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  ■戦時下の治安弾圧―入管法改悪強行弾劾




 七月八日、外国人登録法(以下外登法)の廃止案、出入国管理及び難民認定法(以下入管法)・日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(以下入管特例法)・住民基本台帳法(以下住基法)の改悪案の可決・成立が強行された。外国人に対する管理体制強化を断固弾劾する! 入管法改悪案は、本年三月、国会に提出され、六月十九日衆院本会議で可決し、七月八日参院本会議で可決が強行された。成立した改悪入管法は三年以内の施行が予定されている。

 これによって「新たな在留管理制度」と「外国人住民台帳制度」が創設されようとしている。

 自治体が交付している外国人登録証明書(以下外登証)を廃止し、中長期滞在者には「在留カード」、特別永住者には「特別永住者証明書」が新設される。現行法では国による在留審査・許可、自治体による外国人登録、となっている「二元処理」を解消し、国が外国人の在留情報を一元的かつ継続的に管理しようというのである。また住民基本台帳を外国人にも適用し、「外国人住民基本台帳」を制定するとしている。


 ○1「新たな在留管理制度」

 「新たな在留管理制度」の対象は在留資格を持つ中長期在留外国人に限定され、在留期間九十日以内の短期滞在者や特別永住者は除かれる。在留許可を「化体するもの」として法務省が「在留カード」を交付する。

 「在留カード」には、ICチップが搭載され、カード番号・氏名・国籍・生年月日・性別・住居地・在留資格・在留期間・就労の可否等が記載され、顔写真が添付される。また十六歳以上の外国人には、受領・提示・常時携帯義務が刑事罰付きで課せられる(なお「永住者」については常時携帯義務をなくす方向で議論する付則が衆議院法務委員会で付け加えられた)。「在留カード」登録事項に変更がある場合は十四日以内の届出が必要で、偽造や虚偽記載等の違反には刑事罰が科せられる。住居地は自治体を経由して登録するため入管局と自治体の間で情報がオンライン化される。

 外国人が所属する機関では、個々の外国人について「在留カード」の有無・就労の可否を確認し、国に情報提供する義務を負うことになる。義務違反には刑事罰が科せられ、情報提供を怠ったり虚偽の報告をした機関は、今後外国人の受け入れを認めない等の措置がとられる。

 法務省では、外国人が届け出た情報とその外国人の所属機関から提供された情報とを照合し、在留期間更新や在留資格変更の審査、在留資格取消手続や退去強制手続においてそれを活用する。

 また在留期間の上限の三年から五年への引き上げや、外国人研修制度を見直して「就労研修」という在留資格を新設すること、在留資格の「留学」と「就学」の一本化なども盛り込まれている。これまで「研修生」は労働者ではないとして低賃金労働や悪質な収奪が問題になっていたが、労働関係法令が適用されることとなる。賃金不払いの企業にはペナルティーも定めている。

 一方「特別永住者証明書」にもICチップが搭載され、特別永住者証明書番号・氏名・国籍・生年月日・性別・住居地・有効期限が記載され、顔写真が添付される。批判の多かった常時携帯義務は削除されるもののこれまで同様七年毎に更新しなければならない。

 
 ○2 「外国人住民台帳制度」

 「外国人住民台帳制度」は中長期在留者や特別永住者のほか、一時庇護許可者及び仮滞在許可者が対象となる。短期滞在者や非正規滞在者、難民申請中の仮放免許可者等は対象外となる。「住民の利便性を増進する」こと等を目的に「外国人住民台帳」が設けられる。

 自治体は、外国人が届け出た居住地・世帯等の情報と、法務省から提供される在留情報(身分事項、在留更新許可・不許可処分等)をもとに、「外国人台帳」を整備する。これにより外国人にも住民票が発行されることとなる。その記載内容には国籍・在留資格・在留期間といった外国人特有のものも含まれるが管理・運用方法は日本人と同様となる。


 ○3 治安管理強化を狙う「在留カード」

 「在留カード」の導入と常時携帯の義務化は徹頭徹尾民族差別と排外主義に貫かれたものである。

 すでに二〇〇七年十一月から施行されている改悪入管法で「テロの未然防止」という名目のもと特別永住者や外交官などを除く十六歳以上のすべての外国人に対し、上陸審査時に指紋と顔写真を提供することが義務づけられた。そして今回それを更に強化するものとして、ICチップという大容量の媒体に膨大な個人情報を集積し、それの常時携帯を義務づけ、ネットワークで結合することによって、外国人個々人の日常的な行動をも細部にわたって国が把握し監視しようとしているのである。まさに戦時下の治安弾圧と言っても過言ではない。

 カード番号をマスターキーとして、すべての個人情報が名寄せされ、すべての外国人について個人単位で情報を電子化・データベース化し、利用される危険性も考えられる。個人情報が無制限に流出する恐れも十分予想される。

 また学校や企業での「在留カード」のチェックにより、必然的に市民に外国人の監視が担わされることになる。

 一方で「在留カード」を持たない難民申請者や非正規滞在者は、「外国人台帳」からも排除されることとなる。現行の外国人登録制度では、非正規滞在者であっても登録可能であったのだが、新しい制度下では完全に制度の枠外となり、医療や教育といった最低限の行政サービスからも排除されてしまうのだ。

 法定受託事務として一定の裁量権が認められてきた自治体は、入管とのオンライン化が導入されると、ただの端末機関に成り下がってしまう。これまで窓口交渉などを通じて、諸運動団体が作り上げてきた自治体との信頼関係も一気に崩壊してしまいかねない。


 ○4 在留資格取消事由の拡大

 これまでよりも簡単に在留資格が取消されてしまう可能性も出てきた。在留資格取消制度の新たな対象として「配偶者の身分を有する者としての活動を継続して三月以上行わない」「上陸許可日から九十日以内に住居地の届出をしない」「住居地移転の日から九十日以内に新居住地の届出をしない」等が設けられようとしている。

 外国人はこれまで各自治体窓口で行っていた変更登録(在留期間更新・在留資格変更以外)を住居地以外の変更については今後は全国に七十六ヵ所しかない地方入管局まで出向いて行わなければならなくなる。煩雑な手続きは外国人にとって大きな負担である。とりわけ十六歳になった外国人は自身の誕生日に学校を休んで地方入管局に出向き「在留カード」を受領しなければならない。その精神的苦痛は計り知れない。

 またDV(ドメスティック・バイオレンス)被害等が原因で別居を余儀なくされている外国人配偶者までもが取消の対象にされかねない。結果として、被害者が別居できず、DVを更に助長し被害を増幅させる危険性もある。

 このように、法務省・入管局の権限は格段と強化され、その業務は集中し肥大化することになる。国家による外国人の監視と管理を目的としたシステムの構築に、市民をも動員しようとしているのである。

 少子高齢化が進む中、不足する労働力を補うため外国人労働者については専門技術者だけでなく単純労働者の受け入れも検討されはじめている(しかしながらこの不況下で真っ先にしわ寄せを受けるのも外国人労働者であることは言うまでもない)。一方で相変わらずの「テロ対策」「外国人犯罪者」キャンペーンで排外主義を煽ってもいる。この「受け入れ」と「排除」という一見背反するテーマを「イージャパン構想」とも連動させながら同時に遂行しようというのである。

 新自由主義政策推進の一環として来たるべき「移民社会」をも視野に入れた今回のこの法改悪は、一方で「アメ」をちらつかせながらも結局のところは政府によって管理された労働力のみの受け入れであり、これまで以上の監視体制の強化という排外主義に貫かれたものに他ならない。

 また今回はカード所持者を外国人に限定しているが、将来的には全国民に拡大するという構想も出始めていることを見逃してはならない。


 ○5 指紋押捺拒否闘争を引き継いでたたかおう

 一九四七年天皇最後の勅令として制定された外国人登録令は、一九五二年外国人登録法として法制度化され指紋押捺や外登証の常時携帯が義務づけられた。

 当初より民族差別・人権侵害として批判が強かったが、一九八〇年、故・韓宗碩(ハン・ジョンソク)氏が「たった一人の反乱」として指紋押捺を拒否したのを皮切りに、一九八五年を頂点に全国で一万四千人もの在日朝鮮人・中国人が指紋押捺拒否闘争に起ち上がったのである。

 そのような闘いの中で一九八七年、指紋押捺は最初の申請時のみ(それまでは五年に一回)に改訂(八八年施行)、一九九二年には「特別永住者」「永住者」の指紋押捺廃止(九三年一月施行)、そしてついに一九九九年には指紋全廃をかちとったのである(二〇〇〇年四月施行)。五十万人とも言われる多くの弾圧者、逮捕・投獄者を出しながら血のにじむような闘いの中でかちとった実に偉大な勝利である。

 自治体との粘り強い交渉の中では、自治体の裁量権をおおいに活用させて、期間指定書の発行や「拒否者を告発しない」こと、「機関委任事務(のちに法定受託事務)であっても唯々諾々と行わない」こと等を実現させてきた。「法違反者とは面会しない」と強硬な姿勢をとっていた法務省と拒否者との直接交渉を実現させる画期的な地平をも切り拓いた。

 今回の法改悪は在日とニューカマーの完全な分断を狙ったものだ。

 指紋押捺拒否闘争の勝利の地平を引き継ぎ、差別と排外主義を扇動する入管法・入管特例法・住基法の改悪案成立を絶対に阻止しよう。

                    (二〇〇九年七月七日)


 

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