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   原子力規制委員会解体

   
原発の再稼動を阻止し、廃炉に

      


 東日本大震災の発生とそれにともなう東京電力福島第一原子力発電所の未曾有の事故から一年半以上がたちました。現在も原発事故で避難した住民は約三十四万人(仮設住宅を含む)超えています。また。震災関連死と認定された方が一千六百三十二人(三月末時点)。特に福島県は全体の半数以上を占め、原発事故による避難、移動に伴う疲労などにより高齢者たちが多数亡くなっているのです。東電は、事故当初「原発による死者は一人もいない」といってましたが、これら亡くなられた方たちは原発による死以外の何ものでもないのです。そして、福島第一原発の事故は今だ収束しておらず、放射性物質を放出し続けています。再び大きな地震が発生すれば残存する建屋や燃料プールが倒壊し、今以上に大量の放射性物質が放出される危険な状態が続いています。事故原因についても未だ解明されない点が多々あるにもかかわらず、政府と関西電力は大飯原発(福井県)三、四号機の再稼動を強行しました。これを突破口に政府と電力資本、経済界は停止状態にある全国の原発の再稼動にむけた動きを強めてきています。全原発の再稼動を許さず、全原発を即時廃炉へと追い込む闘いの強化が私達に求められています。


 ●1章 原発再稼動は必要ない

 猛暑と言われたこの夏と例年よりも高めとなった残暑の過程においても電力会社が喧伝した「計画停電」は、まったく起こりませんでした。関西電力は五月、原発ゼロで今夏を迎えた場合、15%の電力不足が生じ「計画停電は避けられない」として、大飯原発の再稼動を強行しました。しかし、すでに報道されているように関西電力の今夏の実績は、電力需要が最高の八月三日は、最大で二千六百八十二万キロワット。同日の供給は二千九百九十九万キロワットで三百十七万キロワットもの余力がありました。同日の大飯原発による電力供給は二百三十六万キロワットですから大飯原発が稼動していなくても、なお、八十一万キロワットの余裕があったのです。それどころか再稼動による供給量が増えた分、燃料費のかさむ火力発電を休止させ供給量を調整するということまで行っていたのです。こうした事実に関電は「原発がなくても供給力は維持できた」ことを認めました。また、九電でも同様に今夏の最大需要は一千五百二十一万キロワット。ピーク時の電力供給力は一千六百六十三万キロワットとまったく原発なしでも問題ないことが実証されました。
 政府と関電は「電力不足」なるものを再稼動の理由としてきた以上、大飯原発の稼動は直ちに停止させるべきです。


 ●2章 矛盾・欺瞞に満ちた新エネルギー政策

 九月十四日、野田政権はエネルギー・環境会議で「革新的エネルギー・環境戦略」なるものをまとめました。これは、政府主導で進められてきたエネルギー政策の意見聴取会や「討論型世論調査」、さらに全国から八万件を超えるパブリックコメントなどで原発ゼロを求める声が七割を占めるという圧倒的な脱原発、反原発の世論に圧されつつ、近づく総選挙対策として打ち出された欺瞞に満ちたものです。
 第一に、二○三○年代に「原発稼動ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する。その過程で安全性が確認された原発は重要電源として活用する」としています。つまり、発足した原子力規制委員会が安全と判断した原発は再稼動させることを前提にしています。しかし、現在、この原子力規制委員会と政府の間でこの再稼動の責任の所在をめぐり混乱が続いています。原子力規制委員会設置法では、第一条(目的)第三条(任務)第四条(所掌事務)などの諸規定において再稼動をめぐる法的規定はありません。そうした中で原子力規制委員会は、「原発の安全性は確認するが再稼動するかの判断はしない。再稼動は事業者かエネルギー政策を担当する省庁がすべき」としています。一方、政府は「規制委が独立した立場から安全性を確認した原発は、重要な電源として活用する」(十月三日、藤村官房長官)として、政府として再稼動そのものへの責任を持たないことを表明しています。さらに、地元の理解を取り付けるのも電力会社だとしています。つまり、このままでは来年七月を目処に「新たな安全基準」の策定を進めている規制委員会のもとで、その「新基準」なるもので「安全性」が確認されれば、自動的に全国の原発は、再稼動されるという事態になるのです。事実、エネルギー政策を扱う経済産業省の幹部は「電力会社は、そもそも原発の稼動のため安全審査を受けているわけで、地元の了解が得られ次第、原発を再稼動させることになる」としています。
 大震災前は、保安院による検査後、経産省が修了証を出す仕組みになっていました。しかし、原発事故後、大飯原発の再稼動にむけて国民を欺くために「苦肉の策」として行われたのがストレステストと政府による地元の説得、関係閣僚会合での再稼動決定という手続きでした。しかし、こうした手続きはなんら法律に基づいて行われたものではなく、政府主導の政治判断によって行われたものにすぎません。このままでは全国の原発の再稼動がなし崩し的におこなわれていく可能性が極めて高いのです。
 第二に「原発の新増設はおこなわない」としつつ、現在全国で十二基ある新増設計画のうち、建設中の大間原発(青森県)、島根原発三号機(島根県)、東通原発一号機(青森県)については、工事継続を明らかにしました。(九月十五日、枝野経済産業省) この建設中の三基を認めるということは、三○年代を過ぎ、五○年代まで原発が残ることを意味します。「三○年代に原発稼動ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という戦略目標と鼻っから抵触する矛盾に満ちたものなのです。早速Jパワー(電源開発)は大間原発の工事再開を宣言(十月一日)。工事に取り掛かかろうとしています。大間原発は、燃料のすべてをMOX燃料を使って発電する「フルMOX原発」となるもので、「核燃料サイクル政策」の継続を前提とするものであり、原発ゼロ政策とはまったく矛盾するものです。
 第三には、三○年代原発ゼロをめざすとしながら核燃料サイクル政策を継続するという点です。原発を減らしていくというのに、核燃料サイクル政策を継続するということは核兵器に転用できるプルトニウムをどんどんと作りだしていくことになります。現在、六ヶ所村の再処理工場には、約二千九百トンの使用済み燃料が保管されており、ほぼ満杯状態です。また、各原発敷地内に保管されている分もすでに容量の七割を超えています。もし、燃料の再処理事業が継続できなくなったときは、使用済み燃料を再処理工場から搬出するという取り決めがあり、これらが各原発に返されれば、プールが満杯となり原発の継続運転ができなくなります。あくまでも原発を稼動させていく。そのために核燃料サイクル政策を継続する。これが野田政権の本音です。
 そして、極めつけは九月十九日、野田はこの新戦略そのものを閣議決定することなく、「今後のエネルギー・環境政策については『革新的エネルギー・環境戦略』を踏まえて、関係自治体や国際社会等と責任ある論議を行い、国民の理解を得つつ、不断の検証と見直しを行いながら遂行する」と結局、何もしませんという一文のみを決定し、あっさりと閣議決定を棚上げにしたのです。そこには原発ゼロをめざすという表現すらありません。原発推進自治体や米帝、原発企業・財界、電力業界の意向に全面的に沿ったものであり、脱原発、反原発を求める圧倒的な国民世論の完全な無視です。
 元々、この「新戦略」なるものは法律に基くものでもなく、世論に押された政府が総選挙を睨んだ「かけ声」に過ぎなかったわけですが、総選挙で野田-民主党政権が変われば、この方針は大きく変わるかあるいは破棄される代物なのです。


 ●3章 原発維持、核武装推進目的の原子力規制委員会

 九月十九日、原子力規制委員会が発足しました。委員長には「原子力ムラ」の田中俊一・前内閣府原子力委員長が国会の同意なしに首相によって任命され、事務局の原子力規制庁ももとの保安院や安全委員会からの横滑り四百六十人の体制で発足しました。まったく名前を変えただけの原子力推進委員会に他なりません。そして、この体制のもとで来年の七月を目処に「新たな安全基準」を策定し、各原発の安全審査を行うとしています。
 今回、原子力規制設置法第一条(目的)において「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする」と明記され、同様に原子力基本法第二条にも「我が国の安全保障に資することを目的とする」との一項が追加され改悪が行われました。これは明確な核の安全保障=核武装の宣言であり、これまでの口先だけの「平和利用」さえも明確に否定する核大国への宣言なのです。原子力規制委員会とは、先にも述べたように国民の反原発、脱原発の圧倒的世論に圧された政府が、人民を欺くために設置した、原発維持と核武装促進を図るための機関でしかなく、解体するしかない代物です。


 ●4章 大飯原発の即時再停止を

 今年の五月五日、北海道泊原発が定期点検のため運転を中止し、原発ゼロの状態がうまれました。しかし、政府と関西電力は、大飯原発再稼動に反対する人々が63%を占めるなか、マスコミを通じて「再稼動しなければ電力不足で関西地域に大停電が起きる」「海外へと移る企業も増え、雇用が失われる」「病院が停電となり患者を殺すのか」などありとあらゆるデマと脅迫を行い再稼動を強行しました。しかし、事実は先に述べたとおりです。
 この大飯原発は、現在再稼動がなされたわけですが再び稼動停止へと追い込んでいかなくてはなりません。
 大飯原発では原子炉の下を走る断層が活断層ではないかとの指摘が以前からありました。そして、二○一二年に入って大飯原発の敷地で調査した結果、何本もの断層が一~四号機の下を走っており、一・二号機と三・四号機の間を大きな活断層がある可能性が明らかとなりました。この指摘に対して保安院と関電は、「活断層ではないと判断している」と強弁し続けました。また、関電などが調査した結果報告を公表すべきとの要請に「紛失した」というまったくもってありえないデタラメな対応に終始してきました。
 一九八九年三月に改訂された国の「原子炉立地審査指針」の中には原則的立地条件として「大きな事故の要因となるような事象、例えば立地場所で極めて大きな地震、津波、洪水や台風などの自然現象が過去になかったことはもちろん、将来にもあるとは考えられないこと。 また、災害を拡大するような事象も少ないこと。これは例えば隣接して人口の大きな都市や大きな産業施設があるかとか、陸、海、空の交通の状況などの社会環境や、地盤が軟弱といった自然条件を考慮することである」と明記されています。こうした立地条件を完全に無視して大飯原発は建設されているのです(他の全国の原発も同様)。
 実際にこの若狭の地は古くから地震、津波による被害を受けてきました。古くは天正大地震(一五八六年)、寛保津波(一七四一年)があり、ともに甚大な被害で出ています。そして、現代では一九四八年の福井地震(M七・一)が起こっています。これは地表に表れていない活断層がずれたのが原因で被害の規模は、関東大震災、阪神・淡路大震災などと並ぶ大規模なものです。そうした場所に大飯原発は建っているのです。
 そして、この活断層を巡っては、最近驚くべき事実があきらかになりました。阪神大震災後、十七年間で活断層が起こした可能性があるマグニチュード六以上の主な地震は十四回。そのいずれも国が警戒を促す百の主要な活断層帯以外で起きていたことが判明したのです(『朝日新聞』九月一日)。日本列島には二千ほどの活断層があるといわれていますが、国は地表にできた隆起などから目で確認できるものを中心に主要活断層と位置付けてきました。しかし、地下部分は目視できず、確認が進んでいないのが現状です。そして、こうした活断層がマグニチュード六以上の地震を引き起こしてきたのです。国の地震調査研究推進本部(文部科学省所管)は、二年前から「約十年で見直す」としていますが、最初にとりかかった九州地域の調査すらまだ終わっていないのが現状です。すでに全国の原発の下や近郊には多くの断層が確認されており、また大飯のように活断層の可能性も指摘されてます。ましてや国の想定した活断層以外で大規模地震が起こっており、政府、電力会社のいう「「活断層ではない」「地震を起こす可能性はない」などと何を根拠に強弁しているのか、徹底して批判し大飯原発を即時再停止させなければなりません。


 ●5章 全原発を廃炉に追い込もう

 電力各社・財界、原発推進勢力は、大飯原発に続いて各原発の再稼動にむけて動きを強めています。すでに北海道電力は、九月五日、停止中の泊原発が再稼動しない場合の冬の電力需給の見直しを発表しました。十二月から二月にかけて安定供給に必要とする供給余力3%を割り込むとしています。再びの電力不足キャンペーン=「停電テロ」の開始です。
 先に述べたように政府・電力各社は、大飯の次にこの北海道電力泊原発をはじめ四国電力伊方原発、関西電力高浜原発、九州電力川内原発などの再稼動を狙っています。全国的な反原発運動の連携を強化し、大飯原発の再停止と再稼動阻止の闘いを強化していかなければなりません。
 大飯原発に続き、原子力安全・保安院のもとで検討が一番進んできたのが、四国電力伊方原発です。すでに今年の三月に原子力安全委員会への報告が終わっています。今後、この報告は原子力規制委員会へと引き継がれ「新たな安全基準」のもとで審査されるものと思われます。この伊方原発は、一号機がすでに稼動後四十年近くになり、以前から老朽化による事故が指摘されてきました。また、三号機はプルサーマル発電を行っており、専門家から指摘されているように軽水炉以上にプルトニウム・キュリウムなどの超ウラン元素の放出量が多くなるなど危険度の高いものです。そして、何より国内最大級の活断層である「中央構造線」が原発沖合い八キロという極めて近いところにあり、「日本で最も危険な原発」といわれています。そして、愛媛県の中村知事は、六月十八日に「伊方原発再稼動は必要」との発言以降、「安全優先」との「条件」をつけてはいますが、「国が伊方三号機の安全性」について判断を示せば、自治体として基本的に同意するとの立場を表明しています。今回の場合、規制委員会による「安全宣言」が出されればすぐさま再稼動に踏み切るものと思われます。
 次に関西電力高浜原発ですが、九月三日保安院によって高浜原発三、四号機の最終評価の審査結果が公表されていますが、これが規制委員会のもとの「新たな安全基準」ではどのようになるのか不明です。しかし、この高浜原発を含めて若狭地域には、敦賀、美浜、大飯など十三基の原発と高速増殖炉「もんじゅ」があり、原発の密集する極めて危険な地域です。この地域で一旦原発事故が起こったならば、近くにある琵琶湖を汚染し、近畿地方の水事情に極めて深刻な事態を引き起こします。また、風向き次第では、近畿(二千百万人)、中部(二千三百五十七万人)、関東(四千二百四十三万人)、北陸(五百四十四万人)という途方もない数の人々が放射能汚染の危険にさらされます。その場合、実に日本の人口の70%が被曝します。実際に今年の三月に実施された「福井の原発からの風向き調査プロジェクト」の報告によると美浜原発近くの水晶浜から千個の風船を飛ばしたところこの日の風向きの条件のもとで、岐阜県の人口密集地に甚大な放射能汚染が起こること。さらに名古屋市を含む濃尾平野全体にも汚染が広がることが明らかになりました。こうした結果を踏まえるならば、上記九千万を超える人々が被曝の危険にさらされるというのは、大げさでも誇張でもありません。そして、こうした大量の人々の避難は可能なのか。現実にはまったく不可能であり、絶望的な現実が待っているだけなのです。
 九電管轄では、玄海、川内の六基すべての原発について、第一次報告書がすでに提出されています。
 阪神大震災後に地震の活動期突入が明確となってから原発で最初に地震に直撃されたのが、この鹿児島県の川内原発です。(一九九七年三月 鹿児島県北西部地震)川内原発では、他の原発同様に数々の事故が発生しています。一号機では試運転中の自動停止、燃料集合体のピンホール、一次冷却材ポンプ変流翼取付ボルトのひび割れ、蒸気発生器細管の摩耗減肉、蒸気発生器の細管損傷などの事故が起こっており、二号機でも同様の数多くの故障・トラブルが起こっています。また、玄海原発をかかえる佐賀県では、知事である古川が「計画停電がなくても玄海の再稼動は必要」と繰り返し再稼動を求めています。
 また、上関原発では十月五日、中国電力が予定地域周辺海域の埋め立て免許の三年間延長を申請。これに対して山口県知事・山本は、免許の更新を認めない方針を明らかにしました。しかし、この知事の山本は九月県議会で「国の方針が定まれば、国のエネルギー政策に協力姿勢で対応する」としており、政権交代をふくむ政府のエネルギー・原発政策の転換次第でいつでも許可を出す可能性が残っています。中国電力も「上関原発は必要だ。国の方針もあるので直ぐに進めることはしないが、現状維持をしたい」と建設計画は撤回せず、政府の方針待ちの態度を明らかにしています。
 政府、電力会社、原発企業などは、あくまでも原発の再稼動、原発の増設を狙っています。首相官邸前、国会包囲、全国の電力会社への抗議闘争や全国での毎週金曜日の抗議闘争と原発立地の地元住民の粘り強い闘いを結合し、大飯原発の即時再停止、原発再稼動阻止・全原発の廃炉にむけて闘いを強化しよう。


 

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