共産主義者同盟(統一委員会)

 

■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

ENGLISH

■リンク

 

□ホームに戻る

  ■オランダ政府によるシソン氏の不当逮捕、

                   政治弾圧を弾劾する


 八月二十八日、オランダ警察はオランダに亡命してフィリピン人民解放運動の象徴的存在として活動していたホセ・マリア・シソン氏宅を急襲し、同氏を不当逮捕した。同時にシソン氏宅はじめ、オランダにある民族民主戦線(NDF)の事務所、オランダ在住の数名のフィリピンNDF活動家宅を一斉に不当捜索し、文書、パソコン、フロッピー、CDなどを押収した。あきらかにフィリピン人民の解放運動にたいする政治的弾圧であり、世界の人民の反帝国主義のたたかいにたいする攻撃であり、絶対に粉砕しなければならない。

 かつてフィリピン共産党の創設者であったシソン氏は、マルコス戒厳令のもとで九年間投獄され、一九八六年のアキノ政権の誕生とともに釈放された。しかし、外国への講演旅行の最中に、人民運動の高揚に恐怖した国軍によって再び反乱罪をでっち上げられて旅券を取り消され、オランダで政治亡命認定を求めながら活動していた。現在は、フィリピン政府との和平交渉の当事者であるNDFの主任政治顧問であり、また国際的には、国際民衆闘争連合(ILPS)の議長として活躍している。これに対して、このかんオランダ政府は米国、フィリピン政府の強い要請のもとに一貫してシソン氏の政治亡命を否認してきた。また、フィリピン政府はその後も二度にわたって国家反乱罪さらには殺人罪などをねつ造し、でっち上げ容疑による告訴をしてきたが、それらはいずれも裁判で却下されてきている。

 二〇〇一年の9・11事件後はあらたに「反テロ・キャンペーン」の一環としてシソン氏らに「テロリスト」規定を行うという攻撃をかけてきている。二〇〇二年、米国は同氏を国際テロリストとして規定した。ただちにこれにオランダ政府が追随し、EUもまた、シソン氏をテロリストのリストに載せた。これはシソン氏を犯罪者扱いしてその活動を中傷するのみならず、具体的に銀行口座の凍結や社会福祉給付の停止をもたらすことによって兵糧攻めを企図したものであった。

 シソン氏らは粘り強く裁判闘争、行政闘争でもって反撃し敵の意図を砕いてきている。七月十一日、欧州裁判所は一審でシソン氏へのテロリスト規定を行ったEUの決定を却下した。また、アロヨ政権は世界をあきれさせた昨年二月の「国家非常事態宣言」後に、シソン氏をはじめベルトラン議員や反アロヨ派の軍人などに対して、一九六八年から二〇〇六年までにいたるありとあらゆる罪状をデッチあげて最新の起訴を行った。これも七月二日、最高裁が、証拠不充分で政治的意図をもっての告訴である、として却下した。

 今回のオランダ政府によるシソン氏逮捕は、これを知りながらあえて無視して行われた。逮捕理由は「二〇〇三年から〇四年にかけて元共産党指導部二名の殺害を命令した」というのだが、オランダ政府にとって逮捕理由は何であるのか、かつてフィリピンでの裁判がこれにどういう判決を下したのか、はどうでもよく、今シソン氏逮捕に踏み切り運動に打撃を与えることこそ重要だったのである。すなわち今回の逮捕劇は、みずからの超法規的政治的殺人が暴露されて国際的に孤立しているアロヨ政権と結託し、対テロ世界戦争と対テロキャンペーンが破綻しつつある米帝国主義の意をうけたものである。そして、その背景にはアロヨ政権によるオランダ資本の石油試掘権の承認というオランダの帝国主義権益もからんでいるのである。

 シソン氏は独房に収監され、家族との接見も禁止、必要な治療薬の差し入れすら禁止という条件のもとにおかれている。オランダからフィリピン、米国など他国へ移送され、生命の危険にさらされる可能性すらある。九月一日、オランダの裁判所は勾留理由開示裁判を行い、不当にもさらに十四日間の勾留延長をおこなった。オランダでは法制度上、起訴までにさらに九〇日間の勾留が可能であるという。

 すでに、フィリピンはじめ、世界各国で一斉にオランダ政府・在外大使館・領事館―アロヨ政権―米国に対する抗議行動がはじまった。世界中において「シソン氏への不当なでっち上げ逮捕弾劾、即時釈放せよ」の声でもってオランダ政府を包囲し、国際キャンペーンの強化のなかでシソン氏を奪還しなければならない。


※(追記)
 なお九月十三日、オランダのハーグ地裁は、シソン氏の容疑は証拠不十分として釈放を命じる決定を下した。これによりシソン氏は同日釈放された。




■(資料)/欧州の人権団体DEFENDの声明


 八月二十七日、フィリピンの政治亡命者ホセ・マリア・シソン教授がオランダ警察にデッチあげの理由で不当逮捕され、NDF国際情報事務所を含む数か所のフィリピン人の住居を捜索した。われわれDEFENDはこれを強く弾劾する。すでにフィリピン最高裁はシソン氏等にたいする政府の政治的動機にもとづいた数件の起訴を却下したところである。オランダ警察によるシソン氏への告訴も同様の政治的動機によるもので、ただちに却下されねばならない。

 さらに、七月十一日、欧州裁判所はルクセンブルグにある一審において、「欧州議会が正当な理由をもってシソン氏をテロリストのリストに入れたとは認められない」という判断を下し、欧州議会によるシソン氏へのテロリスト規定を取り消したのである。

 シソン教授は二〇〇一年に政府を相手に裁判を起こしており、ユトレヒト警察から呼び出しをうけてその件での呼び出しであろうと当日警察にむかった。付き添った弁護士の話では一人で部屋に呼ばれ、弁護士の知らないままにハーグの刑務所に連行され、そこに収監された。

 われわれはこのゲシュタポまがいの逮捕と家宅捜索を強く弾劾する。逮捕は謀略的におこなわれ、家宅捜査についても、捜査令状を示さず家人がいるにもかかわらず玄関のドアを破壊したところもあった。また未成年者だけしかいなかった家もあった。

 シソン氏の妻ジュリーさんの話では、九時三十分頃、私服の警官がやってきてノックもせずにドアを破壊して入ってきた。そして彼女を隅っこに追いやって、夕方近くまで捜索し、コンピューター、書類、CDなどを持ち去った。同じころ、NDF国際情報事務所やユトレヒトに住むフィリピン人の家が家宅捜索され、警察はコンピューター、ノートパソコン、書類、フロッピー、CD、DVDなどを奪い去った。

 これらの不当逮捕、不当捜査はみな政治的動機にもとづいたものである。EUの公使ハビア・ソラーナは、シソン教授やCPP、NPAのテロリスト規定からの削除は彼らが降伏すればすぐできる、と語っている。フィリピン、オランダ、米国の政府は法的な装いをこらして、NDFがフィリピン政府に降服するよう政治的圧力をかけているのである。

 われわれは、勾留中に万一シソン教授がたとえばオランダから外国へ移送されることを含めて、被害をこうむるようなことが起きるならば、それはすべてオランダ政府が責任を負うべきと考える。

 そしてフィリピン、カナダ、米国、オーストラリア、香港、インドネシア、ヨーロッパのいくつかの国、そのほか世界中で抗議行動が起こることを予告しておく。

シソン教授をただちに釈放せよ!

デッチ上げ告訴を打ち砕こう!

ヨーロッパ在住の進歩的なフィリピン人への政治的迫害をやめさせよう!

■                           DEFEND国際委員会
■                           オランダ、ユトレヒト

 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.