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  ■日米密約とグアム移転協定

  沖縄・アジア人民と連帯し米軍再編を粉砕しよう





 日米安保条約に関する密約報道が相次いでいる。

 五月三十一日共同通信は、六〇年安保条約改定時の核持ち込みの日米密約を「日本外務省が管理し橋本龍太郎、小渕恵三ら一部の首相や外務大臣に伝えていた」との外務事務次官経験者(八〇〜九〇年代)四人の証言を報じた。また毎日新聞は五月五日、日米密約と日米外交交渉について@核の傘A沖縄返還交渉B核持込みを検証し、三ページにわたり特集を組んだ。週刊誌も沖縄への「核再持込みの密約はあった」とする前外務事務次官の証言を紹介し、密約問題の真偽にふれた(週刊朝日五月二十二日号)。また民主党岡田克也副代表(当時)が三月「(政府が)どれだけウソを言ってきたかわかる」として、沖縄施政権返還交渉をめぐる密約文書の存在について言及した。日米密約に関する裁判闘争も二件現在進行中である。

 昨年沖縄・日本に駐留する米兵の犯罪について「重要な案件以外は日本側の第一次裁判権を放棄する」との日米地位協定に関する一九五三年の密約が公表された。これ以外に核兵器持込みなどの日米密約の存在が沖縄をはじめとする基地周辺人民の怒りと闘いによって、学者・研究者やジャーナリストらから次々に暴露されてきた。

 占領以後沖縄では米国は進行する中国・朝鮮人民の民族解放闘争の前進に対し、基地の拡張と米軍基地の無制限の自由使用をおこなってきた。核兵器を配備・貯蔵し、極東における前線基地として拡大強化してきた。沖縄人民の反米軍闘争や復帰運動の巨大な闘いによる七二年返還以後においても米国は沖縄の米軍基地から航空機・艦船・兵士をアジア各地に出動させていった。日米帝は日米安保体制をアジアにおける反共防波堤として「朝鮮半島を含む極東の平和と安全」から「世界の中の日米同盟」へと、密約といわれる非公表の日米合意の数々を隠し持ちながら今日まで維持してきた。

 しかし現在日米安保体制が公式の発表文(条約・協定・声明など)以外に非公表の密約(議事録・了解事項・合意記録・公文など)で成り立ち、同時に現在に引き継がれ日米軍事再編につながる問題として日米密約の存在が社会的に広く明らかにされてきた。

 日米密約は@核持込みA在日米軍基地の自由使用B米軍兵士の地位協定などに分けられる。そこでここではこれまで明らかになっている主な日米密約の内容についてふりかえり、次にグアム移転協定を批判する。なお『沖縄密約』(二〇〇七年西山太吉氏)、『沖縄返還とは何だったのか』(二〇〇〇年我部政明氏)、各新聞報道などを参考にした。



 ●1、沖縄施政権返還協定における日米密約


 ▼@核の再持込み・通過


 米国は長距離弾道弾や原子力潜水艦への核配備に切り換りつつあった中で、七二年返還協定交渉において施政権返還と核兵器の撤去に応じ、緊急時の核の貯蔵(再持ち込み)に焦点をしぼりその確約を日本政府に求めていた。

 一九六九年十一月二十一日当時ニクソン大統領と佐藤首相は「七二年沖縄返還」を決めた共同声明についての合意議事録を二通作成し、極秘に取り扱うことで合意した。

 米大統領「重大な緊急事態が生じた際には、米国政府は日本政府と事前協議を行った上で、核兵器を沖縄に再び持ち込むこと、及び沖縄を通過する権利が認められることを必要とする」

 日本国首相「米国政府の必要を理解して、事前協議が行われた場合には、遅滞なくそれらの必要を満たすであろう」

 米側との交渉に当たった元大学教授若泉敬『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』(一九九四年刊)のなかで、また大統領補佐官キシンジャーが大統領にあてた「核持ち込みについて交わされた秘密覚書(合意議事録)」の存在を明記したメモ(米国立公文書館・二〇〇七年)などから核持込みの密約が裏づけられている。

 当時沖縄に配備されていた米空軍の旧式の戦術核メースBを公開して撤去作業(他に陸軍の核弾頭二五七個が撤去されたとの公文書があるが、ほかに海軍や空軍が持つ核兵器の所在は不明)が行われる一方で、首脳間で核再持込みの密約が取り交わされていた。


 ▼A沖縄の米軍基地の自由使用


 前記に関連して、米国の沖縄施政権返還交渉における重点目標は「米軍基地が自由に使用できる状態を維持すること」(米国家安全保障会議メモランダム十三号)にあった。共同声明の記者会見で佐藤は「米軍が日本国内の施設区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、事前協議に前向きに且つ速やかに決定する」とのべ、米軍基地の自由使用を実質認めていた。

 すでに六〇年安保改定時において「在韓国連軍(米軍)に対する攻撃によって起こる緊急事態では、在日米軍が戦闘作戦行動をとる必要がある際には、事前協議は必要ない」との取決め(韓国に対する合意議事録、事前協議の適用除外)があった。さらにベトナム戦争の兵站・発進基地として重要な拠点であった沖縄における基地の自由使用の保証を佐藤首相の記者会見は与えた。「日本を含む極東諸国の平和と安定のため」(極東条項)ベトナム・韓国・台湾への米軍の戦闘作戦行動のため沖縄の基地の自由使用を日本政府が容認して以降、米国は「日本本土で利用可能な米国軍事施設(基地)の自由使用」へと本格化させていく。

 沖縄の米軍基地の使用に関して、施設・区域や使用目的・条件などを取り決めた秘密の日米合意、五・一五メモ(七二年)が存在する。米軍の活動に制限を加えるのではなく、保証を与えるものになっている。


 ▼B事前協議の空洞化


 日米安保条約において、米軍の配置や装備の重要な変更があった場合事前協議制を定めている。

 一九六〇年一月六日に安保条約改定交渉時藤山愛一郎外相と米マッカーサー大使による「事前協議は米国軍とその装備の日本への配置、米軍機の飛来、米軍艦船の日本領海や港湾への立ち入りに関する現行の手続きに影響を与えるものとは解されない」(会談記録、九九年米公文書)との密約があった。また一九六三年四月四日「私(ライシャワー)は大平(外相)氏と六〇年一月六日の秘密の記録(密約)をあらためて検討した。大平氏は、米艦船に積載された核兵器の日本への寄港は(事前協議の対象となる)事態には当てはまらないことに注目し発言した」という駐日大使ライシャワーから米国務長官宛の核艦船の寄港密約を再確認した会談報告公電がある(九九年公文書館)。

 核兵器搭載の米艦船・航空機の寄港や通過は事前協議の対象ではないとの密約を引き継いで、七二年沖縄施政権返還交渉においても佐藤は「事前協議制度に対する米国の立場を害さない」との確約をおこなう。日米両政府で核兵器の「持込み」とは「貯蔵と配備」をさすとの密約をしながら、それでも国内では寄港・通過を含む「持込み」は「事前協議の対象」とウソの説明をおこない、さらには日本政府は米側より事前協議の申し入れがない以上「核の持込みはない」との説明を繰り返してきた。五月三十一日の核持込みの密約報道にも政府は「ないと歴代首相、外相が説明している」(六・二毎日)と否定し隠蔽し続けている。核搭載の米航空機・艦船の通過・寄港はおこなわれ、佐藤が宣言した「持たず・作らず・持ち込ませず」の非核三原則は人民を欺くものにすぎなかった。

 返還後も有事の際には沖縄に核兵器を再び持ち込むことを日本が事実上拒否しないことを事前に首脳間で合意しており、事前協議制度は絵空事だった。沖縄をはじめとして米軍基地の自由使用(核持込み・装備の重大な変更や作戦行動など)が行われ、現在に至るも事前協議は一度もおこなわれてない。九九年米軍支援を目的に成立した周辺事態法において日本周辺での「有事」の際、事前協議はおこなわなくてよいことになっている。


 ▼C日本側財政負担


 沖縄施政権返還協定では日本側の財政負担が総額三億二千万ドル、その内訳米資産買い取り費一億七千五百万ドル、基地従業員人件費の増加分七千五百万ドル、核兵器撤去費七千万ドルなどと説明された。ところが実は日本側負担は総額六億八千五百万ドル、その内訳米資産買い取り費一億七千五百万ドル、基地移転費およびその他の費用二億ドル、基地労働者の社会保障費三千三百万ドル、米民政府の持つ株・石油施設など売却益など一億六千八百万ドル、通貨交換後の預金による供与一億千二百万ドル(米連邦準備銀行に二十五年無利子で預金するもの)などというものであった(六九年十二月二日柏木・ジューリック了解覚書)。秘密裏に合意された米軍の基地の移転費(那覇空港から他基地への移転など)およびその他の費用六千五百万ドルを含む二億ドルは返還後五年間物品・役務で提供するものとされたが、積算根拠もない不明の金額だった。この「その他の費用」に当たる部分が「本土」の米軍基地の改善・修理・維持などの費用にされ、「思いやり予算」の原型となり七八年以後毎年日本政府が在日米軍駐留経費の施設整備費・訓練移転費(米軍住宅建設費、基地従業員労務管理費、基地の水道光熱維持費などもろもろ)として年々増加させていった代物である。

 さらに返還協定で日本側財政負担とされた三億二千万ドルの中に元来米軍が負担すべき費用である米軍用地原状回復補償費四百万ドル(当時のレートで十二億円、実際は米国に設立される信託基金に資金を約束したもの)とVOA海外移転費千六百万ドルがひそかに含まれていた。日本政府が費用の肩代わりすることを条件にして米軍が支払う条項になった軍用地の原状回復補償費用であるとして、当時新聞にスクープし公表した事件で、刑事訴追されたのが西山事件である(元外務省アメリカ局長吉野文六は二〇〇六年に自ら密約の存在を認めた)。また対中国宣伝放送局の海外移転費・代替施設建設費は、海外での施設整備費を日本が財政負担する〇九年グアム移転協定の先鞭ともいうべきものである。

 日米地位協定では在日米軍基地の経費負担について、「米軍の維持に伴う全ての経費」は米国、「飛行場や港など共同に使用される施設など」は日本負担と定めている。しかし米国は沖縄施政権返還に伴う財政負担は全く負わないとし、また返還後財政負担を定める日米地位協定を沖縄に適用する(軍用地料・労務管理費を日本負担にする)などとした。そして今や、在日米軍駐留経費における日本負担は米軍兵士の給与を除いてほとんどを負担するまでに巨額になっている。


 ▼D日米地位協定


 一九五三年日米地位協定に関する密約は「米兵が公務外で犯した犯罪について、特別な重要性がない限り日本側は第一次裁判権を放棄することに同意している」というものであった。さらに同年法務省刑事局通達で全国の地検に「重要でないものは裁判権を放棄するよう」指示していた。しかも法務省は地検に「事件の処分を決める際は批判を受ける恐れのある裁判権不行使ではなく、起訴猶予とする」よう命じていた。地検の問い合わせには日米地位協定に基づき、日本が第一次裁判権を行使できない「公務中の事件」の定義を通勤や職場の飲酒まで広く解釈するようにとし、また事件を起こした米兵が公務中を証明する米軍側の書類について、職務内容などの詳細は不要で「公務中」との記載だけで十分とも回答していた(法務省刑事局、警察庁刑事局が五四年から七二年にかけて作成した「外国軍隊等に対する刑事裁判権関係実務資料」など)。なお昨年六月国会図書館は前記図書「刑事裁判権関係実務資料」を閲覧禁止していたことも判明した(なお閲覧禁止処分取り消しの裁判が行われている)。

 在日米軍人らの刑法犯(公務外)の不起訴率が二〇〇一年から〇八年の平均で83%に上ることが報じられた。日本人の被疑者起訴率と比較して米軍人の起訴率は毎年十数%にとどまっている。法務省「合衆国軍隊構成員等犯罪事件人員調」によると犯罪種別の起訴率は、「殺人」が75%、「強盗・同致死傷」は71・8%と比較的高いものの、「強姦・同致死傷」25・8%、「住居侵入」17・8「自動車による過失致死傷」16・6%、「強制わいせつ・同致死傷」10・5%にとどまっている。〇七年の日本人被疑者の起訴率は「殺人」52・8%、「強盗・同致死傷」73・5%、「強姦・同致死傷」56・1%、「住居侵入」46・4%、「自動車による過失致死傷」10%、「強制わいせつ・同致死傷」57・5%。また各年別の不起訴率は、〇一年85・6%、〇二年84・4%、〇三年82・6%、〇四年80・3%、〇五年85・3%、〇六年71・9%、〇七年86・8%、〇八年90・5%。〇一年から〇八年までの起訴人数は計六百四十五人に対し、不起訴人数は三千百八十四人。

 昨年二月の沖縄での米軍兵士によるフィリピン女性への暴行事件について検察庁が不起訴にした後、本年二月米軍法会議は司法取引などで暴行容疑が取り下げられるなどして、禁固六カ月・除隊などの判決を言い渡した。〇七年広島事件に続いて検察庁が米軍兵士を不起訴処分にするなど、五三年密約が現在まで生きている。

 なお地位協定の逐条解説書である「日米地位協定の考え方・増補版」(外務省機密文書・八三年十二月作成)がある。そこには地位協定の矛盾、問題点を自ら指摘しながら米軍擁護に回り米軍の活動に配慮を払う協定解釈が行われている。

 米国では二五年経過した公文書は原則公開される(沖縄公文書館は米国政府等関係機関の公文書を収集・公開している)。数々の日米密約が公表されてきたにもかかわらず、政府は核持込みなど日米密約の存在を否定している。米軍の利益と日米安保体制の安定的堅持を最優先させている。今もなお引き継がれる日米密約を断じて許さず、日米安保体制を打ち砕く闘いをさらに促進していこう。



 ●2、グアム移転協定の内実


 グアム移転協定が五月十三日沖縄をはじめとする基地周辺住民の反対の声を無視して国会承認された。麻生自公政権の瓦解の前に、協定調印と国会成立・批准によって、国際公約として何がなんでも取り決めておこうというものであった。

 米軍はグアムにおける前進基地―ハブ基地としての強化(施設整備)をもともと進めていた。その内容は、沖縄から海兵隊を米本土から陸軍を移転させ、グアムにあるアプラ海軍基地やアンダーセン空軍基地と一体化させ、陸・海・空・海兵四軍の合同出撃拠点をつくることにあった。ゲーツ米国防長官は昨年六月「グアムでは日本からの支援を得て、空軍・海軍・海兵隊の軍事力を増大させ新たな緊急事態へ対応できる能力を整えている」と述べている。アプラ海軍基地は二〇〇二年から攻撃型原子力潜水艦の母港化が進められ、三千メートルを超える二本の滑走路を持つアンダーセン空軍基地では〇四年からステルス戦略爆撃機がローテーション(交代)配備され、空中給油機や無人偵察機の常駐配備も進められていた。さらにグアムの北にある北マリアナ諸島に大規模な演習施設建設の計画があり、グアムを含め自衛隊など同盟国軍と合同演習をできるようにする構想ももちあがっていた。

 そうしたグアムにおける米軍の一大基地建設に、沖縄海兵隊の移転を辺野古新基地建設、日本の財政負担とのパッケージだと強弁し、からませようとするのが移転協定である。

 グアムへの移転のための経費は総額百二億七千ドル(一兆二千億円)、日本側負担六十億九千万ドル(七千二百億円)、米側負担四十一億八千万ドル(四千八百億円)。しかし巨額の費用を投入する計画にはウソがある。海兵隊八千人とその家族九千人計一万七千人と示した人数は、その後実際に移動する人員ではなく定員とされた。つまり架空の移動の数字である。またグアムに三千五百戸(約一万人分)の米軍住宅を建設する計画も見積り額から換算すると一戸当たり八千万円の住宅になり、グアムでの住宅建設にそんな費用はかからない。米側負担の内訳は項目だけ並べられ、明細費用も明らかになっていない。またインフラ整備を民活事業として日本政府が出資した国際協力銀行の融資などをもとに設立された事業主体が選定され、家族住宅や上下水道施設・電気設備などをつくるとされている。すでに企業説明会を東京・大阪・グアムで開催し、日米の大手軍需産業・ゼネコンなどのべ九百十社が参加したが、企業に利権をばらまく事業になることは必死だ。チャモロ先住民など住民は海兵隊の移転に反対してしている。

 無償による海兵隊の移転と日本の財政支援によるインフラ整備をおこなおうというのが協定の中身だ。かって七二年沖縄返還に伴う米軍(VOA)の移転のための費用を負担した日本政府が、再び海外における米軍の施設整備をおこなおうとしている。米国の同盟国として軍事的財政的支援を拡大させながら、憲法を破壊し自衛隊の海外活動を恒常化させる日本帝国主義のいかなる動きにも反対していこう。沖縄・アジア人民と連帯し米軍再編を粉砕しよう。



 

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