共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

   深刻な社会問題となっている

            外国人技能実習制度問題


  
 
 約二十三万人(二〇一六年末時点)の外国人技能実習生が「技能実習」の名の下に低賃金で過酷な労働を強いられている。安倍政権は、強引に「働き方改革」を推し進めているが、その一方で「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(以下、技能実習法という)を成立させた。技能実習法は、本年十一月一日から施行される。政府は、東京オリンピック関連事業や福島、熊本の「復興」事業、介護事業などの労働力不足が顕著で過酷な労働現場に低賃金労働者として外国人技能実習生を送り込もうとしている。より深刻な社会問題になることは明らかだ。

 ●1 外国人研修・技能実習制度とは

 そもそも外国人研修・技能実習制度とはどんな制度なのだろうか。
 一九九〇年に「国際協力」の名のもとに日本が技術移転により「開発途上国」における人材育成の貢献することを目的として外国人研修制度がつくられた。期間は一年間。あくまでも「研修」であって労働者扱いではなく、労基法の対象外となる。
 一方外国人技能実習制度は、一九九三年に一年間の研修期間と合わせて最長三年間、研修を終了し技能試験などの要件を満たした研修生が、より実践的な技術を身につけることとして作られたもので、労働者として事業主との雇用関係にあり、労基法が適用される。
 こうして国際協力の観点から「人づくり」を目的とした二つの制度は、総称として外国人研修・技能実習制度と呼ばれている。対象職種は、農・漁業や繊維、建設、機械、食品などの製造業を中心に六十七職種、百二十四作業(当時)。そのおおくは、人手不足の中小零細企業であったり、3Kの職場である。
 この制度の事業全体を取りまとめているのが一九九一年に設立された財団法人「国際研修協力機構」(JITCO)で、法務、外務、厚生労働、経済産業、国土交通の五省所管の公益法人。
 その後、二〇一〇年七月一日に「研修生・技能実習生を受け入れている機関の一部には、本来の目的を十分に理解せず、実質的に低賃金労働者として扱うなどの問題が生じており、早急な対応が求められて」(入管局リーフレットより)、新しい研修・技能実習制度が施行され現行制度がスタートした。対象職種は、七十五職種百三十五作業(二〇一七年七月十四日現在)と増加している。
 その内容を見ると、外国人研修・技能実習制度の問題点がよくわかる。①技能実習一号→講習と労働者としての技能修得活動、技能実習二号→技能を修得した者がさらに習熟するための活動。三年間、②保証金・違約金などによる不当な金品徴収等の禁止、③監理団体による指導・監督・支援体制の強化、運営の透明化、④監理団体等が重大な不正行為を行った場合の受け入れ停止期間の延長(五年、三年または一年)、欠格要件の新設。ここでいう重大な不正行為とは、暴力・脅迫・監禁行為、旅券・外国人登録証明書の取り上げ、賃金等の不払い、人権を著しく侵害する行為、偽変造文書等の行使・提供のことである。
 つまり、これらの問題が横行し、社会問題化していたということなのだが、しかし改善の兆しがあるかといえば、まったくといってないのが現状だ。では、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図る」ために成立した技能実習法は、問題解決のために本当に有効なのだろうか。

 ●2 技能実習法は問題解決をもたらすか

 技能実習法の概要は、一、技能実習生の適正化として①技能実習の基本理念、関係者の責務及び基本方針の策定、②技能実習計画の認定制、③実習実施者の届出制、④監理団体の許可制、⑤技能実習生に対する人権侵害行為等の罰則、⑥事業所管大臣等に対する協力要請と地域協議会の設置、⑦認可法人「外国人技能実習機構」の新設、二、技能実習生の拡充として、優良な実習実施者・監理団体に限定して、第三号技能実習を新設し実習期間の延長(四~五年目の技能実習の実施)が可能となった。また、法律事項ではないが優良な実習実施者・監理団体における受け入れ人数枠の拡大、対象職種の拡大(地域限定の職種、企業独自の職種、複数職種の同時実習の措置)が予定されている。
 そして、技能実習の基本理念として「技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う『人づくり』に寄与することを目的として創設された制度です。技能実習法には、技能実習制度が、このような国際協力という制度の趣旨・目的に反して、国内の人手不足を補う安価な労働力の確保等として使われることのないよう、基本理念として、技能実習は、①技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならないこと、②労働力の需給の調整の手段として行われてはならないことが定められています」(外国人技能実習機構ホームページより)としている。
 はたして技能実習法は、外国人技能実習制度の問題を解決できるのだろうか。結論から言えばその実効性は極めて疑わしいといえる。技能実習法では、違約金等の禁止、強制貯蓄の禁止、旅券等の取り上げの禁止、私生活上の制限の禁止を明確にし、罰則を設けて「適正化」を図っている。これらは、監理団体及び実習実施機関を対象としたものである。
 しかし、問題の所在の多くは送り出し機関にある。技能実習生は、母国で送り出し機関との間で技能実習関連(労働条件など)はもとより私生活上の禁止(恋愛の禁止、外出の制限、外泊の禁止、相談・申告の禁止など数おおくの人権侵害の項目がある)などの内容がある契約を交わしている。この契約書の存在が技能実習生を縛ることになる。当然自ら救済を求める自由もなければ技能実習先の選択、転職の自由もない。制度の目的と実態の乖離という現状がいっこうに改善されないという構造的な問題を解決しない限り、技能実習法の実効性はないといっても過言ではない。
 つぎに外国人技能実習制度の拡充の問題である。
 技能実習法では、優良な監理団体及び実習実施者に限定しているものの、技能実習三号(二年)への移行を認め、合計五年間の技能実習が可能となった。制度の根本的な解決がないまま実習期間を延長すれば、それだけ技能実習生は違法状態、人権侵害のなかで過ごすことになる。到底許されないことだ。また、法律事項ではないが省令によって技能実習生の受け入れ人数枠を増加させている。
 従来は、一社の受入れ人数枠が、原則として常勤職員の二十分の一に制限され、特例枠として、従業員が五十人以下で三人、五十一人~百人で六人、百一人~二百人で十人などと定められていた。これを従業員が三十人以下で三人、三十一人~四十人で四人、四十一人~五十人で五人、五十一人以上は拡大なしとされている。この三段階の特例枠は、優良基準適合者には、二倍の人数枠が設定される。
 例えば、三十人以下の中小、零細企業の実習実施者であれば、常時九人(三年×三人)の技能実習生を受け入れることが可能であるが、それが優良実習実施者となれば十八人(三年×六人)の受け入れが可能となる。
 また、介護職など対象職種の拡大が予定されている。制度の「適正化」が担保されない中での「拡充」は、「国内の人手不足を補う安価な労働力の確保等として使われることのないように」という制度の基本理念とは程遠く、労働力不足の職場で安価な労働者として外国人技能実習生を活用するという現実をはしなくも証明したようなものだ。
 技能実習制度は、「国際貢献」という目的と低賃金労働者の確保という実態との乖離のなかで多くの人権侵害を引き起こす構造的な問題があり、廃止すべきである。外国人労働者を受け入れる新たな制度設計こそが求められているのだ。したがって技能実習法は、技能実習制度「適正化」の実効性に乏しく、むしろ制度の存続と拡大を前提としたものであり、制度の構造的な問題を解決するには程遠く絶対に認められない。
 安倍政権下で成立した技能実習法も悪法のひとつである。われわれは、安倍政権の労働政策と総対決し、大切な仲間である外国人技能実習生の生活と権利を守るためにともにたたかわなくてはならない。

 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.