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 ■日帝の戦時障害者政策を粉砕し

 障害者解放―日帝打倒をかちとれ    河原 涼





 すべての障害者、精神障害者、健全者の皆さん!

 日帝は、法施行直後よりその矛盾が明らかとなっている医療観察法の制度的確立をねらい、実態的基盤を強化しようと、その矛盾を隠すことなく、なりふり構わぬ自治体への懐柔をおしすすめ、病床数の確保に躍起となっている。そしてその政策を実施するにあたり精神障害者に対する差別抹殺攻撃は、ついに自殺者を出すほどに至っている。

 障害者自立支援法もしかりであり、矛盾の爆発的蔓延は障害者総体の怒りをますます彷彿させ、その怒りは頂点に至っている。

 労働者人民を未曾有の暗黒の格差社会へ引きずり込み、一切の階級的矛盾をプロレタリアートに強制し、戦争動員を確立しようとする日帝を今こそ打倒しなければならない。



 1章 現実とかけ離れた医療観察法の廃止へ


 二〇〇八年六月厚労省発行の「医療観察法の状況と対応」によれば「医療観察法に基づく指定医療機関の確保については、全国で七百二十床程度(国関係四百二十床、都道府県関係三百床)を目標として整備を進めている」とするも、現状では「……国関係では十二カ所の指定入院医療機関が稼働しており、合計で三百三十二床……、都道府県関係は三カ所……合計五十五床……となっている」とし、「医療観察法の病床は、三百八十七床となっており、特に都道府県関係での整備の遅れを背景として必要病床数の整備が進んでいない」と、泣き言を吐露する始末である。

 こうした事態はいまに始まったものではない。すでに二〇〇五年七月施行三カ月後には病床基準を三十床から十五床に削減したり、新築義務付けを撤回して既存病棟を改築するだけでよしとしたり、病床数わずか一でも許可すると言う有様であった。しかしその後もいっこうに保安病棟の整備は進まず、今年二〇〇八年三月には「緊急整備の依頼」として十四病床以下の施設整備を促すほどである。

 二〇一〇年法の見直しに向けて、日帝―厚労省はもはや抜き差しならぬ危機意識を持って医療観察法体制を強化し、保安処分攻撃の実態的強化をおし進めているのであり、われわれは断じてこれを許してはならない。



 2章 保安処分の具体化進める保安病棟建設を阻止せよ


 国立精神・神経センター病院(旧武蔵病院)においては、二年後の完成を目指して病床数三十三の新保安病棟を含む新病院建設が進められている。精神科医師岡田氏によれば、「全国の医療観察法病棟で発生した合併症患者をここにあつめようというものである 」という。完成の暁には非公務員型の独立行政法人に移行するという。

 また、都立松沢病院においては、新保安病棟建設を本年十一月一日に着工するという攻撃がすでにはじまっており、「逃走防止」用のさまざまなセキュリティ施設で病院をかこみ、保安病棟を監獄のようにつくりあげていくという事態が進んでいる。

 われわれは、日帝―厚労省のおし進める医療観察法の整備が遅々として進まない中、何がなんでも保安処分の実態化をおし進めようとすることを断じて許してはならない。

 こうした中、九州の佐賀の肥前精神医療センターにおいて、付添人が外出中に行方不明となり、飛び込み自殺した。

 病院側は「治療、看護などに問題はない」という開き直りを決め込んでいる。それどころか、より監視体制を強化すべく外出患者にGPS機能付きの携帯電話をもたせることなどが決まったという。またその他にも通院処遇の患者が二名自殺している。二年足らずの間に三名の自殺者を出すと言う凄まじい体制が敷かれているのだ。法制審「被収容人員適正化方策に関する部会」は社会奉仕命令の導入、「贖罪意識を持たせる」ための人格改造、あるいはGPS装着などを画策し、新保安処分体制の基盤整備をおし進めようとしている。東京都は、八月になって東京都福祉保健局名で「調査協力のお願い」と題する文書を、障害者手帳を持つ「無作為に選んだ」障害者に送りつけてきた。「無作為」といいつつ文書にはアルファベットと六桁の数字が打ち込まれており、個人を特定した上で実態調査を画策しているのだ。その内容は、性別、住所、職業の有無などを回答させようというもので、実態調査そのものである。断じて許してはならない。



 3章 障害者の生活を奪う自立支援法を粉砕せよ


 日帝は二〇〇八年度三百十億円上積みして、自己負担を当初の八分の一にした(非課税世帯のみ)。具体的には一級年金受給の非課税世帯で月の上限六千百五十円が三千円に、収入が二級年金だけの方などは三千七百五十円が千五百円に下がった。

 こうした制度的緩和策は、ひとえに、支援法そのものの矛盾をつかれたがゆえの付け焼き刃でしかない。

 障害者自立支援法は、いよいよ制度そのものの矛盾だけでなく、構造的な矛盾故に差別的実態を余すところなくあらわにしている。

 『読売新聞』によれば、前首相福田は七月二十四日の中央障害者施策推進協議会で、障害者自立支援法について、「今後、これまでの施行状況を踏まえ、制度全般にわたる見直しを進める」という。こうした発言はこれまでにも多々あったが、生活実態を無視した強引な差別政策が、制度の持つ矛盾を放置したままで理不尽に進行しているのが実情である。

 結城康博著『介護現場からの検証』(岩波新書)によれば、「財源に関しては(五割の)国庫負担の上限が設定されてしまい、……上限を超えてサービス提供をする場合全額自治体の負担となる」という。

 これにより、国庫負担で補えない様々なサービスをする際には、地域格差が必然化されることになる。

 重度障害者にとって死活問題となるこうした地域間の格差そのものを許さず、普遍的な障害者福祉サービスをかちとらねばならない。

 同書ではさらに、障害者の高齢化でのケースを取り上げている。障害者が高齢になった場合、具体的には、六十四歳から六十五歳になるとき、障害者自立支援法による給付サービスは終了し、新たに介護保険制度に移行することになる。その際、障害程度区分の認定を再び受けなければならない。自立支援法での障害区分の判定基準と介護保険制度では、その基準が違うことから、今まで受けてこられたサービスが、六十五歳になったとたん受けられなくなるという事態が横行しているという。

 建前では自立支援法では「あくまで社会参加の程度を尺度に判定がくだされる」のに比して、介護保険制度では介護する側からの判定になり、当事者の具体的なニーズは、機械的な判定基準のきまぐれにより、二次的にしか評価されないという。

 東京のとある作業所で生活する障害者は、施設職員からの日常的なたたき出し攻撃が後を絶たない事を暴露している。

 二〇〇八年度制度的緩和策が付け焼き刃的に施されたとしても、自立支援法の名の下に取り立てられる食費や光熱費さらに福祉サービス料によって、障害者の手元に残る金額はごくわずかとなっていることに変わりはない。それどころか、少しでも不平を言おうものなら、「不満なら直接行政に言え。いやなら出て行け」とあからさまな暴言を吐き続けているのが現実である。

 帰る家がない。アパートに移ろうにも保証人もなく、貯蓄もない中で、住む場所を失うかも知れないという将来に対する障害者の逼迫した危機感は、今や頂点に達している。

 われわれは、自立支援法が、それまでの障害者がかちとってきた既得権を空洞化するだけではなく、障害者が基本的に生活する環境、空間そのものを奪うものであることを明確にしなければならない。そしてあたかも生殺与奪の権を握って障害者に無条件の屈服を強制しようとする支援法の本質的犯罪性を断固弾劾しなければならない。



 4章 社会保障の崩壊、戦争動員と貧困の強制許すな


 七月二十一日『朝日新聞』によれば「全国各市と東京二十三区の生活保護窓口へ相談に訪れた人のうち、生活保護の申請をした割合(申請率)は〇六年度、45%程度にとどまっていた。バブル崩壊以降、生活保護を受ける人は増え続ける一方、国は社会保障費の抑制策を進めており、窓口で申請をさせない違法な『水際作戦』の広がりをうかがわせる」とある。湯浅誠著『反貧困』(岩波新書)によれば、福岡県北九州市では、二〇〇六年六月八日に生活保護を廃止された六八歳の男性が小倉北区福祉事務所で割腹自殺を試み、同年七月二十四日には秋田で申請を二度却下された三十七歳の男性が練炭自殺し、十一月十五日には函館で四十九歳の男性が首つり自殺をした。二〇〇七年には福岡県八女市で六十八歳の男性が焼身自殺している。いずれも福祉事務所で「仕事をさがせ」「病院に行って診断書をもらってこい」などと追い返され、行き場を失ったあげくの結果である。

 二〇〇六年生活保護世帯は百七万世帯百五十一万人に達するという。

 「実際に生活保護基準以下で生活する人のうち、どれだけの人たちが生活保護を受けているかを示す指標に『捕捉率』がある。(可処分所得が生活保護基準以下の世帯の割合)政府は捕捉率調査を拒否しているが、学者の調査では、日本の捕捉率はおおむね十五から二十パーセント程度とされている」(『反貧困』からの抜粋)。また東京大学出版会発行『日本の貧困研究』(二〇〇七年)によれば二〇〇一年段階で16%だったという。

 「生活保護受給者百五十一万人が16%にしかあたらないとすれば、貧困層の数は一千万人に達する計算になる」(『反貧困』から)という。

 一九九〇年代長期不況の最中、企業による労働者の非正規化が進行し、雇用状況が悪化して生活貧困化がすむ中で、社会保険制度から漏れた労働者が保険料を払えず、生活保護制度からもはじき出されている。

 そうした中で自己責任論が蔓延し、階級矛盾を一人ひとりの労働者個人におしつけ、団結を破壊しながら反撃力を解体させ一人ひとりを確実に孤立化させ自殺へと追いやっていく階級政策をおし広げられている。格差社会の基盤が確実に広がっているのである。

 「日本では二〇〇二年以降景気回復が始まり、各自GDPが十四兆円超える一方、雇用者報酬は五兆円減った。だが大企業の役員報酬は一人あたり五年間で84%も増えている。株主への配当は二・六倍になっている」(『反貧困』より)という。

 労働者人民へのしわよせのみを原動力に肥え太るブルジョアジーの庇護に躍起になり、未曾有の戦時政策を強制する日帝を断固として打倒しなければならない。



 5章 障害者解放―日帝打倒の闘いかちとろう


 全国のみなさん!日帝は未曾有の階級矛盾をプロレタリアート総体に全体重をかけて強制し、戦争動員攻撃を仕掛けてきている。

 障害者施策こそはその最たる攻撃であり、差別抹殺攻撃が実際に進行し激化している。

 医療観察法とそれを補完する基盤を整備し、地域保安処分を強化し、精神障害者を孤立、抹殺しようとする攻撃を阻止しなければならない。

 自立支援法を撤廃しよう。障害者の自立解放運動を地域基盤の強化とともに前進させ、地域反戦運動との結合をバネに戦争と差別と闘う障害者の自立解放運動を構築していかねばならない。

 ともにたたかわん!
 

 

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