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   高浜原発運転差し止め仮処分決定

    
政府・関西電力は原発再稼働を断念せよ
  
     


 大津地方裁判所・山本善彦裁判長は、三月九日、高浜原発三、四号機の運転差し止めを命じる仮処分決定を出した。これは稼働中の原発の停止を命じる初めての決定である。この決定を受けて三号機は翌十日中には運転を停止した。四号機は再稼働直後に発生した事故のためにすでに運転を停止している。人々の粘り強いたたかいが引き出したこの大津地裁決定は、原発再稼働を推進する関西電力と安倍政権に大きな打撃を与えた。
 この仮処分訴訟は、高浜原発から三十~七十キロ圏内に住む滋賀県の住民が提訴していたもので、大津地裁はその申し立てをほぼ全面的に認めた。
 決定の要旨は以下の通りである。
 第一に、今回の仮処分決定は、伊方原発訴訟での最高裁判決(一九九二年)の枠組みを踏まえ、原発の安全性についての立証責任は多くの資料をもつ電力会社の側にあり、それが十分説明できない場合は判断に不合理な点があると推察される、とした。その上で、関西電力側の主張は高浜原発の安全性を立証するには不十分であり、原子力規制委員会による審査に「合格」したという説明だけでは安全性の立証にはならない、としている。
 第二に、原子力規制委員会の新規制基準について、それが「直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない」として、新規制基準そのものの合理性に疑問を投げかけた。また、福島原発事故の原因究明は「今なお道半ばの状況」であり、その点に意を払わないならばとして、原子力規制委員会に対しても「そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚えるものといわざるを得ない」と警鐘を鳴らしている。
 第三に、その上で今回の仮処分決定は、高浜原発の耐震性能や津波に対する安全性能について検討し、過酷事故対策が不十分であるとした。また、使用済み核燃料プールの冷却設備の耐震性については、新規制基準でも原子炉に比べて低いレベルであり、関西電力もプールの破損で冷却水が漏れた場合の備えを十分に説明できていない、としている。
 第四に、新規制基準の審査に含まれていない避難計画について、「国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要」と述べた上で、関西電力に対しては、「万一の事故発生時の責任は誰が負うのかを明瞭にするとともに、新規制基準を満たせば十分とするだけでなく、その外延を構成する避難計画を含んだ安全確保対策にも意を払う必要」があると指摘している。
 これらを踏まえ、「関西電力は、福井県高浜町田ノ浦一において、高浜発電所三号機および同四号機を運転してはならない」(主文)という決定が導かれたのである。
 今回の大津地裁・山本善彦裁判長による高浜原発運転差し止め仮処分決定は、昨年四月に出された福井地裁・樋口英明裁判長による高浜原発三、四号機の運転差し止め仮処分決定を継ぐ画期的な決定である。司法が稼働中の原発の停止を求める史上初の決定であり、異議審で福井地裁決定が覆され今年一月に再稼働が強行された高浜原発は再び停止することになった。
 大津地裁決定はまた、立地県外の裁判所が原発の運転差し止めを命じる初めてのケースとなった。原発が群立する福井県の若狭湾に近い滋賀県は、関西一円に飲料水を提供する琵琶湖を擁し、万が一若狭の原発が事故を起こせばその影響は図り知れない。こうしたなかで、今回の決定は、原発の停止・廃炉を求める滋賀県および関西の多くの人々の希求を反映するものであった。
 さらに重要なことに、この大津地裁決定は、昨年四月の福井地裁決定ほど直截な言葉ではないが、同様に新規制基準の合理性に疑問を投げかけている。その最大の根拠は、福島第一原発事故の原因究明がいまだ途上にあることである。すなわち、そのような条件の下で策定されている新規制基準が原発の安全性を直ちに担保するものとは決してなりえず、新規制基準に適合しているかどうかだけでは原発の安全性を立証する根拠とはならないということだ。それはまた、いたずらに「世界で最も厳しい」レベルの規制基準といった言葉を繰り返す原子力委員会への不信を示し、その姿勢に警鐘を鳴らすものである。今回の大津地裁決定はまた、事故時の避難計画について、国主導の避難計画の策定や電力会社による対策の必要性について触れることで、新規制基準の不備について指摘している。
 今回の大津地裁の決定を引き出した根底的な力は、すべての原発の廃炉を願い、二度と原発事故を引き起こさないために、再稼働阻止・原発廃炉を訴えて幾度となく街頭に繰り出してきた全国の労働者人民のたたかいにあった。そしてまた、高浜原発を含む若狭の原発群の廃炉を求めて取り組まれ続けてきた福井、滋賀、関西一円の人々の粘り強いたたかいの反映である。そのたたかいが稼働中の原発を停止させ、安倍政権と電力会社に大きな打撃を強制したのだ。
 しかし、安倍政権はあくまで再稼働を推進しようとしている。安倍首相は決定翌日の記者会見で、「世界最高レベルの新たな規制基準に適合した原発だけ再稼働を進めるとの一貫した方針に変わりない」などと言い放った。関西電力はすでに三月十四日に仮処分決定の撤回を求める異議申し立てを起こしている。これらの敵対を許してはならない。原発再稼働阻止、すべての原発の即時廃炉に向けてさらにたたかいを強めよう。


 

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