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 ■KMUのISA(国際連帯行動)に参加しよう
  
  
労働者人民の国際共同闘争を推し進めよう




●1章 ISAに参加し国際連帯運動の前進を闘いとろう

 フィリピンの左派ナショナルセンターKMU(「五月一日」全国労働センター)が主催する国際連帯行動(ISA)が四月二十九日から五月六日までマニラで開催される。そしてその直後の五月七日から十五日まで、十日投票のフィリピン総選挙において予想される権力による不正行為監視のために国際監視団行動が組織され、ISA参加者は全国各地の民衆組織とともに展開をおこなう。ISAは、今年で二十六年の歴史を数える。フィリピン労働者の営々たる歴史的闘いを継承し、一九八〇年に結成されたKMUはマルコス独裁の集中砲火をあびつつもひるむことなく闘い続けた。このKMUを国際的に支援しようと世界の労働組合がマニラに集まってISAは誕生した。以降ISAの場は、冷戦の終了とともに開始された新自由主義的グローバリゼーションとたたかう世界の労働者の交流と統一的反撃の場となり、KMUはその拠点としての位置をふみかためてきた。今年のISAは、「すべての人々にもうけ主義ではないまっとうな職を与えよ。帝国主義的グローバリゼーションの危機と継続している対テロ戦争と対決しよう」のテーマのもとで開催される。五月一日にはマニラの中央メーデーに参加し、二日―三日の地方エキスポージャーに参加し、四日―五日に国際会議をおこなうという日程である。そして、ISA終了後、可能な参加者は八日より監視団活動に加わる。
 われわれは次のような目標のもとにISAに参加しようではないか。
 まずなによりもフィリピン人民のたたかいへ支援、連帯をすることであり、その中心的勢力であるKMU労働運動に連帯することである。ほぼ十年にわたるアロヨ政権の暴政、それを背景で支えてきた米帝の世界支配、二〇〇八年九月以降の全世界を襲った金融危機・恐慌のなかで、フィリピンの労働者人民は塗炭の苦しみをおしつけられた。これに対し、KMUと人民は敢然とたたかい全世界の労働者に檄を発し続けてきたのであり、そのことによって世界的な帝国主義とたたかう戦線を堅持し強化してきた。ISAへの参加によってフィリピン労働者のたたかいを共有し、連帯の戦線を拡大しなければならない。
 第二に、ISAに結集した世界各国の労組・活動家との共同討論・交流を通じて、グローバリゼーション下で国境をこえて共通の攻撃にさらされている労働者同士が具体的に支援しあい、連携した闘争をつくりだし共同の反撃をおしすすめねばならない。また、敵の攻撃の分析を深め、運動の経験を学び、それを通じて自国での闘いを前進させることである。
 第三に、とくに今年はフィリピン総選挙の年である。人民がアロヨ政権永続のいかなる策動をも絶対に許さず、また人民の利益を代表する候補者を擁立して「政治の根本的な変革」にむかって弾圧に屈せず闘っている。これを全力で支援することである。


●2章 5月総選挙に向け激化するフィリピン階級情勢

 フィリピン政治はいま五月十日予定の総選挙にむけてつきすすんでいる。大統領以下、国会議員、地方首長・議員を選出するのである。
 この選挙の焦点の一つは、徹底して反人民的・人権弾圧的なアロヨ政権の実質的な永続を許すのか、否かという点にある。またもう一つは利権を結合軸にした旧来の伝統的政治家および政党、政治風土を批判し、民衆の運動によって変革をよびかける民族民主勢力の選挙戦がいかなる結果をもたらすのか、にある。他国と同様に、いやそれ以上に、フィリピンの選挙は既成政治家の甘ったるい口約束と個人人気投票の色彩に彩られている。しかし、現実に進行している事態は、政府発表ですら失業率11・2%、貧困者率33%、しかもそれが年々上昇しているという事態である。また、慢性的な財政赤字のなかで財政支出の43%が借款返済に消え、それに伴って医療、教育などの社会サービスの減少が人民の生活苦を深めるという事態である。既成政治家がこの現実に一指もふれないなかで、人民の憤激は増大し、みずからの権利と要求はみずからの権利と要求はみづからの力でかちとるしかない、という確信を増大させている。
 現在、大統領選については、「自由党」から、昨年死去したアキノ元大統領の息子ノイノイ・アキノ上院議員、マルコス元大統領の流れをくむ「国民党」から実業家ヴィラール上院議員、第二のピープルズパワーによって弾劾解任され、復権をめざす前大統領エストラーダ、そしてアロヨ政権を継承するテオドロ前国防相の各候補を中心に選挙戦がくりひろげられている。このようななかで、民族民主勢力は昨年四月、過去三度にわたる下院議会選挙の成功を踏えて中央政治にも地方政治にも変革の風をもちこもうと、民族民衆の選挙連合をたちあげた。この選挙連合は「国家主権の擁護」「民衆の貧困の解消」「自立的な経済建設」「分配の平等」「人権擁護」「公正で永続する平和」「環境保護」「民衆運動の強化」などの公約を掲げ、草の根の活動家、議員に広く結集をよびかけた。そして以降、下院で活動実績を積んだバヤン・ムナ党のサトール・オカンポ議員、ガブリエラ女性党のリサ・マサ議員の上院選挙への出馬を決定し、上院、下院双方の選挙運動をとりくんでいる。
 これに対して、アロヨ大統領は国家権力、資金、暴力装置のすべてを投入して政権の永続化を画策し、人民に敵対している。
 アロヨは二〇〇一年、当時の腐敗したエストラーダ政権を追放した民衆の決起によって副大統領から大統領に就任した。以降、二〇〇四年の選挙では現職の大統領として軍隊、政府機関を動員してマルコス以降最悪の不正選挙を行い大統領の座をかすめとった。そして、米帝国主義の意に忠実にそって、イラク侵略を支持し、米軍のフィリピン駐留を拡大し、新自由主義グローバリゼーションの尖兵を務め、フィリピン社会の二極化と荒廃を一段と推し進めた。これに対する人民の怒りと抵抗にたいしてはこれまたマルコス独裁に匹敵する弾圧でもって応えた。とりわけ在任中の十年間に、軍隊・警察が公然・隠然と関与して法的手続きなど無関係に政治的殺人を行い、アロヨ政権を批判する政敵、労働者、市民など千人以上もの命を奪った。加えて二百人以上が誘拐などでいまも行方不明になっているという事実は世界を震撼させた。またアロヨ一族郎党がすさまじい汚職によって私腹を肥やし人々の怨嗟をかった。この空前の汚職と超法規的な政治的殺人事件のゆえに権力を手放したとたんに処罰されることを予見し、アロヨは在任中から権力を任期以降も長期に保持する策動をくりかえし試みた。それが憲法改悪策動である。「大統領は一期六年間だけ」と定められた現行の憲法規定を「議院内閣制」へ変更し、下院の与党多数を利用してみずからを首相に任命させ、長期的に権力を掌握しつづける策動である。昨年のアロヨの改憲策動もあまりに露骨な意図を見抜いた大衆的批判の前に挫折させられ、いま表面的には五月の選挙というレールが敷かれている。しかしもちろん、アロヨ政権の策動はなくなったわけではない。今回、はじめて導入した電子投票によって票のごまかしが可能となる危惧もさまざまな形で表明されている。また、みずからが今回下院議員選挙に立候補しており、当選して議員内閣制を実現して首相の座につくことを狙っている。さらに、選挙戦に乗じて社会的混乱を演出し選挙を延期する、あるいは戒厳令を布告して権力を維持する、とかの手段がひそかに準備されているのである。
 実際、これを裏書きするように、昨年十一月二十三日、大惨事が起こった。ミンダナオ島の南部のマギンダナオ州で、次期州知事選への立候補届けにいく途中の現副町長関係者の一団が武装集団に襲われ、五十七名が拉致、虐殺された、という事件である。同行していた候補者の妻・親族、弁護士、新聞記者も巻き添えの犠牲になった。総選挙戦ごとに三桁にのぼる殺人事件がおきるフィリピンにおいても、この事件は全社会を驚愕させ、国際的にも大きな衝撃を与えた。この犯行はこの州で行政権のみならず、警察、軍隊、司法などほとんどの権力を実質的に支配している現在の知事アンパトゥアンとその一族によって行なわれたものであった。その権力を半永久化するために、対立候補の立候補そのものを不可能にしようとしたものであった。しかもこの知事一族は前回の大統領選挙でアロヨ当選のために投票の水増しなどの露骨な不正行為をほしいままにし、以降アロヨ政権と癒着して膨大に私服を肥やしてきたことで有名であった。
 人々の憤激は高まった。地方において国軍、警察を支配し、みずからも私兵、民兵を保持し、武器・弾薬を軍警察から横流しさせ、暴力的に恐怖政治を布いている地方権力者にたいして。武装した地方権力者どうしの利権をめぐる抗争にたいして。そしてそのような権力者を容認し、利用し、結託しているアロヨ政権にたいして。空前の大きな犠牲者をだした事件が、長年にわたってフィリピン社会を腐敗させてきた構造への怒りに火をつけたのである。これにたいしてアロヨ政権は、この州に戒厳令を布告することで応えた。戒厳令布告は憲法を停止して一切を軍・警察の統治下におくものであり、悪名高いマルコス大統領が布告した一九七二年以来のことである。しかもこの種の件での布告は憲法の規定にも反し、かつ一州にのみ発動することは前例のないことであった。この戒厳令は、当然ながらフィリピン人民と社会全体から激しく批判され、アロヨは一週間で解除せざるをえなかった。しかし、この戒厳令布告は偶発的なものではなく、当初から計算されたものであった。アロヨは軍・警察の権力を直接発動して、アンパトゥアン一族を収監してその口を塞ぎ、また彼らとアロヨ政権との癒着関係・過去の選挙におけるアロヨ当選のための不正行為、票の水増しなどの証拠を一切消去せねばならなかった。同時にまた、みずからが狙っている不正選挙が露見し失敗した場合でも、選挙をめぐる事件・トラブルをデッチあげ、「選挙の不成立」を宣言し、「戒厳令布告による全権掌握―アロヨ大統領の継続」というシナリオを準備している。今回の戒厳令布告はそのための予行演習であり、全国的な布告による批判を避け、一州でも実験することはアロヨにとって充分に意味のあることであったのである。そもそも、この政治的虐殺事件そのものが、軍・警察のしくんだ事件である可能性が疑われるものである。襲撃側に警官が参加していることが現認されており、被害者側からの立候補届けの防衛の要請を軍・警察が事前に拒否していたなどは不可解なことであり、軍・警察が事件の発生に関与し、政府が事件を誘導した可能性は大きいのである。
 さらに今年に入って二月六日、マニラ首都圏に隣接するリサール州で、医師二名、助産師をはじめ、受講生である草の根の保健衛生ボランティアなどを含む四十三人もの人々が、医療NGOの技術講習会のさなかに軍・警察の急襲をうけ、全員が軍のキャンプに連行された。この団体はフィリピン各地に医療団を派遣するなどの活動をおこなっている著名な保健福祉活動団体であり、政府の貧弱な医療体制に苦しむフィリピン社会において重要な役割を担っている。当日朝六時、突然三百人もの武装した軍人・警官が講習会の会場である医師の所有する家屋を包囲し、なんらの令状も示さず「これはNPA(新人民軍)の爆発物製造活動である」との容疑を捏造して家宅捜査をおこない、みずから持参した銃・弾薬を押収品だとデッチあげて全員を逮捕したのである。これは権力の常套手段であるが、あまりに露骨な軍・警察のこの人権侵害に対していま、国内のみならず国際的にもごうごうたる批判がまきおこっている。このなかで権力が逮捕者を拷問し「NPAである」との虚偽の自白をひきだしたという経過も明らかになってきたが、軍はあいかわらず家族、弁護士などの面会をも拒否し、逮捕された人々の拘束を続けている。これは明らかにあらゆる民衆運動、人民のがわの選挙運動にたいしてアロヨが「共産党」「NPA」のレッテルを貼り、選挙運動を封殺せんとする攻撃に他ならない。地方においては軍隊が公然と戸別訪問をおこない、人民派候補に投票しないよう恫喝して回り、また選挙運動員を弾圧している。
 政府は三月には米比合同軍事演習「バリカタン」をおこなうことを発表した。アジア太平洋における米軍再編と連動しておこなわれる演習であるとともに、これを通じてフィリピンの広範な演習地域において軍による実質支配と民衆運動への弾圧、選挙運動の妨害がもくろまれている。
 五月選挙が近づくにつれて、このような民衆運動にたいする弾圧はますます増加していく。アロヨ政権は退陣後の訴追を心底恐怖し、それを避けるために権力を持続しようと不正選挙―選挙の取り消しと戒厳令布告―改憲を含めあらゆる手段に訴えんとしている。これに対してバヤンをはじめ市民運動、労働運動、教会関係者などが、不正選挙と選挙不成立の事態を予見し、すでにこの兆候がみえることに警告を発し、選挙を監視する大衆キャンペーンを始めた。そして大衆にたいして、ボランティアとして投票監視行動に参加するのはもちろん、政権の不正行為や戒厳令布告などの事態にたいして決起するようよびかけている。
 このようななかで、本年のISAは帝国主義とアロヨ政権によるいっそうの生活と権利の剥奪、暴力支配にたいして決起するフィリピン労働者人民の反撃の場であり、引き続く全世界的な戦争とグローバリゼーションのもとでの生存権の危機にたいする世界労働者人民の共同反撃の場となる。ISAに参加してこの闘いをともに勝利しようではないか。

 

 

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