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   ■大飯原発運転差し止め判決

   電力会社と政府は、福井地裁判決に従え

  



 関西電力大飯原発三号機・四号機の運転差し止めを住民が求めた裁判で、福井地裁・樋口英明裁判長は五月二十一日の判決で、「三、四号機を運転してはならない」と命じた。中嶌哲演さんら原告団の勝利判決である。人格権より経営を優先して控訴した関西電力を徹底的に弾劾する。

 ●1 運転を禁じた福井地裁判決

 5・21判決は「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、その総体が人格権である」とした上で、「その人格権の根幹部分に対する具体的な侵害のおそれがあるときは、侵害行為の差し止めを請求できる」として、この判決の結論を導き出している。
 ただし、判決は、この理念だけに基づいているのではない。福島原発事故がもたらした事実、原子力発電技術の危険性、起こりうる地震の規模の検討、事故に際して放射性物質を閉じ込められないという危険について、科学的に検討した上で、「本件原発の安全技術及び設備は、確たる証拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ちうる脆弱なものと認めざるを得ない」と結論しているのだ。
 判決は、被告―関西電力の反論を全く認めていない。むしろ、その論理が人格権に敵対するものであることを徹底批判し、叱責している、と言い得るだろう。
 「当裁判所は、多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等を並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的に許されないと考える」。
 さらに、「たとえ本件原発の運転停止で多額の貿易赤字が出るとしても、国富の流失や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻せなくなることが国富の喪失だと考える」。
 そして、「二酸化炭素排出削減に資する」なる論議に対しても、「福島原発事故こそは我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原発の運転根拠とするのは甚だしい筋違いだ」と結論した。

 ●2 人民の反原発運動がかちとった判決

 われわれは「国民」や「国富」という概念で論じる内容に若干の限界は感じるが、5・21判決は、日本の憲法と現行法の範囲において、福島原発事故がもたらした被害を正しく見つめ、地震国日本に原発と放射性物質が存在すること自体が極めて危険であることを正しく捉えた、画期的な判決であるといえるだろう。
 多くの人民が判決を読んで頷いた。この判決の論旨は、3・11以来の反原発運動において主張されてきた当然の論理である。司法権力による判決だから「画期的」ではあるのだが、その論旨は、3・11以来、市井の人びとが日々の生活の中で語り合ってきたことである。労働者人民の普通の感覚が、科学的知見と法的根拠をもって語られたということである。
 福島原発事故がもたらした莫大な放射能汚染と、収束の見通しのない中で、大きな不安を抱えて多くの人民が反原発運動に立ち上がってきた。無数の人びとの決起が作り出した反原発の世論こそが、司法権力をも動かした。裁判官も人民の常識を感じ取らざるをえなかったというべきだろう。

 ●3 再稼動阻止―安倍政権打倒へ

 問われなければならないのは、被告―関西電力をはじめとする電力会社、再稼動の審査を強行し続けている原子力規制委員会、そして安倍政権である。
 関電は控訴を取り下げて、直ちに再稼動を断念しなければならない。
 原子力規制委員会委員長・田中俊一は「われわれはわれわれの考え方で」「審査していく」として、判決の影響をうけないとうそぶいている。
 官房長官・菅は、原発再稼動の政府方針は「全く変わりません」と傲慢な発言を行なった。
 5・21判決は、大飯原発三・四号機に関して「運転してはならない」と命じたものだが、その判決理由は、すべての原発に対する論議としてなされている。この判決を真摯に受け止め、その命令に従うべきである。電力会社も政府も原子力規制委員会も、勝手な主張はしているものの、判決の論理に真正面から反論した者は皆無ではないか!
 田中俊一よ! 「科学技術的知見に基づき審査していく」というならば、すべての原発再稼動申請を却下せよ!
 政府のなすべきことは、原発の再稼動をやめ、全原発の廃炉を進めることである。避難を強いられている福島の人びとへの補償を全うすることである。
 安倍政権が福島を放置し、汚染水流出を続けたまま、原発再稼動・原発輸出に突き進むならば、それは人民の生命、身体、精神および生活を踏みにじるものであると断ずる以外にない。
 反原発闘争の一大前進をかちとり、再稼動を絶対に阻止しよう。この闘いこそが、安倍政権の命脈を断つものとなるだろう。


 

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