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  ■障害者政策の行き詰まりの中で激化する抹殺攻撃を打破せよ

                                                                  河原 涼




 すべてのみなさん。小泉政権がおし進めてきた「三位一体」構造改革路線は、当初の予想をはるかに超える規模と早さで、日本における社会保障制度全般の壊滅的崩壊と、未曾有の貧困、格差をもたらし、今や抜き差しならない危機的状況と、戦争前夜情勢を労働者人民に強制している。

 われわれは、相次ぐ労働者人民にたいする財政破綻の押しつけと、そしてさらなる殺人的負担を洪水のごとく強制する日帝の戦時政策を断じて許すことはできない。

 断固こうした攻撃を打ち破り、日帝ののど元を食い破る広範なたたかいを組織するために立ち上がろうではないか。



 ●第一章 障害者自立支援法を粉砕せよ


 全国の精神障害者、障害者、健全者の皆さん! 自立支援法は施行後はやくもその破綻と矛盾が明らかになり、障害者総体にその差別性を暴露することとなった。相次ぐ全国からの糾弾の嵐の中で、付け焼き刃的に支援法の制度的緩和策として「自己負担額の軽減」というかたちを打ち出さざるを得なくなったが、福祉サービスの自己負担額が減額されたところで、本質的な日帝の障害者政策は何ら変わらない。それどころか日帝は、障害者総体を抹殺する体制をいよいようち固めている。日帝―厚労省は、「平成十九年版 障害者白書」にその反動的な姿勢を隠そうとしない。


 ▼一節 障害者抹殺へと続く保健、医療施策


 厚労省は、「白書」の中で「障害の原因となる疾病等の予防・治療」と称して、新生児に対する聴覚検査や、「一歳六カ月児及び三歳児健康診査」などを行う一方、「妊産婦や新生児・未熟児等に対して、障害を予防し、健康の保持増進を図るために、家庭訪問等の個別指導による保健指導」などをおこなうとしている。が、「周産期医療」と称して定期的に検診する実際の医療現場では、胎児(あるいは新生児)を障害児か否か判別するだけでなく、妊婦の場合、親が望む望まないにかかわらずその結果を知らせ、胎児が障害児ならば、あるいはその可能性がある場合には積極的に中絶をすすめるという政策が現実的に横行している。新生児集中治療管理室(NICU)、母体・胎児集中治療管理室(MFICU)の整備などもその一環である。


 ▼二節 サービスが成立しない地域生活支援事業


 自立支援法とは、厚労省的に言い換えれば、「障害のある人がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、……必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行う」ということになる。だが、「自立生活支援事業」と言われる実際の相談支援、移動支援、福祉ホームなどのサービスそのものが、自治体の財政難でままならなくなっているばかりか、「自立生活支援事業」に関わる経費については「義務的経費」ではなく「裁量的経費」というあつかいのなかで、自治体の恣意的なあつかいが横行しているのが実情である。制度の矛盾の中でサービスそのものが成立しない現実が存在する。


 ▼三節 自立支援方の矛盾と差別的実態


 二〇〇八年度当初予算の政府案が確定した(以下、データは「全国介護制度情報」より抜粋)障害保健福祉部の所管予算は九千七百億円で、そのうち障害福祉サービス予算(地域生活支援事業や自立支援医療など以外の予算)は四千九百四十五億円である。

 二〇〇六年十二月には、国費千二百億円の特別対策を決め、障害福祉サービスの月の自己負担の上限を当初の四分の一にする事を決定し実施しているが(二〇〇八年度まで)、さらに二〇〇八年度には三百十億円上積みして、自己負担をさらに半分(当初の八分の一)にする予定だという(非課税世帯のみ)。一級年金受給の非課税世帯で月の上限六千百五十円が三千円に、収入が二級年金だけの障害者などは三千七百五十円が千五百円に下がることになる(二〇〇八年七月より)。

 こうした、制度的緩和策は、ひとえに、支援法そのものの矛盾をつかれたが故の付け焼き刃でしかない。支援法下、「介護給付」の中で「居宅介護」「重度訪問介護」などは、重度障害者に対する二十四時間介護保障として「義務的経費」であるにもかかわらず、多くの自治体は「実際に寝返りの介護を行って体に触れた時間分のみ給付する」というとんでもない「曲解」をし、わずかな時間しか支給しないとか、一律のヘルパー制度の上限を設けるなどの不正が横行している。現実の支援法下「三位一体」改革の中で財政難が構造化する市町村ではそうした不正をしなければ、そもそも成立しない制度である。

 障害者自立支援法は、制度そのものの矛盾だけでなく、運用における差別的実態を余すところなくあらわにしている。これを打開するのは、障害者自身による命をかけた介護保障の実現等、自立解放にむけたたたかいであり、その永続的推進こそ、こうした差別的実態をただす唯一のたたかいであることがますますはっきりとなっているのだ。



 ●第二章 医療観察法を粉砕せよ


 二〇〇八年三月五日に開催された「障害保健福祉関係主管課長会議」の「資料」によれば、心神喪失者等医療観察法指定入院医療機関の整備等について「全国で七百二十床(国関係三百五十床、都道府県関係三百七十床)程度の整備が必要である」としつつも実際には、「国立病院等国関係では十二カ所、都道府県関係では二カ所」のみのありさまである。「病床数は合計で三百五十四床(国関係三百十六床、都道府県関係三十八床)に留まっている。こうした状況から、必要な病床の確保が非常に厳しい状況」だと悲鳴をあげているのが実情である。現在整備中が「国関係では二カ所」「都道府県関係では現在三カ所が建設中あるいは整備予定」としている(東京の松沢病院など)。われわれはさらに保安病棟建設反対の声を全国に広めなければならない。


 ▼1節 保安処分―社会奉仕命令策動を粉砕せよ


 二〇〇六年七月二十六日、杉浦元法相は法制審議会に対し「犯罪者の再犯防止および社会復帰を促進するという観点から社会奉仕を義務づける制度の導入の当否」を諮問した(法制審諮問第七七号)。現在法制審議会においてこの論議が進行している。

 杉浦はこれより前の二〇〇六年七月十一日、「性犯罪者、麻薬覚せい剤関係」をその対象者としつつ、「社会防衛のため」「刑執行後の累犯に対する何らかの保安処分が検討できないか」とあからさまな保安処分導入を公言した。そして「自立更生保護センター」建設などを公言し、保安処分の制度的実体化を押し進めている。断固粉砕しなければならない。



 ●第三章 日帝の福祉切り捨て社会保障制度の崩壊


 日帝は、介護保険制度、障害者福祉政策、医療保険制度、そして雇用政策において、まんべんなく財政破綻を労働者人民の側に押し付ける政策を是とし、その制度改革を矢継ぎ早に押し進めてきた。


 ▼一節 介護保険制度


 一九九七年に制定され、二〇〇〇年四月一日から施行された介護保険法は、在宅介護サービスの供給不足や事業者の不正請求等の制度そのものの矛盾を当初より孕みつつ五年後の見直しを経て二〇〇四年十二月あらたに運用を再開した。そのかん、「保険給付費の増加」の責任を高齢者に押し付ける政策が一貫して進められ、第一号被保険者(国民健康保険被保険者)、第二号被保険者(政府管掌保険被保険者とその扶養家族)の保険料を引き上げた(二〇〇三年七月)。さらには介護認定の区分を改悪した。それまで要介護一と要支援となっていた区分にあらたに要支援一、二という区分に改悪したのだ。これはいままで要介護一という認定で介護サービスを受けることができたのが、要支援二という認定に振り分けられ介護予防サービスへ変更させられるのだ。このようにして給付額を絞り込んだ。そのうえ、「三位一体」政策のなかで、地方自治体に給付する補助金、国庫負担額を減額し、それにみあう財源の地方への委譲を行わないまま、地方財政の破綻を誘発し、被保険者を見放してきた。

 そうしたありかたが功を奏する訳はなく、目に見えて介護保険法制度の崩壊は進行し、ついに二〇〇三年三月の閣議決定において、「健康保険法等の一部を改正する……基本方針」を打ち出し、「後期高齢者」といわれる七十五歳以上の高齢者の医療制度を独立させ、「後期高齢者医療保健制度」を決定し、二〇〇八年四月よりその施行を準備している。


 ▼二節 医療制度の完全崩壊


 「後期高齢者医療制度」では保険者は、都道府県単位で全市町村が合同で組織する広域連合と呼ばれる新しい運営主体を創設するが、保険料徴収は市町村に担わせるという。責任の所在がはっきりしない広域連合を登場させつつ、制度の矛盾を以前市町村に負わせる。

 保険料は年金からの天引きを原則としつつ、年金の額が低くて天引きできない高齢者(いわゆる被用者保険の被扶養者)からも、実費で徴収するという凄まじい制度である。東京都の場合を例にとると、保険料は「年額十万円を超える。年金が月額一万五千円未満なら天引きにならないので、自分でおさめなければならない」(『世界』二〇〇八年二月号「高齢者医療はどうあるべきか」参照)という。貧困に追い打ちをかけ、医療費も保険料も払えない構造を制度化する。

 あるいは、政府管掌健保においても、二〇〇八年十月から運営主体を国から「全国健康保険協会」に変更することを決定している。これは、直接政府が給付することを回避し、「協会」に運営させることを目的としている。

 ここで問題となるのは、政管健保には政府が弁済責任を負うべき約一・五兆円の借入金がすでにあり、借金の元本は全く弁済されていないということである。

 借金の踏み倒しを公然とおこなう格好の隠れ蓑として今回の制度が登場することを確認しなければならない。

 さらには、現在の政府管掌保険の全国一律保険料率ではなくなり、「協会」が行う健康保険事業では都道府県単位の保険料率が適用されるということである。これは、地域ごとの財政体力の差がそのまま保険料率の差となり、格差拡大をさらに増大させる。

 さらに、四十歳以上、七十四歳未満のすべての人に「特定健康診断」(生活習慣病の健康診断)を義務づけ、各自治体に検診率六十五パーセント以上の実施を義務づける一方、数値目標を達成できなかった自治体には、「医療費を増やした」として、分担金最大十パーセント増という厳しいペナルティを科し、自治体間での競争をあおろうとしている。

 そして、現在、医師の絶対数が不足する中、病院淘汰が全国規模で凄まじく進んでいるが、そのなかで医療費削減の目玉として、「社会的入院の解消」キャンペーンのもと、療養病床を現在の三十八万床から十五万床へと約六割減らし、介護療養型医療施設も二〇一一年度末までに廃止することを決めている(『世界』二月号より)。体の調子が悪くても、病気になっても、もう入院するところはない。


 ▼三節 最低生活保障の消滅


 国保の保険料は高額である。それは生活保護基準以下の収入しかない人たちからも徴収される。

 そもそも、現在の日帝-厚労省がおしすすめる社会保障制度は、国庫負担額を際限なく出し渋り、公共サービスの量、質ともに極限まで低下させながら(障害者福祉、医療、介護など)、労働者人民に対しては極限を超えてもなお負担を強制するものである。格差社会の現実のなかで、無所得世帯、低所得世帯が増加している。二〇〇一年度から滞納世帯の国保保険証取り上げが横行している。一年以上の保険料未納世帯に対して「国民皆保険」制度の体面維持のため、体裁上「被保険者資格証明書」というものが発行されるが、医療現場では保険料未納者は医療費十割払いを強制されている。今や三十五万世帯以上(二〇〇六年)が最低限の医療サービスすら受けられない無保険世帯として厳しい生活を強制されている。

 こうした社会保障制度全般が雪崩を打って崩壊していくありさまこそ、日帝の「構造改革」路線そのものである。日帝が労働者人民に社会的矛盾の一切を押し付け、重度障害者をはじめとした障害者総体に対する抹殺攻撃を制度化し、戦時政策として強行するのだ。財政難の矛盾を労働者人民への社会保障制度への負担として押しつけ、「個人の責任」の名の下に格差を強制し、労働者人民の団結を阻害するものとして、ますますあらわになる日帝の「構造改革」路線を自立解放-日帝打倒闘争の永続的推進によって粉砕しなければならない。


 ●結語


 全国の障害者、労働者階級人民のみなさん!

 われわれは、山口の障害者が地域を拠点としながら自立解放のための行政闘争を推進し、反戦、反基地の市民運動や韓国民衆との結合を歴史的に追求してきているたたかいや、首都圏における赤堀差別裁判糾弾闘争、たまり場運動を軸とした障害者の自立解放運動の歴史的推進などを、いまこそ運動路線として確立し、自立解放―日帝打倒闘争の戦略的決起を実現しなければならない。ともにたたかわん!

 

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