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  ■滋賀県・饗庭野

   日米合同軍事演習反対

     PAC3配備阻止闘いぬこう






 滋賀県高島市の陸上自衛隊饗庭野(あいばの)演習場では、十一月二十八日から十二月十七日まで日米合同軍事演習が行われる。演習に参加する部隊は、アメリカ側が米海兵隊第三機動展開部隊(沖縄)第三十一機動展開隊の約二百二十人、日本側は陸自第十七連隊(山口県)の約二百人である。また来年二月から夏までの間にPAC3の配備が予定されている。われわれは、このような米軍再編と連動して行われる日米合同軍事演習やPAC3配備に対して断固として対決していくことを呼びかける。

 饗庭野演習場は、戦前の陸軍演習場を自衛隊が引き継ぎ、拡張してきた西日本最大の演習場である。この演習場には、陸上自衛隊今津駐屯地と航空自衛隊饗庭野分屯基地が併設されている。一九八六年に饗庭野演習場は、日米地位協定にもとづく米軍使用地(年間六十日まで)に指定された。それ以降八回の日米合同軍事演習が行われ、今秋の演習は九回目のものである。また、饗庭野演習場では、二〇〇六年に都市型戦闘訓練施設が完成した。この施設は、演習場の中に銀行・レストラン・ビルディングなどを模したコンクリート製の建造物とそれらをつなぐ地下道を建設したもので、都市の武力制圧とゲリラ掃討作戦を訓練するためのものである。このような都市型戦闘訓練施設は、二〇〇五年ごろから全国各地の自衛隊演習場において建設され、現在では饗庭野のほかに東富士・矢臼別・王城寺・霧島などの演習場に存在している。これらの都市型戦闘訓練施設が、自衛隊がイラクやアフガニスタンなどの戦場に派兵され、米軍とともに都市の武力制圧・ゲリラ掃討作戦を遂行することを想定したものであることは明らかである。

 今回の日米合同軍事演習の内容は、ほとんど公表されていない。しかし、二〇〇六年二月十九日から三月三日まで行われた前回の演習については、いくつかの内容が明らかになっている。米側では「フォーレスト・ライト」(森の光)、日本側では「十三旅団17FTX」と呼ばれたこの演習には、米第三海兵遠征軍第四海兵師団第二十三海兵連隊と陸上自衛隊中部方面隊第十三旅団第八普通科連隊が参加した。この二〇〇六年の演習は、饗庭野演習場と岡山県日本原演習場で同内容の演習を平行して行ったあと、饗庭野演習場に全部隊が集結して総合訓練を行うという初めてのパターンで行われた。この冬は、暖冬つづきの最近ではまれにみる大雪で、日本海に近い饗庭野演習場のあたりは二月の初めでも一メートル近い雪に埋もれていた。自衛隊の準機関紙『朝雲』によれば、この演習の主要な項目は、@山地行動、A市街地戦闘、Bヘリボーン、C至近距離射撃、D積雪地訓練などの機能別訓練、E総合訓練であった。通常は知りえない軍事演習の内容がその一部であっても明らかになったのは、この演習に米海兵隊ウェブニュース(MCNEWS)の通信員が参加し、通信を送ったことからであった。また、米軍と自衛隊の側も、都市型戦闘訓練施設を用いた演習の一部を地元の市会議員などに公表したからであった。

 これらから、次のことが明らかになってきたと言える。第一に、饗庭野での日米合同軍事演習は米軍と自衛隊が海外において共同で戦争を行うための軍事演習であり、集団的自衛権の行使を前提とした違憲の軍事演習だということにある。二〇〇六年の演習は、都市型戦闘訓練施設を使用した全国で最初の日米合同軍事演習であった。米海兵隊と自衛隊は、ゲリラが施設や家屋を制圧しているという想定のもとで、相互に援護射撃を行いつつ、ドアや窓を蹴破って屋内に突撃し、屋内にいる人間を瞬時に撃ち倒し、制圧するという訓練をくり返した。それにあたって、ゲリラに扮した自衛隊員には頭にターバンを巻かせるということまでしたのである。

 第二に、イラク侵略戦争に派兵された海兵隊から、自衛隊が市街地での戦闘の経験と技術を学ぶことによって、米軍と共同で戦争を行える軍隊へと自衛隊を鍛え上げることが大きな目的となっていることである。二〇〇六年の演習に参加した海兵隊員は、予備役の兵士であるが実に90%がイラクに派兵された経験を持っていた。このような海兵隊員から、自衛隊は都市の武力制圧のやり方、具体的にはゲリラがたてこもる施設・家屋への突入と制圧、ゲリラの拘束や生死の確認のやり方、核兵器・生物化学兵器への対処の仕方など、さまざまな技術を徹底して教え込まれたのだ。このことについて、海兵隊ウェブニュースの通信員は次のように述べている。「最終日に、敵兵の役割を務めた自衛隊員が堅く守る都市型戦闘訓練施設に総攻撃を加え、銃撃戦の中で、海兵隊と陸上自衛隊は家屋から家屋に襲いかかり、すべての部屋から立ち塞がる敵を一掃した。この総攻撃は、イラクの情景を蘇らせるものであった。それは『イラクの自由』作戦に従事する間ヒット市でわれわれが実行してきたことだったからだ。自衛隊は、イラクの経験を持った海兵隊員から新しい戦闘技術を学んだ」と。

 饗庭野での日米合同軍事演習は、このようにきわめて実戦的で、危険きわまりないものへと変貌してきた。それは、他方で進行する米軍再編・基地強化と深く連動したものである。二〇〇一年9・11事件以降、米帝・ブッシュ政権は「対テロ」戦争と称して全世界において侵略戦争、抑圧と人権侵害を拡大してきた。アフガン・イラク侵略戦争の推進、中東から東アジアに至る「不安定な弧」に対応するための世界的な米軍再編、同盟国との軍事一体化などが急速におしすすめられた。そのもとで日米同盟についても、二〇〇五年十月三十日の日米安全保障協議委員会(2+2)中間報告、そして「日米同盟:未来のための変革と再編」と名づけられた二〇〇六年十月二十九日の日米安全保障協議委員会(2+2)最終報告が日米両政府間で合意された。日本政府もまた、このようなブッシュ政権と結合して、歴代の首相が「世界の中の日米同盟」(小泉)、「世界とアジアの中の日米同盟」(安倍)などと止めどなく日米同盟の強化へとのめりこんでいった。そのもとで、自衛隊のイラク・インド洋派兵の強行、沖縄・岩国・神奈川を焦点とした米軍再編・基地強化、米軍と自衛隊の軍事一体化が急速に進行してきた。

 饗庭野での日米合同軍事演習にとっても、この二〇〇三年のイラク戦争の開始から二〇〇五年・二〇〇六年の過程がまさに転換点であったと言える。饗庭野をはじめとした全国各地の演習場に、都市型戦闘訓練施設がこの時期に建設されたのは決して偶然ではない。饗庭野での日米合同軍事演習は、米軍と自衛隊が海外において共同で侵略戦争を行うためのものである。そして、その焦点は自衛隊をこのような米軍と共同での侵略戦争、都市の武力制圧やゲリラ掃討作戦を遂行することができる侵略の軍隊へと鍛えあげることにある。現在進行する日米同盟の再編には、二つの側面がある。辺野古新基地建設や岩国基地の大拡張など米軍基地の新設・拡張や機能強化などの米軍再編と、米軍と自衛隊が共同で侵略戦争を行うための日米軍事一体化である。そして、米軍と自衛隊が共同で侵略戦争を行うためには、日米両軍の司令部機能の統合だけではなく、自衛隊を米軍とともに実際に戦うことができる侵略の軍隊へと鍛えあげていくことが不可欠である。ここに饗庭野をはじめ全国各地で行われる日米合同軍事演習の決定的な重要性があるのだと言える。

 われわれは、日米同盟にもとづく米軍と自衛隊による侵略戦争、とりわけ自衛隊の侵略戦争への出動と対決していくために、米軍再編・基地強化に反対するだけではなく、饗庭野をはじめとした全国各地での日米合同軍事演習と断固として対決していかねばならないのだ。演習の具体的内容をおおい隠したままで積み重ねられる日米合同軍事演習の危険な内容を徹底して暴露し、これに反対するたたかいに労働者人民を全力で決起させていこうではないか。

 饗庭野での日米合同軍事演習に対しては、アジア共同行動・京都の努力によって、一九九七年に初めて滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良の五府県の左派労組や市民運動による広範な共同行動が成立した。それはまた、反戦・反基地運動の領域における、初めて成立した関西規模での本格的な共同行動であった。この経験を通して、「しないさせない戦争協力関西ネットワーク」が設立され、また二〇〇五年の京都での日米首脳会談反対闘争や今年の京都でのサミット外相会議反対闘争を全関西的な共同闘争として闘う基盤も形成された。その意味において、この一九九七年の饗庭野現地闘争は、それから十年以上を経た現在においても多くのたたかう仲間の記憶に残り、饗庭野での日米合同軍事演習に反対するたたかいは、関西において重要な位置を持ちつづけてきた。今回の饗庭野での日米合同軍事演習から来年のPAC3配備に対して、これまで日米合同軍事演習に反対する全関西規模での共同行動を積み重ねてきた左派労組や市民団体は、「あいば野に平和を!近畿ネットワーク」を結成した。そして、十一月二十二日には、この近畿ネットとフォーラム平和関西ブロックの初めての共催で、「日米合同軍事演習反対 11・22あいば野集会」が開催され、大きな成功をおさめた。そして、アジア共同行動・京都は、このような広範な共同行動を推進していく要としての重要な役割を果たし、この闘いを韓国・ムゴン里の演習場拡張阻止闘争や沖縄・岩国・神奈川などの反基地闘争と結合させていくために努力した。

 来年には、いよいよPAC3の饗庭野配備が予定されている。沖縄をはじめ、これまでPAC3配備が強行された各地では、断固とした阻止闘争が闘われた。その経験に学びつつ、今回の日米合同軍事演習反対闘争に結集した全関西の左派労組・市民運動・学生運動を総結集し、さらに共同行動の枠をおし広げ、PAC3配備阻止闘争へと向かっていこう。反帝国際主義の旗を高く掲げ、このたたかいを全力で領導しようではないか。

 

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