共産主義者同盟(統一委員会)

 

■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

ENGLISH

■リンク

 

□ホームに戻る

  ■「2011経労委報告」を批判する

  ブルジョアジーの横暴許さず春闘を闘い抜こう




 「労使一体となってグローバル競争に打ち勝つ」と銘打った「経営労働政策委員会報告 2011」〔以下「経労委報告」とする〕が発表された。日本経団連が毎年発表するこの報告書は、怒りなしには読むことができないものだ。


 ●1章 危機の矛盾を労働者に押し付ける経労委報告

 一月二十七日米帝の格付け会社スタンダード・アンド・プァーズが日本の長期国債の格下げを発表した。世界的な資本主義経済の破綻とそれを乗り切るために行われている経済争闘戦の結果、現在の日本経済がある。こうした事態の中で「経労委報告」は、「地方の中小企業は、雇用維持が精一杯というなかで深刻な打撃を受けており、地域経済が一層疲弊しかねない状況となっている。国内工場立地の低迷が続くわが国で、今後とも、円高傾向が続くならば……『製造業のうち四割が生産工場や開発拠点などを海外に移転、六割が海外での生産比率を拡大』することにとどまらず、『国内に残すはずの本社機能や、研究開発などの高付加価値拠点の海外移転の増加』という、日本経済にとっての最悪のシナリオが現実となることが避けられない」「投資マインドも一段と萎縮されることが懸念される」と分析している。まさに日帝ブルジョアジーの断末魔のあがきが聞こえてくるようだ。資本主義は、資本主義である以上こうした矛盾の中自己の延命を図らざるを得ない。そして、さらなる泥沼へとはまっていく。こうした沼地へと労働者階級人民を引きずりこむことを目的としてこの「経労委報告」は書かれている。
 「経労委報告」では、囲み記事として「雇用への影響が懸念される最低賃金引き上げ問題」について書いている。「最低賃金の引き上げは……中小零細企業の生産性向上が不可欠であり……前提を満たさずに最低賃金の引き上げだけが行われれば、中小企業の経営、ひいてはそこで働く従業員の雇用への影響が強く懸念される。……特定最低賃金(旧産業別最低賃金)はその存在意義を完全に失っており、地域別最低賃金の動向を踏まえて順次廃止していくべきである」と最低賃金の引き上げを求める労働者・労働組合をけん制している。大企業の下請けとなっている中小零細企業を苦しめているのは「受注調整・単価切り下げ」を行っている大企業の横暴である。そして「貸しはがし」やはげたかファンドによる乗っ取りをおこなっている銀行などの金融資本である。中小零細企業を苦しめているのは最低賃金の引き上げではなく大企業である。昨年も最低賃金の引き上げが行われ、全国加重平均七百三十円、前年より十七円のアップが行われた。しかし、これでもワーキングプアとなり「働いても、「健康で文化的な最低限度の生活水準」を満たすことはできない。加えて最高の東京八百二十一円に対して沖縄や鹿児島などは六百四十二円になっており、地域格差が広がっているのである。最低賃金の引き上げ(千円)は急務である。日帝ブルジョアジーの敵対を粉砕して勝ち取っていこう。


 ●2章 青年が起ち上がって労働運動の未来を切り拓こう

 今回の「経労委報告」では、「成長を支える人材の確保・育成」を大きな柱としている。「日本企業の強みとは @)長期雇用を前提に、従業員にノウハウや技術を蓄積して競争力強化が図れる点 A)従業員同士がチームワークを発揮して質の高い業務を遂行できる点 B)企業の成長と従業員の生活向上をともに実現する、良好な企業内労使関係が構築できる点 などが挙げられている。今後とも、これに磨きをかけ」るべきと書いている。ブルジョアジーどもは、自ら破壊してしまった「日本企業の強み」を持ち出しているのである。長期雇用を破壊し、不安定雇用を増大させたのは誰なのか。技術のある労働者を「賃金が高い」と言って追い出したのは誰なのか。チームワークを破壊する「成果主義賃金」を導入し、労働者相互に不信感と疑心暗鬼をもたらしたのは誰なのか。儲かっても、資本家や株主への利益配分のみを行い、企業内の留保金を溜め込み、労働者の生活向上には涙金すら払わないのは誰なのか。自ら破壊してしまったもののうえに成長を語るのは、夢想家には許されても資本家には許されない。「コミュニケーション・スキルを高めたり、中堅リーダー職が部下に対して『適宜適切に指導し、熱く語る』ことを意識的に行う」などに至っては、テレビドラマも顔負けの絵空事である。
 二〇一〇年十二月一日現在で発表された大学生の就職内定率は、68・8%である。「大学は出たけれど」就職先がないという現実に苦しんでいるのである。しかし、こうした彼らに対して「若者の内向き志向が懸念される」「近い将来には、グローバルに活躍できる資質を備え、かつ、強い向上心をもった高度外国人との競争も一層激しくなることが想定される。高度外国人と伍していける能力と気概を高める努力が、日本人の求職者に求められている」とムチ打つのである。一方で、「早い段階からの職業意識の醸成」と即戦力としての人材の輩出を「産学連携」で行うとしている。つまり、一握りのグローバルな人材の育成にのみ力を入れると宣言しているのである。また、「中堅、中小企業とのミスマッチ」として、採用意欲のある中小企業に就職活動が向かっていない、また、就職しても直ぐ辞めてしまうのが問題であるかのような書き方がされている。しかし、現実には、多くの労働相談が示すように、大企業でさえ労働基準法を守らない行為が横行している実態があるなかで、多くの中小企業が未だに前近代的な労務管理を行っており、多数の「ブラック企業」とよばれるところが存在している。こうした企業に対して日本経団連としての適切な指導をおこなうことなく、労働者の側に責任があるかのように押し付け、「就職活動期間の短縮」や「既卒未就業者への雇用拡大」をしたところで若者の失業問題は解決しない。また、「意欲のある若年労働者に対して登用制度などを通じ正規労働への道を開くなどの取り組み」をおこなうとしているが、郵政で行われたゆうメイトの正規職への登用に現われているようにほんの一握りのしかも組合所属による差別・選別採用が行われるのである。ブルジョアジーの利益を生み出す人間のみが救われるこのような動きを許してはならない。青年労働者を組織し、労働運動の未来を切り開こう。


 ●3 「経労委報告」を許さず11春闘に勝利しよう

 また、「多様な働き方を可能とする基盤の確保」として「正規労働のみを理想型とし、これに収斂させるのは適切ではなく、多様な働き方を可能とする労働市場を維持していくことは雇用のミスマッチを解消し、新たな雇用を生み出していくうえで欠かせない」として派遣法の改正に向けた闘いに敵対することを宣言している。「製造業務派遣の原則禁止などが、生産拠点・体制の見直しに与える影響が懸念される」「改正法案に盛り込まれた雇用契約申し込みみなし規定(違法派遣を受け入れている企業は、その労働者が労働契約を申し込んでいるとみなす規定)も、発動要件の明確化が図られなければ、派遣先の予見可能性の担保がままならず、結果として労働者派遣の活用が減退し、雇用機会の縮小につながるおそれがある」等、不十分な派遣法改正すら行わせない決意が示されている。派遣法の抜本改正を求め引き続き闘い抜こう。
 また、働いても生きていけないワーキングプアが問題となっている今日、「経労委報告」では、労働者の均等待遇の要求に対して敵対的な次のような論理が展開されている。「わが国の『同一価値労働同一賃金』の考え方は、『将来的な人材活用の要素も考慮して、企業に同一の付加価値をもたらすことが期待できる労働(中長期的に判断されるもの)であれば、同じ処遇をする』ととらえるべきである。……同じ時間働けば同じ処遇とするということは、かえって従業員間の納得性は低下する」としている。また、「個々人が生み出す付加価値を適宜処遇に反映する必要性が高まっている。仮に処遇の一部に強い年功色が残ったままであれば、有期労働契約の従業員も含め、意欲と能力のある従業員のモチベーションの維持、向上を阻害しかねない」としている。資本にとって有益な価値を同じように生み出す人には同じ処遇をおこなうというこの論理は、資本家のご都合主義でしかない。しかも経労委報告が語る「同一価値労働同一賃金論」は国際的にも認められないまったくのでたらめな論理である。ILO一〇〇号条約などで述べられている、本来の「同一価値労働同一賃金」を、まったく正反対の意味にねじまげるものである。本来それは、同じ労働力を使う同等の職務には、同じ賃金を支払え、というものであり、雇用形態や性別・人種などによる差別是正を目的とするものである。われわれは、最低賃金制度の改善などにより、賃金の底上げを行わせると同時に、あらゆる格差と差別を解消させていく取り組みを強化しよう。
 また、「経労委報告」では、賃上げに対して「賃金の決定にあたっては、基本給のほか、手当、賞与・一時金、福利厚生費なども含め、すべての従業員に関わる総人件費を管理する観点から、自社の支払い能力に即して判断することが重要である」として、「労働側の……一九九七年当時賃金水準に戻す……復元ありきの主張は適切とはいえない」と一九九七年から全労働者の賃金が六十万円も下落している事実と責任を放棄し、「労働側は賃上げによって内需を喚起することも主張している……期待通りに消費支出にはつながらない……企業活動を早期に活発化させることで雇用の機会を生み出していけるように、政労使が協力していく発想が強く求められている」と相変わらず総人件費抑制を行い、雇用を生み出すためにと称して労働側に労働条件の改悪を迫ろうとしている。また、「非正規労働者の処遇改善には、総合的視点が必要」と「賃上げ交渉に終始することなく……処遇の納得性を高めるほか、必要に応じ、正規労働者の賃金決定方法、賃金カーブを含めた検討が求められる」と低いほうにあわせることさえ目論まれている。さらに、「内部留保の取り崩しによる賃上げ論の不合理性」にいたっては、多額の内部留保金を有していることを暗に認めながら「その確保は、企業の発展に不可欠なものである」として取り崩しを拒否している。総務省の「法人企業統計」によれば、資本金十億円以上の大企業五千社(金融・保険は除く)は、〇九年度に二百五十七兆円もの内部留保金を溜め込んでいる。前年比で7%増、十六兆円も増えている。しかも、菅内閣は、「成長戦略」と称して「法人税の実行税率の諸外国並みの減税」により、40・69%から35・64%に法人税の引き下げを行うことになった。しかし、この減税すら「経労委報告」では「国際的にみて依然として重い」と言っている。しかもこの減税による効果で儲かった分は、内部留保金にまわすことが目論まれている。労働分配率の低さについては「労働分配率は賃金決定の基準とならない」とし、「株式配当が増えていることを問題視する見方もある。しかし……外国人株主比率の高まりを背景に経営や配当政策にかかわる要求度が増している」「役員報酬の水準の高さ……を指摘する向きもあるが……日本企業は欧米企業に比べて低いとされている」等々と自分たちさえよければいいというブルジョアジーの身勝手を絶対に許すことはできない。
 今、まさに全世界で資本主義の矛盾が顕になり、この矛盾の解決を労働者民衆へのしわ寄せで乗り切ろうとする攻撃に対して反撃の闘いが始まっている。エジプトでは、長期政権下で広がった貧困、格差、失業の解決を求めてムバラク大統領退陣要求を掲げるデモが連日取り組まれている。昨年は、アイルランドでIMF融資の融資を受けるために行われようとした増税・福祉削減に反対するデモが十万人規模で行われ、フランスでは「年金改悪反対」の抗議行動が高校生まで立ち上がる中全土で繰り広げられ、三百五十万人が決起した。ドイツでは、3・6%の賃上げと派遣労働者への同一賃金をストライキを闘いながら勝ち取った。韓国でも「米韓自由貿易協定撤廃」「非正規労働者の権利拡充」を求めて十一月に四万人が参加したデモ行進が行われた。こうした中で今春闘が闘われる。菅政権を打倒し、労働者の未来を勝ち取ろう。



 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.