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■3・20イラク反戦闘争へ/占領軍・自衛隊の撤退をかちとろう

 

 米英軍により開始されたイラク戦争は、本年三月二十日で四年をむかえた。〇三年五月一日ブッシュは戦闘終結宣言を発表したものの、依然として現在もなお戦火はやまない。イラク人民は米英軍への抵抗闘争をたたかいぬいている。米英占領軍は〇六年イラク正式政府を発足させたが、イラク人民とのたたかいにくわえ宗派間の対立も激化して泥沼の状況におちいっている。

 ブッシュは「対テロ戦争」という名のアフガニスタン戦争からイラク戦争にふみこむことで、中東・パレスチナ民衆の解放闘争にくさびを打ち込み、中東の安定的支配とイラク原油獲得をめざそうとした。しかしイラク占領の継続とともに、米軍の死者が三千人をこえるなど、イラク民衆の武装抵抗闘争は激しさをましている。イラクのみならず中東・パレスチナ全域で米帝に対する怒りは広がり、反米武装闘争が継続している。

 米帝の意図したイラク占領支配―中東支配の安定化のもくろみは崩れ去った。一方で米帝はイラン核開発阻止を口実に、戦争準備をおこない、新たな戦火の拡大を作り出そうとしている。イラク占領失敗の破綻を糊塗するイランへの戦争準備を絶対に許すことはできない。

 いまこそわれわれはたたかう中東・パレスチナ民衆と連帯して、「対テロ戦争」という名の中東労働者人民のたたかいの圧殺をもくろむブッシュのイラク新戦略を許さずたたかおうではないか。

 

●1章 米帝ブッシュのイラク新戦略

 米帝ブッシュは、本年一月十日イラク新戦略を発表した。〇七年十一月までにイラク全土の治安維持権限のイラク軍への移譲を目標とし、イラク武装勢力を掃討しイラク政府主導で特に首都バグダッドの治安維持を強化するために、現兵力約十三万人のイラク駐留米軍に五個旅団約二万二千人(バグダッドに一万七千五百人、スンニ派武装勢力が強いとされるアンバル州に四千人)の米軍部隊を増強させるというのだ。またイラン・シリアを名指しして「米軍攻撃の物的支援をしている」として、両国の支援の流れを止めると宣言した。だが同時にブッシュはこれまでのイラク政策の失敗を認めた。失敗の理由として、「治安維持のための十分な米兵・イラク兵がすくなかったからであり、米軍とイラク軍に多くの制約があった」からだと述べた。ブッシュ政権は「対テロ戦争」を主導したラムズフェルド国防長官やボルトン国連大使などを更迭し昨年来から外交・情報関係、軍関係の人事を一新し、イラク政策の見直しを進めてきた。ラムズフェルドの軍事戦略の失敗をみとめ、米軍の大増強にかじを切ったのだ。

 一月二十三日一般教書演説でもブッシュは、「国際的イスラム過激派組織アルカイダとともにイランに支援されるシーア派過激派そして旧政権の支援者」をイラクにおける「対テロ戦争」の三つの敵にあげ、「米軍が撤退すればイラク政府は崩壊し米国にとって悪夢のシナリオになる」と治安強化のための米軍の増強を行うと強調し、昨年十二月米超党派の「イラク研究グループ」が提言した早期の撤退やイラン・シリアなどを含めた関係国との対話を否定した。

 イラク新戦略による掃討作戦は〇三年三月の開戦以後、最大級のものという。今回の米軍増派は、六万人を投入したイラク軍があくまで主体になって治安強化をはかるためであり、米軍がイラク治安部隊に同行しバクダッドの治安を維持できないイラク軍を助けるためだとされる。そのためにイラク軍の司令官が作戦の指揮権を握り、二月はじめから中旬にかけイラク軍・米軍合わせて九万人を投入した「法の執行作戦」=掃討作戦がおこなわれている。首都バクダッド市内では車両検問や九地区に分け各地区を順番に大量の部隊で包囲し、武装勢力を拘束、武器を没収する捜索がおこなわれている。イスラム教スンニ派、シーア派など宗派を問わず違法な民兵はすべて取り締まりの対象とし、またシリア・イラン国境の閉鎖や武器所持許可の停止などの措置を実施するという。

 だが治安管理の主導を務めるとされるイラク軍の充足率は60%程度に過ぎないともいわれている。イラク新戦略にあたり駐留米軍司令部を入れ替え、司令官になったペトロイアス陸軍中将は五月末までに米軍増派を完了させ作戦終了の今夏の終わりを見なければ新戦略が功をそうしたかどうかはわからないと述べているが、イラク軍に主導権を与えるとしつつも米軍が治安管理の前面にたつのであり、これまでバクダッドで米軍が地域を制圧しても退くと元に戻ったこれまでの掃討作戦の失敗を、今回の大増派でも繰り返すことになるのは自明だ。

 実際米軍増強による掃討作戦実施以降も、連日バクダッドや各州では自動車爆弾や米軍への攻撃がやんでいない。バクダッドのシーア派地区の市場で二月十二日に七十九人が死亡し百六十五人が負傷し、同十八日同市内東部の野菜市場で少なくとも六十人が死亡し百三十人以上が負傷する爆発がおこっている。イラク西部アンバル州にあるイスラム教スンニ派モスク付近で二十四日タンクローリーが爆発し、五十六人が死亡し百人以上が負傷した。二十五日にはシーア派地区の大学で爆発があり、学生ら少なくとも四十人が死亡、三十五人が負傷した。

 

●2章 軍事占領下のイラク

 イラク民衆は侵略者の米英軍に対し頑強に武装抵抗闘争をたたかいぬいている。一方で米英を中心とした暴力による占領支配がイラク社会内部に分裂を持ち込み、イラクの政治経済社会の破壊・混乱をますます深めている。特に宗派間の対立や抗争を利用して、米軍は占領支配を維持しようと躍起になっている。米情報機関の「国家情報評価」によれば、イラクの治安状況は今後一年半悪化が続くという。内戦を認定するほどイラクの治安は悪化している。米国がいう「イラクの民主化」、撤退の見通しも見えず、誰の目にもイラク占領支配の破綻が鮮明になっているのだ。

 

▼1節 イラク民衆の被害

 米軍は、イラク戦争開始以降イラク西方のアンバル州地域(ファルジャーなど)やスンニ派地域などに激烈な攻撃を加え、武装勢力のみならず数々の民衆虐殺を繰り返しおこなってきた。おびただしい数のイラク民衆を殺し傷つけ、イラク戦争開始からすでに十万人をくだらない、六十五万人のイラク人が死んだという資料さえある。イラク内務省のひかえめな数字でも、〇六年一年間の犠牲者は一万二千三百二十人で、本年一月の死者は千九百七十一人にのぼり、昨年十二月を四十人上回っている。現在イラク民間人は一日で百人以上が死んでいる。子供や女性といえども、米占領軍に反抗するものは虐殺されている。

 また戦争からの避難民、周辺諸国や国内北部に移り住んだりしたイラク人が推計三百七十万人にたっしている。そのうち隣国シリア、ヨルダンなどに百七十万人が流出している。毎月五万人が一家離散や居住地を離れている。

 だが一方、イラク民衆の駐留米軍に対する攻撃も一日平均百八十回(〇七年一月)にたっし、〇六年十月と並んで拡大している。米軍の死者が毎月百人以上になり、昨年十二月で三千人をこえた。〇七年に入り米軍ヘリが撃墜される攻撃がふえはじめた。ヘリ撃墜は〇七年一月二十日以降八機にのぼっている。また米軍人以外に米国防総省と契約し、イラクで復興事業や軍の後方支援に携わる民間人七百六十九人が昨年末までに武装勢力の攻撃などで死亡している。イラクでは約十三万五千人の駐留米軍にほぼ匹敵する約十二万人の民間人が収容者の護送や軍の警護、情報収集や食料配送にあたっている。前線で働く要員も多く、一月には米軍ヘリコプターが撃墜され民間人四人が死亡している。

 

▼2節 イラク政府とシーア派、スンニ派

 〇六年二月サマラのシーア派モスクが破壊されて以降、スンニ派地区でのシーア派による砲撃や爆発、シーア派地区でのスンニ派による爆弾攻撃が急激に拡大しているとされている。バクダッドではチグリス川をはさんで東側のシーア派地区、西側のスンニ派地区への分断が進み、それぞれ自派住民の多い地区に移動し住み分けが進んでいる。互いに相手地区に近寄れず、経済活動にも影響が出ている。東側のサドルシティーでは、対米強硬派といわれるシーア派ムクタダ・サドル派の民兵「マハディ軍団」(六万人)が支配するなど独自に組織している。イラクで治安や経済社会が破壊されている中で、宗派・地域・地方などで多くの武装組織や自警組織が存在し活動しているといわれる。イラク政府の実効支配地域は、バクダッドのみというのが実情である。

 〇三年連合国暫定行政当局(CPA)設置後の「イラク民主化」の歩みは次のようなものであった、〇四年六月暫定政府が発足し政権移譲、〇五年移行政府の発足につづいて新憲法を承認した。「イラク民主化」の最終段階とされる〇五年十二月イラク国民議会(定数二百七十五、任期四年)選挙で、イスラム教シーア派政党連合の「統一イラク同盟」が百二十八議席の第一党となった。次いでクルド人会派「クルド同盟」は五十三議席。スンニ派の「イラク合意戦線」は四十四議席。アラウィ暫定政府元首相率いる世俗派「イラク国民リスト」は二十五議席。反米色が強い別のスンニ派政党連合「国民対話イラク戦線」は十一議席。与党の統一イラク同盟とクルド同盟が計百八十一議席を占めた。クルド人のタラバーニが大統領になった。五カ月かけ米英が何とか作り上げたのがマリキ傀儡政権であった。〇六年五月イラク正式政府が、マリキ首相ほかシーア派十五人、クルド人七人、スンニ派六人、世俗派五人などで構成されるシーア派主導の政府で発足した。このマリキ首相の政権には、民兵組織「マハディ軍団」を擁するムクタダ・サドル派の閣僚六人(議員三十人)がいる。ブッシュがいう「イランに支援されるシーア派過激派」とはこのサドル派マハディ軍団である。イランと関係の深いシーア派のサドル派やスンニ派にたいして、ブッシュと意見の相違がありつつも駐留米軍の存在なしに存続できないのがマリキのイラク正式政府なのである。

 イラク政府マリキは、昨年末フセイン元大統領を処刑した。フセインの報復的な処刑をみせつけ、フセインの「ジハード」の呼びかけを摘み取り、スンニ派や旧バース党員(五万人)旧イラク軍兵士(三十万人)などをイラク新体制のもとに隷属させようとした。

 石油埋蔵量世界三位のイラクにおいて石油利権や国家統合(〇五年新憲法で連邦制導入を制定)をめぐって、シーア派・スンニ派・クルド人の間に対立がある。イラク政府は二月二十六日、新しい石油法案を閣議決定した。国民議会に提出し五月末の施行をめざす法案は石油収入を中央政府が管理・分配すると同時に、外国企業との開発交渉などを地方政府に認めるというものである。イラク北部クルド人の住むキルクークとシーア派の多くが住むイラク東部に石油資源があり、スンニ派が多く住むイラク中部・西部にはなく、宗派・民族間の深刻な対立を生んできた。だがマリキ首相は「新石油法は国造りの重要な土台。イラク社会の統合に役立つ」、草案起草委員会の委員長を務めたクルド人のサレハ副首相は「(旧フセイン政権時代の)過度の中央政府による統制を改めた」と強弁したが、この法案が一部のシーア派とクルド人に石油利権を分配することになることは明らかだ。さらにエクソン、シェルといった米英の国際的な石油資本が向こう三十年にわたってイラク石油の75%を略奪することを合法化する代物なのである。この「生産分担合意」と呼ぶ経済モデルは全くのペテンである。

 シーア派・スンニ派・クルド人の歴史的対立や抗争を利用し、多数の死傷者を生み出し内戦と呼ぶべき状況のもとにイラク社会を破壊混乱させ、そして石油資源を略奪しようとしているのが米英軍の占領支配の実態だ。

 

●3章 米国内部から批判に晒されるブシュ政権

 昨年十一月の米中間選挙における共和党の敗北は米国内部にイラク戦争の見直しと批判の声が強まりつつあることを鮮明に示した。イラクの大量破壊兵器の存在やフセインとアルカイダとの関係など全くのウソであり、戦争遂行の正当性が全くないことが全世界で暴露された。米兵の死者やイラク戦費が膨大になり、ブッシュを支持した共和党内部、軍内部からも公然とした批判が出はじめ、ブッシュの政権基盤を揺るがしている。米軍増派反対決議が一月二十五日米連邦議会上院外交委員会に続き、二月十六日下院本会議でも採択された。最新の世論調査でもブッシュ政権の支持率は三割をきった。

 〇八年度の当初予算である予算教書でブッシュは、イラク戦費を中心とした「テロとの戦い」関連で二千四百億ドル(約二十九兆円)の追加要請を行い、イラク関連の歳出総額が七千億ドル(約八十四兆円)となりベトナム戦争の戦費五千七百億ドルをこえることが明らかになった。巨額の財政赤字を抱える米国で国防費以外民生関連などの当初予算が抑制されている中で、〇八年度予算は〇七年イラク関連予算約四千四百億ドルと、実に四割も増大させている。〇一年以降「テロ関連費」は、九年間で総額七千九百七十八億ドル(約九十六兆円)に膨らんでいる。アメリカ労働者人民の生活と命に関連する社会保障費、医療費や教育費など抑制削減し財政赤字が拡大しようとも(累積債務は〇八年度が前年度比6%増の約九兆六千億ドル―約千百五十兆円になる)、ブッシュはイラク戦費を増大させているのだ。

 しかし一昨年ハリケーンの襲来で労働者人民の命や安全を軽視してきたブッシュの政策が糾弾されたように、米帝は必ずやアメリカ労働者人民のたたかいに直面するだろう。

 今冬の原油高騰は米英など帝国主義の危機をつよめた。特にガソリン消費量が過去十年間に17%増えた車社会の米国では、石油輸出国機構(OPEC)からの原油依存度が52%を超えた。サウジアラビアなど中東諸国特にイラク原油の獲得は至上命令だ。イラク原油を安定的に確保するためには、何が何でもイラク・マリキを通して新石油法を成立させ、イラク軍事占領に勝利しなくてはならない、というのがブッシュの意思だ。だが労働組合が非合法化されている中で、バスラの石油労働者総同盟など労働組合がイラク新石油法や民営化反対にたちあがっている。不屈にたたかうイラク労働者人民の存在こそ勝利の確信だ。

 

●4章 イランへの戦争発動を許すな

 ブッシュはイランへの戦争を発動する準備を加速させている。

 ブッシュはこれまでイランをイラク・シリアと並んで「ならず者国家」「テロ支援国家」「悪の枢軸国」などと名指しし、特に核開発をめぐるウラン濃縮阻止へ緊張を高めている。昨年末米軍はイラクでイラン当局者を拘束し、イラン政府高官がイラン製高性能爆弾「爆発成形弾」などをイラク・シーア派民兵組織に供与し、高性能爆弾により〇四年六月から二月までイラク駐留米兵ら百七十人が殺害され、六百二十人が負傷したと発表して、イランへの非難を強めている。イランのイラクへの影響力が増大しているとして、イランへの戦争計画を策定し、核施設だけでなく、軍事基地なども攻撃対象としていることが明らかにされた。すでにペルシャ湾には米空母二隻が配備されており、新たな戦争の拡大を許してはならない。

 

●5章 航空自衛隊を即時撤兵させよう

 政府は三月五日、七月末で期限切れとなるイラク復興支援特別措置法を二年延長する方針を固めた。「イラク復興はあと一年では済まず、延長幅は二年間が妥当」(政府筋)として、三月下旬にも同法改正案を提出し、今国会での成立をめざそうとしている。

 安倍首相は、一月ブッシュのイラク新戦略の発表にいち早く「イラクの安定化と復興に向けた米国の努力が効果的に進められ、良い成果を上げることを強く期待する」と支持を表明し、二月にはイラク政府に総額一億四百五十億万ドルの緊急無償資金協力(@病院整備など基礎的生活分野が七千三百六十万ドルA警察支援など治安関連が二千三百万ドルB医療や電力、給水分野などの人材育成関連が七百九十万ドル)を実施することを決めた。

 現在航空自衛隊(C130輸送機三機と隊員二百人)はクウェートを拠点にバグダッドや北部アルビルに米軍や多国籍軍の物資を運んでいる。安倍政権は、ブッシュの大量殺戮にすすんで物的、財政的支援をし加担している。イラク特措法延長を許すことは断じてできない。自衛隊の即時撤退をもとめたたかおう。

 

●6章 3・20イラク開戦4カ年、米軍の撤退を 

 米軍による劣化ウラン弾やクラスター爆弾などによって、いまなお多くのイラク民衆が被害をうけている。米軍の軍事占領と米軍増強による掃討作戦によって、イラク民衆殺戮がさらに拡大している。

 米国では一月二十七日首都ワシントンで米軍増派に反対し、米軍の即時撤退を求める一万人をこえる反戦集会が行なわれた。ブッシュの支持率が急速に低下し、米国内部からブッシュへの批判が高まっている。さらに3・20全世界の労働者人民のイラク戦争反対―即時撤兵を求める圧倒的な声を上げていこう。〇九年退任まえにブッシュを全世界の労働者人民のたたかいでひきずり倒そう。

 

 

 

 

 

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