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■労働組合運動の解体を狙う「労働契約法」許すな

 

 現在、厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会(以下「労政審」と略す)において、「労働契約法制」の新設および「労働時間法制の見直し」についての審議が行われている。この「労政審」における審議は、〇五年九月十二日に発表された「今後の労働契約の在り方に関する研究会報告」(概略と批判点に関しては、『戦旗』第一二五八号参照)と〇六年一月二十七日公表された「今後の労働時間制度に関する研究会報告」を受けて開始された。四月十一日「労働契約法制および労働時間法制に係わる検討の視点」、六月十三日「労働契約法制および労働時間法制の在り方について(案)」(「素案」と言われている)と矢継ぎ早に厚生労働省の事務局からの提起が行われた。しかし、事務局側の稚拙な運営と労働者側、使用者側双方からの「素案」に対する批判の集中により六月二十七日以降審議がストップした。そして、水面下での「根回し」と労働局長の首のすげ替えなどが行われ、八月三十一日再開された。以降月二回〜三回のスピード審議が行われ、なんと予備日が十二月二十七日に設定される(御用納めの前日!)という役所としては異例のスケジュールが強行されようとしている。これは、今年中に最終報告を行い、三月までに「法案」としてまとめあげ、次期通常国会で可決成立させるという日帝支配者側の意向をうけて行われているのである。 われわれは、この「労政審」におけるどす黒い支配者どもの野望を打ち砕くたたかいを更に強化しょう。以下現在明らかになっている問題点について明らかにする。

●1章 労働者へ更に隷属強いる支配階級を許すな

 「労政審」における審議がストップされていた中で七月二十一日「規制改革・民間開放推進会議」は、労政審における検討内容にたいして「労働契約法制および労働時間法制の在り方に関する意見」(以下「意見」と略す)なるものを発表した。この「意見」は、日帝支配者階級の意を体現したものであり、審議再開以降の使用者側発言のバックボーンとなっているものであるので、これを紹介しながら、批判を加えたい。

 「意見」は、「労使自治を尊重」し「労働契約法制の検討については、あくまでも民法の特別法としてこれを位置づけるべきであり、そうである以上その内容は任意規定を主にするものでなければならない」とある。つまり、現行の労働条件の最低基準を定めた労働基準法が罰則規定のある「刑法に近い強制法規」であるのに対して、罰則規定のない単なる民法上のルールへと労働者保護規定を改変させ、就業規則の不利益変更をやりやすくしようとしている。

 この「意見」のイデオローグであると言われている八代尚宏国際基督教大学教授は週刊東洋経済に次のような文章を載せている。「解雇の必要要件は経営者の判断にゆだね、その代わりに手続き面のルール整備を図ることが、労働者の権利を保護しつつ、企業の正社員コストを明確化する上で望ましい」。また「意見」では「労働基準法一八条の二において『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を乱用したものとして無効とする』と規定して以降」混乱が生じているとして「解雇が労働協約や就業規則に定める解雇事由に該当する場合には、労使自治(当事者の取り決め)を尊重する観点から、原則として解雇を有効にする考え方を明確にすべき」としている。これほど彼らの狙いを明確にしたものはない。つまり、経営者の判断で解雇できるためのルール作りを行わせようとしているのである。また、「意見」では「正社員・非正社員間の均衡処遇を実現するためには、正社員の労働条件を一方で引き下げることが必要になる」「『有期労働契約が更新されながら一定期間を超えて継続している場合において労働者の請求があったときには、使用者は期間の定めのない契約の優先的な応募機会の付与を行わなければならない』との規制が法制化された場合、使用者がその適用を防ぐために有期雇用契約を更新しないことは十分予想され、これにより有期雇用労働者の雇用はかえって不安定になる」など、現在労働者側が要求している「均等待遇」や「有期雇用の正社員化」などを支配者側の論理で捻じ曲げ、「労働契約法」を「規制(使用者側への縛り)のない労使間のルール」つまり、労働者を一層隷属させるものにしようとしている。

 労働契約における労使間の合意については「労使自治」と言いながら「合意」でも「自治」でもない押し付けであることを自己暴露している。「就業規則については……届出や周知を使用者が失念することも稀ではない……その内容が合理性を有し、かつ、予測可能である場合には、周知を欠く就業規則についても、合意を推定するなど、適切な処置が講じられるべきである」「過半数組合との合意は、合意の推定(就業規則の合理性推定)のための十分条件たりえても、必要条件とはならないことを明確にすべき」「過半数代表者の選出過程が、多様な労働者の意思が反映される仕組みになっているのであれば、過半数代表者が『複数』でならなければならない必然性はない」など結局は、使用者の言いなりになる者との「合意」をして「労使自治」と称しているのである。まして、少数組合やユニオンなどの合同労組は、「労使合意」の枠外の存在となってしまう。これらの狙いは労働組合運動の破壊である。

 現行の労働基準法の「三六条」や「九〇条(就業規則の作成又は変更について過半数組合や職場代表の意見を聞く)」などで定められている「過半数代表者」の選び方においても厚生労働省の調査によれば、「『選挙』『信任』『全従業員の話し合い』によるものが47・7%、『一部の従業員の話し合い』『社員会や親睦会などの代表が自動的に労働者代表になる慣行』が36・6%」「事業主(又は労務担当者が指名)」が13・1%となっており、「多様な労働者の意志反映」とはなっていないという現実を百も承知の上で「労使自治」なるもので労働者へ不利益を押し付けるものである。そもそも労働者と使用者が対等な立場であるはずはなく、だからこそ労働者は団結してたたかい、要求を勝ち取るのである。

 「日本版エグゼンプション」ともよばれる「自律的労働」は、労働者の長年の闘いによって勝ち取ってきた八時間労働制を解体し、資本が必要なときに好きなだけ仕事をさせる労働時間の規制の撤廃である。残業による割増賃金の支払いもなく、深夜も含めて働かさせられる層(管理監督者)の増大を狙った制度である。 「意見」では、厚生労働省が、「割増賃金の引き上げ」や「代償休暇の付与」を言及したことに対して、「企業に新たなコスト増をもたらす」「割増賃金を引き上げた場合、企業側が割増賃金の算定基礎となる賃金を低く抑えることが容易に予測されるが、その結果、収入の増加を図ろうとする労働者が多くなり、かえって残業時間が増える」「新たな制度を創設したとしても、要件を厳格に規定するあまり、それが利用できないというのでは意味がない。自律的労働にふさわしい……制度の創設が必要」などと新たなコストを増やすことなく、サービス残業を合法化しようとしている。「管理監督者の範は……より実務の現状に即したものとなるように」というように規制の除外対象をできるだけ増やそうとしている。

 以上見てきたように「規制改革・民間開放推進会議」の発表した「労働契約法制および労働時間法制の在り方に関する意見」は徹底して資本家階級の要求に基づいて書かれている。この「意見」に沿った形で「法案」が作られることも十分予想される。労政審における審議内容、法案の内容に孕まれる資本家階級のどす黒い野望を徹底して暴露し、粉砕しよう。

●2章 敵対深める「労政審」審議を労働運動の前進で粉砕せよ

 「労政審」における審議もいよいよ大詰めを迎えている。前項で見てきた資本側の意見に対しする労働者側の委員との論戦が行われ、審議会の日には全労協を初めとする労働者が傍聴や会場付近での行動につめかけている。 現在、各側の論点の整理にむけて、検討項目の整理が行われ、それに基づく論戦が行われている。

 その主な注目すべき検討項目は @労働契約の即時解除や就業規則の効力などに関する規定を労働契約法に移行する。 A労働契約締結の際に、使用者が労働基準法を遵守して定めた合理的な就業規則がある場合には、合意が成立しているものと推定する。 B就業規則の変更によって労働条件を集団的に変更する際のルールを作る。その際「過半数代表者」の選出要件を民主的手続きにすることを明確にする。 C労働基準法第一八条の二を(解雇要件)労働契約法に移行する。 D解雇の金銭解決の仕組みについて更に労使が納得できる解決方法にする。 E有期雇用契約を良好な雇用形態として活用できるようにする F労働契約法は、労働契約の内容を自主的に決定するようにするためのものであり、罰則をもって担保されるものではなく、国の役割は、労働契約の解釈を明らかにしつつ周知をおこなうこととする。 G一定時間数を超えて時間外労働させた場合の割増率をひきあげることについて、経営環境や中小企業の実態をふまえる。 H高付加価値の仕事を通じたより一層の自己実現や能力発揮を望み、穏やかな管理の下で自律的な働き方をすることがふさわしい仕事に就くものが、健康を確保しつつ……ホワイトカラー労働者の自律的働き方を可能とする制度を新設する。 I管理監督者(残業割増賃金の適応除外者)になりうるスタッフ職の範囲を明確にする。 J管理監督者について、深夜業の割増賃金に関する適用除外。

 などである。この項目のうち労使で一致できないもの、とりわけ使用者側からの抵抗の強いものについては、最終報告および法案からは外されると言われている。まさに必死の攻防戦が行われている。 とりわけて、日本版エグゼンプションについては、残業代を支払わなくてもすむ層の増大を生み出せる可能性があり、資本側からの要望が強い。例えば、日本経団連が提案している年収四百万円以上の労働者が労働時間規制の対象から外されると、約一千万人の労働者が一人年間百十四万円の残業代を受け取れなくなる、とする試算を民間シンクタンク、労働運動総合研究所(労働総研)がまとめた。それだけ、労働賃金の横取りをおこなうことができるというのだ。現在でもサービス残業(不払い労働)が横行し、労働基準監督署の是正指導の調査でも一企業平均千五百二十九万円であり全体で約二百三十三億円(これは氷山の一角にすぎない)となっている。過労死過労自殺が増大している現在これは非常に重要な問題である。

 労政審は、十一月十日「自由度の高い働き方にふさわしい制度の新設」(素案)を明らかにした。「素案」は、対象者として(1)労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事(2)業務上の重要な権限や責任を相当程度伴う地位にある(3)年収が相当程度高い――などの条件を列挙している。具体的な年収水準は、素案段階での明示は見送り、今後の労使の協議に委ねた。また、労使委員会において@対象労働者範囲A賃金の決定、計算方法B週休二日以上の休日の確保C苦情処理D対象労働者の合意などを決議すること。一方で長時間労働を助長しないよう、「休日の確保、健康・福祉確保措置の実施を確実に担保」との表現を盛り込んだ。現在、労働者の法定休日は週一日だが、対象者については一年間で週休二日分(年百四日)以上の休日確保を企業に義務づける。また、本人の申し出による医師面接を義務づけている労働安全衛生法の規定を、月百時間の残業から八十時間程度に引き下げる。制度の適正な運営を確保するために罰則を含んだ業務改善命令を出すなどである。この素案に対して、労働者側委員からは、制度の新設に対して異論がだされたが、今後この素案にそってまとめる可能性が高い。 以上見てきたように「労政審」における審議が大詰めを迎えている。労働組合運動を解体し、過労死を増加させる「労働契約法」「日本版エグゼンプション」に反対する取り組みを強化し、粉砕するまでたたかおう。

 

 

 

 

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