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   ■「解雇特区」と労働者反戦闘争
   



 ●1章 反比例する労資の取り分

 「上場企業の二〇一三年四~九月期(上期)決算は増収率が11%、増収増益企業の割合が六割に上り、ともに三年ぶりの高水準」という見出しが日経新聞に踊った(十一月五日)。リーマンショック以来、東日本大震災や一ドル=七十円台の円高の中でも、増収益を3%前後はじき出していた大企業であるが、不採算事業・部門からの撤退などの合理化や、海外市場・権益の拡がりによって、一気に利益拡大のトーンが出てきた。続く十一月九日には、「上場企業、経常利益28%増」「今期、純利益は64%増」と報じられた。
 ともに「改革の手応え」「リストラ効果で筋肉質に」と謳っているが、何のことはない、それは労働者にとっては、失業や労働条件悪化、非正規雇用化にほかならない。正規労働者は、この一年で三十二万人減り、平均年収は二年連続で下がって四百八万円となった。全労働者数の36・7%となった非正規雇用労働者は、七十九万人増で一千九百八万人、その平均年収は百八十六万円である。労働者全体で見ると、この十年で百万円近くも平均年収は下がった。労働者の雇用・賃金を削りとって、企業の業績回復が実現されているのである。(労働者数は総務省・労働力調査、平均年収は国税庁調べ)
 このようにクッキリと労資の反比例する利益バランスが示されているなかで、来春には消費税増税と法人税減税という、これもまたクッキリとした不公平税制が実施される。労働者の雇用・賃金破壊をして業績を上げ続ける企業へは減税し、非正規雇用化や賃金低落に苦しむ庶民へは増税という、まったくもって道理が通らない政策がまかり通っている。アベノミクスに典型であるが、「日本経済の回復」は、企業体力の増強と成長にありとして、政府の政策出動は行なわれているが、これが一層の労働者民衆の困窮と貧富の差の拡大へと連なっていくのは、火を見るより明らかである。

 ●2章 規制緩和の名で進む使い捨て労働

 「リストラ効果で筋肉質」になった企業が、次に望むのは新陳代謝だと言わんばかりに、「雇用の規制緩和」が政策課題に上っている。雇用規制を緩和し、雇用市場が流動化すれば、企業は必要なときに人材を調達し、要らなくなれば労働者を簡単に解雇でき、先の心配をせず労働者を雇うことができる、というトンデモナイものである。今年六月十四日に閣議決定された「規制改革実施計画」は、長い闘いを通じて獲得されてきた労働法による規制システムを、「改革の重点分野」として根本的に破壊することを宣言するものであった。
 具体的な当初案は、①解雇ルールの明確化、②労働時間規制の特例(ホワイトカラー・イグゼンプション)、③有期雇用制度(今年四月から始まった労働契約法十八条=五年反復更新後の無期転換権の廃止)、の三点が検討項目として掲げられた。安倍首相は、投資の呼び込みのために、外国企業の誘致に「不便な規制」を外す「国家戦略特区(東京・大阪・愛知の三大都市圏)」を設け、規制緩和の先行的導入をはかることを指示した。(これら労働法改悪の狙いは、九月の戦旗四面に詳しいので、参照されたい)
 このあからさまな労働法つぶしに対し、ナショナルセンターを超えた労働運動の共同の反撃が開始されてきた。十月二十三日には雇用共同アクションが結成され、十月二十五日には台風の雨のなか厚生労働省前アクションが行なわれ、連続した行動が広がりつつある。
 要求内容としては、①労働者派遣の「常用代替防止」原則を堅持し、低賃金の使い捨て労働を一般化しないこと。製造業派遣や登録型派遣の禁止、均等待遇原則の確立など、抜本的改正を早急に行なうこと。
 ②残業代をゼロにする労働時間(残業)規制の緩和は行なわないこと。ブラック企業を根絶し、過労死・過労自殺をなくすため、サービス残業の一掃と時間外労働の上限規制を実現すること。
 ③「解雇特区」や「残業代ゼロ特区」など、特区制度を使った労働法のなし崩し的な緩和は行なわないこと。雇用をはじめ、人々の生活の基準や最低保障にかかる事項は特区の対象としないこと、である。
 このような動きのなか、十月十八日、「国家戦略特区」の大まかな規制緩和メニューが決まった。
 日本経済再生本部(本部長・安倍晋三首相)は、雇用の特区案を経済成長の柱として進めようとしたが、政府内の意見対立もあって特区案は二転三転。田村憲久・厚生労働相は「憲法上、特区内外で労働規制に差をつけられない」と慎重姿勢を示し、当初の「解雇特区」は事実上、見送りになり、特区の項目から外されることになった。
 焦点の「解雇ルールの明確化」については、当初案では、特区で定めた指針に合えば、労使の契約が裁判官の判断を縛ることにしていたが、結局、政府が判例をもとにした「雇用契約の指針」をつくり、個別契約が指針に沿うかを助言することで決着した。
 「労働時間法制」は、作業部会の遅れから検討にならず、特区構想から外れることになった。
 有期契約も特区ではなく全国規模で見直しを始めることとなった。五年超で無期転換権が発生する五年ルールは、今年四月に始まったばかりだが、厚労省が特区内外でルールに差はつけられないとするなか、逆に、全国一律での見直し案が浮上した。例えば、二〇二〇年の東京五輪のプロジェクトに向け、通算で五年超雇われた人でも権利が発生しない、などが主張された。
 「むき出しの特区構想」は、一見、葬り去られたかに見える。しかし、「規制改革実施計画」がめざした労働法による規制システムの根本的破壊は、頓挫したわけではなく、労働時間法制や有期契約(五年ルール廃止)は、「特区」問題ではなく、むしろ全国的な規模での規制緩和の方向づけが行なわれたと見るべきだろう。労働者派遣法の根本的転換とあわせ、全面的な規制緩和攻撃といかに闘っていくのかが、大きな課題として浮上してきている。
 この「雇用の規制緩和」をめぐる攻防は、今に始まったものではない。事あるごとに政府―財界が持ち込もうとしてきたものである。
 すでに労働組合の手の及ばない職場の中では、雇用や労働時間に対する違法・脱法行為が横行している。有期契約の五年ルールには、いっせいに大学非常勤への契約回数制限ルールが作られ、時間管理の可能な職場でもみなし残業や裁量労働が持ち込まれ、企業のやりたい放題が進んでいる。不当な解雇や、また逆に辞めたくても辞めさせてくれない企業なども後を絶たない。このような職場の実態を法的に固定化するために、これら労働法改悪の策動は行なわれている。今回は特区制度を使ったものであったが、あらゆる手段を通じた労働法改悪の策動はとどまることがない。
 前述したように、正規雇用の賃金・労働条件は低下し、非正規雇用は拡大の一途をたどり、資本の買い手市場となっている。企業の言うがまま、企業利益の拡大は、日本社会、その経済を豊かにするどころか、労働者・民衆の貧困化や産業の空洞化をもたらすことに結果する。人間らしい雇用・生活を求めて闘う以外に、労働者・民衆の未来はないのである。

 ●3章 海外権益の拡大―戦争への道

 リストラ、賃下げ、非正規雇用化などによって、企業体力をつけてきた独占大資本は、蓄えてきた内部留保でもって、対外投資や他国企業買収へとうって出、海外権益を拡大し産業空洞化の道を突っ走っている。
 安い労働力と成長市場を求め、この一〇年、日本企業は凄まじい勢いでアジアへの侵出を遂げてきた。製造業の海外現地生産比率は、二〇一一年には、東日本大震災による電力供給不安や円高を受け、過去最高の18・4%に上昇し、それ以降もアジア諸国への移転の流れはとまらない。
 また二〇〇七年以来、非製造業の伸びが製造業を上回り、倍する形で海外侵出が増大の一途をたどっている。例えば最近では、世界大手との貨物の取り込みをめぐる抗争に参入しようと佐川急便を傘下にもつSGホールディングス、ヘルスケアなどで中国から中東市場の開拓までを視野に入れる三井物産、また住友化学や化粧品大手オルビスなどが相次いで侵出し、シンガポールに地域統括本社を設立している。
 国内投資が伸び悩む一方で、一九九〇年代半ばから二〇〇五年までは一~四兆円で推移してきた対外直接投資は、二〇一一年には十兆円に拡大した。M&Aも、総合商社による医療関連やエネルギー関連の企業買収、金融機関による銀行や投資会社の買収、情報通信会社によるシステム関連会社の買収など、多様な分野で活発化している。
 このような資本侵出は、個別企業の枠をこえて、いまや海外インフラ・ビジネスとして、官民あげた新幹線、原発、水道、ロケットなどの国家的プロジェクトの出資・操業にまで及んでいる。これらは日本の大独占資本、日本帝国主義の権益圏となっているのである。
 安倍政権は、日米同盟の深化・日米一体の戦争遂行を基軸に、日本全土の戦争国家化を進めようとしているが、これは単に安倍の右翼的体質にとどまらない。その背景には、広がる資源・市場争奪や海外権益・資産防衛を求める財界・巨大独占資本家たちの要望があるのである。日本経団連は、これら海外企業権益の拡大に連れて、憲法九条の破棄や海上保安策(ソマリア沖への自衛隊派兵など)を声高に要求するようになっている。
 秋の臨時国会国会では、安倍政権は特定秘密保護法を上程した。国家機密・軍事機密の漏洩に厳罰を課すという、この法案は、憲法二十一条から派生する知る権利や取材の自由を侵害するだけでなく、国政調査権などをも侵害し、また治安維持法として使われる危険性を持っている。あわせて盗聴法の改定なども進められており、戦争国家化を支える監視・弾圧体制が強化されようとしている。
 また国家安保戦略と防衛大綱を決定する「安全保障と防衛力に関する懇談会」が立ちあげられた。これらの作業の上に「国家安全保障基本法」が、来年の通常国会に登場しようとしている。集団的自衛権行使、海外での武力行使、自衛隊制服組への指揮権統合、秘密保護法の制定、武器輸出三原則の解禁など、解釈改憲への道をまっしぐらにひた走り、これらの法律によって現憲法をくつがえし、その後に自民党憲法草案を現日本国憲法に置きかえていくという「法の下剋上」ともいうべき事態を推し進めようとしている。
 このような情勢の中で、今年も十一月三十日―十二月一日に、二〇一三岩国行動が行なわれようとしている。資本家階級による労働法のシステム破壊攻撃に抗し、不当解雇や権利侵害、低賃金の中から立ち上がる労働者とともに闘う全国の先進的な労働者・労働組合が、沖縄や岩国、神奈川の反基地住民に連帯し、労働者としての団結を強め、労働者反戦闘争を引き起こすために連携していこうと結集しようとしている。
 そして反帝国際主義の旗のもとに、国境を超えて、世界を根本から変えようと、アメリカ、韓国、フィリピンから、反戦・反基地・反安保を闘う仲間が、この岩国行動に参加しようとしている。
 政治闘争と経済闘争を固く結びつけ、独占大資本―日本帝国主義の総攻撃に対して、総反撃を準備しよう。反帝国際主義と階級的労働運動、被差別民衆解放運動を軸にした階級闘争の構造を全力で切り開いていこう。



 

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