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    戦後第三波の労働者反戦闘争を切り拓こう!

 




 帝国主義の侵略戦争に対する態度は、労働運動・階級闘争を二分するような大きな課題の一つであり続けている。現代世界の主要な生産様式である資本主義は、かつてないような大規模の戦争と貧困をつくりだしてきており、この資本主義生産関係の廃棄と社会主義的な生産関係の構築なしに、労働者階級をはじめ全ての民衆は、破滅への道から解放されない。
 資本主義的生産は、飽くことなく利潤拡大を求めるシステムである。その存在意義は、利潤(儲け)の獲得にあり、株主や金融屋・投機家は、利潤を求めて資本へと投資する。この利潤は、労働力という「特別な商品」によってもたらされている。資本の利潤は、労働者に必要労働を超えて剰余労働を行わせることによって生み出される。剰余価値を搾取することによって資本は自己を増殖し蓄積していく。労働者の賃金は、労働者が労働過程で作り出した全体的な価値よりも、ずっと小さい。それは、資本家と労働者の互いの末路を見れば明らかである。他方で、労働者は消費者(購買者)であるため、その購買力は、資本の蓄積に比べ、どんどん小さくなり縮小する。だから資本家は、剰余価値を手に入れることができる市場の拡大を常に必要とする。弱肉強食の競争を通じ、強い資本が集積・独占化し、それにつれ国内市場は、ますます資本の規模にとって狭いものとなっていく。
 このサイクルが繰り返されるにつれ、国内の労働者民衆は貧困化し購買力は衰え、資本は、より大きな超過利潤のために、新しい市場、資本の新しい再投下先を求めて、他国への侵略へと歩んでいくのである。
 現代に至る帝国主義戦争と支配は、上述したように資本の運動から不可避にもたらされてきた。二十世紀初頭の大戦から一世紀近くの時が経つが、資本の運動はグローバル化し、世界には巨大な多国籍資本が成長し、剰余価値を手に入れることができる市場は、資本家たちにとって、ますます狭くなっている。市場を暴力的にこじ開け、労働者民衆を骨の髄まで搾り上げる衝動は、資本家たちにとってますます大きなものとなっているのである。発達した国際的な情報・流通網を駆使し、資本家たちは、利潤拡大のための底辺への競争を、第三世界のみならず帝国主義本国においても繰り広げている。それだけではない。巨利を蓄積・累積した資本・金融資本は、再投資して生産資本を拡大するよりも、手っ取り早く利ざやを稼ぐ投機屋たちの膨大な群れを生み出してきた。
 いまや世界は、国家財政ほどの巨額資金を持ち、投機によって莫大な利ざやを稼ぐ一握りの富裕層、産業を寡占支配し巨額な剰余価値を手にする資本家たち、これらの下僕として利権を享受する政治家・国家官僚たちによって支配され、戦争・貧困・難民・社会崩壊など限りない不幸を全世界にまき散らしている。


  ●1章 深まる経済的・政治的危機と軍事再編

  ▼1節 激化する抗争と危機


 大資本家たちやヘッジファンド、金融機関家どもにとって、世界市場はますます小さくなってきた。二十一世紀に入って、世界市場から莫大な利益をしぼり出すために、ますますなりふり構わぬ横暴が、全世界を覆い尽くしている。
 ソ連・東欧政権崩壊以降の市場経済化の進展や、中国の改革開放政策によって、新しい自由主義市場が格段に広がったが、これを最大限、享受したのは、多国籍資本であった。そして、それ以上に、規制なき自由市場で利益をむさぼったのは、その企業や通貨を売買して利益をあげる金融機関だった。それは瞬く間に、グローバル経済の中心となり、世界中の富をむさぼって、世界経済を恐慌という恐怖のどん底にたたき落とした。
 そもそも〇八年リーマンショックで顕在化した世界大恐慌は、返済不能な貧困者たちに無謀な貸付を行った証券会社が、この債権を細切れにし、国債やIBM社債などの「優良債」と組み合わせ、金余りで運用に困っていた金融機関・投資家に売りつけたことに端を発している。無謀な貸付の背景で進んでいたのは、アメリカの住宅バブルであり、それは、買った住宅が値上がりし転売されることを念頭に置いて貸付が行われるという、ねずみ講さながらのものであった。当然、住宅値上がりというバブルははじけ、返済不能者は身ぐるみをはがされ、借金を背負ったまま購入した住宅から追い出された。金融機関はいっせいに換金に走り、たとえばベア・スターンズ証券では、当時、毎日、一兆円の資金が逃げ出したという。返しきれない債権が、概算では、アメリカでは百兆円以上、欧州では三百兆円以上、表面化した。
 この金融危機の大津波のなかで、二十ヵ国・地域(G20)各国、とりわけ欧米各国は、総額五兆ドルもの財政出動を行い、これに加え主要銀行への公的資金投入などによって、財政赤字を拡大させた。要するに、金融機関や投資家たちの利益を守るための政策によって、各国は国家財政破たんの危機(ソブリン危機)に見舞われることになったのである。国家財政破たんが起これば、生活保護や年金支給、公共交通や行政サービスなど、民衆が生きるための社会機能が危機に陥るのであり、国家財政破たんを怖れて、すでに欧州各国では、社会保障費削減や公務労働者の賃金カット・削減などが強行され、社会不安や対立を拡大している。アブク銭を求めて投資に群がった資本家・富裕者たちが庇護され、社会的弱者が社会保障のセーフティネットさえ引き剥がされる、という恥ずべき事態が、公然と進んでいるのだ。
 九月九~十日、フランス・マルセイユで開かれたG7財務省・中央銀行総裁会議は、政府債務問題が世界経済・金融システムのリスクとなっている現状を踏まえ、各国の「着実な財政再建」を議題に打ち出した。しかし、「財政再建」とは、資本主義的生産システムが安定的に運営されていく事態とするならば、それは絶望的としか言いようがない。資本の運動が国境を越え、生産技術の向上が巨大な生産力を実現するにつれ、世界市場をめぐる資本間抗争は激化の一途を辿り続けてきている。すでに鉄鋼・自動車・電機などの産業においては、既存技術での競争・淘汰・独占は一巡を遂げ、狭まる市場で生き残れる企業はわずかである。近年で言えば、自動車産業での苛烈な競争の末、ゼネラル・モーターズは、二〇〇九年に、製造業としては世界最大の千七百二十八億ドル(約十六兆四百億円)の負債総額を抱えて倒産し、民事再生手続きを申請した。新興資本、新興産業・技術によって、次の資本間の抗争が始まっていくが、その勝敗の度ごとに、労働者は解雇・削減され、より安く置き換えられ、失業・半失業の群れが拡大していっている。情報や流通や機械の発展は、固定的労務費(流動資本)をますます小さなものにし、働き口をめぐる労働者間競争は、国境を越えて広がり、いかに安く働くかを競う底辺への競争を引き起こしている。労働者が汗水流して働いて作り出した富は、すべて資本へと蓄積され、新興諸国のより安い労働力・成長しつつある市場へと資本が侵出するのを準備するのであり、世界のあらゆるところで、失業やワーキングプアの社会的な病いが満ちあふれている。一方における富の集中、他方における貧困の集中は、全世界的規模で、耐え難いほどに大きく構造的なものとなっている。
 今年に入って顕在化した中東における一連の民主化の嵐も、その背景には、固着した利権構造に対する、若年貧困層の憤りが存在している。また今夏、イギリスで起こった暴動の背景にも、同様の事態が存在している。イギリスの政治家・官僚・資本家・投機家による汚い利権漁りが横行する中で、「ギャング」と呼ばれる若年貧困層のうっ積した不満が、暴動や略奪となって現れているのである。
 生産手段が、私的に所有されていることによって、富の不公正な寡占と、社会的な貧困の深まりというサイクルは、止めようもなく広がり、世界の経済的・政治的不安定さは、解決不能なものとして膨れ上がる一方である。そしてリビアへの欧州の介入・バックアップに見られるように、帝国主義者たちは、固着した利権構造に対する民衆の憤りをも利用し、自らの権益拡大のための絶好の機会とする動きを拡大し、さらに不安定さに拍車をかけているのである。

  ▼2節 侵略性をあらわにする軍事行動

 このような暴力的(軍事的)利権拡大のやり口は、二〇〇〇年9・11以降、帝国主義者の常套手段となった。アメリカ前大統領ブッシュは、「9・11」直後、「アルカイダとの闘いから始まった戦争は、……全世界のテロリストを見つけ、打倒するまで続く」と宣言し、自らが始めたアフガニスタンとイラクへの戦争を「対テロ戦争」と呼んだ。しかし、なぜ、これらの諸国に侵略戦争を仕掛けたのか、という答えは、「中東支配と石油利権」以外に、今になっても見当たらない。
 イラク戦争後、国営だったイラクの石油産業は民営化され、海外企業がその利権争奪戦を繰り広げた。ブッシュやチェイニー、ラムズフェルドなど、政府機関と多国籍企業とを行き来していたイラク戦争の仕掛け人・ネオコンたちにとって、それこそ待ちに待っていたものである。「大義なき戦争」によって、石油利権は、欧米多国籍企業に確保された。そして、戦禍による大規模な破壊に伴う「復興事業」に、アメリカの軍事複合企業ハリバートン(元副大統領チェイニーがCEO)やベクテルが参入し、膨大な事業を受注した。さらに武力衝突が激化すると、補給兵站部門から、警備部門、軍隊育成事業までを担う「民間軍事会社」が大幅に活用されることになった。この「民間軍事会社」では、イラク現地や世界各地から、失業した貧困な若者たちが命を脅かされながら「派遣労働」の名で安く働かされ、その命の上に、これらの企業は、アメリカ・イラク両国の国庫支出によって、確実で莫大な収益を手にすることになった。
 これら戦争の仕掛け人たちの行状を見て、傀儡イラク政府に、混乱に乗じた横領や汚職がはびこらないわけがない。米軍のイラク侵攻後、イラクの石油収入を主な原資とする二百億ドルが、復興資金としてイラクに運び込まれた。二〇一一年六月、その九割以上にあたる百八十七億ドルが行方不明だと報じられた。イラクには世界最悪の「汚職大国」という呼称が与えられている。 
 チェンジを掲げて登場したオバマ大統領も、結局は、ブッシュと同じ道を歩いている。オバマは、昨年五月の「国家安全保障戦略」、今年六月末発表の「対テロ国家戦略」において、「アルカイダ及びその関連のテロ組織」を「脅威」の筆頭に置いた。ところが、米国防長官やイギリスIISS(国際戦略研究所)によると、「アルカイダ」と称される武装勢力は、ザッと見積もっても二千人足らずである。米帝国主義は、それを相手に、危機的とされる財政破たんにもかかわらず、七千億ドルもの国防予算を投じているのである。
 イラクにおいては、二〇一二年以降の五万人規模の兵力駐留を求める新協定締結、アフガニスタンにおいては、二〇二四年までの米軍駐留を認めさせる秘密交渉など、ズルズルと米軍による恒久的軍事占領の準備が進められている。また中東情勢の緊張の中で、オバマ政権は、二〇一五年完成をめざし、バーレーンのミナ・サルマン海軍基地の大拡張工事を進めている。カタールやクウェート、オマールでも同様の動きがある。さらにパキスタンへの戦火の拡大、対ロシア包囲網・対ベネズエラ包囲網・対中国包囲網など、米帝の軍拡路線は、とどまるところがない。
 この一連の米軍の攻勢的動きの目的は、イラク・アフガニスタン戦争がその原型を示したように、アメリカの多国籍企業、軍産複合体資本などによる世界の資源・権益の略奪を目的としたものに他ならない。まさに「争う国が存在しない一方的な軍事力の投入による無限の優勢」(ニューヨーク州立大学、ジェームズ・ぺトラス教授)を、その手段として追求しているのである。このようなブッシュからオバマへと引き継がれる「対テロ戦略」の中に、アジア、日本における米軍再編も存在している。


  ●2章 進行する米軍再編、日米同盟の強化

 米軍再編は、二〇世紀末(一九九七年「国防の転換・二十一世紀の国家安全保障」米国防諮問委員会が発議)から準備されてきた。それは、前述したようなグローバル経済に照応し、資本の利益を脅かすものには、いつでも迅速に攻撃できる軍事網を張りめぐらし、必要なときには占領支配を行い、その国の資源・市場・労働力を、多国籍資本の思うままに支配できる状態を作り出そうとするものである。アジアにおいては、資源も豊富で経済成長の盛んな、太平洋(東チャイナ海・共和国・台湾海峡)からインド洋、中東(北アフリカ・カフカス含む)に連なる「不安定の弧」に焦点を置いた米軍再編が、すでに二〇〇五年には、日米両政府で確認されてきた。
 前述した中東地域での米軍基地網建設と連動し、ASEAN諸国との軍事連携が行われ、フィリピンでは米軍駐留協定(VFA)により、米比合同軍事演習の名目で米軍が居座り続けている。韓国では、共和国との三十八度線対峙から、中国をにらみつつ南アジアから中東へのシーレーン防衛へと在韓米軍の性格を大きく転換させた。「今夜、戦えるように準備せよ」(シャープ司令官)というかけ声とともに、韓国全土に点在する四十三個基地が、平澤(ピョンテク)・沖項(ボハン)の二大拠点と十六個基地へと再編されようとしている。台湾では、米国からの大量武器輸入が行われている。
 それらの中軸が、日米安保同盟の質的転換である。日本における米軍再編は、ワシントン州フォートルイスにあるアメリカ陸軍第一師団司令部を、神奈川県キャンプ座間へ移転し、統合作戦部隊・指揮統制機能を、日本国内のど真ん中に置くことによって、日米軍事一体化による共同作戦・共同行動を実現することに、その目的のひとつを置いている。それに伴い、原子力空母の横須賀母港化、艦載機五十七機の岩国移転、そして沖縄においては、沖縄北部・辺野古への新基地建設などが、二〇一四年完成予定で計画化された。グアムへの海兵隊移動、馬毛島の着陸訓練(FLCP)施設の建設なども、その兵站構造として策定されている。この米軍再編の策定とともに、米政府や日本の独占資本は、声高に「憲法九条改定」の圧力をかけ始めた。
 中東・アジア地域において、資源・権益確保のあらゆる些細なチャンスにも軍事介入でき、そしてまた、権益を脅かすあらゆる勢力に対する非対称戦争や戦争外軍事作戦を実施することを、念頭においた編成や指揮体制への大規模な作り変えは、帝国主義・多国籍資本にとって不可欠なのだ。またそれは、軍産複合体企業に、巨大な利益をもたらすビジネス・チャンスでもある。一九八〇年代から、情報通信・電子機器技術の急速な進歩に伴い、これを軍事面に活用するというRMA(軍事における革命)が提唱されてきた。それは中東湾岸戦争における多国籍軍装備でアラブ民衆の殺戮による実証実験が行われ、大幅に近代装備として米軍と連携する世界各国に強制され、米軍再編に伴う費用を莫大なものへと押し上げている。アメリカを中軸とする帝国主義・多国籍資本の利益を守り拡張するために、世界の労働者民衆の血税が、各国の軍事予算として、産軍複合体資本に支払われるという事態が、世界的規模で進行しているのである。


  ●3章 米軍再編を粉砕する労働者階級人民の決起を

 この悪夢のような戦争・貧困・難民・社会崩壊など、資本主義・帝国主義の繰り出す限りない災禍は、どのようにして断ちきることができるのだろうか。まさに国際階級闘争、国際共産主義運動の歴史は、生産手段とそこから生み出される富の私的所有という資本主義・帝国主義生産システムが支配する世界(社会)を打ち壊し、新しい社会建設を求めて闘われてきた歴史にほかならない。すなわち、資本家たちが私的に所有している社会的富と生産手段を奴らから取り上げ、それを生産主体である労働者階級と他の勤労大衆・被差別大衆へとひき渡し、その社会的所有を実現することであった。多様な歴史的経過を持つ労働者・被差別大衆の国境を越えた団結を実現し、国際化し高度な分業・協業へと進む生産手段を社会全体の成員のために運用する能力とシステムを生み出すことなく、それは決して実現されることはない。多くの貴重な経験や失敗を積み重ねていく歴史として、世界はまさに現在進行形である。
 このような労働者・被差別大衆の歴史的な解放闘争にとって、帝国主義の侵略戦争との闘い、反帝・国際主義政治闘争は、労働者階級にとって極めて重要な戦場をなしている。二十世紀初頭から現在、労働者を搾取して巨大化した資本による、国内の専制支配、国外への帝国主義展開との、しのぎを削る争いとして、闘いの歴史は存在してきたと言いうる。
 二十世紀に入ってからの二つの世界大戦では、労働者階級の国際的な隊列は、真っ二つに分かれた。第一次世界大戦の前夜、第二インターナショナルは、「戦争に反対する決議」(一九一二年バーゼル決議)をあげながらも、戦争が始まるや、主流派は自国の戦争を支持する「祖国擁護」の立場を取り、第二インターは崩壊してしまう。一九一六年、レーニンは「帝国主義論」を執筆し、労働者階級の国際的団結を破壊した帝国主義戦争をめぐる態度について、「祖国擁護」をかかげた戦争賛成派、中間派として「帝国主義戦争は列強の政策の一つでしかない」と主張したカウツキー派を批判した。そして、帝国主義戦争は列強の「政策」の一つなどではなく、資本主義の最高の発展段階における必然の現象であり、不可避であるという主張を行い、また、こうした戦争支持派がなぜ労働運動や社会主義運動の中から生まれるのか、という根拠として、「超過利潤による労働貴族の培養」を明らかにした。
 以来一世紀近くが経過し、帝国主義による侵略戦争は、かつての市場再分割のための列強同士の国家間戦争という様相こそ鳴りを潜めたものの、圧倒的な軍事力を背景にして、資本主義市場の拡張にとっての障壁を取り除くために、絶え間なく行われてきた。また、超過利潤によって培養された労働貴族は、いまや国際的な潮流として世界に君臨しているが、前述してきたような事態に、もはやなすすべもなくひれ伏している。
 紙面の関係もあり、これらの歴史的整理はまたの機会とするとして、すべての先進的労働者にとって、帝国主義の侵略戦争と、その日常的遂行体制である米軍再編に対し、どのような立場で闘いを組織することが必要なのかを、概括的に述べておく。
 第一に、労働者国際主義・国際連帯にとっての試金石であることである。
 米帝や多国籍軍、国連でさえも、他国への侵略戦争には、もっともらしい大義をふりかざす。アフガニスタン戦争では「テロとの戦争」であったし、イラク戦争では「フセイン独裁の打倒、大量破壊兵器の摘発」であった。だが、その「真の目的」が、中東支配と石油利権であったことは、前章で述べたとおりである。
 労働者階級は、いかなる場合でも、各国・地域の労働者・民衆による自決権を承認すべきであり、これを抜きにして他国の政権・制度に軍事的介入することは許されない。そして自国の戦争加担に対して断固として反対することが必要である。その国・地域の政権・制度をどうするかは、その民衆自身の闘いが決定する。他国の軍事的介入は、労働者間に民族的憎しみを刻み付けるだけであり、新しい社会の運営主体・能力を往々にして壊してしまうことを、イラク・アフガンだけでなく今までの歴史は明らかにしている。
 例えそれが反動的政権であっても、労働者階級にとって必要なのは、粘り強い国際的世論の形成であり、その国・地域で闘う労働者・民衆への直接の連帯戦である。帝国主義・資本家階級に対する国境を越えた労働者階級の結合のみが、権益争いや反動政権を揺り動かし、これらを掃討して新しい世界を創り上げることができるのである。
 第二に、戦争発動あるいは米軍再編の本質にある資本家階級の権益争い、他国の資源・市場の略奪という性格を大衆的に暴露し、それは労働者階級には何の利益もないこと・国境を越えた団結にこそ利益があることを明らかにすることである。
 労働者階級は、資本家階級が生産手段を握っていることによって、働き口にありつくために互いに競争させられている。また資本間の競争に動員され、他の資本との国際競争の尖兵となって働かされている。排外主義の基盤は、まさにここに存在している。
 しかし国際的な分業・協業の中で、働き生きる労働者階級にとって、本質的な利害対立はない。言語・風習・文化等の異なる労働者間の団結は、資本による搾取と専横に対し、人間らしい労働・賃金・待遇を求める共通の闘いの土台の上に成長する。それは資本にとって、権益・利潤の前に立ちふさがる、恐怖すべき壁となる。
 戦争発動は、資本による労働者動員に支えられるのであり、米軍軍事網に対する国際的な労働者階級の闘いを、資本に対する労働者の日常的な闘いと結びつけることなく、闘い切ることはできない。
 第三に、政治闘争と経済闘争の結合である。
 国内で資本を集中・集積させ、独占化・巨大化した資本は、国内だけでは飽き足らず、商売人の微笑を浮かべながら、他国へと殴りこみをかけていく。そのため、無理やりでも市場をこじ開け、旧来の既得権益勢力を打ち倒していく。それが侵略戦争である。
 アフガン・イラク戦争では、数百万に及ぶ民衆が犠牲となり、その利権でアメリカのみならず欧日の石油産業は、大きく利益を伸ばし、その下の労働者民衆にもおこぼれが振り落とされた。自らの賃金・労働条件さえよくなればいいという生活の裏には、このようなおぞましい現実が存在している。資本主義への批判を、貧困や搾取の一面に閉じてしまうことなく、米軍再編や自衛隊強化、原発推進政策など、資本主義・帝国主義の覇権と権益争いをめぐる政治的動きを直視し、これを変革する主体へと、労働者民衆は立ち上がらなければならない。
 第四に、どのような社会を建設するのかをめぐる、労働者階級の政治的結合の一側面とすることである。産業や地域を越えて、資本主義・帝国主義の本質的発露である侵略戦争への道(米軍再編)に対峙することは、労働者・民衆が闘いとるべき社会の一側面を明らかとし、そこに結集することを示している。
 沖縄では民衆が、沖縄戦の歴史と、戦後も続いた米軍政の戦争遂行支配の歴史を踏まえ、帝国主義の侵略戦争が、いかなる意味でも民衆を守らないこと、資本家・国家官僚・天皇らの利益のために、他国と自国の民衆を殺戮することを、身をもって記憶している。辺野古でのおばあ・おじいの体を張った闘いは、このような帝国主義世界を次世代に決して渡さない、豊かな海と大地をこそ次世代に残す、という世界観をあらわしている。
 岩国の闘いや、あるいは原発阻止三十年の闘いを担ってきた上関の闘いも、同様である。どのような社会をめざすのか、まさに今、帝国主義の侵略反革命の軍事再編をめぐる攻防の中で、その回答が闘い取られなければならない。
 第五に、総じて、労働者階級の支配階級への形成である。
 帝国主義・資本家階級との闘争において、最も中心的位置を占め、世代を超えて闘いの歴史を継承・発展させる団結と闘いを持っているのは、労働者階級である。
 昨年の『戦旗』第一三六〇号(二〇一〇年十一月五日)三面論文『12・4―5 2010岩国行動に全国から総結集を/労働者反戦闘争の階級的再生を実現しよう』で詳しく述べているが、戦後労働運動は、沖縄・広島・長崎そして空襲被害者を犠牲にして生き延びた、資本家や帝国官僚による、米帝のアジア侵略反革命戦争への合流に対し、激しい闘いを繰り広げた。朝鮮戦争への動員、戦争兵站稼動や日本国内における米軍基地拡張、日米安保条約締結などに対し、戦争被害者・反米愛国の立場から闘いぬき、米軍基地拡張を阻んだ歴史を持っている(戦後第一波の反戦闘争)。
 また日本の米軍兵站としてのアジア再侵出の中で、第一波の民族主義的・一国主義的弱点を踏み越え、ベトナム反戦闘争や沖縄連帯闘争を闘い、日本の帝国主義的復興と闘う反帝・国際主義勢力を形成した(戦後第二波の反戦闘争)。しかし、これらは労資一体派による職場での労働組合支配の強化を、街頭政治闘争で突破しようとする弱点を持っていた。
 いま日本は、震災・原発事故による東北労働者への壊滅的打撃・棄民化、〇八年以来の「二番底」の経済的危機から逃れんと一斉にアジア侵出に向かう国内産業空洞化、資本競争を支える企業優遇政策による増税・社会保障切り下げという、三重の攻撃の中にある。
 基地も戦争もない社会を求める沖縄・神奈川・岩国住民、そしてアジア-世界諸国労働者と連帯し、この三重の攻撃を打ち砕き、帝国主義グローバリゼーションの中を闘う、戦後第三波の労働者反戦闘争を切り拓くことが必要なのである。


  ●4章 戦後第三波の反戦運動を創出しよう

 米軍再編をめぐる攻防が、いよいよ正念場に入ろうとしている。
 今年3・11に起こった東日本大震災と原発事故は、東北地方に壊滅的被害をもたらすとともに、原発の「安全神話」をあますことなく打ち砕いた。原発をめぐる攻防、あるいは被災復興をめぐる攻防については、八月・九月の戦旗論文に詳しいので、それを参照されたい。
 震災と原発事故という事態の中で、米軍再編をめぐる攻防もまた進行した。政府は、十万人の自衛隊を投入し、米軍は「日米同盟の証」と称して「トモダチ作戦」を展開した。震災翌日の三月十二日には、福島第一原発で水素爆発が発生し、米軍は、「日本政府からの情報を頼りにして対応が遅れれば、米兵の命に関わる」(在日米軍幹部)と不信をあらわにしつつ、原子炉内での真水注入を強く要請し、自衛隊との共同作業などをおこなった。米軍にとっては、日米共同作戦・共同訓練の絶好の機会となったのである。
 これらに対しマスコミは「トモダチ作戦」で米軍は存在感共同作戦で自衛隊との関係強化などと宣伝し、日米同盟と自衛隊・米軍賛美をおこなった。しかし米軍の動きは、アメリカの国益にそった行動にしかすぎない。米シンクタンク・新日米安全保障センター(CNAS)は、「大震災による巨額の復興費用が防衛費を圧縮し、『日米同盟の能力低下につながる』との懸念」を指摘し、「アジア太平洋の『礎石』と位置付ける日本を支えることで同地域での指導力を維持する」とのレポートを発表した。
 このような中、六月二十一日には、ワシントンの国務省で、日米安全保障協議委員会(2+2)が開催され、二〇一四年完了予定のロードマップや日米同盟の深化を再確認している。ゲーツ国防長官(当時)は、「重要なのは、一年で具体的な進展を遂げることだ」と日本政府に強く迫った。というのは、米上院歳出委員会が、在沖海兵隊のグアム移転とパッケージになっている普天間移設、すなわち辺野古V字型滑走路の実施についての「展望、進展状況」を、来年五月二十五日までに示せ、と要求していることがある。移設の進展が示せなければ、米軍再編計画全体が見直されざるを得ないところまで、日米政府は追い詰められているのだ。日本政府が苦し紛れに提案したのが、馬毛島での艦載機の離発着訓練施設(FLCP)建設である。原子力空母ジョージワシントンの艦載機が、飛行甲板で着陸する技術を習得するための訓練(FLCP)は、騒音が大きく、現在は太平洋上の孤島・硫黄島で行われている。米軍がかねてから、中国対峙戦のために着目していた馬毛島を、日本政府は差し出したのだ。しかし、それは新たな火種をまき散らすことになった。七月二日、小川防衛副大臣が、馬毛島周辺自治体の首長や議会関係者らへの説明を行うために種子島を訪れたが、防衛省一行は「基地反対」の横断幕と怒号に迎えられた。
 他方、沖縄や岩国・神奈川などの米軍基地強化に反対する住民たちは、いっせいに「軍事費よりも被災者支援を」の声をあげた。沖縄においては、宜野湾市からは「空家米軍住宅を被災者用住宅として使わせろ」という要求があがり、また名護・辺野古からは、「世界の軍事費を環境・復興に」という運動が引き起こされた。岩国では、「愛宕山開発跡地を米軍住宅ではなく被災者復興住宅に」と、県住宅供給公社条例改定の直接請求が掲げられた。日米安保同盟と米軍基地に反対する人々が、これら基地周辺住民と連帯し、「軍事費よりも被災者支援を」のうねりを作り出そうとしている。
 米軍再編に対する闘いでは、日本全土の75%の在日米軍基地を担わされた沖縄が、日米支配の重壁を打ち破ってきたのだが、このような沖縄の闘いと連帯・連携しながら、神奈川や岩国住民が粘り強い闘いを形成してきた。これらを骨に反米軍再編勢力が形成され、日本における米軍再編の泥沼化を引き出している。二〇〇六年の住民投票で、米軍再編=艦載機移転による岩国基地強化に、ハッキリとNO!の民意を示した岩国住民は、〇八年から〇九年にかけて米軍再編・基地強化を許さない裁判を立ち上げ、愛宕山跡地における米軍住宅・施設建設に対しては、「愛宕山を守る会」「愛宕山を守る市民連絡協議会」が結成され、活発な活動を展開してきた。
 二〇一〇年末、政府は防衛省予算に「空母艦載機部隊移駐関連費用」として二百七十億円を計上し、うち「米軍再編関連施設用地の買い取り経費」として、愛宕山開発跡地の買い取り費用が百九十九億円含まれていた。直ちに愛宕山の住民たちは、「沖縄・辺野古に学び、息の長い闘いを!」と、愛宕神社前広場において、「愛宕山跡地を見守る集い」を開始し、今年八月二十一日、見守り一周年目を迎え、土砂降りの豪雨の中、日米政府-防衛省による強権的基地強化・米軍住宅建設をむかえ討つことを宣言した。
 着目すべきなのは、このような沖縄や岩国・神奈川住民の反基地闘争に寄り添い、日米安保をめぐる全人民的な政治攻防も見据え、労働運動の課題として反戦闘争の再生をめざす動きが、力強く広がりつつあることである。今年の5・15沖縄平和行進は、3・11震災支援のため縮小決定がされたが、現地の予想を上回る労働者が、沖縄・「本土」から宜野湾公園に集結した。岩国では、二〇〇六年、「アジアからの米軍総撤収」を掲げるアジア共同行動が、住民投票の声に応え岩国現地で国際連帯集会を開催したが、翌年二〇〇七年、その中から、岩国・労働者反戦交流集会実運動が生まれ、今年で五回目の、広範な岩国現地一日共闘を実現しようとしている。
 米軍再編に反対する闘いは、いよいよ緊迫した局面に入ろうとしている。九月十六日には、山口県知事が神奈川・米軍住宅視察などを行い、「米軍住宅周辺は静かだった」などと露払い発言をして、十二月の県議会には検討課題とする、と宣言している。
 全ての先進的労働者は、日米政府・防衛省との新たな攻防に突入する岩国住民を応援し、米軍再編を通して進む日本の戦争国家化と闘う労働者反戦闘争を強化していこう。
 第一に、帝国主義の戦争動員攻撃の時代を迎え撃つ、労働者反戦闘争の隊列を形成することである。
 第二は、資本主義に取って代わる次の社会=社会主義と労働運動との結合を、先進的労働者の共通課題に乗せていくことである。資本主義に代わる社会を獲得することなく、戦争と貧困の脅威がなくなることはない。次の社会は、それを担う主体の成熟なくしては語れない。米軍再編と闘う住民、労働運動の中から、帝国主義を打倒し、どのような社会をつくりあげていくのかの模索を開始していこう。
 第三に、アジア・太平洋地域、アメリカ、世界の闘う人民とともに、反帝・国際共同行動を前進させていくことである。米軍再編は、国境を越えて全世界的規模で推進され、帝国主義―多国籍資本のガードマン・侵略部隊として、米軍は国境を超えて活動する。米帝に連なる諸国が、これに連動する。これを打ち破っていく反帝・国際共同行動が、今ほど重要なときはない。韓国でも済州島での海軍基地建設をめぐって、地域住民や民主労総が体を張った闘いを展開している。帝国主義―多国籍資本に苦しめられる諸国労働者・民衆と結びつき、米帝の暴力装置=米軍基地を総撤収させ、国際的な階級闘争の発展を推し進めていくことが必要である。
 これらの遠大な課題の一歩一歩を築き上げるものとして、今年も、十一月二十六日、二十七日、岩国現地に総結集し、岩国・労働者反戦交流集会実運動を成功させ、戦後第三波の反戦運動を帝国主義の戦争動員と闘う階級闘争へと成長させていこう。



 

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