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   10・9三里塚全国集会に総結集を

  現闘本部破壊撤去徹底弾劾!

  市東さん守り抜き第三誘導路粉砕





 八月六日未明、千葉地裁執行官、空港会社、千葉県警は一体となって、天神峰現闘本部を急襲し、反対同盟、支援の面前で破壊撤去を強行した。
 3・11福島原発事故以降、放射能放出が今も収束していない。労働者人民の不安と怒りは頂点に達している。この事態の中で、核兵器廃絶、すべての原発停止―廃炉が全人民的要求として高まり、8・6広島に闘う人民が総結集していた。まさにその日を狙って、しかも夜襲してきたのだ。反対同盟をはじめとして三里塚現地に駆けつけた人々は皆、このだまし討ちに憤った。
 5・20「仮執行」付き超反動判決―五十名逮捕の大弾圧。7・4千葉地裁の強制執行決定。八月六日、司法権力は「公平・公正」を仮装した法衣すらかなぐり捨てて、裁判所執行官が直接、天神峰現闘本部破壊に手をかけてきたのだ。しかし、国家暴力の直接発動で何ができたというのか。反対同盟は「世の中が変わるまでたたかう」「今日の悔しさを怒りに変えて、次に倍返しする」と不屈の闘志をたぎらせている。反対同盟と三里塚勢力は、決して屈服しない。
 暴力の発動で危機を突破しようとしている日帝国家権力こそ、決定的に追い詰められている。今こそ、労働者階級人民がその闘いを結合し、巨大な反攻を開始すべきときである。
 農地強奪攻撃と対決する三里塚の現状、攻防について提起し、今秋10・9三里塚全国集会への総結集をよびかける。


 ●第1章 現闘本部破壊撤去を弾劾する!

 8・6現闘本部破壊撤去を徹底的に弾劾する。
 これは第一に、三里塚空港反対闘争そのものを破壊しようとする政治的攻撃である。
 三里塚闘争が始まった六六年以来、反対同盟の現地闘争拠点であった天神峰現闘本部を、今この時点で破壊する緊急性など全くない。現闘本部を奪ったところで、「への字」に屈折した第一誘導路がまっすぐにできる訳ではない。空港建設工事という観点からは、「仮執行」措置をもって緊急に撤去しなければならない理由など全くなかったのだ。
 政府―国交省と成田空港会社は、反対同盟の闘争拠点を奪い去ることで、三里塚闘争を破壊することを狙ったのだ。そして、天神峰に存在する拠点を消し去ることで、「用地内」農民の孤立化を進めようとしたのだ。
 別章で述べるように、これは直接的に隣接する市東さんの農地に対する重圧攻撃である。空港公団―空港会社の成田空港建設とは四十五年間一貫して農地強奪だった。権力と札束での用地買収。土地収用法による強制収用。あるいは、成田治安法による除去処分・封鎖処分での共有地強奪。今行なわれていることは、訴訟の形式をとった農地強奪である。農民の目の前で現闘本部の破壊を強行して、司法権力が国家権力として暴力を行使することをわざわざ見せつけたのだ。残忍無比な攻撃である。
 第二に、この攻撃は違憲違法であり、国家権力による証拠隠滅である。
 反対同盟は、現闘本部裁判の地裁段階から、現闘本部そのものの検証を請求してきた。六六年に建設された木造の現闘本部の存在と、八八年に増築された部分との一体性、つまり、現闘本部に関する反対同盟の地上権が存在することは、現地に行って国交相の封鎖処分を解除させ、実地検証すれば、一目瞭然だったのである。
 千葉地裁―仲戸川も東京高裁―井上も、最後まで検証を行なおうとしなかった。明白な証拠が天神峰現地に存在していたのに、それを自ら検証しようとはしなかった。裁判官たる者たちが真実を知ることを恐れたのだ。
 現闘本部は、内部に六六年建設の木造建物が存在し、外側に増築された鉄骨―鉄板部分がある。さらに、その外側を、運輸相―国交相が毎年更新してきた成田治安法・封鎖処分による鉄板が覆っていた。8・6破壊攻撃では、この建物の構造を無視し、反対同盟の所有物であるか、国土交通省所有の鉄板であるかの区別なく引き剥がして、一緒くたにしてダンプに積んで運び去ってしまった。しかも、この国家権力の破壊活動に抗議を続けた反対同盟と支援が見ている側の鉄板だけは最後まで残して隠し続けていた。内部の構造を目撃したり撮影したりできないようにして、破壊していったのだ。
 現闘本部をめぐる裁判ではこれから上告審が始まる。原審でも控訴審でもなされなかった実地検証が必ず行なわれなければならなかった。この最も重要な証拠=現闘本部建物そのものを、千葉地裁と空港会社と千葉県警がグルになって破壊したのだ。まさに国家権力による証拠隠滅だ。明白な権力犯罪だ。


 ●第2章 成田空港を撤去せよ

 昨年十月、国際定期便の運航を三十二年ぶりに再開した羽田空港は、年間では発着回数六万回、利用者七百万人に達するだろうと見込まれている。国土交通省と羽田空港ターミナル会社は本年六月二十一日、羽田の国際競争力を高めるために国際線ターミナルビルを拡張することを決定した。二〇一三年度に完成する目標で、国際線の年間発着回数を九万回まで引き上げるとしている。
 国交省は、この決定の上で、羽田の国際線はまだまだ不十分だとし、現在四本の滑走路のさらなる増設を目指そうとしている。
 〇八年恐慌の深化、本年の3・11東日本大震災という事態の中で、日本の航空需要が増大する経済状況ではない。一方では、昨年の日本航空の経営破綻によって、経営再建中の日航は成田の国際線を削減し、採算のとれる羽田の国際線を増やすしかなかった。
 経済危機ゆえに、資本は死活をかけて採算のとれる選択をせざるをえない。羽田の国際化がますます進展することを押さえることはできない。そして、羽田が都心に近い利便性を活かして発着枠を拡大して競争力を高めることは、同じ首都圏にある成田の需要を奪うことを意味する。
 一方では、既存の航空会社の需要減少の一方で、格安航空会社(LCC)が急成長している。とりわけ、航空自由化が進むアジアにおいて、韓国、中国、マレーシアなどに拠点を置くアジアのLCCが路線を拡大している。アジアのLCCが羽田、関空などを拠点にした新たな路線を確保し始めている。
 全日空、日航もこの動きを無視できなくなった。今夏七月に、全日空がマレーシアのLCC、エアアジアと共同出資で「エアアジア・ジャパン」を設立し、成田空港を拠点とすることを発表した。ついで八月には、日航がカンタス航空、三菱商事と共同出資で新たなLCCを設立すると発表した。成田、関空を拠点にするとしている。経営破綻して「経営再建」中の日航の稲盛会長は「高級路線で再建をめざす」としていた。しかし、航空自由化の進展の中でアジア系LCCが羽田、成田の発着枠に参入する可能性は高まっており、日航もそこに参入せざるをえなくなったのだ。
 成田空港会社は昨年、需要の落ち込み、羽田の国際線との競争の不利ということを突きつけられて、アジアの格安航空会社(LCC)を誘致する方針を掲げ、また、LCC専用ターミナルの新設計画まで打ち出した。ところが、成田空港会社が実際にアジア各国のLCCと交渉を開始すると、そもそも成田の施設使用料が高いことがネックとなって、交渉はほとんどまとまらなかった。当たり前だ。LCCは鉄道(新幹線)との価格競争ではなく、長距離バスとの価格競争にも打ち勝つ料金設定で顧客を獲得しているのである。羽田より不便で、施設使用料の高い成田を選択する理由などない。
 ならば、格安航空のための格安仕様の専用ターミナルビルを作ればいいと新たな建設計画を掲げたが、これも水泡に帰した。本年初めに、成田空港会社はLCC専用ターミナルビルの一一年度建設を見送るとし、一二年度までの計画の中で改めて検討するとした。
 成田には、経営破綻した日航が撤退したことでの路線の空きができており、LCC専用ターミナルビルの建設費が格安使用料ではまかなえない、という採算上の問題もでてきたのだ。
 商業新聞は、このような空港間の「競争」を資本主義の当然の論議のように報じているが、こんな不条理な箱物建設と莫大なエネルギーの浪費にどうして疑問を呈さないのか? 
 そもそも、成田空港の建設ということ自体、羽田空港が満杯で、国際線は別の空港を建設しなければどうにもならないということだったのではなかったのか? いまさら、航空需要を掘り起こすだとか、LCCの誘致だとか、こんなことをなす必要など全くない。成田空港会社の経営拡張のために、農地を強奪し、滑走路を無理やり延伸し、農家の頭上四十メートルの離着陸という危険極まりない運航を強行し、誘導路を三本も建設して農民の孤立化までたくらんでいるのだ。
 空港会社の経営から問題を立てる、という論議こそが転倒しているのだ。資本の論理においてすら不要なものを、「国策」として、機動隊から裁判所まで総動員して建設するのは、根本的に間違っている。転倒した論議は元に戻されなくてはならない。羽田がさらに拡張し、成田の需要がますます落ち込んでいくのが現実なのだから、まずもって危険極まりない滑走路を閉鎖し撤去する以外にはないではないか。
 3・11震災―原発事故の中で経産省官僚と電力資本が利権を独占してきたことが暴露された。国土交通省とそこから天下ってきた官僚どもに支配された成田空港建設でも、これとまったく同じことがくり返されてきたのだ。日々暴露されつつある原発停止―廃炉と同時に、ナリタも閉鎖し撤去せよ! これこそ、全人民の当然の要求だ。


 ●第3章 日本階級闘争における三里塚闘争の意義

 四十五年にわたる三里塚闘争の闘争拠点をなぜ今破壊するのか。
 現闘本部破壊は、三里塚闘争に対して国家権力が公然と暴力を発動した攻撃である。三里塚だから特別などという、憲法の例外空間があるような論議を絶対に認めてはならない。そうではない。今このときに三里塚闘争を破壊―鎮圧しなければならないという、国家権力の要請の意味をこそ徹底的に追求しなければならない。
 〇八年恐慌から二年、恐慌の第二幕というべき財政危機、金融危機、通貨危機がはじまっている。「絶対安全」と言われてきた米国債が格下げされ、基軸通貨ドルの国際的信認は大きく揺らいでいる。
 しかしこれは本質的には予想されていたことである。世界に君臨する一超大国―米帝の神話。ドルが現代資本主義世界の唯一の基軸通貨であるという神話。この神話の崩壊は、米帝がイラク戦争、アフガニスタン戦争に失敗し、サブプライムローンなる借金の山を無理やり作り出して〇八年恐慌に突入していった事態の中で醸成されてきたのだ。G7、G20と世界各国をこの経済破綻に巻き込みながら、危機を先延ばししてきた結果、本当の破綻に突き当たっただけである。
 米帝を中心国とした現代帝国主義の世界体制の破綻の始まりは、日帝にとってもこれまでの存立基盤を大きく揺さぶる事態である。米国債という米帝の借金を請け負い、軍事同盟を深化させて米軍との一体化を進めていれば「日本帝国主義は安泰」などという時代が大きく瓦解しはじめたのである。
 米帝は未曾有の財政危機の中にあり、国務長官クリントンはアジア太平洋の米軍配備そのものが揺らぐとわめいている。日帝の援助がなければ、米帝のアジア太平洋戦略など護持できる財政状況ではないということだ。米軍は、アジアから、沖縄から、撤退すればよい。
 ベネズエラ、ブラジルなど中南米諸国の自立によって、米帝こそアメリカ大陸での市場を喪失しつつある。瓦解する米帝経済の救済のためにTPPに参加する必要などない。
 3・11東日本大震災と福島原発事故は、日帝ブルジョアジーの階級支配の瓦解、失敗、混乱を鮮明にするものとなった。単に菅政権の右往左往の問題ではない。震災と原発事故を政争の具とし、民主・自民・公明などの権力抗争だけが進んでいる。右翼ジャーナリズムは、民主党政権を「左翼政権」と評して攻撃し、こんな言説に乗じて右翼=排外主義襲撃集団どもが跋扈している。
 福島原発事故―放射能汚染を目の当たりにした労働者人民の圧倒的多数が原発に反対している。当然のことだ。原発が安全かどうかは電力会社や経団連や御用学者の言説の中にあるのではない。日々進行する放射能汚染の現実の中で、労働者人民は原発は危険だということをはっきりと見ている。
 日本が「原発に依存している」だとか「原発は必要不可欠なエネルギー」だとか、そんな神話も、猛暑の今夏に大停電一つ起こらなかったことで崩れ去った。
 今や、反原発は、労働者、農民、被抑圧人民にとって当たり前の要求である。労働者人民は、撒き散らされ、そして、今も放出され続けている放射能に直面している。原発の是非を静かに論じているような時ではない。強いられた現実に対して、どう身を守り、家族を守るのか。
 福島原発事故による放射能汚染は東北―関東全域、そして日本周辺の海洋全域へと広がっている。千葉県―三里塚の農業も例外ではない。国策空港―軍事空港と対峙し、自らの農業をもってたたかってきた三里塚農民ゆえに、この農業破壊を意味する放射能汚染に対する憤りも深い。反対同盟農民は福島農民を支援すると共に、日帝の原子力政策との対決も、三里塚闘争の新たな課題として正面にすえ始めた。
 核武装―核開発(原子力政策)と、人間の営みとしての農業が相容れないことが鮮明になった。
 この放射能汚染の現在をただただ絶望の時代と見るのか。原発事故―放射能汚染の現実に直面し、怒りを結集して事態を打ち破ろうという、大衆運動の大きな転換が始まっているだろう。この時代にこそ、国策と実力対決してきた三里塚農民の闘いこそが希望の輝きを放っている。
 六月二十二日、那覇市船員会館で「三里塚の今を考える沖縄集会」が、反対同盟と「市東さんの農地を守る沖縄の会」の共催で開催された。萩原進さん、市東孝雄さん、鈴木謙太郎さんなど反対同盟六名が参加した。沖縄の会は共同代表の金城実さん、安次富浩さんなどを先頭に八十余名が結集した。5・20反動判決―五十名逮捕という大弾圧の直後であったが、反対同盟はこの国家権力の攻撃を打ち破ってたたかう方針を鮮明にするとともに、沖縄に軍事基地を強制してきたことの「本土」における闘いの不十分さを総括して三里塚が沖縄闘争の旗振り役になるという決意を明らかにしている。
 国家権力の暴虐に立ち向かう沖縄と三里塚の闘いの結合が、震災―原発事故が続く二〇一一年において、改めて確認されたのだ。
 国家権力が暴力を発動して、闘いを孤立させ、圧殺する攻撃。人民はこれにひれ伏しているのではない。沖縄の基地撤去闘争を中心にして米軍基地の総撤去、日米安保粉砕へと突き進む闘い、そして、福島原発事故を糾弾し、すべての原発の即時停止―廃炉へと向かう闘いこそ、われわれが自らの闘いとして、はっきりつかんでいる現実である。
 日帝国家権力は、この憤激が全人民決起へとたかまっていくことを何より恐れているのだ。
 三里塚闘争は四十五年にわたる徹底非妥協の闘いゆえに、これら人民決起の軸心たるべき闘いである。震災―原発事故における国家責任を徹底追及する闘いも、三里塚のように闘えば勝てる、今、そういう確信こそがさまざまな人々の心に響くだろう。国家権力が恐れることは、まさにこのことである。三里塚闘争が共感を呼び、人民の中に拡大することだ。司法権力が主導して強行した天神峰現闘本部破壊とは、まさに階級支配の危機の中での国家暴力の発動である。司法権力も含めて国家権力は、この全人民闘争の軸心たる三里塚闘争ゆえに、叩き潰そうとしてきたのだ。
 しかし、決して潰されない。反対同盟は、8・6現闘本部破壊の直後に、「世の中が変わるまで闘う」(北原事務局長)、「悔しさを怒りに変えて闘う」(萩原事務局次長)と宣言した。どんな暴虐にも決して屈することなく闘う三里塚闘争こそが、二〇一一年の困難な時代の闘いを必ず切り拓いていくだろう。


 ●第4章 農地死守―実力闘争の地平を今こそ

 今夏の現闘本部破壊撤去の攻撃は、現闘本部に隣接する市東さんの農地への重圧攻撃である。昨夏の団結街道封鎖―廃道、第三誘導路建設着手という攻撃とあいまって、市東さんの宅地・農地を空港施設で取り囲んで孤立させようとする悪辣きわまりない攻撃と一体になされたものだ。
 今、空港会社は訴訟の形式をとって農地強奪攻撃をかけてきている。空港会社が市東孝雄さんを「被告」として起こした耕作権裁判、農地法裁判である。
 空港会社は、農地法を「根拠」にして「訴訟」の形式をとって、市東さんの農地を強奪しようとしている。空港会社は、市東さんが三代にわたって耕作してきた農地を、その地主から買収した上で、「農地法に基づいて」賃貸借契約の解約許可決定を千葉県知事と県農業会議に行なわせた。空港会社はこれを「根拠」に市東さんに農地の明け渡しを求める訴訟を起こした(農地法裁判)。これに対して、市東さん側から、千葉県の決定そのものが誤っているとして訴訟を起こしている(行政訴訟)。空港会社は、この農地法裁判の農地とは別に、市東さんの耕作地の一部を「空港会社の土地を不法耕作」と決め付けて明け渡しを求めている(耕作権裁判)。市東さんの農地をめぐっては、この三つの裁判が千葉地裁で係争中であり、農地法裁判と行政訴訟の口頭弁論は、同じ部で同じ期日に行なわれている。
 空港会社は、「賃貸借契約の解約による明け渡し」と「不法耕作地の明け渡し」と形式的には別の手法で訴訟を起こしているが、目的は市東さんの南台の農地全体を強奪しようというものである。市東さんの農地を図面の上で切り分け、二つの訴訟をもって全部取り上げようとしているのだ。千葉県はこのたくらみに全面的に荷担している。
 しかし、この悪辣なたくらみゆえに、三つの裁判において、空港会社と千葉県の主張は、連関して破綻しつつある。
 現在、これらの裁判で焦点となっているのは、空港会社が「賃貸借契約地」だとしてきた土地のうち、「南台41―9」は市東さんが全く耕作したことのない土地であることが明らかになっている。「農地法裁判」の訴訟の根幹である土地の特定が誤っているということだ。
 空港会社側代理人もこの事実を認めざるを得ず、「南台41―9」についてだけ「訴えの一部取り下げ」などと言い出してきた。しかし、土地の特定が誤っている土地明け渡し訴訟など成立しない。取り下げるなら、訴えの全てを取り下げなくてはならない。弁護団にこのことを追及された空港会社側代理人は、「訴えの一部取り下げ」を撤回せざるをえなくなった。つまり、請求した内容が間違ったまま、裁判を続行せざるをえなくなったのだ。
 そもそも、直接の利害関係人である市東東市さん、市東孝雄さんに対してはすべてを秘密にして、地主とだけ交渉を進め、農地そのものを現地で確認することもなく買収したから、こういう結果になったのだ。空港公団―空港会社が四十五年にわたって続けてきた、だまし討ちの農地強奪が、その手法ゆえに破産したということではないか。
 この事実は、県農業会議も県知事も、この誤った土地特定のまま、「農地法」に基づく賃貸借契約の解約許可決定をなしたということを示している。空港会社の詐欺的農地強奪攻撃を国策として全面的に容認し、これに結託する決定をなしたということだ。
 行政訴訟において弁護団は、千葉県側代理人に対して、空港会社が位置の特定を誤っていた事実を明らかにし、解約許可処分を取り消すよう迫った。これに対し、県側は何も答えることができず、沈黙している。
 さらに、空港会社が「賃貸借契約地」として市東さんに明け渡しを求めている別の土地「南台41―8」は、一部が「空港敷地内」にあり、一部が「空港敷地外」となっているのだ。つまり、県農業会議は、空港にできない土地まで「空港転用相当」なる判断で解約許可決定をなしたのだ。農地法違反である。空港建設は国策とばかりに、空港会社の言いなりで、千葉県が農地取り上げに荷担したから、こんな杜撰な結果になったのだ。
 空港会社が「根拠」としてきたのは、旧地主藤崎政吉氏が「作成した」とする境界確認書、同意書、地積測量図なのだが、弁護団が本人と面談した結果、藤崎氏自身はこれらの書面を「自分は書いていない」と否定している。弁護団は、これらの偽造文書の作成経緯を追及しているが、空港会社側代理人は「土地買収の担当者が死んでいるので詳細不明」などとしているのだ。弁護団は、藤崎氏に直接聞き取りを行い、そのテープとテープを起こした書面を証拠として提出している。
 許しがたいことは、これらの裁判において、千葉地裁―裁判官が常に空港会社、千葉県にとって有利に訴訟を進めようと指揮をとっていることだ。農地法裁判・行政訴訟において弁護団は二十一名の証人請求を行なっているが、多見谷寿郎裁判長は拙速に裁判を進めようとして、二人に制限しようとしている。耕作権裁判の白石史子裁判長は、弁護団の求釈明に対して、空港会社側に釈明を求めようともせず、裁判の拙速化ばかりを求めている。
 土地を取り違え、農地法に違反し、文書偽造までして、むりやり市東さんの農地を強奪しようとしている。こんな裁判で、空港会社が農地を取り上げる判決を出すというなら、裁判所そのものが腐りきっているとしか言いようがない。真実を見ようとしない裁判官どもが空港会社、行政権力の立場に立って農民の農地を奪う攻撃に荷担する。このような裁判そのものを打ち破っていかなくてはならない。
 この市東さんにかけられた重圧攻撃を反対同盟はしっかりと見定め、反撃してきている。
 昨夏の団結街道廃道、そして、第三誘導路建設をむりやり強行して、地形的に市東さんの生活・営農を孤立させようとする悪辣な攻撃である。
 反対同盟と弁護団は、農地法裁判、耕作権裁判など市東さんの農地を守りぬくための裁判を闘うとともに、この攻撃に対しても第三誘導路許可処分取消訴訟、団結街道廃道取消訴訟をもって、日々強行される工事そのものと対決する裁判闘争にも立ち上がってきている。鈴木さんの一坪共有地裁判も含め、これら裁判闘争は、空港会社、千葉県との対決であり、反動化を強める司法権力との闘いである。
 昨年の団結街道廃道攻撃を実力粉砕した市東孝雄さんの決起。本年5・20東京高裁井上の超反動判決と五十名不当逮捕を完黙非転向で打ち破った反対同盟と三里塚勢力の闘い。日帝国家権力は現闘本部を奪い去り、市東さんの農地をむりやり強奪しようとしている。
 今三里塚に集中するこの攻撃を、日本の階級闘争総体を圧殺しようとする攻撃であるとはっきりと捉えぬき、そうであるからこそ、三里塚から階級闘争の未来を切り拓いていく。この決意をもって、10・9三里塚現地に全国化から結集していこうではないか。



 

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