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   日韓政府間「合意」弾劾

    
日本軍隊性奴隷制度・被害女性の闘いに連帯しよう
  
     

 昨年末二十八日、岸田外相が訪韓、尹(ユン)韓国外相と会談、「慰安婦問題の最終決着」を合意したと大々的に発表した。合意内容は日本政府が十億円を韓国の財団に支出し、首相が「お詫びと反省」を被害女性に伝えるというもの。日本政府は「韓国側が再び政治問題化しない確約」のもとに合意したとし、「最終かつ不可逆的」であることを強調した。安倍は早速、記者会見で「私たちの子や子孫に謝罪をさせ続ける宿命を背負わすわけにはいかない」と戦後七十年、日韓国交正常化五十年中の「決着」を手柄自慢した。米政府も、この「合意大歓迎」をコメントし、米主導での三国安保同盟の猿芝居であることを吐露した。
 この日韓政府間の「合意」は、盗人同士の醜悪な野合であり正義を踏みにじるものだ。被害女性を侮辱するものだ。怒りをもって弾劾する。
一に、韓国の被害女性オモニたちを完全に無視し、意見や要求を聞くことを全くせず、突然発表した。事後に「合意」を押し付けようとするもので到底認めることはできない。韓国のオモニたちだけではない、日本軍がアジア各地で行った蛮行の被害女性たちを韓国との「合意決着」をもってねじ伏せようとするものだ。共和国、台湾、フィリピン、中国、インドネシアその他の女性たちのたたかい要求に一片の考慮することもなく無視しつくすものだ。
 被害女性たちはだれも「合意」していないし、もちろん「最終決着」でもない。政府間「合意」など、全く認めることはできない。
 二に、「合意」の内容そのものが噴飯ものであることだ。日本政府が十億円を拠出し、韓国側の財団に託し、被害者に「首相の謝罪」を伝え渡すというものだ。これで、「最終かつ不可逆的決着」をするという。実もふたもない「金(カネ)」だけがその中身だ。金で黙れということだ。
 日本政府が強調する「十億円は国民基金より多い、寄付でなく政府が出す」ということそのものが、「金」で決着しようという姿勢を体現している。あさましい態度だ。しかも「国家賠償でなく生活支援」とあくまで責任はないが「お情け」の金を出しましょうというのだ。破たんした国民基金であるが、日本の基金職員や関係者が、「首相の手紙」と共に手渡すやり方であったが、このたびは韓国の財団がすべてを行う。起こるであろうさまざまな問題は韓国側に押し付ける。金を出して、あとは丸投げをするのだ。何が結果しようとも、韓国側の問題にしてしまう。日本政府は韓国政府に押し付け、韓国政府は財団に押し付けるだろう。
 「首相の謝罪」も、全く認められない。首相の「お詫びと反省」は、公の場で声明し全世界に示すことをしない。韓国の財団が「伝える」というもので、その内容と形式すらわからない。ひとかけらの決意も、誠意もないものだ。
 安倍首相はこれまで一貫した「慰安婦問題はなかった、強制はない」という言動を改めてはいない。安倍はNHKに自ら乗り込み「国際女性法廷」の番組を改ざんした。今回の「謝罪をさせつづける宿命」発言も、自分が真摯に事実を認めず謝罪していない現状を棚にあげ、其れゆえの被害者の「謝罪要求」が問題だとする捻じ曲げ・転倒させた悪口だ。今に至る敵対を繰り返す安倍の「首相の謝罪」を誰が受け入れるだろうか。
 三に、この「合意」を盾に、被害女性の要求・たたかいを抹殺しようとするものだ。すでに、交渉の中でソウルの「少女像」の撤去について「課題」(取引条件)として確認されている。当事者は何ら「合意」していないにもかかわらず、勝手に「撤去」を挙げているのだ。安倍を後押しする歴史修正主義者たちが、ソウル日本大使館前の「少女像」を標的にして騒ぎ立ててきたが、これを政府とし交渉課題に押し込んだのだ。内政干渉もはなはだしい行為だ。
 そもそも、「少女像」は歴史的事実を刻むものとして建てられたことを思い起こそう。被害者たちの告発と要求のひとつは、「歴史教科書に真実を記す」ことによって戦争と性奴隷制度を繰り返さないことであった。女性たちの闘いによって、ようやく日本の教科書に控えめであれ事実が記載され始めるや、「自虐史観」「中学生に教えるべきでない」という日本の自由主義史観勢力の大攻勢がおこり、第一次安倍内閣がこれを後押ししさまざまな圧力をかけた。その結果、教科書から記載が消えたことに対して、抗議を込めた事実の刻印が「少女像」なのだ。
 彼らは、過去の負の歴史を無かったことにするだけでない。これまでも、被害者たちの当然の戦後補償要求を「図々しく要求し続ける」「被害者は嘘つき」「韓国人は~」と民族差別をまき散らし、圧殺しようとしてきた。ヘイトスピーチの輩は、被害者と支援女性に対して「売女」「韓国女は売春婦」とがなりたてた。
 今回の「合意」は彼らのデマと差別にお墨付きを与えるものだの。被害当事者の主張は、「決着済み」なのに「蒸し返す」、非難すべきものにされる。
 日本政府と安倍は「最終かつ非可逆的」という文言に、この「合意」の核心があると正直に言っている。悪辣極まりない弾圧抹殺宣言ではないか! 被害の事実と被害者を攻撃、抹殺せんとする「合意」を弾劾する。
 四に、この「決着」は、米帝のアジア戦略の中で集団的自衛権での軍事出動を実行しようとする安倍政権の改憲選挙の「目玉」として位置づけられてもいることだ。戦後補償問題を決着し、「友好的な日韓関係」を演出し、「戦争する国」の条件を整えたとする狙いだ。安倍は「改憲勢力の確保」を公言し、追随する党派・個人を煽り始めた。今から公明党をゆさぶりガス抜きさせ、大阪維新の会と話をつけ民主党の一部に秋波を送っている。
 日本軍隊性奴隷制度の告発は、戦争の残虐性と軍隊の非人間性を暴き、反戦争の要求こそ不滅的な正義であることを訴えてきた。沖縄の地上戦、広島長崎への原爆投下、各地の空襲という米軍による戦争被害と続く苦しみは、反戦闘争の核心となってきたが、天皇の軍隊日本軍がアジア各地で残虐な侵略をしたことを、被害女性たちは身をもって、改めて告発したのだ。
 日本軍隊は侵略戦争で、三光作戦など残虐な行為を重ねた上に、アジア女性を騙し拉致し、性奴隷にした。日本軍は制度として「慰安所」を作り運営し、女性を暴力で支配監禁し前線を連れまわした。一人に女性に一日に何十人という日本軍人が強姦行為を繰り返した。抵抗を貫こうとすればリンチや殺害が行われた。生き延び、帰郷できた被害者も肉体的精神的傷を抱え、女性差別と偏見の中でひっそりと暮らしてきたのである。そうした韓国の被害者が、立ち上がったのである。
 日帝の海外軍事出動(PKO派遣)こそ、日本軍隊性奴隷制度被害女性たちの決死的な糾弾決起の要因であったことを思い起こそう。
 最初に名乗り出た(一九九一年)金学順(キムハクスン)さんは、思い出すのも苦痛な事を証言するのは、日本自衛隊のペルシャ湾へのPKO派兵に反対するためと言った。日本政府が「強制連行ではなく、民間業者がやったこと」と居直るのに対して、「生き証人」として身を晒したのだ。
 金さんだけでない、たくさんの被害女性が日本軍の戦争行為として、「慰安婦」制度があったことを告発し、二度と同じ過ちを繰り返さないために名乗り証言したのだ。戦後日本に放置された宋さんも、「戦争だけはしてはならない」といつも繰り返している。
 名乗りで、顔を晒すことは彼女たちにとって、命がけのことであったことを思い起こそう。その恐怖を超えて告発した自衛隊派兵反対・反戦こそが、被害女性たちの主張の核心だ。
 今回の「合意」は、安倍政権の侵略戦争清算=戦争開始宣言である。彼女たちの要求に真っ向から敵対するものでしかない。
 被害女性たちは高齢で、毎年、多くの女性が亡くなっている。日韓政府は「高齢だから時間がない」と言って金での「決着」を押し付ける。高齢になってしまったのは誰のせいか?時間がないというなら、なおのこと誠意ある謝罪と賠償をし、心休む時間すこしでも過ごしてもらうのが道理ではないか。
 女性たちは、「可哀相なお年寄り」ではない。日本帝国主義軍隊の戦争犯罪を暴き、糺し、事実を歴史に刻印するため、非妥協でたたかってきた。このたたかいは、アジアの被害女性同士の連帯を生みだし、アジアの女性解放運動の重要な核となった。そしてさらに、現在も世界各地で繰り返されている戦時性暴力、PKOなど国際派遣軍による性暴力を監視し告発するたたかいに力を与えているのだ。偉大なたたかいを進めてきたのだ。
 われわれは、こうした女性たちのたたかいに連帯し、切りひらいた地平を守りぬく決意を固める。
 われわれは、日韓政府の「合意」を認めない。日帝安倍政権を許さない。日米韓の安保同盟による卑劣な「決着」を糾弾する。


 

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