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  ■10・11三里塚現地闘争へ

  農地強奪阻止! 北延伸供用開始阻止!





 三里塚闘争をともにたたかう全国の同志、友人諸君!

 三里塚芝山連合空港反対同盟は、成田国際空港会社の理不尽な攻撃に真っ向から対決し、今秋10・11三里塚現地闘争への総決起を呼びかけている。空港会社は七月三十日、新誘導路供用開始を強行し、十月には北延伸滑走路の供用開始を強行しようとしている。さらに第三の誘導路建設まで画策している。一方で、「訴訟」の形式をとって市東さんの農地を強奪しようとしている。四十三年間変わらぬ非道な手法で、農地強奪―軍事空港建設を強行し続けているのだ。

 八月衆院選において、自公政権に対する労働者人民の憤激を民主党が吸収したように見える。しかし、日本帝国主義が農民(人民)に対して何をなしているのかということは、成田空港建設こそが如実に示している。この帝国主義といかにたたかうのかということは、三里塚闘争に、その現地攻防の中にこそある。反対同盟の四十三年のたたかいに学び、その怒りをわがものとし、日帝打倒に立ち上がろう! 10・11三里塚現地に結集しよう!



 ●第1章 延伸滑走路供用開始粉砕!


 ▼@危険な暫定滑走路の運用を即刻中止せよ


 七月三十日に新誘導路の供用を開始した成田国際空港会社は十月、延伸滑走路供用開始を強行しようとしている。

 延伸滑走路と新誘導路はいずれも一〇年三月に供用開始の予定であったのを前倒ししたものである。世界恐慌の深刻化の中で航空需要は大きく落ち込んでおり、路線の廃止さえ行なわれている中で、延伸した暫定滑走路の供用開始を前倒しする緊急性など全くない。にも関わらず、十月供用開始を推し進めようとするのは、世界的な航空再編の中で国際空港の基準は大きく変わっており、成田空港は国際空港としての機能を果しえないことは明白だからだ。そもそも、暫定滑走路などという国際線の離着陸には使用できない滑走路を無理やり供用していること事態が、はじめから間違っているのだが、空港会社は、この暫定滑走路からジャンボ機を飛ばすことを強く意図している。北延伸で二千五百メートル化し、ジャンボ機を離着陸させれば、「二本の滑走路を運用する国際空港」だと言い張れると思い込んでいる。

 現在でも危険極まりない農家の上空四十メートルの殺人的離着陸を、ジャンボ機で強行するなどということが許されてはならない。無理にジャンボ機を飛ばしても、決してアジアのハブ空港たりえない。そこに生活する農民、そして、航空機の乗客も乗員も日々、事故の危険と隣り合わせで運用されることになる。こんな危険な空港建設―航空行政は根本的に間違っている。

 本年三月二十三日には、中国の貨物機が成田空港A滑走路で強風にあおられて着陸に失敗して炎上し、乗務員二人が亡くなるという事故がおきている。このとき、空港周辺には瞬間的に風速二十メートルの非常に強い風が吹いていた。しかし、これは、この日の特別な出来事だったのではなく、成田空港周辺はウィンドシェアと呼ばれる急激な風の変化が起きやすい場所なのである。そもそも、自民党の利権と政治的判断のみを優先し、国際空港には適さない危険きわまりない場所に成田空港建設を強行したことこそが最大の問題なのである。三月二十三日のような事故は、常に起こりうるし、もちろん暫定滑走路でも起こる可能性がある。住民の家屋・農地に隣接し、かつ、ずさんな計画ゆえに滑走路と誘導路が近接している暫定滑走路の場合は、事故の被害はさらに甚大なものになることは明らかである。起こりうる事故に備えるならば、危険きわまりない暫定滑走路を即時閉鎖し、成田空港そのものの閉鎖―撤去をなすべきである。

 しかし、空港会社は、この延伸滑走路供用開始が危険きわまりないことを承知した上で、生活破壊・営農破壊をさらに極限的に強める意図をもって、この延伸滑走路供用開始―ジャンボ機の離着陸という危険な計画を強行しようとしている。空港会社は、一日中続く極限的な航空機騒音と、オーバーラン事故の危険を突きつけることをもって、農民を叩き出そうとしているのだ。これまでの収用法攻撃、「話し合い」攻撃、軒先工事攻撃でも農民を追い出すことができず、この失敗のはてに「北延伸」に追い詰められた空港会社は、それでもなお南側への延伸を執念深く企てているのだ。空港会社の利害のためなら、人命すら関係なく、何でもやるということだ。


 ▼A第三誘導路計画粉砕!


 暫定滑走路そのものが国際空港とは言い得ない代物であるのに、七月に供用開始を強行した新誘導路でも十分な運用ができないとして、七月四日には第三の誘導路計画が公然化した。

 それは、現誘導路が狭くて危険で使いにくいから、とにかくもう一本の誘導路建設が必要だということだけで、東峰の森を破壊して、新誘導路なるものをむりやり建設してきたことの結果だ。現実には、七月三十日に供用開始した新誘導路は、滑走路を離着陸する航空機の下を二度も横断するという危険極まりない構造になっている。住民や乗客・乗員の安全をまともに考えていれば、計画段階でこんな危険はわかっていたはずだ。空港経営の競争だけしか念頭にない現在の空港会社社長・森中小三郎は、安全性を無視して新誘導路建設を進めたのだ。東峰の森を破壊し、東峰地区の農道をずたずたにして集落の日常生活を破壊するような工事を強行しておいて、使い物にならない危険な誘導路を新たに一本作っただけでした、という結果なのだ。こんなことを繰り返す空港会社が、会社として成り立っていること自体が面妖である。

 しかし、空港会社は何も反省などしていない。それどころか、この失態のために第三の誘導路を改めて建設しようと計画しているのだ。しかも最初の誘導路と第三誘導路は市東さんの宅地と畑を挟むように計画されている。市東さんを空港施設の中に封じ込め、孤立したかのような状況に追い詰めようという、悪辣極まりない意図に貫かれているのだ。

 森中は何を考えているのか。誘導路の挟み撃ちと農地強奪訴訟で圧力をかけ続けて、市東さんの農地を強奪することだけを考えている。こんな残虐な攻撃を絶対に許してはならない。暫定滑走路・誘導路即時閉鎖、空港廃港、空港会社そのものの解体以外にはない。

 反対同盟は、このような攻撃の中で7・5三里塚現地闘争をたたかいぬいた。新誘導路・延伸滑走路の供用開始、次に見る農地強奪裁判での空港会社、行政権力、司法権力の一体となった攻撃が激化している中で、現地闘争への結集を呼びかけた。暫定滑走路に突き刺さるように存在している開拓道路に、反対同盟を先頭に三百五十名の労働者人民が結集し、「用地内」デモをたたかいぬいた。反対同盟が発した「新誘導路計画粉砕! 闘争宣言」が全体で確認され、10・11全国集会への総決起が強く呼びかけられた。新誘導路の無残な失敗にも明らかなように、手段を選ばぬ攻撃を繰り返している空港会社こそが追い詰められているのだ。反対同盟を断固支えぬき、この攻撃を断固打ち砕こうではないか。



 ●第2章 農地強奪攻撃を打ち破れ


 ▼@ 司法権力も一体となった農地強奪裁判


 空港会社は、土地収用法でも、「話し合い」=切り崩し攻撃でも強奪することができなかった天神峰・東峰の農地を、あろうことか、農地法を逆手に取った訴訟で農民から取り上げようとしている。空港会社はこの攻撃を、「用地内」天神峰の市東孝雄さんに今集中してかけてきている。空港会社は市東さんに対して、農地の一部が「不法耕作地」だなどと言いがかりを付けて農地を取り上げようとする訴訟(耕作権裁判)を起こしており、その上で、市東さんの畑に対して農地法を「根拠」にした「明け渡し訴訟」(農地法裁判)なる農地強奪攻撃を重ねてかけてきている。

 しかし、農地法による農地強奪なる訴訟がなされ、かつ、裁判所がこの手続きを進めてきたこと自体が間違っている。この間違った裁判の根拠は、千葉県農業会議および千葉県知事が空港会社のそのまま受けて手続きを進めたためだ。反対同盟は、この違法性を突き、千葉県に対して行政処分取消訴訟(行政訴訟)を起こし反撃してきている。

 農地法裁判は、空港会社が昨年十月に提訴し、本年二月に開始された。

 この裁判闘争に臨んだ市東孝雄さんは、弁論直前の決起集会で「待ちに待った決戦の時がきた」と宣言し、空港会社の非道な攻撃と真正面から対決していく決意を明らかにした。土地収用法で奪い取ることができず、悪辣な買収攻撃も破産した空港会社が、農地法を根拠に訴訟の形式をとって改めて攻撃をかけてきたのである。これは四十三年間一貫した農地強奪攻撃であり、窮地に追い詰められた空港会社の超法規的な攻撃だ。

 七月二十一日に行政訴訟と農地法裁判の口頭弁論が行なわれた。反対同盟側弁護団は次の事実を明らかにした。空港公団(現空港会社)は市東さんの農地を地主から取得したとしているが、その取得は一九八八年までに行なわれており、空港公団は九六年まで本社を東京都内においていた。つまり、空港公団は不在地主だったのであり、農地法六条違反である。

 空港建設用地として取得していることは明白でありながら、農地法に基づいて農地の「明け渡し」を請求するなどという訴訟を起こしたがゆえにでてきた矛盾である。農地を農地として取得して農業を行なう意思のない空港会社が、農地法を根拠にした訴訟の原告になる資格などない。市東さんを被告として農地を明け渡せなどということ自体が本末転倒なのだ。こんな訴訟を裁判所が受理していることこそ誤っている。

 しかも、空港公団―空港会社はこの農地取得に際して、賃貸借関係にあった市東東市さんの承諾を得ておらず、通知すらしていない。こんな農地の取得方法自体が違法である。自作農育成を目的とした農地法の趣旨に根源的に反している。

 耕作権裁判においては、空港会社側が「明け渡し請求」を行なった土地の特定そのものが誤っており、訴訟として成立しない。弁護団は、市東さんが「不法耕作」していると空港会社側が主張している土地が石橋政次氏の小作地であること明らかにする証拠を提出している。空港会社は実測を行なっておらず、航空写真だけに基づいて「耕作地」と決め付けてきた。現実とはかけ離れた「測量図」をもって訴訟を起こしてきたのだ。訴訟を起こした、事実そのものが間違っており、こんな訴訟で農民の土地を取り上げることなど絶対にできない。

 農地法裁判、耕作権裁判、行政訴訟のたたかいの中で明確になってきたことは、空港会社の訴訟は農地強奪のための手段を選ばない攻撃だということである。そして、追い詰められた杜撰な訴訟であるがゆえに、空港公団―空港会社の歴史的な違法行為を自己暴露するものとなっているのだ。


 ▼A現闘本部裁判、証拠調べ打ち切り弾劾!


 空港会社は、市東さんの農地を強奪しようとして訴訟を起こす一方で、三里塚闘争の最初からの闘争拠点である天神峰現闘本部を強奪する目的の訴訟(現闘本部裁判)を起こし、法廷での攻防が展開されてきた。

 現闘本部裁判においては、木造建物と増設した鉄骨建物の二重構造が事実調べの一つの焦点であり、また、土地の所有者であった石橋政次氏および武司氏(長男)と反対同盟の間での貸借関係の有無がもう一つの焦点だった。反対同盟側は、この立証のために、現闘本部建物そのものの実地検証、また、石橋家と反対同盟の間の信頼関係と地代支払いの事実に関する証人尋問を請求してきた。

 仲戸川裁判長は、これまでの過程で非常に強圧的な訴訟指揮を繰り返してきた。反対同盟代理人弁護団の裁判長忌避の手続きを超法規的に踏みにじって、「被告」反対同盟と弁護団が出廷しない状態のまま開廷して、反証の機会を与えぬまま証人調べを強行し、さらには反対同盟側が申請した証拠・証人をことごとく却下してきた。しかし、反対同盟と弁護団、支援はこの攻撃を打ち破って、仲戸川裁判長に再考させ、最終的には北原さん、萩原さんなどの証人調べを行わせた。

 六月二十五日、現闘本部裁判の第二一回口頭弁論が行なわれた。四月二十三日の北原さんの証人尋問に続き、萩原進さんらの証人尋問をかちとった。萩原さんは、反対同盟と石橋政次氏、武司氏との関係について丁寧に証言した上で、天神峰現闘本部の土地に関しては具体的な賃貸借関係にあった事実を明らかにした。それとともに、証人尋問全体を通して、農民としての生活と苦闘を明らかにし、理不尽な攻撃を積み重ねてきた成田空港建設を弾劾した。

 北原さん、萩原さんらの証人尋問によって、現闘本部は賃貸借関係にあり、反対同盟に地上権があることは明白になった。ここに至って裁判所が行なわなければならないことは、反対同盟側に反証の機会が与えられていない証人尋問のやり直しであり、最後まで証拠採用の結論を先延ばししてきた現闘本部そのもの実地検証であった。反対同盟と弁護団は、この当然の証拠調べ決定を要求して意見を述べた。傍聴席からも裁判長への要求、批判が次々と投げかけられた。仲戸川裁判長は「合議」を行なった後、申請を却下し、証拠調べ打ち切りを宣言した。法廷は怒号の渦と化したが、裁判長は何の理由も明らかにすることなく、閉廷してしまった。
 空港会社に媚を売る仲戸川は最後まで事実を見ることを恐れ続け、国交省によって封鎖処分にされ続けている天神峰現闘本部を改めて封印してしまったのだ。真実を明らかにすることを本務とするはずの裁判官としてあるまじき行為である。


 ▼B現地攻防―法廷闘争を貫いて闘い、農地・農民を守り抜こう


 長期にわたる自民党政権の下で運輸省―国土交通省の利権の巣であった空港公団―空港会社は、まさに「国策」として成田空港建設を強行し、成田市や千葉県などの行政権力、そして千葉地裁をはじめとした司法権力を巻き込んできた。現在、千葉地裁で行なわれている三里塚に関する訴訟は、この行政権力、司法権力が一体化した人民弾圧攻撃である。

 訴訟の相手が反対同盟であるから、適正手続きも法そのものも無視していいかのような訴訟が強行されている。市東さんが一人の農民として三里塚の地で農業を続けていくということを、侵略反革命拠点建設のために圧殺しようとしている。大木よねさんをはじめとして空港反対闘争をたたかってきたすべての農民に対して日帝国家権力が四十三年間にわたってなしてきた暴虐が、今最も集約された形で市東孝雄さんにかけられている。一人の農民を押しつぶし、すべての権利を奪い去ることで、反対同盟をつぶし、三里塚闘争そのものを圧殺しようとしているのだ。

 市東さんにかけられた攻撃、一人の農民から農地を強奪する攻撃、この攻撃は日本の階級闘争の根幹に位置するたたかいを叩き潰すことを狙った攻撃である。いかに、法律に基づく訴訟を装ってはいても、これは農地強奪攻撃―三里塚闘争破壊の攻撃である。この残虐きわまりない攻撃に対して、三里塚現地攻防―法廷闘争貫いてたたかい、絶対にこれを阻止すること、これが決定的に問われている。

 市東さんの農地を守るたたかいは、市東さんのたたかいであり、反対同盟全体のたたかいであり、日本の労働者階級総体が担うべきたたかいである。北原事務局長は常々、三里塚でまず勝利しようではないか、と呼びかけてきた。それは、三里塚だけの勝利を言っているのではない。労働者階級人民の反帝闘争の拠点である三里塚闘争での勝利は、全国の住民闘争、反基地闘争、反戦闘争に波及する。だからこそ、全人民の闘争拠点という位置づけをもって結集し、巨万の人民の力を突きつけて空港会社を追い詰めていくことが、喫緊の課題なのである。



 ●第3章 今こそ反帝闘争の拠点―三里塚に決起せよ!


 ▼@日本帝国主義の危機の深化


 八月三十日の第四十五回衆議院選挙で、自民党・公明党が大敗し、民主党が三百八議席を獲得して、政権交代が決まった。小泉、竹中が進めてきた新自由主義政策が急激に加速した格差と貧困化、そして米帝と一体化した侵略反革命戦争参戦・軍事基地再編に対する人民の憤激は、自公を拒否し、民主党を選択した。

 民主党の勝利と報じられる今回の衆院選だが、われわれが第一に捉えるべきことは、現代帝国主義がたどり着いた新自由主義政策に対する労働者階級人民の怒りが、この選挙結果をもたらしたということだ。

 小泉、竹中、あるいは中川秀直が進めた政策は、米帝の新自由主義グローバリゼーションを全面的に賛美し、金融バブルの膨張に相乗りすることで経済成長が展望できるかのように幻惑したが、新自由主義政策によって、労働者の非正規雇用化が徹底的に進められ、再建の展望なしに農業―地方経済への財政を削減していった。そして、〇八年九月の米国発金融恐慌が、新自由主義の幻想を打ち砕いた。恐慌の深化の中で、派遣切りから始まった雇用削減の攻撃はますます強まっている。失業率は上昇し続けており、七月の完全失業率は過去最高の5・7%に達している。新自由主義政策が労働者人民の生活を破壊し続けていることは鮮明になっている。安倍、福田、麻生政権においても、小泉・竹中の新自由主義政策を真っ向から批判する論議と政策は打ち出されはしなかった。自民・公明の下で政権が入れ替わっても、生活破壊が止まらないことを労働者人民は感じ取ったのだ。

 日本労働者階級人民は、直面している経済的困窮ゆえに、その根源的原因となった現政権=自公政権への怒りを、民主党への投票という行動として表現した。しかし、自公政権の問題は行き過ぎた新自由主義ということにとどまるものではない。この怒りは階級的な根拠に基づくものであり、現在深化する恐慌の意味をしっかりと捉えなおすならば、帝国主義批判―資本主義批判へと進む必然性を持っている。

 第二に捉えるべきことは、日本における政権交代が、米帝を中心国とした戦後世界体制の崩壊過程の中で起こっているということだ。

 米帝を中心国として編成されてきた戦後資本主義体制が七四―七五年恐慌以降崩壊してきた中で、帝国主義各国は国家独占資本主義政策をとりえなくなった。欧州各国帝や日帝の機軸産業の成長は、相対的に米帝の経済競争力をそぎ落としてきた。八〇年代から九〇年代にかけてのNIEs・ASEAN諸国の工業化の進展、さらに今世紀に入ってのBRICsの経済成長は、そこに帝国主義国の直接投資や投機があるとはいえ、工業化と市場を改めて世界規模で拡大するものとなった。米帝は、実体経済において、他帝や新興国に追いつかれ、追い抜かれてきた。そして、EU統合とユーロの本格的流通、あるいはロシア、中国の国際政治での力の強化は、米帝の世界的覇権を削ぐことにもなってきている。

 九〇年代から今世紀にかけて米帝は、金融の強化、そしてアフガニスタン戦争・イラク戦争という軍事力の発動をもって、中心国としての位置を死守しようとしてきた。ドルが基軸通貨であるということによって、世界最大の経常赤字と財政赤字を積み重ねてきた。米投資銀行が世界中から投機資金を集め、大規模な投機を主導することによって収益をあげるという資金の流れを作り出した。米帝国主義が、厖大な投機資本の循環の中心に位置することで、世界経済総体から収奪するしくみであった。昨年九月のリーマン・ブラザーズ破綻から始まった瓦解は、米帝経済の一時のバブルを吹き飛ばすということでは収まらなかった。むしろ、この恐慌の中で、米帝の腐朽した実体経済が露呈してしまった。

 金融の規制撤廃と、情報技術の発達を根拠にした世界規模での資金の流動が、金融業における米帝資本の独占的位置を可能にした。しかし、それは中心国米帝の実体経済の空洞化と巨額の借金によって、それ以外に選択肢のないところに米帝が追い詰められてきた結果なのだ。世界規模での戦争に着手したブッシュ政権は、父親ブッシュの九一年の中東戦争のように、他帝をはじめとする同盟国を動員し、米帝が政治的軍事的に世界を領導できると捉えていた。しかし、ブッシュ政権は、アフガニスタン戦争もイラク戦争も本当に終結させることはできなかった。むしろ、世界中で反戦闘争が拡大し、反米諸国は増大している。

 金融と戦争によって世界覇権を奪還できないことは鮮明になった。日帝―自公政権も米帝の失墜の中で大きな打撃を受けた親米政権の一つである。この大きな流れの中で、小沢―鳩山民主党が、米帝従属からの脱却―アジアへと軸心を移すことを掲げたのは当然のことだ。しかし、民主党は労働者階級の利害に立った党ではない。日本帝国主義ブルジョアジーの利害として、米帝からの一定の自立、アジア経済圏構想を明確にしたのだ。

 EUが地域統合を進め、ロシア、中国が力を増す中で、米帝の忠実な同盟国だった日帝がアジアの帝国主義国として自立しようとしている。これは、米帝の世界支配構造の瓦解の歴史的流れの進展としてあることは間違いない。民主党政権の成立を待たずに、米オバマ政権や米ジャーナリズムは鳩山批判を始めた。鳩山の主張を「市場原理主義批判」、「グローバリズム批判」と強調して反批判し、また、民主党が掲げた普天間基地の「県外移設」に敏感に反応して米軍再編の見直しには応じないと外交交渉前から主張している。


 ▼A反戦の砦としての三里塚闘争の位置


 帝国主義各国は、世界恐慌の深化の中で、国内階級支配の危機に直面している。民主党は日帝ブルジョアジーの利害を代表し、この危機を乗り切るべく登場してきた。われわれは、労働者階級人民がこの民主党に包摂されるのではなく、その憤激を解き放ち、その本来のたたかい―日本帝国主義打倒へと立ち上がるべく、この時代の危機の意味をさらに強く訴える。民主党を軸にした新政権が登場する今秋において、三里塚闘争がもつ意味は重大である。日本帝国主義の本性がむき出しになってきた軍事空港建設強行を四十三年にわたって粉砕し続けてきた三里塚闘争こそが、民主党の甘い幻想を突き崩すのである。徹底した反帝闘争の実践があってこそ、帝国主義批判は現実的な意味をもつのである。

 三里塚闘争は四十三年前、そのたたかいが開始された当初から、北富士闘争をはじめとして反基地闘争、反戦闘争との結合の中で、その闘争が形成されてきた。ベトナム戦争のただ中で決定された成田空港建設は、まさに戦争を見すえた軍事空港建設である。現実に自衛隊派兵の拠点、そして、治安弾圧の拠点となってきている。反対同盟はこの事実を見定めて反戦闘争として空港反対闘争をたたかい抜いてきたのだ。

 今、市東さんにかけられている農地強奪攻撃を始めとした空港会社の攻撃は、日本農民総体に対する日帝資本の攻撃として意味をもっている。危機に瀕した日帝資本は、民主党をブルジョア政党として押し上げながら、資本の利害を貫く政策を執行させようとする。鳩山は「私の政治哲学」の中で、その政治信条が反共であり、また、国家目標として「東アジア共同体」を掲げることを明らかにしている。今三里塚にかけられた攻撃を全国の住民運動との結合の中で打ち破っていくことが重要である。「国策」―侵略反革命拠点建設を三里塚の地で粉砕し、日帝の国家目標に痛打を浴びせていくことである。日帝の国家目標を打ち砕くたたかいは、全国の住民運動に勇気を与えるとともに、日本の反帝闘争の国際主義的な意義を鮮明にするものである。


 ▼B全国の住民運動との結合を再度強化しよう


 民主党を軸にした政権の登場と米帝の外交的軍事的重圧は、より具体的に米軍基地再編問題において重要な意味をもってくる。この情勢下にあって、沖縄人民の反基地闘争、そして、三里塚農民の軍事空港反対闘争は、反帝闘争拠点としての意義が改めて確認されていかなくてはならない。

 米帝にとって、自公政権の瓦解は一つの衝撃となっている。米帝は、米軍再編強行を日帝―民主党への重圧としてかけてきている。民主党は自公政権批判の一環、そして沖縄での選挙戦術として「県外移設」を表明せざるをえなかった。米帝の重圧が強まっても、この民主党の公約は実行させなければならない。当然、これは、普天間基地の無条件即時返還―辺野古基地建設阻止でなければならない。

 沖縄では自民・公明が全敗し、民主党、社民党、国民新党が勝利している。山口でも米軍再編に反対する民主党候補が当選している。民主党総体がその基地反対の主張をどこまで貫くのか、幻想をもつことはできない。しかし、米軍再編の当該地域における選挙戦は、住民にとって基地反対の政治行動としてなされたことは明らかである。選挙において、自公の利益誘導ではない選択がなされてしまったのだ。この選挙公約を反故にすれば、基地撤去を選択した住民の意思を踏みにじることになる。

 国会においてグアム協定に反対し「普天間基地の県外移設」なる公約を掲げた民主党だが、鳩山は、日米安保そのものをはっきりと認め、日帝の独自武装を強め、新「大東亜共栄圏」構築をめざすことを宣言している。鳩山民主党は、軍事基地撤去をアイマイにしていく可能性は十分にもっている。沖縄人民とともに、普天間基地即時無条件返還―辺野古新基地建設阻止を、この情勢下においてこそ徹底的にたたかうことが問われている。
 われわれは、反帝闘争として沖縄、岩国、神奈川をはじめとした全国の反基地闘争をたたかいぬいていく。今、三里塚闘争が沖縄解放闘争と結合して、勝利に向けたたかいを進めていくことは重要な意義をもっている。農民、労働者をはじめとする全人民は、その憤激をブルジョア政党―民主党にからめとられてはならない。自らの解放をかけたたたかいとして、10・11三里塚に決起していこうではないか。


 

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