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   安倍政権と対決する介護総がかり行動を

  
 

 ●1 今秋の介護総がかり行動

 九月二八日これからの介護保険を考えるフォーラム「わがまち介護保険が激変! ケアマネ締め付け・認定引き下げ・サービス『卒業』!?」が開催された。介護保険は年ごとに改悪が続けられている。今年の改悪内容と今後の方向性を学習するため、日本ケアマネジメント学会理事研修委員長の服部万里子さんから講演を受けた。改悪はサービスを切り詰める方向で進められているが、ケアマネージャーなど現場の福祉労働者が、利用者の生活を守るために団結する必要を訴えられた。講演の後は現場ヘルパー、認定審査員など福祉の現場に起きている具体的な攻撃の実態とこれへの反撃が報告された。さらに昨年来問題になっている要支援1・2切捨て問題の最前線、大東市からの報告も行われた。会場は立ち見も出る超満員となった。行政主導では改悪内容をまるでいいことのように説明しているので、このような趣旨の企画が現場からも求められているようである。
 一一月一〇日は京橋駅で行われた民主医療機関連合会主催の介護ウェーブというアピール行動に総がかり行動として参加、チラシ配りと署名集めを行った。一〇〇人以上の参加者が、街ゆく人々に公的介護の充実と介護労働者の待遇改善を訴えた。
 一一月一一日は起ちあがる介護労働者交流会が田中機械ホールで開催された。この集会は介護労働者の権利宣言をまとめようという提起を受け、全国(東京・神奈川・富山・京都・大阪)の介護労働者が集い討議することを企図したものであった。
 宣言草案は以下のようなものだ。まず、介護労働の人類史的な立ち位置と介護労働者の誇りを示した。その一方で現代資本主義の下で、そうした性質が介護労働者の待遇を劣位に置くことを明らかにした。したがって介護労働者は団結し、当事者とも連帯しながら事業者や行政に対抗し、あるべき制度を求めて闘う、その中から労働運動総体も再生する、世界のケアワーカー団結せよ、と結んでいる。
 第一部では草案を巡り議論が行われた。論点としては①看護労働と介護労働の違い、②高齢者と介護労働者の関係、双方の当事者性の確立、③介護労働の専門性を巡って:行政が示しているような既存の専門性(当事者を管理するものでしかない)ではだめ、しかし、高齢者や障害者と向き合うということにおいて違う種類の専門性があるのではないか、専門性の全否定は違うのではないかといったことが挙げられ、議論が発展した。この集会において議論の共通の土台はできたものの、議論が必要な点はまだまだたくさんあるので継続議論が提起された。
 第二部ではニューヨークの移民労働者が労働組合を結成し、事業閉鎖・売却の危機を乗り越えて職場を守るドキュメンタリー「オキュパイベーカリー」を上映した。また、各地からの報告とアピールを受けた。
 第三部ではビールと軽食で交流会を行った。介護 福祉総がかり行動の全国展開に向けて、基盤となる関係が深まった。

 ●2 11・19厚労省交渉と介護労働運動の課題

 一一月一九日、東京・神奈川・大阪・京都・福島の約三〇名のケア労働者が集まり実行員会主催で、厚生労働省交渉を取り組んだ。厚労省担当職員一〇人に、介護保険制度改悪でケア現場の厳しい実態を突きつけた。
 ①要支援者のサービス切捨てや生活援助の回数制限による弊害、②点数が足らないことで身体介護を生活援助で対応せざるをえない理由、③介護からの「卒業」を競い合わせることの仕組みと弊害、④介護を受けたくても受けられないことによって重度化する実態、⑤公正に配分されない処遇改善加算、⑥西成区など二〇二五年問題を先取りしている地域が中小介護事業所や心ある事業所の努力や報酬にもならないサービスによって支えられていること、⑦福島など移動時間がサービス提供時間よりも長くなる場合のガソリン代など諸々のことが想定されていない実態、⑧介護現場で対応しにくいセクハラ問題、⑨労働者の待遇改善のためには現行のシステムでは際限なく利用者の負担が上がっていくのでもっと国庫負担で進めることを要求する等々。劣化した現場の惨状を訴え、その改善を要求した。
 厚生労働省の政策は、自立支援・介護度改善、介護労働者の待遇改善を唱えながら、実際はこれと矛盾するような政策を押し通している。例えば、要支援者切り、生活援助の切り捨て、サービス時間の短縮・細切れ、回数制限のためのケアプランチェック、リハビリや筋トレで介護サービスから「卒業」させればインセンティブ給付(報奨金誘導)する等々を行っている。これでは、軽度の認知症や独居の高齢者のQOL(人間らしい生活の質)は維持できない事例が口々に指摘された。こうした厚労省の介護給付縮減ありきの政策は、介護保険制度はじまりの二〇〇〇年には介護給付総額三・六兆円・保険料全国平均二九一一円・介護職五五万人から、昨年二〇一七年は一〇兆円・五五一四円・一八〇万人、これが八〇〇万人団塊世代が後期高齢者になる二〇二五年には、二一兆円・八一六五円・二四〇万人との試算をもとにした「超高齢化」を言い訳にしている。
 今、大手事業所が採算が取れないと見捨てた利用者を、NPOや零細事業所が引き受けることで、結果として移動時間や待機時間の労働時間が賃金未払いになってしまうという労基法違反状態が慢性化しており、これでは介護職不足の問題は到底解消されないと訴えた。実際に、小・零細事業所の廃業・倒産件数は過去最多となっており、これも生産性の美名の下に大手事業所に淘汰していこうとする政策誘導の表れだ。また、介護産業での労基法違反件数は全産業比較で一割多く、介護職の賃金が月八~九万円低いという不変の数値は、介護職の圧倒的多数が女性であり、また介護職の半数以上が非正規職であるがゆえに、差別的におとしめているからに他ならない。
 来春にも外国人労働者の介護産業への受け入れが大きく進めようとしている。安倍政権は、移民としての内外人平等の権利保障を認めようとしない「介護人材」として、来年二〇一九年度は五千人、五年後までの累計で六万人の受け入れを想定しており、介護職の不足は来年度で六万人(他説は一八万人)、同じく五年後は三〇万人という。現在の介護福祉士の登録者数は一五〇万人、従事者は七八万人であり、就労率は六割未満で推移している。また、介護福祉士養成学校の定員充足率も半分程度で年々低下している。介護職の労働条件の抜本的改善こそが喫緊の課題だ。この現状を変えていかなければ、介護の世界は、一五兆円産業、関連一〇〇兆市場として新自由主義者の食い物にされ、高齢者や障害者とケア労働者は呻吟して人間の尊厳を奪われかねない。
 ケア労働者は、「介護総がかり行動」を大きく発展させつつ、国境を越えて団結し、自らの権利を確立して一切の差別抑圧を廃絶して、その社会的歴史的役割を果たしていこう。


 

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