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   ■激化する労資攻防

  「働き方改革推進法案」と労働契約法20条裁判
    
                 


 行き詰まりを深める現代世界・資本主義の下で、各国間の諸分野での権益争いも激化しているが、同時に、労働者・民衆への搾取・収奪が激しくなり、これをめぐる攻防が繰り広げられている。

 ●1章 「働き方改革推進法案」をめぐる攻防

 五月三一日、働き方改革関連法案が、衆院本会議で自民・公明両党などの賛成多数で可決した。法案の根拠の一つとなった労働時間の調査データに「異常値」が次々と見つかり、柱の一つだった裁量労働制拡大を法案提出前に削除、日本維新の会・希望の党と「高度プロフェッショナル制度(高プロ)の適用を撤回できる」手続きを明記するなどゴマカシの法案修正を行って、「是が非でも通す」(首相官邸幹部)と躍起になった挙句、五月二五日に衆院厚生労働委員会で強行採決された。衆院を通過し、現在、参院にかけられている。内容は、『戦旗』第一五二五号に詳しい。
 安倍首相が年頭の記者会見で「働き方改革国会」と命名し、今国会での成立を至上命令とした背景には、労働法の根幹である労働時間規制や雇用対策法を破壊しようとする帝国主義―独占資本家のあくなき強欲がある。
 傲然(ごうぜん)と「戦後の労働基準法制定以来、七〇年ぶりの大改革」と主張する安倍政権、経済団体に対し、反撃の闘いも開始された。全国一般全国協議会など全労協に参加する労働組合や、連合加盟の全国ユニオン、中立系のコミュニティ・ユニオン全国ネットワーク、全港湾、全日建運輸連帯などが、「『八時間働けば生活できる社会を』労働法制改悪を阻止するための全国運動実行委員会」を発足させ、四月二〇日、沖縄と北海道を起点に全国の主要都市を行脚する「全国キャラバン」をスタート、四〇以上の都市で街頭宣伝や集会、労働局要請などを行い、五月二二日に東京・日比谷野外音楽堂で行われた集会(日本労働弁護団など主催)に結集した。
 争点の一つが労働時間規制の破壊である。「労働基準法第四条で定める労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない」(働き方改革関連法案要綱)。今ですら長時間労働とサービス残業がまかり通り、過労死・健康破壊に労働者・家族は苦しめられている。この法案では年収千七十五万円以上の高度専門技術者が対象労働者とされているが、アメリカなどでは三百万円程度の労働者となっており、「専門業種にしぼる」と言って導入され今ではほとんどの職種に拡大適用された派遣法と同じ道を行くのは明らかだ。これが通れば、「労働時間の上限規制」など意味がない。
 二つが、雇用政策の基本(雇用対策法)の変更である。法案は〝雇用対策〟を〝雇用施策〟と書き換え、「生産性の向上」を全面に押し出した。また「(非雇用型を含む)多様な就業形態の普及」「雇用関係によらない労働がある」と、パートや派遣の非正規雇用だけでは飽き足らず、労働者を個人事業主とみなして請負契約にする方向を明確にした。生産手段を持たず、雇われることでしか生活の糧を得られない労働者から、持続安定した職も労働者保護も剥ぎ取り、社会保険料や福利厚生も要らないまったくの使い捨て労働力に、さらに追い落とそうというのだ。
 三つは、上記と合わせ「同一労働同一賃金」という名目で、正社員労働者の賃金を非正規雇用労働者並みに下げること、さらには労働法の根幹である「所定の場所」「所定の時間」を前提とした雇用労働条件を根本的に破壊することが狙いだ。安倍のいうところの「岩盤規制の破壊」である。非正規雇用労働者の拡大の中で、経済団体は「労働の価値を時間ではなく成果ではかるべき」と主張してきた。請負労働者は、仕事をあげてナンボ、という賃金だが、直接雇用の労働者でも、企業にとっての成果に応じて賃金を支払う、というのである。成果とは何を指し、どのように反映されるのかは、経営者・資本家の腹次第である。ILOや産別労働運動が主張する同一労働同一賃金とは、まったく異なるものであるが、雇用形態や性別による差別賃金に対する労働者内部の批判を取り込み、企業にとって都合いいだけの似て非なる賃金体系に変えようとしているのである。

 ●2章 強欲が止まらない資本家達

 いま日本経済は好景気の真っ只中、大企業では、軒並み最高益更新! が続出している。昨年でも、内部留保は四〇六兆円余、株主配当は二〇兆円余……と右肩上がりだ。ところが労働者の平均賃金は、一部大企業を除いて、目減りし続けている。一〇年前の平均年収(二〇〇六年・四八七万円)と比べ、二〇一六年・四二一万円と六六万円も減収だ(昨年の統計は九月発表なので反映していない)。現代の日本社会は経済発展を続ける一方で賃金は下がり続けており、やがて日本の労働者の年収は三〇〇万円程度になると言われている。実際、年収三〇〇万円以下の人口が全給与所得者の四割を超えている。労働者の非正規雇用化や間接雇用の結果である。他方、富裕層や大企業本工労働者の所得が増えているため、この実態は平均賃金の中では目立たなくされている。
 働き方改革法案にも明らかだが、資本家たちの搾取・収奪への強欲はとどまることがない。二〇一八年は、労働契約法一八条の無期雇用転換申入れ権発生の五年ルールを逃れようとする派遣切りが職場では横行している。

 ●3章 労働契約法二〇条裁判

 このような中で、労働運動の反撃も強まっている。
 非正規雇用が拡大し、労使紛争が激化する中で、民法の特別法という性格で作られた労働契約法(二〇〇七年一二月公布、二〇〇八年三月施行)は、労働基準法のような強制法規ではなかったが、有期雇用労働者への差別禁止(第二〇条)などを使って均等待遇を求める裁判闘争が相次いだ(二〇条裁判)。東京メトロ、日本郵便、大阪医科大学、ハマキョウレックス、長澤運輸など。
 六月一日、ハマキョウレックス、長澤運輸に対し、二〇条裁判初めての最高裁判決がくだされた。最高裁第二小法廷(山本庸幸裁判長)は、正社員と有期雇用労働者の不合理な待遇格差を訴える二つの裁判で、五つの手当についての格差を不合理と認め、高裁へ差し戻した。一方、定年後再雇用労働者については同一の仕事でも格差を是認する厳しい内容となった。詳しい分析はまたの機会として、これらは今後の訴訟や労働条件に影響を与えていくだろう。すでに東京地裁・大阪地裁と差別待遇の是正を一つずつ認めさせてきた郵政産業労働者ユニオンの高裁闘争が七月に控えている。
 非正規雇用労働者の反撃は、まだ始まってまもないが、その渦中での、「働き方改革」法である。企業・資本の生産力・生産能力が上がり、激しい国内・国際競争が繰り広げられる中で、資本にとって利益が上がる産業だけに投資し、そのために必要な労働者、利益(成果)を出す労働者だけにはエサを与えると言わんばかりの政策と雇用が進んでいる。それが生み出すのは、雇用関係すら奪われ、不充分なものであれ労働者保護法からすらも閉め出される労働者の一群、成果を出さなければ労働(労働力の提供)があったとすら認められない労働者の一群である。すでに非正規雇用化によって、企業の福利厚生をはぎ取られ、契約期間を過ぎれば次の雇用の確たる保証もなく、低賃金・無権利でアトム化されてきた労働者の一群が全労働者の四割以上を占めている。
 企業・資本の強欲の手は、決して緩まることはない。労働者は、自ら立ち上がって闘う以外、人らしく生きることも、命・暮らしを守ることもできないことを、「働き方改革」法は示している。安倍政権は、九月の自民党総裁選に勝ち、憲法改悪をおし進めるために、六月二〇日までに参議院で「働き方改革」法案を成立させようとしている。これらを絶対に許さず、安倍政権を打倒しよう!



 

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