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   社会保障の制度的崩壊の画策を許すな!
  

   
  アベノミクスと一体の福祉切り捨て政策

                                         河原 涼

  

 二〇一五年一月二十八日付『東京新聞』にて、本年度予算で年金、介護、生活保護、低所得者への手当てが軒並み削られるという記事が掲載された。
 「年金は月額で最大五千円を上積みする福祉的給付と、無年金者を減らすための受給資格期間を短縮する救済策が実施されない。介護保険では六十五歳以上の保険料軽減策も限定する。いずれも消費税率の10%への再増税延期により先送りされた低所得者支援策だ」という。
 年金は、デフレ時代の特例水準を解消し、物価上昇率に給付増を連動させない。
 物価上昇が続けば、毎年発動され、高齢者家族に負担が重くのしかかる。

 ●1章 社会保障予算削減と福祉産業に競争原理導入

 二月六日に、二〇一五年度から三年間介護保険サービス別の価格(介護報酬)が引き下げられた。周知されない介護報酬の軽減は、あらゆる介護現場において、混乱をすでにまき散らしている。
 訪問介護などの事業で介護の「基本報酬」が軒並み削減され、事業者の撤退などが起きると、サービス利用者の負担増がますますのしかかる。
 五月二十七日、医療保険制度改革関連法が参議委員本会議で可決、成立した。
 入院時の食事代が段階的に引き上げられた。
 七十五歳以上の後期高齢者医療の負担金の増額、大病院の受診において、紹介状がないと、五千円から一万円ほどの負担をもとめるなどの厳しい現実を突きつけられ、将来の展望をなくす高齢者が続出しているのである。
 七月二十三日付新聞報道によれば、一定以上の所得がある高齢者を対象に、八月一日から介護保険サービス利用時の自己負担が一割から二割に引きあげられた。対象者は約六十万人ほどで、周知がほとんどいきわたらないなかで、現場の怒りが語られている。福島原発事故の影響で、家族離散で生活をしなければならない高齢者などは、避難先で体調をくずすケースが多い。介護サービスの利用負担増が、被災者の肩に重くのしかかる。
 生活保護では「家賃」にあたる「住宅扶助」と冬季加算が削られる。現実すでに生活が困窮している状況が明らかである。
 二〇一五年八月三日付の『東京新聞』によれば、生活保護世帯において冷房節約を余儀なくされ、暑い夏を熱中症の不安の中で過ごさなければならない現実が浮き彫りにされている。
 生活保護費の「生活扶助」が二〇一三年度から段階的に引き下げられ、「わずかな例外を除きほぼ全ての世帯で平均六・五パーセントの減額(約二千円)を強制されている。
 こうした、様々な社会保障政策をうけるべき当事者の事をなにも考えず、机上の空論で予算をけずって、しかも競争原理を福祉産業の業者間に持ち込みながら、収益のみを追求する大手企業の事情のみを優先する安倍政権の凄まじい制度崩壊への道は、労働者階級人民には「死」すらも強制されるほどのすさまじいものとなっている。
 こうした、労働者階級人民への階級的搾取を複雑に見えなくさせつつ、業者間の競争原理をうえつける主張を裏付けるものが、二〇一五年四月二十七日付の財務省主計局による「社会保障」という名の報告書である。

 ●2章 財務省主計局報告を弾劾する

 二〇一五年四月二十七日付けで、財務省主計局による「社会保障」という報告文が提出されている。財政面からの社会保障全体の再編を提唱し、文字通り、社会保障制度を解体的に再編し、経済界に奉仕する「社会保障産業」ともいうべき制度改悪を率先して押し進める方針を具体化している。
 「二〇一五年度予算における社会保障関係費について」という項目では、「社会保障給付費の見通し」として「近年、高齢者医療・介護給付費の増に伴い、負担増は公費に集中している。これを賄う財源を確保出来ていないため、……将来世代に負担を先送りしている(= 財政悪化の要因)」として、財政悪化の原因を労働者人民になすりつけ、自己負担増の正当化を主張している。
 「社会保障制度改革は、国民皆保険を維持するため、団塊の世代が後期高齢者になりはじめる直前の二〇二〇年度までに受益と負担の均衡がとれた持続可能な制度を構築することを目的として進める必要」があるとしているのだ。
 また「二〇二〇年に向けて、国民皆保険を維持するための制度改革に取組み、……今後五年間の社会保障関係費 の伸びを、少なくとも高齢化による伸び相当の範囲内としていくことが必要」として、さまざまな不利益、負担増を人民に押し付ける政策の提案をしている。
 逆に言えば、「社会保障関係費の伸びが、高齢化による伸び相当の範囲内」に収まらなければ、国民皆保険制度そのものを解体するともとれる内容である。
 医療と福祉の制度そのものを根底から解体する政策を、資本の意向を確かめつつ、資本の意向にとことん奉仕する政策として人民に強制しようとしているのだ。

 ▼1節 障害者福祉に分断持ち込む政策

 障害者福祉に関しての項目では、 例えば「短期入所(ショートステイ)」について、「一カ月間利用している者が事業所ベースで一定数見られることから、……稼働率が低いこと等から、報酬単価は施設入所支援に比べ高めに設定。生活介護は、 常時介護が必要な者に対し、入浴等の介護や生産活動の機会の提供等を行うサービス。日中サービス系の中でも、高い報酬単価が設定されている。対象者は障害支援区分三以上などに限定」「居宅介護のうち「家事援助」(掃除や調理・配膳等)について、……必要性に応じた給付の在り方の見直し (軽度の障害者の「家事援助」の利用割合は八割超)」と述べている。また「通所サービス利用者に対する食費負担軽減措置の見直し、……」などを提起し、施設入所障害者と、居宅障害者を露骨に分断し、施設へのショートステイの利用を障害区分の引き上げなどで利用条件を制限する。障害区分による福祉サービスの振り分けは、逆に障害者同士に分断をもちこみ、障害区分が低い障害者による施設利用そのものが、何かしら不正であるかのごとき世論をも喚起せんがためともとれる内容である。すべての障害者が等しく福祉サービスを受けられる権利を保障すべきである。財政面の運営上の不備を障害者の側に責任転化し、サービス切り捨てを居直ることを許してはならない。

 ▼2節 介護サービスの負担増を強いる

 「介護保険における軽度者に対する生活援助サービス等の在り方」という項目では、「軽度者に対する生活援助は、日常生活で通常負担する費用であり、原則自己負担(一部補助)の仕組みに切り替える必要。また、二〇一五年度から地域支援事業へ移行した予防給付(訪問介護・通所介護)についても同様の観点からの見直しを行う必要。これらにより、事業者間の価格競争の促進と、サービスの効率化、産業の発展が図られる効果も期待できる」と述べている。介護サービスの負担増を押し付ける狙いが、実は「事業者間の価格競争の促進と、サービスの効率化、産業の発展」であると公言してはばからない。
 経済の効率化が最優先であり、人民の社会保障、生活保障などさらさら眼中にないと言う姿勢が露骨にあらわれている。

 ▼3節 医療費負担増の強制

 「医療・介護等に関する制度改革・効率化の具体案」として、「後発医薬品(ジェネリック)の使用割合目標の引上げ」「市販品類似薬等に係る保険給付の見直し」「受診時定額負担・保険免責制の導入」をあげ、介護度にかかわらず、医療負担を求めることを主張し、格差の拡大を当然視している。
 事実上、三割負担を超えて支払わせる制度を定着させ、更なる窓口負担の増加を図ろうとするもので、とりわけ、難病医療に指定されていない難病を抱える人=一型糖尿病、線維筋痛症などの人たちの負担は、さらに増大するという。(全国「精神病」者集団ニュースより)

 ▼4節 マイナンバー制度と一体の収奪制度

 「在宅療養との公平確保(入院患者の居室代見直し)等」という項目では、「入院時の生活費に関して、在宅療養との公平を確保する確保する観点から、難病患者・小児慢性特定疾病患者等を除き、全ての病床について、居住費(光熱水費相当)の負担を求めていく必要」「全制度を通じ、マイナンバーも活用しつつ、所得だけでなく、高齢者を中心に預貯金等の金融資産も勘案して、負担能力に応じた負担を求める」と述べ、マイナンバー制度を露骨に悪用し、人民の私財の没収を通して財政再建をはかるという合法的な強盗的手法も公言する。

 ▼5節 年金支給年齢のさらなる引き上げ

 年金給付にあたっては、「高所得者の年金給付の在り方」として「老齢基礎年金は、老齢期における稼得能力の喪失に対応するためのものであり、その財源の二分の一は国庫負担である。世代間の公平性確保の観点からも、現役世代と比べて遜色のない所得を得ている一定の高齢者については、国庫負担分相当の年金給付の支給を停止すべきではないか」と、年金支給の根拠を「老齢期における稼働能力の喪失」と言い放って、「働かざるもの、食うべからず」という思想にのっとり、年金支給こそはあたかも国家の恩恵であるかのごときでたらめを垂れ流し、人民が人生の半分の間支払い続けた年金をそっくり横領し、給付をしないという暴挙も公言する。
 さらには、「支給開始年齢の引上げ」について「日本以外の全てのG7諸国では支給開始年齢の六十七~六十八歳への引上げが実施されている。……他国と比べて平均受給期間が長い」「今後……高齢者の就労促進が課題となっていることを踏まえれば、高齢期の就労と年金受給のバ ランスの観点から、高齢者雇用の環境整備と合わせて、年金支給開始年齢の更なる引上げについて早急に検討し、結論を得、現在の支給開始年齢の引上げが終了する二〇二五年度に引き続いて実施していくことが必要ではないか」として、年金支給年齢のさらなる引き上げも辞さない構えである。

 ▼6節 生活保護費削減を許すな

 生活保護世帯について、「制度見直しに向けた論点整理」という項目では、「基本的考え方」として、「足下の被保護者数は、雇用環境が大幅に改善しているにもかかわらず依然として高止まっており、最低限度の生活保障や自立助長といった制度趣旨を踏まえた見直しが必要。制度全般について予断なく検討し、次期生活扶助基準の検証(二〇一七年度)までに必要な見直しを行うべき」と述べている。
 「就労を通じた保護脱却の促進」では、「就労可能な受給者が多い「その他の世帯」の保護廃止が進んでいない状況を踏まえ、被保護者の就労を通じた保護脱却を一層進めるため、例えば、保護受給の更新期の設定や、正当な理由なく就労しない場合の保護費の削減などの仕組みの導入について、検討を行うべき」としている。
 「医療扶助の適正化」では、「生活保護費全体の約五割を占める医療扶助の適正化を一層進める観点から、頻回受診の是正の強化に加え、一般の保険医療制度において、特許切れ医薬品について保険給付額を後発医薬品の価格に基づいて設定する制度や……医療費の一部自己負担の導入等の医療扶助制度の見直しについて検討を行うべき」としている。「世帯類型ごとの保護のあり方」では、「次期生活扶助基準の検証にあたっては、被保護世帯と世帯構成が類似する一般低所得世帯との均衡を踏まえつつ、最低限度の生活保障としての扶助基準の在り方について予断なく検討し、整理することが重要」などとしている。
 働きたくても働けない現実を全く問題視せず、自由に医療を受ける権利すら侵害し、保護費切り捨てを推し進めんとしている。
 最低賃金労働者の問題は、非正規雇用の問題などに代表される雇用形態の悪化の問題であり、資本側の強搾取の中で、労働者の必要最低限度の生活が脅かされる問題である。生活保護問題と合わせてそれぞれ、日帝―安倍政権の失政のあらわれであり、それぞれに適切な政策をうちださなければならない。そのことをまったく不問にしたまま分断し「どちらが楽か」という問題で、生活保護受給世帯が、「働かないで、最低賃金労働者世帯よりも、多くお金をもらっている」という事を悪意をもって垂れ流し、あたかも生活保護世帯が「不正受給をしている」との世論を意図的に流し、バッシングをすることを許してはならない。
 施設障害者に対する相次ぐ暴行、虐待、虐殺。老人施設においても度重なる虐待や、殺人が報道され、差別的処遇はなんら改善されるどころか、悪化の一途をたどっているこんにち、財務省主計局の報告に盛り込まれた、安倍政権の社会保障政策の方向性は、すべてにおいて、労働者人民被差別大衆の生活苦、貧困と格差の拡大という現実を、労働者人民の自己責任に解消している点から成立している。したがって、財政面の国庫負担削減の根拠を、生活保護世帯の「不正受給」というデマなどから容易につくりあげ、福祉サービスの切り捨てを傲慢におしすすめているのだ。マイナンバー制度の悪用で、人民の資産を公にふんだくり、しぼり取らんとしている。一切の責任を放棄して戦時体制を強制する現実を許してはならない。
 安保関連法案の強行採決に見られる、戦争とファシズムにむけた一切の反動政策を断固粉砕し、障害者抹殺を筆頭に、まさに現実に推し進めようとしている戦時政策を断固粉砕しよう!



 

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