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 ■11・29~30岩国闘争へ総結集を


  日米同盟粉砕―アジア米軍総撤収へ向け

    米軍再編計画との闘いを発展させよう!







 ついに米帝中心の世界体制の瓦解が始まった。いま、全世界を巨大な経済的危機そして政治的危機が覆っている。サブプライムローン破綻から開始された米帝発の金融危機は日を追って激化し、ドル危機と連動しながら世界経済および各国経済の危機を増進させている。これは各国実体経済へとただちに影響し、世界的な景気後退局面を現出させた。

 日本においてもそれは同様だ。雇用調整―失業と労働条件の切り下げが必至であり、また折からの物価・原料高騰とあいまった生活危機の逼迫は必至である。労働者階級人民の生活破壊・生存そのものをかけたたたかいが激発してゆく情勢である。

 問題は経済に止まるものではない。当然にも政治危機をともない、あるいはそれと絡み合いながら「抜け道」の見出しようが無い状況へと世界は突き進んでいる。

 いま必要なのは、その危機を分析し、帝国主義打倒に向けたプロレタリア革命戦略推進における重点を見出し、労働者階級人民に提起し、そして全力でたたかいを組織してゆくことだ。日米同盟強化と一体となって日本における新自由主義政策が展開されてきたこと、持続的な政治攻撃として憲法改悪を中心とする戦争国家化へむけた攻撃が日帝の全体重をかけて行われていること、それが排外主義や国家主義の強化としてもあらわれてきたこと、などの事態をとらえるならまさに日米同盟強化路線そのものとの全面対決をこそ、いま日本の労働者階級人民は飛躍的に前進させなくてはならない。

 十一月岩国国際集会は、その重大な結節点である。アジア・太平洋地域労働者人民とともに回を重ね、培ってきた米軍再編計画反対―基地強化反対、アジア米軍総撤収へ向けたたたかいの蓄積を、岩国基地強化反対闘争の前進と全国的・アジア的拡大、そして日米同盟強化路線粉砕へ向けたたたかいへとよりいっそう発展させてゆくべきときだ。

 憲法改悪阻止闘争とともに米軍再編反対闘争が日本労働者階級人民の第一級の政治的課題としてあることは明らかである。問題はそれを文字通り全国のたたかう人々に訴え、たたかいを組織してゆくということにある。アジア共同行動日本連絡会議がこのかん継続してきた岩国国際集会への総結集を全国の労働者人民に強く訴え、まさに岩国市民とともにそしてアジア共同行動の仲間たちとともに日米帝の危機のただなかから米軍再編計画粉砕へ向けた大水路を切り開くことこそ革命派の任務である。

 十一月岩国国際集会の成功へと全力で取り組もう。



 第一章 日米帝国主義の政治危機


 ▼1 米帝の世界戦略の破たん



 米帝国主義の政治危機はとどめようもなく進行している。十一月大統領選挙はそのただなかで行われようとしている。米帝の危機の深さと広がりを特に政治・軍事上の問題を中心にしてあげてみよう。

 第一に、米帝単独での軍事行動の破産という点である。「9・11」を受けたブッシュの「対テロ戦争」はアフガン侵略、そして〇三年イラク侵略戦争へと展開したが、それは「単独行動主義」「先制攻撃」「核使用」ということを特徴とした。「軍事超大国」として、国連や他の諸国との協調など無視して長期にわたる戦争としての対テロ戦争戦略を組み立て・実行してきたのである。しかし、それはイラクの現状が示すとおり、破産を余儀なくされている。イラク戦争が泥沼化して国際的協調路線へと転換してはいるが、さりとてそれが容易に進行しないのは明白だ。

 第二に、この米帝単独行動主義・軍事一極主義というものを支えまた、それを必要とする経済基盤そのものの瓦解という点がある。二十一世紀の初頭を覆った米帝主導のグローバリズムが完全破たんしているのである。一千億ドル超のイラク戦費などを除外しても年間五千億ドルもの軍事費を投下できた根拠は、基軸通貨ドルの信認性を根拠に財政赤字を懸念することなくドルを発行できたからだ。それは、新自由主義グローバリズムの総本山としての米帝多国籍企業や金融業界の要請に基づくものでもあった。しかしいまや、その基盤そのものが瓦解を始めた。

 第三に、これが決定的なのだが、米帝軍事戦略そのものが大きく破たんしていることが明らかになりつつあるという点である。軍事における経済合理性とRMA(軍事技術の革命)による高性能な武器の開発と部隊指揮・運用の刷新ということをもとにして、あのイラク侵略戦争は行われた。そしてまた世界規模での米軍再配置も計画されてきたところである。しかしその根幹をなす戦略思想そのものが破たんを示しているのである。イラク・アフガニスタンなどの中東・西アジア情勢しかり、朝鮮半島情勢しかり、そして最近のロシアあるいは東欧諸国問題しかりである。

 まさに米帝の政治的・軍事的な強大性を一つの支柱とした世界支配体制そのものの危機が顕著であり、それは必然的に次期大統領選挙をめぐって世界戦略そのものの再検討を余儀なくさせる。すなわち米帝世界戦略すなわち国防戦略の変化は必至である。


 ▼2 政治変動の連続と日米同盟の「劣化」


 日米同盟の一方の日帝においてもその政治危機は止まるところを知らない。安倍・福田と連続して政権放棄がなされること自体異様なものである。もちろん「衆参ネジレ」という政治運営上の障壁があるにしても、それ自身このかん日帝支配階級が進めてきた新自由主義的社会改変に根拠をもつものであり,それに対する労働者人民の総反撃がこれを強制していることはいうまでもない。増大する貧困に対する怒りは澎湃と巻き起こっている。そして医療・年金・社会保障などの分野での制度破たんは火に油を注いでいる。「食の安全」に対しても政府への不信は強い。財政破たんに対して労働者民衆に対する大増税が語られる中、労働者民衆の怒りはいっそう強化されてゆく。

 こうした内政や国内経済政策における支配階級の危機という点とともに、まさにこれと並行して安保・外交上の変動要素が顕在化している点に大いに注目しておくべきである。

 「日米同盟の劣化・弱体化」(産経)、「惰性化した日米同盟」(日経)などの言辞がメディアなどから飛び出すに至っている。それらはもちろん「そうなってはならない」ということの率直な表明であるのだが、他方支配階級の危機感を告白したものでもある。

 「世界の中の日米同盟」(小泉)、「世界とアジアのための日米同盟」(安倍)と、まさに日米同盟強化一辺倒というべき安保・外交政策がこの二つの政権においてはおしすすめられてきた。しかし、その安倍自身が、朝鮮半島政策をめぐる日米間の政策的相違や空自次期戦闘機をめぐる交渉などの点において語るほどの日米同盟の恩恵にあずかれなかったといういきさつがある。そして前政権福田においては、「共鳴外交」という形で、一方での日米同盟堅持とともに対中国・アジア外交の進展にも軸足を置かんとしてきたところだ。その福田自身も退陣し、麻生が政権運営を行うこととなったのであるが、このようにして進行してきた日米同盟の意義と位置の低下傾向は否定しようのない事実となっている。

 第一に、アフガン支援のためのインド洋給油活動をめぐっては安倍政権末期以後いっかんした日米同盟の根幹を揺るがす問題として継続している。これを強制しているのはいうまでもなく日本の参戦反対・日米一体の軍事力行使反対という労働者階級人民のたたかいそのものである。このたたかいは、イラク空自活動違憲との名古屋高裁判決を導き出し、そしてイラクからの自衛隊撤退をも導き出した。そしてさらに、インド洋給油をめぐる攻防は継続する。自衛隊によるアフガン支援のための他の選択肢においても同様である。

 第二に、朝鮮半島情勢への対応をめぐる矛盾はもはや拡大するのみである。「『拉致問題』の解決なくして日朝正常化は無い」とした圧力強化路線が日帝の朝鮮半島情勢における基本スタンスであったし麻生においてもそれは継続する。しかし、米帝においては、ブッシュ政権の数少ない外交的成果をこの朝鮮問題において見出そうと、朝鮮民主主義人民共和国との間の米朝関係正常化へ向けた努力が顕著である。朝鮮半島政策をめぐる日米間の矛盾は拡大している。

 そして第三として、ほかならぬ日米同盟強化路線の産物ともいえる米軍再編そのものをめぐっても日米同盟の動揺要因は増大している。次章において詳しく見るが、〇六年五月の米軍再編日米合意(『再編実施のための日米ロードマップ』公表)以降は、米政府においては、この再編計画の進行はもっぱら日本政府による「国内政治問題」の遂行という形で観念されるものとされた。ところが日本国内問題としてそれがスムースに進行するわけは無い。米軍基地の強化、あるいはそれと一体となった自衛隊の強化や一体的基地運用すら行なわれるのであるから当然にも基地に対するたたかいは激化する。そのたたかいは米軍再編合意をなした日本政府に当然向けられるが、それに止まらず、米軍基地そのものに対しても向けられ続ける。日本政府がこのたたかいに対処するに持つ手段は「カネと強権」以外にはありえない。しかしそれでたたかいが収まることはありえない。必然的にたたかいは米軍そのものそして米政府へと向かう。このたたかいがまさに日米同盟を揺るがす根底に根をおろしつつあるのだ。

 こうして日米同盟とりわけその軍事的領域における日米双方の動揺が顕著ななかで今秋期闘争がたたかわれるのである。


 ▼3 日米地位協定密約の暴露


 米軍基地がある限り米兵による犯罪とりわけ性暴力犯罪はなくなることはない。それどころか激発の一途をたどることはこのかんわれわれが目前にしてきたところである。列挙することはしないが米軍のいう「綱紀粛正」策など何の役にも立たないことは明らかだ。まして、日本側が第一次裁判権を放棄し、それを受けて米軍が軍事法廷を開廷して被疑米兵を裁くというパターンが連続した。ところがこの米軍事法廷そのものが、ペテンであり被害者に対して更なる苦痛を与えるものでしかないことも明らかである(『本紙一三〇九号』など)。そしてこのかん暴露されている、一九五三年段階での日米間の地位協定運用に関する密約とは、「(米兵が公務外で犯した犯罪について)特別な重要性がないかぎり日本側は第一次裁判権を放棄する」というものであった。この密約はいまも生きている。そればかりか、人権・人格そのものの蹂躙という点で決定的に重大性を有する性暴力事件に対してもこの密約を運用しているといえるのだ。日米地位協定の運用の改善ということで米兵犯罪が減ずることはありえないということはもはや明らかである。まさにこの密約の暴露は「日米同盟とは何か」ということを端的に照射するものだ。この問題もまた日米同盟の動揺を根底から規定する要因となっている。日米安保そのもの、そして日米地位協定そのものこそが廃止の対象であり、基地存在そのものの撤去こそが根本的でかつ具体的な解決策なのである。

 昨年十月に広島で起きた岩国所属四兵士による性暴力事件の一ヵ年に際し、全国各地で日本政府・司法当局の不起訴処分―裁判権放棄とデタラメな米軍による軍法会議とその結果に対して抗議行動が取り組まれている。こうしたたたかいをいっそう強化してゆこう。



 第二章 米軍再編計画の状況と労働者民衆の闘い

 ▼1 一層明らかとなった米軍再編の本質


 米軍再編『日米ロードマップ』合意から二年半が経過している。それに明記された在日・在沖米軍再編の完了年は二〇一四年。実に残り六年である。この計画が着々と進行してきたとはとてもいえない。もちろん鉄条網やフェンスによって区画された基地内部での再編計画はこれまで進められてきたところではある。青森県の空自車力分屯地内へのⅩバンドレーダー設置や米軍嘉手納基地内へのパトリオットミサイル(PAC3)配備、あるいは、嘉手納や岩国、三沢などの米軍機の空自六基地への「訓練移転」なども行われてきた。そしてまた、米軍再編計画に付随するものとしての首都圏域の空自高射隊への同ミサイル転装配備なども進行中であり、原子力空母G・ワシントンの横須賀配備も強行されたところだ。だがそのそれぞれに対して基地周辺住民と労働者民衆の抗議と反対行動がたたかわれたことも確かである。嘉手納基地へのパトリオットPAC3強行配備に対し、沖縄労働者民衆は四日間にわたる搬入阻止行動をたたかい抜いたことも記憶に新しいところだ。

 まさにこの二年半の間とは、つまるところ米軍再編とは何かということが明白になった二年半でもある。何よりもそれは基地周辺住民に対するいっそうの基地負担を押し付けるものであることが明らかとなっている。「負担軽減と抑止力維持」というのがまったくのペテンであることが、いまや誰の目にも明らかなのである。

 そして、それに止まらず、今次の米軍再編が本質的に安保条約の枠組みを超えた米軍行動のためにこそ推進されているということのゆえに、基地の恒常化・機能の飛躍的継続的強化をともなうものであることが明らかになった。そしてそのことは、従来政府などが語ってきた「基地との共存」というイデオロギーが何の説得力を持たぬものと化していることをも意味する。「基地との共存」それ自体がペテンではあったが「日本防衛のために米軍基地(あるいは自衛隊基地)を我慢せよ」とする言説自体、大きく極東の地理的範囲を超えてアジア太平洋地域全体を展開先とする在日・在沖米軍のあらたな役割が明らかになる中では何の説得力をも持ち得ないのは当然である。そして日米軍事一体化としてその米軍への支援と共同行動をもくろむ自衛隊に対してもそうなのだ。

 さらにこの二年半の過程で、結局米軍再編を納得させる論理を持ちえない日本政府が「米軍再編交付金」制度を創設し、再編計画の受け入れを条件として再編交付金を交付するという財政の公平原則や地方自治という憲法的原則を踏みにじる制度を案出し、それをもって基地強化を各自治体首長に容認させるというデタラメさも満天下に明らかになった。逆に基地強化をあくまで容認せぬ自治体に対しては言語道断の財政的締め付けが行われたことも岩国市新市庁舎補助金をめぐる一連の事態で明らかにされたところである。

 大要そのような点が米軍再編をめぐるこのかんのたたかいの中で明らかにされている。そのそれぞれが各地でのたたかいの積み重ねの中でこそ明るみに出ていることを決して軽視してはならない。そのたたかい自体が、今後の米軍再編計画粉砕へ向けたたたかいのまさに原点を形成するものなのである。

 そして、何よりもいっそう強く確認しておかなくてはならない点は、この米軍再編計画とのたたかいの永続性と拡大性そして各地のたたかいのつながりという点においてあらたな傾向を示している点である。

 何よりも今次米軍再編計画が明らかになって今日に至るまでに、再編計画にかかる地域においては従来からの反基地運動体とあわせてあらたな運動体がうみだされている。自衛隊の海外派兵や米軍と一体化した軍事行動を常態化させている現実。「冷戦体制」終焉後の米軍による独善的な軍事行動。そして、軍隊は民衆を守ることはありえないとする認識。こうしたものを根底にして日米軍事基地に対する恒常的な反対行動が生まれているのである。こうしたたたかいと結びつきながら反安保・反基地運動の歴史を継承しようとする労働組合勢力もまた少なからず米軍再編計画反対闘争に参加している。横須賀での7・19そして8・25闘争は、このような構造においてたたかいとられたところだ。まさに米軍再編そして米軍基地存在そのものに対しその撤去・撤廃に至る永続的な運動が形成されていることに注目しておかねばならない。またそのような各地のたたかいをこそ支援し共闘していくたたかいが、日米安保粉砕―日帝打倒・米帝放逐へ向けた日本のプロレタリア革命戦略を推進してゆく上で決定的に重要だということを確認しておこう。

 この九月、厚木基地をかかえる神奈川県大和市において、全国の基地被害訴訟原告団が総結集し、「全国基地爆音訴訟原告団連絡会議」が結成された。普天間、嘉手納、厚木、横田そして岩国の各米軍航空部隊基地所在地において、あるいは空自小松基地(石川県)において基地被害を許さず飛行の停止―基地そのものの撤去まで展望する住民の総結集である。まさに米軍再編計画がこのような形で各地のたたかいを結合させるに至っている。このように継続的に米軍存在そのものとのたたかいを進める各地住民とともに、米軍再編計画そのものの廃止をかけてたたかうべき時だ。


 ▼2 各地での米軍再編との闘い


 再編計画が降りかかる各地においてはどうか。

 沖縄において今夏の県議選で知事・仲井真与党である自公勢力は少数派に転落した。この意義は多大である。七月十八日沖縄県議会はただちに辺野古新基地建設反対の決議を可決した。「普天間の三年以内の閉鎖状態」と引き換えに辺野古新基地建設そのものには容認している仲井真をそれは直撃するものである。のみならず、仲井真らの新Ⅴ字滑走路沖合移動要求を協議対象としながら着地点を探ってきた日本政府においても衝撃は大きい。そればかりかこれは米軍・米政府内の日本政府に対する不信とともに沖縄の再編を一基軸としたアジア太平洋地域レベルでの米軍再編プランの先行きへの疑念をも生じさせる事態なのだ。不要施設の返還を「負担軽減の目玉」としつつ沖縄北部への軍事機能集中と新基地建設を核心とする在沖米軍の再編は、グァム全島を米軍四軍のハブ基地と化す計画の重要な柱でもある。在沖米軍兵士八千その家族四千名(どちらの数字も定員数であり実数ははるかに少ない)をグァムに移転するということを語りつつ、内実は在沖米海兵隊諸部隊の司令部機能を要員とともにグァムに移転させるということであり、兵たん機能、訓練機能したがって戦闘部隊はそのまま沖縄に居残ることになる。そのこと自体が沖縄の最前線出撃基地化という点で許すことはできないが、「沖縄の負担軽減」を語りつつグァム米軍の新施設建設などへ日本から七千億円を拠出させるペテンとともにこれが合意されたこともまた許すわけにはゆかない。そのアジア太平洋地域における米軍再編計画に対する痛打が沖縄のたたかいなのだ。米政府は苛立ちを隠さない。だがこのままの状態で米大統領選を迎えざるをえない。九六年のSACO合意によって普天間基地の返還が案出されて十年後に、沖縄民衆のたたかいによって旧辺野古新基地プランは完全に粉砕されるに至ったが、それを受けて米軍再編と絡めてあらたに登場したのが今回の辺野古新基地計画である。民主党候補・オバマの外交ブレーンはSACO合意にむけて立案を行ったキャンベル、そして共和党候補・マケインの外交ブレーンは現在の辺野古新基地案立案に奔走したグリーン。オバマ、マケインそのどちらが大統領選を制すにしても、基本的な日米同盟重視そのものが変化するわけではないが、アジア太平洋地域における具体的な米軍基地の配置・編成においては差異も生じる余地は大いにある。辺野古新基地建設阻止のたたかいをいっそう支援しおしすすめる中で普天間返還・新基地阻止の展望をたたかいとるべき時なのである。高江へのヘリパッド新設に対しても地域住民を先頭に粘り強い阻止行動が連日たたかわれている。まさに「いまある基地を取り戻し、あらたな米軍施設は絶対に許さない」というたたかいが必要なのだ。断固連帯してたたかおう。

 神奈川においてはどうか。キャンプ座間への米陸軍第一軍団前方司令部の移駐、相模原補給廠への戦闘指揮センター設置、それと一体となった陸自中央即応集団司令部の座間移転に対してたたかいは継続している。基地あるが故の日常的な基地被害を許さず、たたかいを拡大している。キャンプ座間の再編強化とはアジア太平洋全域規模での戦闘を指揮する前線司令部づくりであり、陸自中央即応集団司令部並存とあいまって日米軍事一体化―海外共同軍事行動をも意図するものである。

 横須賀への米原子力空母G・ワシントン配備阻止闘争は七月の大集会と配備当日の大抗議闘争をもって継続的な母港化反対行動へとつなげられる。ウィンター米海軍長官はG・ワシントン横須賀配備の狙いを「米軍は西太平洋で(中国軍に)十分な抑止力を確保しようとしている。ジョージ・ワシントンの存在によってそうした能力は全面的に強化される」などと公然と言い放っている。まさに西太平洋重視・対中国抑止という米国防戦略のために「本土」―沖縄の米海軍基地をうち固めるということだ。折からの米原潜放射能漏れへの居直りもその線上にある。G・ワシントン艦載機部隊が飛来する厚木においてもそしてまた同部隊の移駐が計画されている岩国においても上記した爆音訴訟の取り組みなど、たたかいはより結びつきを強めながら進展を見せているところだ。

 米軍機訓練移転に対しても、あるいは直接的には『ロードマップ』記載事項ではないが、米ミサイル防衛戦略に連動した空自各基地へのパトリオットミサイルPAC3配備へのたたかいもいっかんして取り組まれている。


 ▼3 改憲阻止闘争と結合した闘い


 こうして米軍再編とのたたかいは、『ロードマップ』以後二年半を経て、各地において持続性と恒常的・日常的に取り組まれている。それぞれのたたかいが地域的な広がりをみせてもいる。そしてたたかいの結節環においては、労組・市民運動体を総結集したたたかいを実現する力量も保持している。であるならば、結局日米政府が五年をかけてようやく合意にこぎつけた米軍再編計画とその実行は巨大で新たな労働者人民の反米軍闘争、日米同盟強化反対闘争を現出させたに過ぎないとも言いうるのだ。

 そしてその新たなたたかいは、このかんの改憲阻止闘争、とりわけ憲法九条改悪阻止のたたかいの拡大や、イラク・アフガンへの自衛隊派兵反対闘争とも内実的に結合してたたかわれている。この点も確認しておくべき点だ。自衛隊によるアフガン支援、あるいは恒常的派兵法の制定、さらには集団的自衛権行使解禁への政府解釈の変更などが、「ハード」の面をなす米軍再編―日米軍事一体化に対する「ソフト」の面で画策されているところだが、まさにその両面からこれらを打ち砕くたたかいとその陣形は着々と整備されているということもできる。まさに、改憲阻止そして米軍再編粉砕とはその点で一体であり、そのたたかいが日本帝国主義打倒への政治的水路を巨大な規模でこじ開けるものとなる。

 まさに、数々の攻撃や支配階級どもの策動にもかかわらず、そしてまた未曾有の生活破壊や生存の危機を強制されながらも、日本労働者階級人民は攻勢的陣地を保持しているということができる。その画期の一つをなすものがイラク派兵違憲訴訟における四・一七名古屋高裁判決である。この判決は、改憲・派兵というこのかんの日帝の政治攻撃の根幹を深いところで直撃した。政府が自衛隊や安保、米軍存在について拠り所としてきた、憲法九条をめぐる裁判での安保・自衛隊合憲判決や憲法判断になじまぬとする幾多の判例・判示をくつがえし、正面からイラク自衛隊活動は憲法九条違反であり、平和的生存権は法的・具体的権利にして裁判規範性をもつとしたのである。イラクでの空自活動こそ米軍再編が描く将来の日米軍事一体化の原型であり、「平和および平和的生存権とは抽象的概念にすぎぬ」(百里訴訟最高裁判決傍論部分など)としてきた政府自身の「武力による平和」観が打ち砕かれたのである。反戦・反派兵のたたかいにおけると同時に、米軍再編とのたたかいにおいてもこの意義は大きい。つまり米軍再編をおしすすめる論理そのものに対抗する論理が憲法的裏づけを明確にもつに至ったのである。こうした攻勢的地平を米軍再編との具体的なたたかいにおいても全面的に活用し、たたかいをいっそう拡大してゆくべき時だ。



 第三章 今秋期岩国闘争の位置と課題

 ▼1 貧困・軍事との対決


 十一月岩国国際集会は、労働者階級人民のそれぞれが、貧困や労働条件の劣悪化など厳しい状況におかれつつもなお攻勢的にたたかいを進めているという陣形を一歩も二歩も前進させてゆくたたかいである。まさに日米両帝国主義がその経済的危機にあえぎ、打開の方途すら見えない中で政治的経済的危機を累積させ、それらをすべて労働者階級人民に押し付けんとしているその只中から米軍再編計画―日米同盟強化粉砕のたたかいを通じて日本帝国主義打倒への水路を大きく開くたたかいである。改憲―自衛隊海外派兵恒久法制定策動を打ち砕くたたかいである。貧困と軍事強大化(軍事費増大)とを一体のものとしてこれを打ち破るたたかいの頂点である。

 すでに明らかにされて久しいが、米軍再編計画に対して日本政府は四兆円を超える金額を投入しようとしている。グァムへの米軍新施設に対して、七千億円もの巨費を投じようとしている。これはさらに膨らませられることになるのは目に見えている。そのすべてが貴重な血税だ。他方、今後五年間に年間二千二百億円ずつ社会保障費を削減するという。駐留米軍に対する「思いやり予算」と同額だ。

 日米同盟強化路線が叫ばれ始めてから特に顕著な傾向だが、年間五兆円の軍事費(防衛費)はいまやほとんど「聖域化」すらしている。もって軍事が栄え民衆は貧困にあえぐという構図がわれわれの眼前で展開されようとしているところなのだ。


 ▼2 専管事項論との闘い


 それに加えさらに許せないのは、米軍再編計画の実行は地方自治の憲法的原則を破壊し、ひいては該当地域住民のさまざまな基本的人権を一様に破壊してそれで良しとするということだ。この点は、〇六年三月の岩国住民投票とその勝利、その民意を受けた前市長井原氏の基地強化非容認の態度堅持に対して国あるいは山口県当局がどれほどの地方自治破壊を行ってきたかということが如実に示しているところである。まさに岩国が示したものは憲法九条破壊が地方自治破壊と結合して住民個々の平和的生存権を脅かしているという事態である。「安保・外交は国の専管事項」論が大きく幅を利かせるとき、市民個々の基本的人権を保護するべき地方自治そのものが国家権力によって破壊されてゆくということだ。絶対にこれを許してはならない。


 ▼3 それでも岩国は負けない


 本年二月の岩国市長選において、基地強化にたいして市民の民意を背景に非容認を貫いた前市長井原氏は残念ながら再選をかちとることはできなかった。そこにおいてどのような汚濁にまみれた選挙運動が当選した福田陣営において行なわれたかについてはすでに本紙においても明らかにしてきたところである。だがしかし、あらためてここで確認しておきたいことは、井原氏の落選にもかかわらず岩国市民の基地強化反対の声とたたかいは継続しさらなる発展過程にあるということだ。新市庁舎への補助金カットを頂点とする国と県による岩国市への全面攻撃が展開される只中で打ち出された「岩国は負けない」というスローガンは、いま「それでも、岩国は負けない」との市民の姿勢を端的に表している。

 事実、岩国市民のたたかいは政府や県の攻撃が拡大し深化することに的確に対応し、それとの対抗陣形をただちに形成しながらたたかいを発展させているところだ。こうした岩国市民のたたかいがおとろえるどころか次々と新たなたたかいを創造していることに対し、新市長福田自身、事実上の基地強化計画容認であるにもかかわらず、政府に対して「容認」という言辞を使うことができなくなっている。「国の安保政策を理解する」というレベルでの発言で政府はただちにストップしてきた市庁舎補助金の全額交付、そしてさらには米軍再編交付金の交付を行なった。だが、いまのところそれまでである。すでに福田が市長となって半年であるが、「公式」には国や県と岩国市の米軍再編計画推進における関係は、いまだ選挙直後のままということだ。そのかん、岩国市民は基地沖合拡張とそれを受け皿にした、厚木艦載機部隊移駐などの米軍再編計画への埋立用地の使途変更に対し、公有水面埋立承認権者の山口県知事を相手とした公有水面埋立承認処分取消訴訟(行政訴訟)の提訴と裁判闘争の展開、そしていま最大の課題として焦点化している愛宕山開発跡地への米軍住宅建設案反対のたたかい、愛宕山地域の都市計画廃止手続きに対する継続的取り組み、そして福田市長への直接的連続的な申し入れや公開質問などを展開してきた。


 ▼4 米軍住宅建設案協議の事実が発覚


 ついに国および県当局と岩国市長以下市執行部らによる市民無視と大裏切りの事実が発覚した。

 八月十八日付の地元紙中国新聞が暴露し他紙もまた報道したところだが、国と県による愛宕山米軍住宅建設案に対する岩国市の意向を水面下で打診し合意を取り付けるための協議が行われてきたことが明るみに出たのである。それによるとすでに四月七日以前から国による愛宕山跡地への米軍住宅建設案は提示され、それに対する岩国市長の同意を確認しようとしたことが明白となっている。あろうことか、米軍用地については、跡地の国への買取部分の面積では不足するとし、市の計画する運動公園計画部分をも米軍住宅用地として国に売却する意思確認すらそこでは問いかけられている。また、こうした水面下での合意形成は、夏の県知事選において現知事二井にとって不利となるからあくまで「水面下」での合意として市民には伏せておき、知事選以後から現地測量などの調査を国が開始するということまできめ細かく打ち合わせてもいる。まさに密談・密約なのだ。住民自治や民主主義の基礎をなす情報の公開や市民の重大な関心事に対する説明責任など完全に無視した到底認めることのできない暴挙である。まして福田市長はこの意向打診がありつつも六月市議会で、愛宕山跡地での米軍住宅建設計画について国や県から何らかの打診があったのではないかと問われた折、「国や県からの打診は皆無」とあからさまな虚偽を答弁している。さらにこの文書が発覚したのちの九月市議会においても、この文書の照合や内容の確認は「不知」ととぼけたままである。つまりは米軍住宅用地としての国への売却を容認する腹であることは明らかだ。


 ▼5 愛宕山跡地への米軍住宅建設案打ち砕こう


 愛宕山開発とは、岩国基地滑走路の沖合移設を通じて騒音被害や事故の恐怖から基地周辺住民がいくらかでも逃れられればと、地元の里山を切り崩しその土砂を沖合埋立に供すること、そして切り開かれた跡地には学校を含む公共施設を兼備した新たな住宅地として開発することを前提にして行われた事業であった。主体は山口県住宅供給公社であり、県と市が二対一で債務保証に立った案件である。防衛利権にまみれた貴船元岩国市長の代に決定された案件でもある。ところが埋立用の土砂を採取し終える時期にあわせたかのごとく、県は住宅需要の低減と赤字の見込みを口実として愛宕山開発事業の中止を叫び、岩国市の反対にもかかわらず強引に開発中止を決めたのであった。そしてその跡地を国に買い取らせるとし、国はまさに待ってましたとばかりに岩国基地への厚木部隊などの移駐にともなう米兵とその家族四千名分の住宅用地候補として買い取る方向を明確にしているところである。岩国基地強化計画が計画通りに進むとすれば、厚木艦載機部隊五十九機の岩国移駐、普天間空中給油機部隊十二機の移駐と、既存の米海兵隊航空部隊の施設とともにまさに基地内は米海兵隊および海軍航空部隊の施設がひしめく状態となる。米兵とその家族四千名の住宅をどうするかは日米政府にとって大問題なのだ。その点からいえば、まさに米軍再編―岩国基地大強化計画とは、岩国基地の沖合拡張と愛宕山地域への米軍住宅建設という条件形成とセットになることによってのみ立案可能なものだったとも言える。まさに長期にわたり住民の全部をペテンにかけた巨大な詐欺行為が国家の手によってなされたのである。しかし逆にいえば、愛宕山米軍住宅建設計画を粉砕することは岩国基地大強化計画の一方の柱をへし折るたたかいであるとも言いうる。決定的なたたかいの課題としてあるのだ。

 愛宕山地域住民の怒りは巨大である。米軍住宅絶対反対の意思が地域住民の強固な総意として顕在化している。そして見ておかねばならないのは、住宅といえども米軍住宅とは基地そのもの、軍事施設そのものであるということだ。これが巨大な規模において新規にしかも住宅地のど真ん中に建設されるというのである。まさに米軍再編計画とは新たな基地・施設を作ることをともない、また既存の基地を拡大もして進行するものである。この点に重大な注意をはらわなくてはならない。国の専管事項論は軍事の要請に基づいて住宅地であろうが公共用地であろうが必要とする場所に軍事施設を建造してゆくことと結びつき、もって形式上は任意の売買契約としてありつつも実質的には軍事徴用がなされるということを意味するものとなりつつある。こんなことを一ミリでも許すならそのような事態が全国各地で生起させられることにつながる。愛宕山跡地への米軍住宅案は、沖縄・名護辺野古への新基地建設計画、高江のヘリパッド新設計画、あるいは普天間緊急時機能移転の受け皿形成のための空自築城基地の拡張計画や空自新田原基地(宮崎県)への新設備建設計画などとともに絶対に阻止しなくてはならない問題なのである。

 今秋期、岩国市民は、愛宕山米軍住宅建設案反対をめぐる攻防を軸としてたたかいをいっそう強化してゆこうとしている。さらに、全国の基地被害訴訟原告団の支援をもかちとりながら岩国においては初の爆音訴訟へ向けた準備も進められている。たたかいの陣形はまさに整えられているのだ。そこにこのたたかいを全国から支援する広がりを持つとき、いっそう米軍再編計画を打ち砕いてゆく展望がさらに押し広げられてゆく。そのたたかいを実現してゆこうではないか。

 アジア共同行動日本連絡会議の呼びかけに断固として応え支持し、このかんの岩国国際集会が培ってきたアジア太平洋諸国・地域での具体的な反米軍闘争、反戦闘争との連携をいっそう強化し、アジア米軍総撤収へ向けた共同の歩みを切り開こう。(了)

 

 

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