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    橋下徹・維新の会との闘いを強め、

   新自由主義政策、戦争国家化攻撃粉砕を

          


 関西で、大阪市長・橋下徹らが率いる「大阪維新の会」は「大阪都構想の実現」などを叫んでさかんにマスメディアに登場し、あるいは自治体首長や議員選挙に候補者を立てるなど、活発に活動してきた。さらには「日本維新の会」を設立して国政にも登場し、「改憲」や「集団的自衛権の行使」などを主張し、安倍政権の右からの別働隊としての役割を果たしてきた。しかし、彼らの主張や実践は、差別と排外主義を扇動し格差と貧困をさらに拡大するものであり、新自由主義の下で呻吟する労働者人民をより一層、苦しめるものに他ならない。全国の労働者・民衆の力で、この危険な動きと対決し、橋下・維新の会のもくろみを粉砕していこう。

 ●1章 この間の経過

 橋下徹は、二〇〇八年の大阪府知事選に、子育て支援や道州制導入などを掲げて立候補し当選。自らが代表となって設立した「大阪維新の会」は一一年の統一地方選で、大阪府議会の過半数の議席を獲得、府下の二つの政令指定都市(大阪市、堺市)で第一党に躍り出た。十一月には、大阪府知事の任期を残したまま辞職して大阪市長選に立候補、大阪府知事に立候補した松井一郎(大阪維新の会幹事長)とともに当選し、府市と議会に大きな影響力を持つことになった。
 しかし二〇一三年になると、兵庫県の伊丹市、宝塚市の市長選に維新の擁立した候補が落選するなど、その影響力低下の兆しが見えてきた。さらに橋下の「慰安婦制度は必要」(五月)などの一連の発言などの影響もあって、七月の参議院選挙では公示前の三議席を上回る八議席を獲得しはしたが、法案提出権を持つ十議席に届かず、敗北宣言。九月の堺市長選では、維新以外のすべての政党が支援する現職候補が維新の候補者を破り、「大阪都」構想そのものが大幅に後退していくことになった。加えて大阪府議会では、維新所属の四議員が離反、会派除名となり、府議会での過半数割れという事態となっている。
 今年(二〇一四年)になって、橋下は最重点政策である大阪都構想のための「区割り」を議論する大阪府・市の法定協議会で、維新以外の全会派の委員が反対し大阪市分割案が可決されなかったため「民意を問う」として市長を辞職し、三月に「出直し市長選挙」を行った。この無意味な選挙に主要な政党は候補を立てず、結果として橋下が再選されることになったが、議会や法定協の構成が変わったわけではないため、都構想の実現の困難さには何ら変化はなかった。
 これまで橋下は、拠点である大阪府・市議会で、維新単独では議席が過半数に満たないため、公明党と選挙協力をするなどして多数派を形成し、その政策を進めてきたが、二〇一三年以降、そのあまりにも強引な手法と反人民的な政策によって、維新の会の本性が明らかになってくると大衆からの支持は弱まり、公明党からの協力も取り付けられなくなって、維新はほぼ単独で議会に臨み、結果としてほとんどの政策が実現しないという事態が続いている。
 二〇一五年の統一地方選挙に向けて、大阪維新の会は昨年十一月から三百人程度を想定して「維新政治塾」塾生を募集したが、応募者は百名程度だった。募集を近畿二府四県の在住者に絞ったことにもよるが、応募者数は一期目の三十分の一以下となった。二〇一二年に始めた一期目は全国から三千三百二十六人が応募し、八百八十八人が塾生に選抜されたことと比較すれば、その退潮ぶりは明らかだ。
 一方で橋下は二〇一二年に、国政選挙への参加を宣言し「日本維新の会」を結成した。中田宏(元横浜市長)や山田宏(元杉並区長)らの「日本創新党」を糾合し、石原慎太郎らの「太陽の党」の合流を経て、十二月の衆議院選挙で五十四議席を獲得し、自民、民主に次ぐ第三党となった。しかし当初から「憲法」や「原発」などを巡って意見の対立が続いていた石原ら「旧太陽グループ」との分党を今年六月に決定し、石原グループの衆・参議員二十二名は「次世代の党」を結党、橋下グループは三十八名で「日本維新の会」の名称を引き継ぎつつ、九月中に「結いの党」との統合を目指すという。しかし、結いの党との間でも、安保・原発・消費税などの基本政策では隔たりがある。「自民一強体制に対抗する」と称して進めようとした野党再編とは、政策の一致よりも多数の議員をかき集め、数の力を背景に政権の一角を占めようという野望の表れである。

 ●2章 新自由主義政策推進し、差別排外主義を扇動

 橋下が府知事、大阪市長時代を通じて進めようとしてきた政策は、福祉や住民保護制度を切り捨てて規制緩和と物流・インフラの整備、企業誘致などを推進するという新自由主義の政策そのものだった。公共事業や公立病院・大学の統合、交通局(地下鉄・バス)の売却―民営化、府・市外郭団体の削減、補助金の削減・廃止などがその一部である。
 大阪府・市がともに出資や運営に携わる「大阪人権博物館(リバティおおさか)」と「大阪国際平和センター(ピースおおさか)」について、「いつもの人権のオンパレード」「僕の考えにあわない」「自虐的」などと批判し、補助金の廃止を打ち出した。ピースおおさかについては、今年九月から約半年をかけて、設立以来初めてのリニューアルを行うことになった。当然そこでは、橋下が主張する歴史観を強く反映させることを求めている。一方で、新たに「近現代史学習施設」を、来年夏までに府・市共同で設置することを決定した。橋下はその内容について「(歴史観や事実認定について意見が分かれる部分について)両論併記でやっていきたい」と述べ、「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社や自由社のメンバーを準備や監修に加えていくことを表明した。
 橋下はまた、労組への敵対姿勢も露骨に表明した。「日の丸」掲揚や「君が代」斉唱を義務付ける「国旗国歌条例」、知事や市長の教育への関与を強め教育委員会を実質的に否定する「教育基本条例」、職員評価や処分厳格化を規定する「職員基本条例」、職員が政治団体の機関紙を発行・配付することなどを禁止する「政治活動規制条例」などの条例を制定した。また、市庁舎から職員労組事務所を立ち退かせ、チェックオフ制度を廃止、労組との団交拒否などの不当労働行為を立て続けに行った。さらに政治活動や組合活動への関わりを問うアンケートへの回答を職務命令で強制した。地労委ではすべてが不当労働行為と認定され、アンケート問題に関しては中労委も不当労働行為と認定し、橋下は今年八月に労組に謝罪せざるを得なかった。(他の案件については現在、中労委での再審査が行われている)
 九月十日、大阪地裁は、二〇一一年に大阪市庁舎から労働組合事務所を退去させたことは不当だとして二つの職員労組が橋下市長による使用不許可処分の取り消しなどを求めた訴訟で、組合側の訴えを全面的に認め、市に対し処分の取り消しと組合への賠償を命じた。判決は「処分は著しく妥当性を欠き、市長の裁量権を逸脱、乱用し違法だ」「団結権を侵害する意図があった」など橋下を断罪している。
 橋下が肝いりで進めた大阪市の区長や公立学校の校長の公募制度は、その任命された区長・校長にセクハラや経歴詐称、文書の改ざんなどの不祥事が相次ぎ、辞職・解任や被処分者が続出する事態となった。制度そのものの問題点が指摘されている。また、「問題行動」を繰り返す生徒を隔離するための「特別指導教室(仮称)」の新設を打ち出し、「問題行動」の背後にある貧困や格差、差別などの問題に目を向けず、こうした生徒を学校から排除することで決着を図ろうとしている。
 大阪都構想をはじめとする橋下・維新の会の政策は、自治体を制度的に解体するだけではなく、都市や地域共同体、住民とその生活、教育、これらすべてを破壊し、差別・選別・排外主義へと住民を組織していくものにほかならない。

 ●3 破たんしつつある大阪都構想

 大阪維新の会が最重点政策と位置付けるのが大阪都構想だ。大阪市、堺市という二つの政令指定都市や周辺市を、いくつかの特別区に再編し、同時に大阪府を大阪都に変更するというのが当初の計画だった。
 しかし、堺市では前回(二〇〇九年)の選挙で維新の会の支援を受け「都構想」推進を掲げて当選した現市長が、昨年の市長選では「都構想反対」に転じて当選した。都構想の具体的な中身が少しずつ明らかになる中で、「都」知事に膨大な権力が集中する一方、自治体が解体され住民の生活破壊が加速することに対して、現職の市長がこれを危惧し、反対するのは当然のことといえる。結果、現時点で特別区に再編される対象は大阪市のみとなった。
 特別区設置に伴う庁舎建設・システム改修などのイニシャルコストは約六百億円~六百八十億円、システム運用経費などのランニングコストは年間約十五億円~二十億円と推計されている(大阪府市大都市局の当初の試算)このような大金を投じて企業の利益を優先する政策を進めようというのだ。
 昨年八月に、府・市が共同で「チャレンジ特区」を内閣府に提出すると発表した。これは「能力主義・競争主義に果敢にチャレンジする高度な能力を持つ内外の人材や、そうした人材を求める企業が集まる条件を整備するため、労働法制の緩和を図る」というもので、一定の報酬を支払えば、企業は労働時間の上限規制や解雇の規制などから自由となり、また所得税の緩和を行うなどして、企業と人材とを誘致しようというものだ。
 このように、大阪都構想とは新設される「大阪都」に強大な権限と財源を集中し、規制緩和と物流・インフラの整備、企業誘致などを推進するという新自由主義の政策そのものだ。
 今年九月二日、「大阪市を廃止して特別区に再編する大阪都構想」案に対して、新藤総務相はこれを認める意見書を出した。今後、住民投票の実現に向け、府・市両議会に都構想案が提出されることになる。維新の会は、議会の抵抗や内外からの批判などによって、二〇一四年秋に住民投票の実施という当初の計画は大幅に後倒しせざるを得ず、来年春の統一地方選と同時に住民投票を実施する、という日程目標を打ち出してはいるが、府・市両議会で維新の会は過半数を割っており、維新以外の会派は都構想に反対の立場を崩していないため、住民投票が実現する見通しは立っていない。
 この間維新の会は、都構想の基本計画を策定する法定協議会から反対会派を排除し、維新単独でこの構想案を決定したり、府知事(松井)・市長(橋本)が共に臨時議会の招集を拒否したりするなど、「正常とはとても言えない状況」(新藤総務相)という大混乱の中で、強引にこの構想を実現しようとしている。橋下らは、議会で否決されれば、本来議会休会中の緊急時に対応するための首長の権限である「専決処分で決定する」ことも検討するなど、なりふり構わぬ姿勢で都構想の実現に突き進もうとしている。

 ●4 労働者人民の闘いが維新の会を追い詰めている

 当初、府知事や大阪・堺市長と両議会の議長のポストを独占するなど、維新の会は大きく伸長した。しかし、橋下らが率いる維新の会の本性が明らかになってくるにつれて、その影響力は大きく後退している。
 その根拠の一つは、維新の会の思想とそれに基づく政策そのものにある。橋下は、能力主義を肯定し格差や貧困を「当人の責任」だと切り捨て、さらには「慰安婦制度は必要だった」「(特区による規制緩和で建てられる高層ビルに)経営者は愛人を二、三人住まわせて」当然、などの発言を繰り返して女性を冒涜し続けるこの男の本性は、すでに大衆的に暴露されている。
 同時に、維新の会を追い詰めているのは全国からの支援を得た労働者の闘いである。不当労働行為の攻撃に対する労組の反撃は、先に見たとおりだ。
 教育現場では「日の丸・君が代」の強制とそれに抗う教職員に対する処分の攻撃に対して、激しい抵抗が継続して闘われている。公立学校の教職員たちは、「処分」を覚悟の上で卒業式・入学式で「日の丸・君が代」の強制に反対して「不起立闘争」などを闘い、不当な処分に対しては全国の労働者や市民、とりわけ教育労働者たちの支援を受けながら、裁判、署名活動、府や市への申し入れ、毎年二月十一日の全国集会の開催など多様な闘いを展開している。そしてこうした「日の丸・君が代の強制反対」「抵抗する教師たちへの処分を許さない」という闘いは、「つくる会」教科書との闘いなどとも結合して、戦争動員のための教育の国家支配と闘う全国的闘争、日帝・安倍政権との闘いの重要な一翼へと発展してきた。
 橋下と維新の会が進めているのは、新自由主義政策と戦争国家化政策であり、日本の労働者人民を格差と貧困の沼地へと引きずり込もうという危険なものである。見せかけの「改革」はすでに、その本性が暴き出され、かつてほどの勢いも影響力も失っている。しかし未だに彼らは一定の影響力を保持しているのも事実であり、大阪都構想の実現や政権獲得に向けて、攻勢を続けるだろう。我々は、全国の労働者人民の力を結集し、戦争国家に向けてひた走る安倍政権打倒の闘いとともに、橋下・維新の会の策動を打ち破る闘いを強めなければならない。



 

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