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   改悪入管法の四月一日施行を弾劾する

   共生共闘で多民族多文化社会を創ろう

               
山路四迷


 
 

 安倍政権は、外国人労働力を向こう五年間で約三五万人を導入するとして、昨年一二月八日に新たな在留資格「特定技能」を創設した入管難民法を強行成立させ、三月一二日閣議決定、同一五日政省令を公布して、四月一日施行させた。
 改悪法案の審議過程では、技能実習生の失踪理由調査で法務省データ改ざんが発覚した。そして、劣悪な労働環境の改善対策や、受け入れ対象業種や人数、資格取得試験などの重要事項が政令・省令に白紙委任された。ただただ「戦後最大の名目GDP六〇〇兆円実現」なる基本政策のためだ。日本人の生産年齢人口(一五~六四歳)が向こう二〇年間に一五〇〇万人以上減少すると予想されている少子高齢化社会の中で、女性労働力の活用、高齢者の就業とならぶ重要政策として位置づけられたのが、「外国人材の導入」強行である。

 ●1章 創設された「特定技能」とは何か

 安倍は、「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れる。そのため新たな在留資格を設ける」とした。具体的には、熟練具合に応じて在留資格が最長五年まで延長される「特定技能1号」と、より熟練した技能があると認められれば、家族帯同が認められ、期限が更新できる「特定技能2号」を新設した。この二種類の外国人労働者を、農業・建設・食品製造・宿泊・繊維被服・機械金属・造船・介護などの一四分野で受け入れると政令で定めた。とくに、「特定技能1号」では、最長五年間は家族帯同が許されない。
 また、一九九九三年以来の現行の技能実習制度は、「途上国への技能移転」を建前としてきたが、実際は中小零細企業の低賃金労働力に利用され、賃金未払い・長時間労働・パワハラ・虐待などの人権侵害問題を引き起こしてきた。現代版奴隷制とも言われるこの技能実習修了者の半数が、そのまま「特定技能1号」に移行するとされ、人権侵害事件が拡大されるのは明白だ。
 新たに設置される「出入国管理庁」と「登録支援機関」は、劣悪な労働条件、排外主義的社会環境に抵抗せざるをえない外国人労働者に対して、管理監督の強化や人権侵害容認の機関として立ちはだかってくるだろう。
 二〇一八年一〇月末現在で、外国人労働者数は過去最多の約一四六万人、昨年比14%増だ。六年前は約六八万人で、二倍以上に増えている。そのうち技能実習生は約三〇万八千人(全体の21・1%)、留学生アルバイトなど「資格外活動」が約三四万四千人(同23・5%)、日本人配偶者など「身分に基づく在留資格」が約四九万六千人(同33・9%)、「専門的・技術的分野の在留資格」が約二七万七千人(同19%)等となっている。今や外国人労働者は、日本の産業社会において無くてはならない存在である。
 私たちは、彼ら彼女たちを受け入れ、国籍にかかわらず同等の教育・医療・住宅・参政権などの基本的人権と労働基本権を保障し、同じ労働者として共生し得る社会へと日本社会を変革していくことが強く求められている。

 ●2章 「技能実習制度」を廃止せよ

 現代版奴隷制度とも言われる「技能実習制度」の構造上の問題は、①建前と実態の乖離があること。「途上国への技能移転」を掲げつつ、低賃金かつ産業に不可欠な労働力の供給源として利用されている。②労働者として「転職の自由」がないこと。実習先の雇用主から支配され、我慢と奴隷状態を強いられる。③送り出し機関と監理団体による中間搾取があること。保証金・違約金・管理費が取られ、パワハラ・セクハラなどにさらされて人身取引まがいの過酷な実態だ。
 技能実習生の大半は、来日前の母国送り出し機関への支払い金額が「一〇〇万円以上から一五〇万円未満」が38・3%と最も多い。親族や銀行からの借り入れが多く、事実上の「債務奴隷」状態に置かれている。
 その中で、技能実習生の失踪は二〇一七年だけで七〇〇〇件を超えている。このうちの約二九〇〇人への聞き取り調査で、政府は「より高い賃金を求めた失踪が約87%」と偽装説明をしたが、実際には最低賃金以下による失踪が約67%だった。
また、「監督指導・送検等の状況」では、二〇一七年監督指導を実施した五九六六事業場(実習実施機関)のうち70・8%の四二二六事業場で労働基準関係法令違反があり、その主な違反内容は、労働時間26・2%、使用機械への措置など安全基準19・7%、割増賃金支払15・8%で、重大悪質違反の送検は三四件であった。
 そもそも技能実習生の受け入れは、企業が外国現地法人等から技能養成のために受け入れる「企業単独型」と、事業協同組合・商工会議所等が外国送り出し機関と協定を結んで傘下の中小企業に受け入れる「団体監理型」とに区分されている。その受け入れ数は、二〇一七年で団体監理型が96・6%と圧倒的多数を占めている。そして、実習実施機関の半数以上が、従業員一九人以下の零細企業だ。
 法務省入管局によると二〇一七年の「不正行為」機関数は、企業単独型が三件、団体監理型が監理団体二七件とその傘下の実習実施機関一八三件があった。またその類型別件数では二九九件で、そのうち悪質な人権侵害行為等としては、賃金不払い一三九件と暴行脅迫監禁四件と旅券・在留カード取上げ二件や人権を著しく侵害する行為三件の合計一四八件であった。
 二〇一八年六月現在で技能実習生約二八万人のうち、女性は一二万人だが、妊娠を理由とした強制帰国や中絶の事例は後を絶たない。二〇一三年富山地裁判決では、中国人女性実習生の妊娠が判明し、受入れ協同組合らが強制帰国未遂した結果、流産したことを違法としている。本年一月、中国人実習生が出産直後の男児を他人の住宅敷地に置き去りにしたとして保護責任者遺棄容疑で神奈川県警に逮捕され、「会社に知られたら日本にいられなくなる。日本人の家に置けば育ててもらえると思った」と話した。
 また、技能実習生が一九九二年から二〇一四年の間に三六五人が死亡、うち約28%の一〇一人の死因が脳心臓疾患であった。さらに二〇一五年から一七年の三年間で計六九人が死亡、その内訳は、男性五四人、女性一五人。年齢別では二〇代四六人、三〇代一九人、一〇代二人。出身国は中国三二人、ベトナム二六人など。死因は心筋梗塞や急性心不全、くも膜下出血などが目立ち、同世代の日本人死因割合の六倍弱である。また自殺も六人だった。長時間労働や劣悪な労働環境からの「過労死」がうかがえる。
 このように団体監理型の技能実習制度が、重層的下請け構造の最底辺で「奴隷労働」を強いる構造上の最大の問題だ。
 何よりも団体監理型の技能実習制度を廃絶し、悪質な仲介業者を排除するために、外国人労働者の受け入れプロセスを明確化しなければならない。送り出し・受け入れ機関はともに政府系機関とし、非営利セクター同士によるマッチングをおこなうこと、協定違反には更新停止などのペナルティ措置はじめ、実効性ある抜本的な制度変更をおこなうことが必要だ。「特定技能制度」でも、二国間協定の情報共有で中間搾取と悪質仲介業者の排除をうたっているが、実効性が無いのは明らか。韓国の雇用許可制度は、二国間協定の締結国からしか受け入れず、募集・採用を政府間のみでおこない一定の成果をあげている。外国人労働者の人権保障のため、受け入れプロセスから民間業者を排除し、政府組織間で取り扱わなければならない。
 新制度も、「日本人との同等以上報酬」「限定的な転職容認」をうたっているが実効性がない。技能実習法でも同等以上報酬が要件とされているが、実際には各地の最低賃金レベルに張り付いており、抽象的規定だけでは低賃金労働を規制することは困難だ。
 また、特定技能外国人の転職の自由を確保するためには、非自発的な離職への支援のみならず、自発的な離職も現実的に可能となるようハローワーク(公共職業安定所)の外国人に特化した職業紹介機能を強化すべきである。
 新制度では、「入国前の生活ガイダンス」をおこなうとしている。しかし、中小企業は対応困難なために「登録支援機関」に委託し、この登録支援機関は、実際には技能実習で実績のある「監理団体」が担うことになることであろう。結果として、技能実習制度における様々な問題が特定技能でも生起することは必定だ。「入国前の生活ガイダンス」は、政府自らあるいは公的機関がおこなうべきだ。
 家族の帯同は基本的人権のひとつである。家族帯同を認めないという「特定技能1号」は、最長通算五年間も家族と離れて一人日本で働かねばならず、さらに、技能実習2号修了者からの移行が多くを占めるといわれ、その場合八年間も家族が離れて生活しなけれならない。「移民政策ではない、外国人材の導入」とうそぶく安倍を許すことはできない。



 

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