やネオファシスト運動に接近しており、これらの勢力はほぼすべてが、NATOを世界最強の軍事同盟として維持し、軍事的にロシアを倒すというNATOの実存的使命を維持することで一致している。これは二〇二五年には軍事費の総額が一兆ドルを超える米国の社会福祉予算のさらなる減少を意味する。

 トランプは、抗議活動や民衆運動を徹底的に取り締まると脅迫し、米軍を招集してパレスチナを支持する抗議者たちは「国外追放」するとまで言っている。こうした脅しを額面通りに受け取るべきではない。米軍の上層部は必ずしもトランプ派と結びついているわけではなく、トランプが言及している活動家を国外追放する法的メカニズムは今のところ存在しないからだ。トランプは、二〇二一年一月六日の米議会議事堂占拠以来、大胆さを増すファシスト大衆を煽動して、反対派に対して超法規的な暴力を行使する可能性が高い。したがって、民衆運動は非常に厳しい弾圧に備える必要があるが、恐れて沈黙してはならない。今こそ勇気ある戦闘的行動を起こす時だ!

 全体として、米国の民衆にとって今後の四年間が意味することは、より深刻な経済危機、政治的混乱、立法制度の行き詰まり、国家による弾圧の激化、反帝国主義および民主主義の大衆運動に対する路上暴力を仕かけるファシスト運動の増長、世界規模での米国主導の戦争と侵略の増加である。したがって、ILPSが誇りを持って献身してきた民衆による大衆的運動の任務は、反撃のために民衆を組織し、ファシズムと寡頭支配に対する広範な連合を構築し、民衆の権利、平和、正義への戦闘的な要求を通して民主党の偽りの改良主義的物語に挑むことで、危機に瀕した支配体制に挑むことに他ならない。好戦的で企業寄りのバイデン政権下においてそうであったように、ネオファシストのトランプ政権下においても、われわれの民衆綱領を前進させ、民衆の闘いを防衛し、帝国主義を終わらせ、人類に明るい未来をもたらす闘いの勝利のために、運動を発展させ続けよう!

 民衆の闘いを防衛しよう!
 戦争、抑圧、大量虐殺に反撃しよう!

二〇二四年一一月七日
ILPS米国支部