共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

   治安弾圧立法攻撃を打ち砕け

   
労働者人民の闘いの圧殺が狙い

   



 野田政権は、原発再稼働や消費税増税を強行した。同時に数多くの治安立法をも画策している。六月には、コンピューター監視法制の強化として「違法」コンテンツのダウンロードを犯罪化する著作権法の改悪が行われている。国会で審議中のものとしては、共通番号制(マイナンバー)法案や刑の一部実刑化法案がある。消費税増税と一体のものとして方針化されているマイナンバー制度は、文字どおりの国民総背番号制である。さらに、国会上程されていないものの、法制化が画策されているものとして、秘密保全法案、そして共謀罪の新設がある。
 まさに治安立法の攻撃が激化している情勢だ。新自由主義グローバリゼーションをとおして社会全体が流動化し、労働者人民への搾取抑圧が激化している。当然にも労働者階級人民からの体制変革の要求は日増しに強まっている。こうした情勢に対応して、国内階級支配体制を維持強化していくために、日帝―国家権力は治安弾圧体制の再編成を行おうとしているのだ。それは、かならず労働者階級人民の政治闘争に対する弾圧に突き進んでいくものだ。
 こうした動きと一体のものとして、現在、法務省に設置されている法制審議会―新時代の刑事司法制度特別部会(以下、特別部会)において、「新たな捜査手法」の法制化が論議されている。
 「新たな捜査手法」とは、身分証を偽造したスパイ捜査、住居に侵入して盗聴器を設置する会話傍受、通信傍受の拡大などである。到底認められない手法が、捜査手法として合法化することを目的に、公然と研究されている。
 警察権力は必ず、この手法を労働者人民のたたかいを押し潰す手段として使ってくるだろう。この悪辣な企みを満天下に暴露し、治安弾圧体制の強化を打ち砕こう。


 ● 1)警察庁研究会の最終報告弾劾

 国家権力は、特別部会に先立って、二〇一〇年に国家公安委員長の主催で「捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会」(以下、研究会)を立ち上げた。
 二〇〇八年の志布志事件や布川事件、足利事件、大阪地検特捜部による証拠改ざん事件などの数多くの権力犯罪が明らかになり、暴力的な取調べの実態が暴露されてきた。そして、密室での取調べを許さず、全面可視化が人民の要求として沸き起こってきた。やってもいない犯罪の「自白」を強要するといった強引な取調べを行っている警察権力が、罪を犯していない労働者を落としいれ、犯罪者として処罰することに対して、労働者人民の側からの猛然たる抗議が行われてきたのである。
 警察権力が人民を代用監獄に連れ込み、密室で「おまえがやったんだろ」と恫喝して「やりました」と嘘をつかせ、警察・検察が事件のストーリーをデッチ上げる。そして裁判所は、権力の作文を丸のみして、無実の人民をやってもいない「犯罪」で「処罰」してきたのだ。これに抗議するのはまったく当然のことである。
 いったい警察権力が何をしているのか。それを人民の前に明らかにせよという要求が、取調べの全面可視化への要求に他ならない。
 これを契機として警察権力は研究会を設置し、警察権力の立場から治安体制をどのように再構築していくのか検討してきた。そして、二年間で計二十三回の会議を通して、取調べの全面可視化や捜査手法の高度化をとおして、「刑事司法制度全体の在り方」を変えていく方針を明らかにしている。
 この研究会の最終報告は、全面可視化を否定し、自白を最重要証拠とする日本の刑事司法を再評価している。そして、組織犯罪の増加や治安悪化のキャンペーンをはって、警察の捜査権限の拡大を要求している。それは、最終報告が示す「基本的な考え方」にあらわれている。「本研究会は、治安水準を落とすことなく取調べの可視化を実現するために、我が国の捜査の在り方を見直し、治安水準の維持という観点も踏まえて、捜査構造全体の中での取調べの機能をどうするか、どのように可視化・高度化を図るか、取調べ以外の捜査手法をどのように高度化するか等について、おおむね二年程度をかけて幅広い観点から検討を行うこと」が目的だったというのだ。
 そして最終報告は、以下のような結論を表明している。「自白は事案の真相解明に欠かせない証拠方法である。可視化は、公判における的確な判断を可能にするという点で運用を検討すべきだ」として「自白」の位置づけを強調している。これほど批判を浴びても決して手放さないという警察権力の意志が表明されている。そして、取調べの可視化は、暴力的取調べの廃絶のためではなく、供述調書の客観性を補完するものとして位置づけられている。その上で、「客観的証拠による立証のために、新たな捜査手法を速やかに導入すべき」だというのだ。盗人猛々しいとはこのことだ。
 この研究会の最終報告を土台にして、法制審議会の特別部会において、新たな捜査手法の法制化が具体的に論議されているのだ。


 ●2)「新たな捜査手法」導入を許すな!

 この特別部会は、二〇一一年六月に第一回会議が行われている。そこから月一回のペースで開かれ、今年の七月で十二回を数えているが、第八回会議までに検討すべき論点を整理し終えている。これは大きく六つの論点として整理されている。すなわち、①時代に即した新たな刑事司法制度、②供述証拠の収集、③客観的証拠の収集、④公判段階の手続き、⑤捜査・公判段階を通じての手続、⑥刑事実体法の在り方、である。
 今年四月に開かれた第九回会議からは、これら具体的な論点についての検討が行われている。議論の趨勢としては、警察庁研究会の最終報告に示された方針に沿ったものとなっている。
 これまでの会議で扱われたのは、取調べの可視化、仮想身分捜査、通信傍受、会話傍受、司法取引である。
 第一の取調べの可視化について、権力に対する人民の立場からすれば、代用監獄を利用した警察の暴力的な取調べをやめさせることが、この議論の中心的な課題だ。そこからすれば、全面可視化しかありえないという結論が必然である。
 しかし、警察権力は、取調べの可視化には、それに限られない様々な機能があるとして、いくつもの検討項目を上げて論点をぼかそうとしている。そして、警察のいう「治安水準の維持」のためには全面可視化ではなく、部分可視化にとどめるべきであり、どのような事件を可視化の対象外にするかは現場の判断に委ねるべきだというのだ。
 部分可視化では、警察権力の強化にしかならない。カメラの回っていないところで被疑者に恫喝をかけ、これまでと同じように「自白」を強要し、「自白」しているところを録画する。それを裁判所に提出して、検察の立証の証拠として使うことができるようになるわけだ。こうした点から、権力側は「あくまでも可視化に反対しているわけではない」といっている。従来の、供述調書中心の立証手段を補完するものと位置づけて制度化させようとしているのだ。
 このような部分可視化などというペテンを絶対に許してはならない。問題の根本は、代用監獄がいまだに維持されているということにある。でたらめな取調べをやめさせるには、代用監獄の廃止こそが必要なのだ。
 第二の仮装身分捜査とは、警察官であることを隠すために、様々な証明書を偽造して、スパイ捜査活動を行なっていくというものである。そうして仮装した身分で、一定の契約行為もできるようにする。これは、例えば警察官であることを隠して雇用契約を結ぶことが可能となるだろう。こうなれば戦闘的にたたかう労働組合に、警察官が組合員として潜入し、スパイ行為を働くことが合法的な捜査として行われるのだ。その延長線上にあるのは、組合活動の妨害や組織の破壊を狙う公安警察の悪辣な攻撃だ。
 また、警察庁刑事局刑事企画課長の島根悟は「仮装身分を用いて、いわゆる捜査の準備活動等を行うようになりますので、その後、捜査手続きが進んでいくという場合に、先行する仮装身分捜査が違法と評価されないようにする必要がある」とまで発言している。導入するとなれば一切の制限なくスパイ活動を認めろというのだ。
 第三の通信傍受では、現在の通信傍受法の様々な制限を解除して、盗聴捜査を拡大してこうとしている。
 まず、現在四つの罪(薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航、組織的殺人)に限定されている通信傍受対象犯罪を、組織的詐欺などにも適用できるように強く要求している。最近の政治弾圧では、レンタカー契約やアパートの賃貸借契約での詐欺罪のデッチ上げが目立っている。公安警察が組織壊滅型弾圧に利用してくるのは明らかだ。
 さらに、会議の中で法務省刑事局参事官の坂口拓也は「全ての通信について録音し、保存した音源から後日……捜査機関が傍受することも十分可能」であると発言している。警察がある電話番号を指定すると、電話会社がその通話をすべて録音して、それを警察に渡すということを制度化しようとしているのだ。警察の監視強化を許してはならない。
 第四の会話傍受では、警察庁刑事局の露木康浩が「マンションの一室……そこの鍵を開けて、関係者がいないときに……そういうときを見計らって、令状なら令状を持って捜査員が中に入って機器を取り付ける」と発言している。
 明らかに不法な住居侵入であり、警察が捜査として行えば憲法に違反する行為である。それを「組織犯罪」対策のために認めろということを主張しているのだ。そして、住宅への侵入だけでなく、車両や宅配物の中に盗聴器を仕掛けるといったことも可能だとしている。
 これについて「特別の法律によって要件や手続きを新たに制度化するのが当然の前提となるが、合憲性を担保するためには、相当程度に厳格な要件や手続きを定める必要がある」と言っているが、同じことが通信傍受法制定の時に言われている。いちど法制化されれば、現場警察官には使いにくいなど、さまざまな文句をつけて規制を緩めようとするのは、前段の通信傍受を見れば明らかである。絶対に会話傍受の合法化など認めてはならない。
 第五の司法取引は、いかに被疑者を「自白」させるかという観点から、刑事免責を含めて検討されている。刑事免責とは、警察や裁判所の一方的行為で黙秘権を取り上げ供述義務を課すという制度である。そのかわりに裁判において、供述した内容については罪に問わないことにする、という制度だ。公安警察はこうして得た供述を利用して、さらなる弾圧を加えてくるだろう。
 さきの仮装身分捜査と組み合わせて使うことで、労働組合にスパイとして潜入した警察官が争議行為で、経営者ともみ合いになるなど意図的に現場を混乱させ、自らは自白し刑罰を逃れ、他の組合員を陥れることも考えられる。このように警察官によるデッチ上げ弾圧がいくらでも可能となる制度である。
 従来から、司法取引や刑事免責を導入すれば、自らの刑罰を軽くするために無実の他人を巻き込むことが十分考えられることが指摘されてきた。だからこそ権力によって検討されながらも、導入が見送られてきたのだ。
 「人質司法」のもとで警察による暴力的な取調べが横行する中で、すでに数多くの引っ張り込みや売り渡しによるデッチ上げ弾圧が行われている。断固として反対していかなければならない。
 特別部会の方針では、第十二回会議で一巡目の議論を終了させ、取りまとめの方向へ向かおうとしている。警察権限の拡大を基軸にした刑事司法制度全体の大改悪を許してはならない。特別部会の審議経過を注視しつつ、警察に強大な捜査・監視権限を与える「新たな捜査手法」の法制化阻止をたたかっていこう。


 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.