共産主義者同盟(統一委員会)

 

■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

ENGLISH

■リンク

 

□ホームに戻る

 ■改正パート労働法の狙いとは

 改正パート労働法を踏みしだき、階級的労働運動創建へ邁進しよう



 ワーキングプアという言葉が社会的に定着し、反貧困運動などが引き起こされる中、「格差是正の再チャレンジ策」というインチキ政策が登場した。今春、通常国会で、安倍―厚労省がその一つとして行ったのが、パート労働法改正である。きっと安倍政権も、「せめてポーズくらい取らないと、このままではヤバイ」と思ったのだろう。しかし労働者を舐めてはいけない。七月の参議院選挙では自民党は大敗し、「格差拡大法」としか言いようのない改正パート労働法には、たたかいをさらに進めようとする反撃戦が始まっている。階級的労働運動を創り出し、寄ってたかって日帝―自公政権へのダメ出しを進めていくことが必要である。


●1章 改正パート労働法の狙いは、パート労働者の基幹労働力化

 そもそも一九九三年に制定された「パート労働法」は、国際的・国内的圧力におされ、「雇用身分」としてのパート労働の見直しを、嫌々ながら行うものであった。

 われわれ労働者にとって、パート労働者とは、単に労働時間が短いだけの仲間であり、正社員と同等の権利を持つものである。しかしながら経営者にとっては、差別があったほうが、労働者を分断し買いたたきやすいのだ。ヨーロッパ諸国では、このような買いたたきを防ぐため、均等待遇が勝ち取られ、ILO(国際労働機構)の条約へと押し上げられている。この国際的動向に押され、パート労働法が作られたのだが、日本政府―資本家たちが簡単に受け入れるはずもなく、日本においては差別を温存した「均衡処遇」として法制化された。

 罰則もないこの法律は、何の効力もなく、十年後の見直し時に、均等待遇への抜本的な法改正を求める声を押さえこみ、譲歩策として「パート労働指針」を制定した。教育・訓練の機会平等や、正社員への登用制度、苦情処理システムの設置などを努力義務としたガイドラインを作成したのである。今回の改正パート労働法は、これをさらに後退させ、三つの条件をクリアしたパート労働者だけを差別禁止の対象にする。逆に言えば、それ以外のパート労働者は、差別してもいい、という法改正として行われた。

 三つの条件とは、@雇用の定めのないパート労働者(パート労働者の85%は有期雇用)、A正社員労働者と同等の職務に従事するもの、B正社員労働者と同じ運用(配置・転勤など)にあるもの、というものである。厚生労働省は、パート労働者全体の3〜4%がこれに該当する、と主張。しかし、それがモデルとするイオンにも、このようなパート労働者は見あたらず、調査も行われたが、`実態のない「幽霊」探しaと悪評紛々のままに終わった。

 また、改正パート法は、それまでのパート労働者の賃金を一律○○円とするのを改め、職務に応じて賃金を決定するように求めている。これを受けて、ロフトのパート雇用の無期契約化や、シダックスの新システム導入(職務内容と勤務時間による賃金決定システム)など、いくつかの企業で「均等・均衡処遇」という格差是正策が進められているかにみえる。

 しかしその内容たるや、パート労働者の基幹労働力化を推し進めるために、パート身分という雇用形態差別を解消するようにみせかけながら、パートを巻き込み、正社員を黙らせ、`格差・選別aの労働者間競争を職場内で激化させようとするものに他ならない。

 これは、先述したヨーロッパ諸国やILOで推し進められている「均等待遇」とは、まったく逆行するものである。パート差別(意識)を残したまま、正社員を含むすべての労働者に飢餓賃金からの這い上がり競争を強いるもの以外ではない。これを貫くのは企業競争力の強化であり、労働時間や働き方に対する労働者の権利という要素は、まったく拭いされられる以外ないのである。企業を儲けさせられる(と企業が判断した)労働者以外、生活すらできない最低賃金(一般的パート時給)まで、正社員含めて振り落とされる賃金制度が整えられつつあるのである。


●2章 いま注目されるパート労働運動

 このような中で、パート労働運動にある種の注目が集まっている。なんと連合が`これからは正社員ではなくパート労働者に重点を置いた活動を!aと、打ち上げているそうである。非正規雇用の中でも直接雇用であり、今まであまりにも賃金・待遇が低かったパート労働者は、組織しやすいだろうという、狙いが透けて見えるようである。UIゼンセン同盟は、イオンなど流通業界のパートを、経営と結んでまるごと組織しているが、パートを基幹労働力として活用していくための`体のいい労務管理a以外のなにものでもない。パート労働者は、放置されているか、御用組合に支配されている、という状況にあるのだ。

 今、ゼンセン同盟などによって進められている`パートの程よい管理aを打ち破っていくためには、階級的労働運動派は、労働者階級の自己解放闘争、という観点から、これを捉え、階級的労働運動の強固な一翼としてパート労働運動を組織することが必要である。
 六〇〜七〇年代を通した大工場機械生産、七〇〜八〇年代のオフィス・オートメーション(OA)化の進展の中、パート労働は拡大し、社会的定着を果たした。それまで熟練労働者によってしか生産、あるいは管理できなかったものが、短時間の労働者であっても担える、という生産力の発展がもたらしたものである。これは妊娠・出産によって職場を追われた女性労働者や、様々な事情(勉強・介護など)で短時間しか働けない労働者たちに、働く機会を与えるものとして作用した。しかし、これは労働者階級に不利益をもたらす。なぜなら生産力の発展は、それを生み出した労働者に享受されるのではなく、資本が労働者を一層しぼり上げ利益を拡大するために使われていくからである。
 パート労働の導入は、「主婦の小遣い稼ぎ」「誰でも出来る補助労働」という触れ込みとともに行われ、単に労働時間が短いだけの労働者の一員としてではなく、「雇用身分」とでもいうべき差別待遇と低賃金、不安定雇用労働として定着させられた。政府―資本家は、きわめて意識的な女性労働政策として、扶養控除や所得控除の壁(百三万―百三十万)を設け、パート労働者の側からも労働者としての意識を押さえ込む政策をとったのである。
 日本労働運動は、この策にマンマとはまったといえる。先述したように、ヨーロッパ諸国では、短時間労働者の均等待遇や`同一価値労働同一賃金a原則、パートからフル・フルからパートへの転換権などを勝ち取り、完全ではないまでも、雇用形態による分断を許さず、労働者全体の安売り競争に一定の歯止めをかけるたたかいが行われた。今日の日本労働運動の困難は、その企業主義・本工主義ゆえに、女性や若年労働者への差別分断に屈し、非正規雇用化の動きに歯止めをかけることに大幅に立ち遅れたことにある。

●3章 階級的労働運動創建におけるパート労働運動の重要性

 パート労働運動は、第一に、雇用形態差別とたたかう最大の戦場となることである。
 現在、雇用労働者の三人に一人が正社員外の雇用と言われ、うちパート労働者は千二百万人。直接雇用であり、契約期間は細切れであっても長期に雇われ、「企業競争力の要はパートの活用」と言われるように正社員に次ぐ基幹労働力とされている。しかし、他の非正規雇用と同様、無権利と差別待遇に置かれ、賃金は最低賃金すれすれから始まると言う飢餓賃金である。流通や製造の現場に、パート労働者は「カタマリ」として存在している。雇用形態に関わりない労働者としての同等の権利、同じ価値の労働への同じ賃金をたたかい取る、もっとも大きな戦場としてパート労働運動は存在しているということである。
 第二に、女性労働者の自己解放闘争と結びついていることである。
 パート労働者の90%以上が女性労働者である。家庭責任を負い、長時間労働や男性優位の正社員職場から排除され、パート雇用を選択している。経済的自立から程遠い賃金と、差別待遇の中で、労働者としての誇りや社会意識はすりつぶされている。しかし労働者・被差別大衆の生存をかけた階級闘争は、労働者の生産と再生産(家事・育児)を一身に担う女性大衆の大規模な立ち上がりがなければ、大きな力を獲得することもできないし、ましてやこの資本主義社会の社会主義的改造に向かうこともできない。女性労働者の自己解放と階級意識の形成が、ダイレクトに労働運動に要求される戦場の一つなのである。
 第三に、短時間労働問題を通し、労働者が自分の働き方を自分で決める、という自己決定権をこじ開け、成長させるたたかいをはらんでいることである。
 短時間労働、という働き方を、生存権を脅かされることなく、労働者の生活サイクルの中で、自ら選べる選択肢のひとつとしていくことが必要である。介護や自身の病気、勉強や社会活動、育児や家庭活動など、人間的に生活・活動できる働き方を選択する権利が、労働者にはある。週四十時間働くことが出来ない短時間労働者と、正社員が、同じ待遇・権利をもち、賃金も時間比で同じ、相互に不利益なく転換できれば、その実現に一歩、近づくことができる(当然、社会保障制度のセーフティネットも必要)。
 しかし、現状の日本社会―資本主義社会では、「資本が利益を得る間しか労働者は生きられない(雇われない)」(マルクス)という原理が、労働者の働き方をがんじがらめにしている。「滅私奉公」を強いられる正社員労働者と「使い捨て」の非正規雇用労働者への差別分断が、労働者間の競争を激化させ、労働者の賃金・地位低下を容易にし、労働者家庭の崩壊、子捨て・親捨て、過労死・過労うつなど、社会は荒廃のきわみに達している。現在の社会を創りだし動かしている労働者が、まさに奴隷的状態に置かれているのである。
 労働者階級の力強い自己解放闘争を前進させていくためには、自らの働き方・暮らし方などの自己決定権を奪い返し、それをもって社会や歴史を動かす力を育てていくことが必要である。利益に飢えた資本、独占大企業の活動は、激しい国際的資本間抗争で競り合いながら、侵略戦争と労働者・民衆の生存権破壊への道をまっしぐらに進んでいる。これを止めることができるのは、「国連」などでもなければ、「資本主義を規制するルール」でもない。帝国主義世界を打倒し、労働者・被差別民衆を主人公とする世界・社会主義世界を勝ち取ることだけが、侵略戦争と労働者・民衆の生存権破壊をとどめる道なのである。
 これは労働者階級・被差別民衆の自己解放のたたかいにシッカリと立った階級闘争の前進によって以外、もたらされることはない。インチキ改正パート法を踏みしだき、「職場の、社会の、世界の主人公は、すべての労働者である」という声でしっかりと団結できるたたかい、階級的労働運動創建のたたかいを全力で推し進めていこう。

 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.