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   刑訴法等改悪案強行成立を弾劾する!

  


 五月二十四日、昨年から継続審議となっていたいわゆる「可視化法案」が、国会前の抗議行動の中、自公与党と民進党などの賛成で可決成立した。そして三年以内に順次施行してゆくために、最高検は早速準備室を設けた。
 これは捜査手法の飛躍的強化、戦時司法への転換を意味するものであり、われわれは徹底的に弾劾する。
 この「刑事訴訟法の一部を改正する法律」は、冤罪被害者の「冤罪防止のため、取り調べの可視化を」という要求を利用して、それとは真逆の刑事司法の大改悪を行ったものだ。いったん捜査対象となったら、被疑者となったら検察警察の絶大で恣意的な権力の下に置かれ、「防衛の権利」を暴力的に奪われることになる悪法だ。
 そもそも「刑事訴訟法」は、権力の行使を「法の下に」規制する法で、被疑者や捜査対象の拘束や取り調べなどは、裁判所の許可や、さまざまな規定の下で行われることになっている。それは「公正な司法」の基礎であるはずのものだ。
 これまでも、権力側はさまざまな手段で法を無効にしてきた。数々の冤罪事件の実態は、警察権力による「法違反」そのものであった。
 代用監獄に長期勾留し、弁護士接見を妨害し、ウソや暴力を使って「犯行」をでっち上げる。裁判においても、検察が自己に不都合な証拠は提出せず隠し続ける。また、裁判所も、権力側の要求に沿った令状や、許可を連発することも常態化している。被弾圧者の弁護防衛の権利は狭められ、妨害にあって来た。それでも、「司法の公正」の建前は掲げられており、防衛のチャンスと手段はかろうじてあった。
 今回の改悪は、改悪案提案時の表題「あらたな捜査手法の導入」が実際の中身であり、強権捜査による権力の恣意的乱用、デッチあげに大きな道を開くものだ。この「事件の初動」が強権捜査であれば、被疑者や弁護士の権利はひどく狭められる。そうして裁判は権力の意志どおりの茶番となる。
 「取り調べ可視化」を大々的に宣伝しているが、欺瞞の極致だ。

  ▼1章 有罪立証のために利用される一部録音・録画

 第一に、可視化では全くない。確かに「一部の事件で取り調べの一部」が「可視化=録音・録画」されることになった。だが、これは不当な取り調べを抑止するものではない。むしろ逆に有罪立証のための「録音・録画」なのだ。
 被疑者が「罪を認めた」場面や、捜査官が適切な取り調べをしている場面、あるいは被疑者が黙秘、供述調書を拒否する様子など、つまり捜査側に都合が良く被疑者の印象が悪い場面が「録画・録音」される。それが有罪の証拠として裁判に提出されるのだ。
 それ以外の、無罪の主張や証拠を無視した取り調べは「録画」されないし、また、裁判に出さないこともこれまでどおり可能だ。
 そもそも代用監獄(本来拘置所に拘束されるはずが警察署にそのまま置かれる)での全生活支配、長時間の取り調べが冤罪の温床であり、弾圧の手段となっている。これに手を付けなければ「全面可視化」はありえないのである。「可視化法」とは悪辣な欺瞞だ。

  ▼2章 政治党派・労組の壊滅を狙う司法取引導入

 第二に司法取り引きの導入についてだ。他人の犯罪情報を提供して、引き換えに自分の罪が軽くなるということだが、苦し紛れの自己救済やちょっとした捜査協力などではない。「密告」で終わるのでもない。裁判で他人の「犯罪」を立証し刑罰が確定執行されるまで、場合によっては何年も、この「取り引き」に拘束され続けるのだ。他人を陥れるだけでなく、自分も果てしなく捜査権力下に置かれ、新たな冤罪、デッチあげに組み込まれることにもなるのだ。
 「司法取り引き」が想定しているのは、一般的偶発的な窃盗や暴行などの単独「犯罪」ではなく、「組織的な犯罪」だ。いわゆる「暴力団」、労働組合や政治団体などだ。経済犯罪と薬物銃器犯罪が対象となっているが、何とでもできる。組織構成員から情報を得て、あることないことをでっち上げ、組織全体の壊滅を狙うためのものである。利益誘導で、政治的転向を強要するだけでなく、更にはスパイに勧誘育成し、あるいは組織に潜入させて自ら「事件」を起こさせ、「取り引き」で「内部情報」をでっち上げ、組織壊滅弾圧を行うことができる。

  ▼3章 警察権力による盗聴の無制限的拡大

 第三は盗聴捜査の拡大だ。これまでは、対象が薬物銃器・密航などの容疑に限定されていたが、「組織性が疑われる」詐欺や窃盗、傷害などほぼなんでも可能となった。そして、NTTなど通信業者の立ち合いも必要なしとし、通信内容を暗号化する機器を警察署で使用・盗聴できる。飛躍的に簡単に盗聴できることとなった。
 これまでもそうだが、裁判所は捜査官の申請にほぼすべてに許可を出しており、この二点の改悪で盗聴はし放題となり、歯止めがなくなったのである。

  ▼4章 完全黙秘・非転向こそ最強の武器

 右派勢力や産経新聞などは、「テロ対策」を名目に「次は共謀罪だ」と主張し、この間「共謀」を立証する証拠として採用するため、無制限の盗聴合法化が必要だと煽動してきている。
 今次刑訴法等の改悪は「共謀罪」新設をもくろむ日帝にとって不可欠な条件として強行成立されたのである。
 この「刑事司法改革」なるものは、戦争法と一体の治安法の改悪、戦時司法への転換だ。連合―民進党の賛成、日弁連の歓迎声明は全く犯罪的だ(地方弁護士会では反対多し)。
 今秋から、再び「共謀罪」提出の策動が強まることは必至だ。全力で阻止しなければならない。
こうした捜査方法の圧倒的な強化に抗することができるのは、完黙・非転向のたたかい以外にないことを再確認しよう。


 

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