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   ■オスプレイ低空飛行訓練許すな!

   
米軍基地撤去の反戦・反基地闘争を闘い抜こう


   



 新型輸送機MV―22オスプレイを使用した日米共同訓練が、十月上・中旬滋賀県陸上自衛隊饗庭野(あいばの)演習場で、さらに同月下旬高知県で「防災訓練」として行われようとしている。いずれも岩国基地を使用して行われる。オスプレイは沖縄普天間飛行場に昨年十月十二機、本年九月までに追加配備十二機、合わせて二十四機が配備された。八月配備さなかの五日、沖縄米軍キャンプ・ハンセン山中に米空軍ヘリHH60が墜落炎上し、原因究明もされないまま、オスプレイ追加配備が強行された。
 オスプレイの配備以降、沖縄、さらには今年三月から始まったオレンジルート―和歌山・四国での飛行訓練は住民の人命を危険にさらしつづけている。配備前に決定された日米合意違反の飛行訓練を連日繰り返している。十月日米共同訓練を行い日米両軍の一体化を進める日米両政府に対し、全国に拡大するオスプレイの低空飛行訓練を許さない労働者人民の闘いを叩きつけていこうではないか。

 ●1章 低空飛行訓練の実態

 ▼① どういう訓練が行われているのか


 昨年六月米軍は環境審査報告書(環境レビュー)においてオスプレイの沖縄への配備と訓練計画、岩国基地とキャンプ富士を拠点に全国六ルート(中国山地ブラウンルートを含めると七ルート)で年間約三百三十回の低空飛行訓練計画などを明らかにした。そのうち三割が夜間訓練である。また同年九月オスプレイの飛行に関する日米合意を次のように発表した。①人口密集地や原発建設地などでの低空飛行や夜間飛行(十時以降)訓練などは可能な限り避ける、②日本の航空法に定められた航空機の最低安全速度を守り、五百フィート(百五十メートル)以上の高度で飛行を行う、③ヘリモードと固定翼モードの切り替えは主に基地内で転換する、④転換モードの状態で基地の外を飛行する時間も最小限とする、⑤ヘリモードでの飛行は基地や訓練場内に限定する、など。

 ▼② 沖縄全域での訓練

 オスプレイは六十九カ所のヘリパッド(着陸帯)で、普天間基地を起点に、嘉手納基地、ホワイトビーチ、キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、北部訓練場(高江)、伊江島補助飛行場などへの飛行、訓練をくりかえし、沖縄全域を飛行している。北部訓練場や伊江島など五十カ所を「戦術着陸帯」に指定し訓練している。
 訓練内容は、地上からパイロットが見えるほどの超低空飛行訓練からコンクリートブロックを吊り下げた訓練、伊江島でのパラシュート降下訓練、午後十時以降の夜間飛行・離着陸訓練(無灯火を含む)、編隊飛行訓練などだ。今年は正月三日から訓練がおこなわれた。市街地上空での飛行やヘリモード・転換モードの基地外飛行は昨年配備直後から行なわれ、基準値を超える爆音(八十から百デシベル)や他の機種を上回る低周波音のもと夜間飛行などが繰り返し行われた。沖縄「県」は、昨年十二月過去二カ月間における三百十八件の日米合意違反を突きつけた。三百十五件が人口密集地上空での飛行、そのうち七十四件がヘリモードでの飛行、三件が午後十時以降の夜間飛行である。ところが防衛省は三件の夜間飛行は認めたものの、そのほかは運用上必要であるとして「違反は確認できない」と否定した。騒音防止協定違反の夜間十時以降の飛行もこの九月には四日間連続して行われた。また現在伊江島では通告なしに六カ所の着陸帯の増設工事が行われ、夜間訓練も激化している。東村の高江では住民の抗議を無視して六ケ所の着陸帯を作る工事を強行し、一カ所の着陸帯を完成させている。

 ▼③ オレンジルート下での訓練

 今年三月六日から八日に行われた岩国基地を拠点にして四国を横断するオレンジルートでの訓練は、はじめて米軍が日程やルートを日本政府に事前に通知しておこなわれた。その後の四回の同ルートでの訓練については米軍から日程など詳細な連絡は行われず、防衛省からもルート下の愛媛・徳島・高知県などの各市町村に直前情報や情報提供もなく実施された。第一回三月六~八日の訓練では夜間飛行訓練や岩国基地で五分おきの夜間離着陸訓練がおこなわれた。二回目三月十九日~二十三日、三回目五月七~九日夜間飛行訓練や岩国基地での離着陸訓練も、四回目五月二十日~二十四日夜間飛行訓練も実施された。五回目六月五日から行われた訓練では二機から六機が使用された。高知県本山町で一〇三デシベル(電車通過時の線路脇の騒音)の爆音が観測され、機体やプロペラの動きがはっきり確認できるほど低く飛んでいるのが目撃された。普天間に配備される直前の昨年九月岩国市由宇町や周防大島で住宅地上空を飛んでいるのを目撃されていた。

 ▼④ 低空飛行訓練の特殊性

 従来、「本土」ではおこなわれなかった輸送ヘリの低空飛行訓練が新型輸送機オスプレイにおいて実施されるのは、米軍にとってオスプレイが格段の性能をもつとされるからに他ならない。輸送ヘリCH46に比しオスプレイは最大速度(時速五百キロメートル)、航続距離(約三千九百キロメートル、空中給油機能をあわせもつ)、輸送能力などに優れているとされ、垂直離着陸機能と固定翼航空機能を有した機種であるとされている。しかもそうした機能をもって低空を地形にそってヘリモードや転換モードなど様々なモードで飛行する。環境レビューや米国ニューメキシコ州キャノン空軍基地における「低空飛行訓練実施のための環境評価書案」によれば、戦場での作戦行動を想定して、敵レーダーからの捕捉を逃れる訓練や敵地に侵入・空中停止し、人員・物資を投下・回収し脱出するなどの特殊作戦を遂行するための低空戦闘訓練(超低空飛行、空中投下、操縦訓練など)を行うとされている。 飛行高度十五から六十メートル上空で戦術用訓練をするとも言われており、レーダーによる支援のない低空飛行訓練の事故回避策が「See and avoid=よく見て、避けろ」という言葉に示される危険な飛行訓練だ。

 ▼⑤ これまでの米軍機の低空飛行訓練

 米軍は一九八〇年代から沖縄を含む全国の八飛行ルート・エリア(空域・海域)などで低空飛行訓練をおこなってきた。
 米軍の事故報告書や全国の住民の目撃証言、自治体や平和運動の監視行動から明らかとなった低空飛行訓練とは、学校・変電所・発電所・公共施設などを攻撃目標にみたてて急降下・急上昇をくり返す米軍戦闘攻撃機や輸送機などによる戦闘訓練や爆撃訓練などである。昨年六月FA18戦闘攻撃機ホーネットが中国山地ブラウンルートに隣接するエリア五六七訓練空域にある島根県浜田市で、子ども園上空を飛行し刑務所施設を攻撃目標に見立てて訓練している事実が明らかになっている。一昨年小学校上空での低空飛行による轟音のすさまじさに直面した浜田市は、現在独自に騒音測定器を設置・観測している。日常的に七十デシベル(騒々しい街頭)をこえる爆音だけでなく、週末や休日、夜間十時以降の飛行などがおこなわれている事実も報告されている。
 低空飛行訓練に関して日米両政府は九九年一月合同委員会合意の内容を「在日米軍による低空飛行訓練について」の中で明らかにしている。日米安保条約の目的を支え、「戦闘即応体制を維持するために必要とされる技能の一つが低空飛行訓練である」として不可欠な訓練としている。そこでは「一、最大限の安全性を確保するため、在日米軍は、低空飛行訓練を実施する区域を継続的に見直す。低空飛行の間、在日米軍の航空機は、原子力エネルギー施設や民間空港などの場所を、安全かつ実際的な形で回避し、人口密集地域や公共の安全に係る他の建造物(学校、病院等)に妥当な考慮を払う。(略)五、在日米軍は、日本国民の騒音に対する懸念に敏感であり、週末及び日本の祭日における低空飛行訓練を、米軍の運用即応態勢上の必要性から不可欠と認められるものに限定する」としている。また騒音防止協定でも夜間飛行は午後十時までとしている。
 米軍戦闘機や輸送機、ヘリなどの飛行による爆音や衝撃波によって土塀破壊、家畜(鶏・牛)の突然死などの被害にとどまらず、墜落などの重大事故も各地でおきている。墜落事故では八八年沖縄北部訓練場で海兵隊ヘリ乗員死亡事故、九四年の高知県早明浦ダムで戦闘攻撃機の乗員死亡事故、九九年岩手県釜石市でF16戦闘機の事故、同年高知土佐沖でFA18戦闘機の事故などがある。一九八九年以降の在日米軍機による事故件数(墜落・不時着・緊急着陸・落下物など)は全国で、今夏沖縄でのHH60ヘリ事故を含め七十九件にのぼっている。普天間基地所属の米軍ヘリCH―53Dが沖縄国際大に墜落炎上した二〇〇四年には一年間で最多十六件の事故がおきている。沖縄では、七二年以降の米軍航空機関連の事故は八月現在で三百三十三件(うち墜落四十四件)発生している(沖縄県知事公室基地対策課調べ)。これら全てが低空飛行訓練による事故でないにしても、低空飛行訓練による事故の危険性が極めて高いのは明白である。なにより従来の戦闘機の低空飛行訓練に加えて、墜落事故を再三おこしているオスプレイの飛行訓練はきわめて危険である。機体の安全性についてエンジントラブル時、オートローテーション機能(安全に着陸する機能)に不備がある危険な機種であることが明らかになっている。ひとたび墜落事故がおこれば重大事故につながる。世界一危険な普天間基地での飛行訓練は断じて許すことはできない。
 また米軍機が原子力施設上空を飛行している事実も明らかになっている。〇七年以降計七件、東北電力東通原発(青森県)、日本原子力研究開発機構人形峠環境技術センター(岡山県)、四国電力伊方原発(愛媛県)などでだ。伊方原発周辺では米軍機事故が過去九件あり、八八年には二号機八百メートル先に大型輸送ヘリが墜落し乗員七人全員が死亡する事故がおきた。今年三月米軍哨戒機P3Cが原発付近上空を飛行していたことがわかっている。墜落事故によって原発事故が引き起こされかねない。
 米軍は低空飛行訓練に関する日米合意事項などお構いなく、昼夜を問わず爆音を撒き散らし住宅地や学校・原子力施設などの上空で危険な飛行を繰り返している。防衛省も追認するのみで、訓練ルート下や基地周辺住民の生命と生活を軽視している。とくにオスプレイの低空飛行訓練にたいし住民の不安の声が高まり、沖縄をはじめ島根・広島・鳥取、愛媛や高知・徳島、秋田・岩手など全国各県市町村から訓練の中止や安全確保を求める要請書が相次いでいる。沖縄では九月四日全市町村会の会長による全オスプレイの配備撤回を求める共同声明が発表され、また普天間基地前抗議行動をさらに継続させることを確認して闘われている。岩国ではオスプレイの運用拠点化、基地強化に抗議する岩国市民の座り込み行動などが継続して闘われている。

 ●2章 米国・エアシーバトル構想―西太平洋海域での軍事力強化

 普天間に配備されたオスプレイは昨年十二月以降、グアムやフィリピン、タイ、韓国などで軍事演習に参加している。六月下旬にはオスプレイは、米軍佐世保基地を母港とする強襲揚陸艦ボノム・リシャールに搭載されオーストラリアでの合同演習に参加し、九月に九機帰還した。
 米国は、二〇一〇年「四年ごとの国防政策の見直し(QDR)」を発表し、西太平洋地域を重視し帝国主義支配秩序形成の一角に中国を引き込む戦略を重視することを明らかにした。他方で中国の軍事力拡大―ミサイル開発(弾道・巡航)、潜水艦、サイバー戦、高性能戦闘機などの軍事力増大にたいし、これに対抗し打ち破る能力を拡充することを明らかにしている。それに基づき「エアシーバトル(空海戦闘)」という対中統合作戦構想を明らかにした。米国は中国が西太平洋海域で軍事力を展開し、台湾海峡有事への米軍の介入や接近を阻止する能力の強化を図っているとみなしている。それへの対抗策として西太平洋海域軍事拠点の整備強化と海空軍兵力を増強し中国を撃破する構想を進めている。そのために日本におけるミサイル防衛や防空能力の強化を図り、同盟諸国と合同演習を繰り返し実施し、米軍との連携強化-軍事力の強化をはかっている。普天間へのオスプレイ配備、辺野古新基地建設や岩国基地を運用拠点にした低空飛行訓練、嘉手納・横田へのオスプレイ配備策動、沖縄南西諸島への自衛隊配備策動、京都米軍Xバンドレーダー基地建設などが一体に進められている。

 ●3章 全国で低空飛行訓練反対、配備撤回の闘いを

 日米両政府は今秋饗庭野演習場で日米共同訓練を実施する。十月十日空中で停止した機体から隊員が陸上に降下する「ヘリボーン作戦」と十六日「陣地攻撃」訓練でオスプレイが使用される。また十月下旬「防災共同訓練」を実施する。オスプレイを使用して岩国基地と陸自高知駐屯地、空自土佐清水分屯基地との間で物資を運ぶ訓練を行う。防衛省は「沖縄の負担軽減になる」と強調するが詭弁だ。もともと沖縄で計画されたものでもなんでもない。オスプレイを使用した共同訓練を全国で拡大することを策動している。九月二十九日滋賀県でこれに抗議する集会とデモ行進が取り組まれた。
 八月二十四日米国ネバダ州クリーチ基地近郊で海兵隊仕様のオスプレイが着陸に失敗したと報じられた。しかし実は墜落炎上する重大事故であったことがわかった。またこれより前の六月米国ノースカロライナ州でおきた「機体の一部が焦げた」と説明されたオスプレイの事故も機体が大破していた。いずれも米軍が「クラスA」の事故と評価する重大事故だった。事故を隠蔽し、欠陥機オスプレイの飛行を強行する日米両政府に対し、低空飛行訓練反対、配備撤回のたたかいを全国で推進しよう。



 

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