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   日米両軍の一体化を狙う
       新「防衛大綱」「中期防」許すな

      


  
 
 ●1章 「専守防衛」を逸脱する自衛隊

 安倍政権は、昨年一二月一八日、新たな「防衛計画の大綱」と一九―二三年度の五年間の「中期防衛力整備計画」を閣議決定した。
 「『多次元統合防衛力』の構築に向け、防衛力の大幅な強化を行う」とする今回の大綱では、第一に従来の陸海空に、宇宙・サイバー・電磁波という新たな領域を加え、それらを融合させた運用で平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする。第二に、中国軍の東シナ海への進出を念頭に、南西諸島周辺への展開が長期にわたる事態を見据えて島嶼防衛体制の強化を図る。第三に、総合ミサイル防空能力を高める。以上の点を重点としている。
 これにあわせて、自衛隊の基幹部隊の再編において、航空自衛隊において宇宙領域専門部隊一個隊、陸上自衛隊において弾道ミサイル防衛部隊二個隊、共通の部隊としてサイバー防衛部隊一個隊ならびに海上輸送部隊一個群などを新編するとしている。そして、陸上総隊の下にサイバー部隊及び電磁波作戦部隊を新編するという。
 また、主な装備からみるならば、①海上自衛隊の護衛艦「いずも」型二隻(「いずも」と「かが」)の空母化、②イージス・アショア二基導入と早期警戒機「E―2D」九機導入、③戦闘機F35を将来的に一四七機体制にむけて、現在取得中の四二機からさらに一〇五機を追加購入するという。
 この追加取得の総額だけでも約一兆二千億円に上る見通しだ。そして、この計画の実施に必要な金額は、二〇一八年度価格でおおむね二七兆四七〇〇億円とされている。二〇一九年度の防衛費もこの新たな「中期防」に基づき、対象経費を1・1%増額され、五年連続で過去最高の五兆二五七四億円となる。この中には、敵基地攻撃が可能になる長距離巡航ミサイルの取得費や島嶼防衛のため、最終的に約一〇〇〇キロメートルの射程も視野に入れる高速滑空弾の研究費として一三九億円も盛り込まれているのだ。
 もう少し詳しく見るならば、大綱では中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が昨年宣言した「世界一流の軍隊にする」との発言にも触れながら、「軍事力の質・量を広範かつ急速に強化している」として中国への警戒感を煽り立てながら「専守防衛」を装備的にも突破しようとしているのだ。
 「いずも」型護衛艦の空母化がそれを端的に示している。空母化とは「いずも」型艦船にF35Bを搭載・運用しよういうものだ。攻撃型最新戦闘機を搭載する空母をいくら「多用途運用護衛艦」だと言いくるめようとしても「護衛」「専守防衛」のための装備でないことは明白だ。中国は現在三隻目の空母を建造中だが、これに対して米軍も海兵隊のF35B(岩国基地配備)を米海軍佐世保基地の強襲揚陸艦ワスプと組み合わせて「強化型遠征打撃群」を新たに編成している。洋上の艦艇を拠点とすることでF35Bの運用範囲は格段に拡大する。海自幹部は「いずもの改修で米海兵隊同様の運用が可能になる」とあからさまに述べている。
 現在、米海軍が西太平洋、インド洋でF35B戦闘機を運用できる軍艦は、ただ一隻このワスプしかない。もし、ワスプが作戦行動中に故障や敵の攻撃等で「航行できない」等の事態になったら、F35Bは行き場を失うことになりかねない。そうした場合「いずも」と「かが」をF35Bの離発艦可能に改修することになれば、物理的には、米海兵隊のF35Bも受け入れることは可能になるだろう。集団的自衛権行使の「合憲」化、安保法制の強行成立後の今日、急速に進む日米一体化の現状を鑑みるとき、それは憶測の域を超えてすでに計画ずみのことかもしれないのである。
 さらに島嶼防衛を名目に、F15やF35に搭載して遠隔地を攻撃できる長距離巡航ミサイル(JSMやJASSMなど)の導入も、中短距離の弾道ミサイル開発を加速する中国を念頭に置いたもので、能力的には中国内陸部も攻撃できることになる。このように今回の「大綱」と「中期防」は「専守防衛」の域をはるかに逸脱した自衛隊の本格的「軍隊化」をめざしたものであり、到底許すことのできないものなのである。

 ●2章 安倍九条改憲を許すな

 陸海空の各自衛隊は発足以来、別々の指揮系統で運用されていたが、〇六年に統合幕僚監部が発足し、運用に関する業務は統幕に一元化されたが、今回はそれをさらに加速させようとしていることが特徴である。
 今回の「大綱」と「中期防」の決定前の一〇月に「二一世紀における日米同盟の刷新」と題する第四次アーミテージ・ナイレポートが発表されている。そこでは、①日米による基地共同運用、②日米共同統合任務部隊の創設、③共同作戦計画の策定、④防衛装備品の共同開発、⑤ハイテク分野における協力の拡大(長期的には、日本をファイブ・アイズ(米、英、豪、カナダ、ニュージーランド)の諜報ネットワークに組み込む)。そして、⑥陸海空自衛隊のあらゆる運用を指揮する「統合司令部を創設するべきだ」としている。
 これは明らかに「米軍の指揮系統と自衛隊の指揮系統の整合性を図ろう」というものだ。米軍制服組トップの統合参謀本部議長は、大統領と国防長官の「首席軍事顧問」と位置づけられる一方で陸海空海兵隊の作戦を指揮する権限はない。これに対し、統合軍の司令官には、作戦計画の策定から計画に基づく訓練、部隊の編成に至るまで広い権限が与えられている。つまり、自衛隊の統幕長は首相や防衛相の補佐役となり、新設される統合作戦室は部隊運用に特化すれば、日米は相似形となり共同作戦計画の策定など日米間の意思決定がより迅速にできるようになるに止まらず、今後は部隊の編成・運用にも大きな影響を与えるものと考えられるのである。
 日米安保体制は、すでに米軍の全地球的(超地域的)な展開を支える体制であり、在日米軍は、その最前線基地・部隊である。そして、自衛隊はその在日米軍と一体となって米帝を中軸とした軍事的覇権体制を土台から支える強力な軍隊へと変わろうとしているのである。
 安倍政権は、集団的自衛権行使の「合憲」化と安保法制の強行成立により大きくその舵を切った。そして、これを本格的に推し進めようというのが今回の「大綱」と「中期防」である。安倍の頭の中には「専守防衛」などという考えは毛頭ない。この強力な「軍隊」である「自衛隊」の明記を狙う安倍九条改憲を許すことはできない。自衛隊の再編・強化と日米両軍の一体化を狙う今「大綱」と「中期防」を許さず、徹底して弾劾していこう。



 

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