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   狭山再審闘争―三者協議の動向

    
徹底した証拠開示で再審をかちとろう

  


 二〇〇九年九月十日に始まった狭山事件第三次再審請求審の三者協議(裁判所、弁護団、検察官)は、今年九月に第八回を迎えようとしている。三者協議は、これまでに幾多の冤罪事件において、再審の扉をこじ開ける役割を果たしてきたが、狭山事件においても石川さん夫妻を先頭に全国部落民の再審要求と弁護団の粘り強い新証拠・新鑑定などの提出によって東京高検・東京高裁を確実に追い詰めている。
 以下では、これまでの三者協議の経過をたどりながら、東京高検がようやく開示した証拠(二〇一〇年五月十三日、五項目三十六点の証拠を開示)から次々と明らかになる寺尾確定判決の矛盾、でたらめな検察側鑑定など、石川さん無実を明白にする新証拠を確認していく。そして今後も継続する三者協議を通して、石川さん夫妻を先頭に全国の部落民、弁護団とともに東京高検、東京高裁を追い詰め、再審の扉をこじ開けるためにたたかわなくてはならない。狭山事件が、被差別部落への偏見・差別に基づいた警察権力の権力犯罪であり、証拠のでっち上げと自白の強要によって生み出された冤罪事件であることを満天下に明らかにしなければならない。


  ●1章 三者協議の決定から未開示証拠を一部開示

 狭山再審闘争は、二〇〇九年に大きく動き始めた。二〇〇七年五月に担当となった門野裁判長のもと三者協議の開催が決定し、二〇〇九年九月十日に第一回の三者協議が開催された。この中で門野裁判長は、殺害現場とされる「雑木林のルミノール反応検査」など弁護団からの未開示証拠の開示の強い要求を受けて、東京高検の検察官に意見の提出を求めた。十月三十日に検察官は「答える必要はない」「存在しない」といった証拠開示を拒否するきわめて不当な意見書を提出してきたが、弁護団は十二月九日に反論書を提出し反撃した。なにより石川さん自身が十月から十二月、ほぼ毎週一回、早朝の通勤時間と昼休みの二回、証拠開示、事実調べを訴える東京高裁前連続アピールに決起している。
 二〇〇九年十二月十六日の第二回三者協議において、門野裁判長は、犯行現場関係・死体・筆跡・取調べ状況関係に係わる八項目の証拠について開示勧告を行った(門野裁判長は翌二〇一〇年二月に退官、岡田裁判長が就任)。
 抗し切れなくなった検察官は、ついに翌二〇一〇年五月十三日の第三回三者協議において、八項目のうち五項目につき三十六点の証拠を開示した。
 開示された証拠は、犯行現場関係では、「○さん関係の捜査報告書」、筆跡関係では、六点の筆跡関係資料(この中に、一九六三年五月二十三日、石川さんが逮捕当日に書いた上申書が含まれていた)、取調べ状況関係では捜査報告書等十九通・取調べ録音テープ九本、であった。
 犯行現場関係で請求した殺害現場とされる雑木林内における血痕反応検査の実施およびその結果に関する捜査書類一切、一九六三年七月四日付・実況見分調書に記載されている現場(雑木林)を撮影した八ミリフィルム、死体について請求した実況見分調書に添付された写真以外の被害者の死体に関する写真、これらは「不見当」とされ開示がなされなかった。
 これまで三十年以上にわたる再審闘争の中で数え切れないほど請求がなされてきた検察が隠し持つ未開示証拠の開示がようやく実現した。当日の記者会見で石川さんは、「人生を左右する日との思いで待ちに待った日。やっと検察も証拠開示に応じた。しかしまだ隠している証拠はある。司法に真実をもとめて闘っていく」と決意を語っている。また第四回の三者協議を前に発したメッセージでは、「ルミノール反応検査報告書」などの証拠を「不見当」と隠していることを強く弾劾し、石川さんが「自白」したところだけを編集した録音テープを開示して来たことに対して、「自白した録音テープにしても、それが存在するならば犯行を否認していた日時がはるかに長く、その間、拷問的取調べの中での取調官との会話はどのようであったか、私は一部を録音したテープではなく、「自白」する以前の否認当時の録音テープや取調べメモなどすべて出して、事件の全貌、取調べの実態を明らかにしてほしい」と弾劾している。


  ●2章 証拠開示をめぐる追及-新証拠を提出した弁護団

 弁護団は、開示された証拠から石川さん無実の新証拠を絶対に見つける決意で分析・検討を進めるとともに、「不見当」と隠し続ける未開示証拠の開示に向けて、東京検察の追及を開始した。
 二〇一〇年五月十三日の証拠開示ののち、八月二十七日には検察官の回答に対する反論の意見書を東京高裁に提出。「不見当」とされた証拠につき、釈明と関連する証拠の開示を求めた。とくに殺害現場とされる雑木林内でのルミノール反応検査について、検察は「検査をやっていない可能性がたかい」などと子供ですら騙せないような稚拙な言い逃れをしようとしているが、殺人事件で犯行現場のルミノール反応検査をしないなどということは、考えられないことだ。結果が陰性だった(反応がなかった)ことが明らかになれば、雑木林が殺害現場という事実認定がまったくの虚偽であることになる。
 九月八日には、今回開示された筆跡資料、取調べ録音テープなどに関連する証拠開示勧告を求める要請書を東京高裁に提出。九月十三日には第四回三者協議が開催されたが、大きな進展はなかった。弁護団意見書、要請書に対する検察官の回答は次回協議に先送りされた。
 十二月十四日には、五月に証拠開示された石川さんの上申書(一九六三年五月二十三日付)等を脅迫状と比較、分析した遠藤第二鑑定、魚住第二鑑定を提出。いずれも開示された石川さんの当時の筆跡は脅迫状と異なると鑑定している。翌日十二月十五日に開催された第五回三者協議では、検察官は、犯行現場のルミノール反応検査報告書、犯行現場を撮影した八ミリフィルムについて「不見当」とする回答をくりかえした。
 明けて二〇一一年二月四日、弁護団は検察官の回答に対する反論の意見書を提出。同月二十四日には、死体埋没に使われたとされたスコップの指紋検査の報告書の開示勧告申立書を提出。スコップは、寺尾確定判決が石川さんを有罪とした客観証拠のひとつで、発見後すぐに警察は死体を埋めるために犯人が使ったものと発表しており、犯人に直接結びつく重要な証拠物として、ただちに指紋検査が行われたはずだ。スコップに関して弁護団は、二〇一〇年、大橋意見書を提出し、スコップ付着土壌が死体埋没地の土壌と一致するとした警察鑑定を批判し、スコップを有罪証拠の一つとした寺尾確定判決には合理的疑いがあると主張している。
 三月二十三日に開催された第六回三者協議では、弁護団は、開示証拠をふまえた小野瀬鑑定(筆跡鑑定)などの新証拠提出するとともに、再審請求理由補充書、証拠開示勧告申立書を提出した。対して検察官は、前回の三者協議で弁護団が開示を求めたもののうち、元埼玉県警鑑識課員に検察官が問い合わせた結果を記した報告書を開示し、「(元鑑識課員の証言内容からは)犯行現場でルミノール反応検査を実施したか否かは不明」としたうえで、依然として「実施していない可能性がある」と主張し、「ルミノール反応検査の結果を記載した報告書等については不見当」という意見書を出してきた。紙幅の都合上、検察官が提出した噴飯ものの意見書に対する詳しい弁護団の反論は紹介できないが、検察の報告書は内容的には反論になっていないし、ルミノール反応検査を実施しなかったことの合理的説明には一切なっていない作文だ。


  ●3章 悪あがき続ける検察弾劾!
再審の扉をこじ開けよう

 五月十八日には、弁護団が齋藤保・鑑識鑑定士による「実験用スコップの指紋検出実験報告書」を提出するとともに、指紋検査関係証拠の開示勧告申立の補充書を提出した。補充書ではスコップとともに、事件当日、被害者の家で発見された自転車の指紋検査の結果を記載した書面の開示勧告も求めた。石川さんの自白では、この被害者の自転車に乗って、脅迫状を届けにいったことになっている。スコップの指紋検査報告書同様、自転車の指紋検査報告書もこれまで開示されていない。また前回の三者協議で検察官が提出した検察官報告書などをふまえて、雑木林におけるルミノール検査報告書、ルミノール検査を依頼した指示文書、捜査指揮簿、庶務日誌などの開示を求める反論書も提出した。
 五月十日には岡田裁判長から小川裁判長に交代した。
 七月十三日に第七回三者協議が開催された。このなかで検察官は、弁護団が提出している証拠は新規明白性がなく、証拠開示の必要性はないとする意見書を提出し、スコップの指紋検査報告書などの証拠開示に応じなかった。
 弁護団の厳しい追及に追い詰められ、反論にもならない内容空疎な強弁をするばかりの東京高検の悪あがきが続いている。東京高検を徹底弾劾し、石川さん夫妻、弁護団、全国で狭山再審を闘う部落民、労働者階級人民と結合し、徹底した証拠開示を行わせ、再審の扉をこじ開けなければならない。石川さんは「今年が勝負」と、檄を発している。
 二〇一一年九月に第八回の三者協議が予定されている。東京高検、東京高裁を包囲する狭山差別裁判糾弾の戦闘的大衆的うねりを巻き起こそうではないか。




 

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