共産主義者同盟(統一委員会)






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   派遣法改悪を許さず、反撃に撃って出よう
  

   
  安倍政権の戦争攻撃・貧困化を打ち砕け

  

 今国会における悪法可決は、安倍政権によって、戦争と貧困の時代へとさらに大きく舵を切るものであった。戦争法案と並んで派遣法改悪法案が、開き直りと泥沼論議の中で強行採決された。
 今回の派遣法「改正」は、企業が派遣労働を永続的に利用できるようにする抜本的改悪法だったが、戦争法案とともに、ウソとゴマカシのうちに採決された。今後の労働運動、階級闘争にとってさらに大きな課題を課すものとなる。「改正」骨子は、以下五点。①派遣期間規制(期間制限)の見直し。すなわち二六業種区分の廃止。②派遣労働者と派遣先労働者の均衡待遇の促進、③雇用安定装置の義務化、④派遣労働者のキャリアアップ推進の法令化、⑤全ての派遣事業を許可制に。この文書では、その詳しい説明ではなく、何を狙いに、どんな暴走っぷりで法案可決が強行されたのかを見ていこう。

  ●違法企業免罪になりふり構わぬ安倍政権

 そもそも今回の労働者派遣法「改正」案は、違法企業の免罪にある。
 二〇一二年に民主、自民、公明の三党協議の末に、新設された派遣労働者の「労働契約申込みみなし制度」(以下、「みなし雇用」と略)。二〇〇八年末、リーマンショックに始まる世界恐慌によって吹き荒れた「派遣切り」が、派遣労働者の不安定で悲惨な雇用状態を白日のもとにさらし、派遣法改正が社会的テーマとして浮上した。この「みなし雇用」は、違法派遣があった派遣先と派遣労働者との直接雇用関係をほぼ自動的に成立させる強力な規定である。
 対象となるのは、(1)派遣期間制限違反(2)偽装請負(3)禁止業務への派遣(4)無許可派遣――の四つ。この施行が、今年二〇一五年十月一日だった。
 現行法では専門二六業務と呼ばれる業務に従事する派遣労働者は、派遣の期間制限がないが、その他の一般業務は原則一年、最長三年という業務単位の期間制限が設けられている。しかし、派遣先がその期間制限を超えて派遣を使い続けている例が圧倒的に多い。また、多くの職場では、契約は専門業務であっても、派遣労働者にはいろんな仕事を任せているのが実情だ。そのため、「みなし雇用」が十月一日に効力をもてば、期間制限違反の状態で派遣就業していた労働者は、派遣先に直接雇用を求めることができる。
 三年間も資本家たちに猶予期間を置き、いよいよ施行となる前に、この「みなし雇用」を骨抜きにし、のみならず、労働者さえ入れ替えれば同じ職場で派遣労働者を使い続けられるようにしようという暴挙に撃って出たのである。法案が成立すると、専門業務という枠組みがなくなるため、企業は今まで通りの働かせ方を続けても、みなし雇用は適用されなくて済む。この「改正」法は、違法派遣を免罪し、合法化するのである。
 安倍政権は、この「改正」案を八月中に成立させる予定だった。審議された派遣法案は三月十三日に国会に提出され、施行日は九月一日とされていた(法律案要綱)。しかし、日本年金機構の個人情報流出問題などの影響で、法案審議は進まず、成立は九月十一日となった。九月初旬には、施行日を過ぎた法案を審議するというあきれ果てる状態すら生まれた。また行政手続法(総務省)は、意見公募期間を原則「三十日以上」と定めているが、この派遣法案は、十月一日の「みなし雇用制度」逃れが目的だったため、成立から九月三十日の施行まで三週間もない強行軍で進められ、パブリックコメント(意見公募)の期間すら十七日までの三日間で打ち切る有り様であった。いかに経済界の都合を優先したかが明らかである。

  ●安倍政権の嘘八百

 安倍政権は、戦争法案の時と同じく、ゴマカシとウソをくり広げた。「希望する人に正社員への道を開く」「キャリアアップ措置を義務付ける」といいながら、実際はいずれも「企業の判断次第」で全く規制になっていない代物である。
 派遣契約期間が「改正」法の施行日をまたぐ場合の違法派遣にどう対処するか(みなし雇用を適応するのか)という質問に、安部は「改正せずに十月一日を迎えれば、……みなし制度を回避するために雇い止めなどが生じる可能性がある」と、違法状態を開き直り脱法をはかる企業の肩を持ち、本末転倒な答弁に終止した。厚労省と内閣法制局は、みなし制度が未施行であることを理由に「(労働者)保護を行なうかどうかは政策判断」と開き直った。
 さらに政府は、現行法には派遣先による「直接雇用申し込み義務」があるので、「労働者の保護は図られている」と言い出した。しかし「申し込み義務」とは、行政指導による是正の仕組みでしかなく、「みなし雇用」のような労働者の法的権利ではない。だからこそ、〇八年派遣村を契機とした闘いによって、みなし雇用が制度として新設され、やっと施行の手前まで来ていたのである。

  ●労働者・民衆の反対を押し切った改悪法

 この法案作成には、今回の「改正」のたたき台となった二〇一三年の労政審の部会審議から、日本人材派遣協会がオブザーバーとして出席してきた。直接の利害関係者が、常時出席して法改正審議に影響を与えるという極めて異例・露骨な法案作成である。実際、同協会の要望をベースにした内容となった。政省令改定審議でも、同協会の代表が出席し、注文を付けるようなことが常態化していた。
 反して「法案の作成過程で派遣労働者が参加していないのは不思議でならない」と、与党議員の秘書に言わしめる程、当事者である派遣労働者の声は封殺された。九月七日、派遣労働者たちが「当事者の声を聴かずに強行採決することは許されない」として、塩崎恭久厚生労働大臣や国会議員に要請行動を行っている。
(1)一〇月一日施行の「みなし雇用制度」が形がい化する
(2)女性の派遣労働者がますます産休・育休を取りづらくなる
(3)周知期間が短く国民に混乱をきたす――の三点を指摘し、即時撤廃を求めるとともに、「派遣労働者が参加した形で法案を作り直してほしい」と訴えた。
 当然にも、世論での反対意見も多い。特に派遣社員や契約社員に聞いた日本経済新聞の調査結果(九月一日)では、68%が法案に反対と答えた。パブリックコメントも、異例のたった三日間であったが、二百件を超える意見が寄せられた。前回には、三十日間公募して八十六件だったのと比べると、「一生派遣で使い捨てられる」という現場の危機感は格段に強い。厚労省は今回公募を締め切った翌十八日には、政省令案をまとめた。翌日では、寄せられた意見の件数さえ正確に把握できず、政省令案に反映することなどもできないにもかかわらず、だ。政省令を協議する審議会でも労働者側委員から「意見公募を知らない国民もいたのでは」という趣旨の苦言が出るほどだった。
 関連団体や組織の暴走・独走・先走り、法的安定性無視、圧倒的多数の反対意見無視、という点では、まさに安保法制と同じ、安倍政権の本質を示すものである。

  ●攻防はこれから

 〇八年以来の派遣労働法改正の闘いをねじ倒すような、今回の派遣法改悪攻撃であったが、この改悪攻撃に対しては、派遣で働く当事者組織も生まれ、活発な抗議・要請活動がおこなわれた。
 前述した改正派遣法の即時撤廃のみならず、いわゆる二六業務に従事する有期雇用派遣労働者に対して、労働契約の期間満了後の更新を予め拒絶する事例が見られるとして、雇用の安定と確保に関する要請なども行った。厚生労働省は、同法改正を理由とする雇い止めを防止する必要があることを認めた。派遣労働者も、労働契約法第一九条(有期労働契約の更新など)の適用があること、さらに二六業種に従事する有期雇用派遣の雇用安定を図る観点から同法改正を理由とする雇い止めをしないよう全国の会員企業に周知するなどが確認された。
 労働契約法第一九条には、雇い止めが客観的・合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、使用者は、従前の労働条件の労働契約申し込みを承諾したものとみなすと規定している。これらを使い派遣法改悪を食い止めつつ、派遣業そのものを撤廃させていく闘いを粘り強く行っていこう。


 

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