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   最賃引き上げ、均等待遇、無期転換の

       闘いで非正規労働者の組織化を
                


 昨年来、安倍首相は「非正規という言葉をこの国から一掃する」と、「一億総活躍プラン」や「働き方改革」などに言及した時に連呼してきた。
 これは通常の労働者、民衆が理解しているような「低賃金で不安定な働き方である非正規労働」をなくすわけでも、「非正規労働者の賃金労働条件を可能な限り正社員なみに改善する」ことでもない。
 逆に「非正規」という働き方を中心とし、終身雇用制や年功序列賃金などにしめされる従来型の「正規労働者」の働き方をなくすことに狙いがある。安倍首相は「正規労働者」の存在そのものを解体することによって、対概念である「非正規労働者」という言葉をなくそうとしているのだ。嘘とペテンを常道とする安倍首相のデマゴーグ的体質が全面発露しているとしかいいようがない。
 一七年五月に発表された労働力調査(総務省統計局)では役員を除く雇用者数は五千四百二万人、非正規労働者は四万人増の二千十七万人となっている。雇用者の約37・3%が非正規雇用労働者である。また男性非正規労働者は対前年比で五万人減の六百三十九万人で、女性労働者は八万人の増の一千三百七十七万人でとなっている。女性の役員を除く雇用者数は二千四百六十万人であるから、約56%が非正規雇用労働者である。安倍首相の本音どおり非正規雇用は増大している。
 このような安倍政権の攻撃に対して、労働運動の前進のためには様々な「正社員解体攻撃」に対する反撃は当然のこととして、これと増大する「非正規雇用労働者」の労働条件改善のたたかいを結合してたたかう必要がある。正規雇用労働者にとっては「とられないたたかい」であり、非正規雇用労働者にとっては「勝ち取る」たたかいの結合である。本小論では紙幅の都合上、後者の領域での中心的なたたかいのみ簡単に触れる。

 ●1章 最低賃金の大幅引き上げを実現しよう

 非正規雇用労働者、低賃金労働者の賃金の引き上げに大きな役割を果たしているのが最低賃金である。厚生労働省の資料によれば一四年の地域別最低賃金×1・15未満の短時間労働者は、39・2%になる。これらの労働者が多いのは、東京、神奈川、大阪、愛知など、大都市で労働者数が多い地方である。またこれらの労働者が短時間労働者に占める割合が多いのは、神奈川、沖縄、北海道、青森、大阪、などである。神奈川、大阪が多いのは最低賃金が他の地方よりも高いからであり、北海道、沖縄、青森などは賃金水準が低く短時間労働者の最多賃金層が最低賃金直近だからである。
 この地域別最低賃金×1・15という時給は、一四年では最低賃金の全国加重平均は七百八十円なので八百九十七円となる。1・15という意味は、直ちに最低賃金以下にならないとしても、最低賃金引き上げによって時給引き上げの圧力がかかる金額を推測させる数字である。引き上げられた最低賃金が現行の賃金を上回る割合を示す影響率は一三年度では7・4%、Aランクの東京、神奈川、愛知、大阪、千葉では10・7%に達した。その後、最低賃金は二十数円平均で上がっているので、影響率もまた増大していると考えられる。
 最低賃金周辺の時給の労働者だけが最低賃金引き上げの影響をうけるのではなく、労働集約型のライン労働や、流通業などパートタイマーを多数使用し、毎年、時給が上がる制度を採用している企業では、最底辺は最低賃金を意識して設定されている事例が多いので、下があがれば最上部まで上がっていくことになる。
 最低賃金レベルで働く労働者はコンビニなどの流通業、飲食業など第三次産業に多い。多数の非正規労働者を雇用する郵政の非正規労働者の時給も最低賃金が引き上げられれば、時給に引き上げ分が反映されるようになっている。
 最低賃金レベルで働いている労働者は正規職員にも多い。中小型トラックで「日帰り」ができる近場の配送の運転手、タクシー運転手など、運輸関係で特に多い。
 最低賃金は非正規雇用労働者を中心にした低賃金労働者の賃金引き上げに大きな影響を有している。安倍首相自身も一五年に最低賃金を毎年3%引き上げると公言しているがそれでも不十分だ。そもそも一〇年の政労使合意では「二〇年には最低賃金平均千円」をめざすことが確認されており、毎年3%引き上げでは、二〇年に平均千円には届かない。
 「時給一千五百円をめざし、今すぐどこでも千円」を掲げてたたかい、非正規労働者の低賃金ゆえの長時間労働を少しでも緩和し、彼らのたたかいのための精神的、肉体的余裕を作り出さなければならない。

 ●2章 均等待遇実現の闘いを前進させよう

 安倍政権は、女性や若者の労働条件改善のために、働き方改革の要である同一労働同一賃金を推進すると表明している。現実には安倍政権の「同一労働同一賃金ガイドライン」は、正社員解体、非正規の固定化につながるものでしかない。
 昨年十二月末に発表された「同一労働、同一賃金ガイドライン(案)」においては、「無期雇用フルタイム労働者と有期雇用労働者またはパートタイム労働者は将来の役割における期待が異なるので賃金の決定基準が異なる」という価値判断は容認したうえで、「職務内容・配置の変更の範囲、その他の事情の客観的、具体的な実態に照らして不合理なものであってはならない」と述べている。正規と非正規は将来の役割の期待度の違いがある場合、賃金やその決定ルールに違いがあることは認められるということを前提にしたうえで、ただし、それは合理的で、具体的でなければならない、ということ言っているだけである。正規と非正規の違いを前提に、社会的に説明のつかない不合理なものは認めないというだけである。
 この間のハマキョウレックス事件、メトロコマース事件、ヤマト運輸事件など労働契約法二〇条関連の判決は、すべて正規社員と非正規社員を峻別したうえで、その差別が合理的か否かという枠組みで判断し、労働者側を敗北させている。
 このような判決が続くと、世の中に多数存在するパートと同様の仕事をする正規労働者、とりわけ男性労働者に多いこのような働き方を「正社員の仕事ではない」として非正規化しようとする力が、ここぞとばかりに使用者側に働くことは疑いない。
 このガイドライン案にたいして「働き方改革実行計画(案)一七年三月二十八日」では「非正規で働く方の待遇を改善し、女性や若者などの多様な働き方の選択を広げていく必要がある、これはデフレで傷んだ中間層を再興し、ますます希少となってくる人材を社会全体で育て、一人一人に自己実現の道を切り開くことになる」と述べている。「デフレで傷んだ中間層」は正規社員として修復されるのではなく、多様な働き方をする非正規労働者として再形成されようとしている。安倍政権の本音が露呈している。
 安倍政権の「働き方改革」や「同一労働同一賃金ガイドライン案」は、正規と非正規の格差を解消するものではなく、正規社員を非正規化し、後述する一八年四月以降、大量に生み出される無期転換社員を、「中間層の再興」として、大量の低賃金労働者を作り出そうとするものである。彼らが「中間層」というのは、低所得であっても、社会保険料や税金を納め、文句も言わず家族を再生産する善良で真面目な労働者のことである。そのために現行の非正規労働者のわずかばかりの処遇の改善を図る以上のものではない。もちろん差別状態に置かれている非正規雇用労働者には、慶弔休暇の支給、食堂や休憩施設などの使用など福利厚生について、それすら認められていないケースも多々あるので、その点は労働条件改善に利用していくべきである。

 ●3章 労働契約法18条を梃子に非正規労働者の組織化の推進を

 労働契約法一八条の改正により、五年間で二回以上の契約更新をした労働者は、五年目以降、本人が申し出れば「期間の定めのない労働者」になるということとなった。但し、賃金労働条件は別途定めない限り、直前の契約の労働条件で良いとされている。一八年四月以降、このような労働者が多数、発生する。
 無期転換の権利の発生を理由とする雇止めは認められていないが、一八年三月末での雇止めや、六カ月契約なら本年九月、三カ月契約なら一九年一月からの雇止めも危惧されている。他方で流通や労働集約型の製造業など、多数の非正規雇用労働者を低賃金で良質な労働力として育成し、利益の源泉としてきた業界では、いち早く無期転換を受け入れ、準社員的な処遇や限定社員的な処遇を打ちだし、囲い込みを図っている。
 無期転換労働者になっても原則として労働条件は正社員と同じでなければならないという法的定めはなく、たたかわなければ労働条件が改善されることはない。その意味で組織化のチャンスである。無期転換は多くの非正規雇用労働者が雇止めの恐怖からの、また差別と低賃金に苦しんできたことからの最低限の解放につながるからである。
 われわれは、無期転換権潰しの雇止めを阻止し、権利がある労働者に対し無期転換を要求するように呼びかけ、その後の労働条件の改善のためには労働組合に参加してたたかうことの重要性を徹底して訴えていかなければならない。最低賃金引き上げのたたかいと均等待遇のたたかいは、無期転換労働者の大きな武器になると考える。最低賃金引き上げ、均等待遇、無期転換を結合して非正規雇用労働者の組織化を進めよう。

 

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