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   最低賃金引き上げを闘おう
   ~制度の実態と最賃闘争の意義
                        岩崎 明

   


 ◆1 最低賃金1500円を目指して闘おう

 二〇一九年の最低賃金引き上げで、東京・神奈川が全国初となる一〇〇〇円を超え(東京一〇一三円、神奈川一〇一一円)、全国加重平均額が九〇一円(二七円の引き上げで過去最大)になった。しかし、一方で一番低い七九〇円の県が東北・九州などに一五県ある。八〇〇円未満は一七県、八〇〇円以上九〇〇円未満は二三県、合わせて四〇県が九〇〇円未満だ。全国加重平均ではなく、単純平均すれば約八四二円だ。
 仮に一〇〇〇円であったとしても一日八時間、週四〇時間、働いたとして、やっと月約一七万四千円、年約二〇八万六千円。ワーキングプアを脱することはできない。「八時間働けば生活できる賃金」という観点からすれば、あまりに低すぎるのが最低賃金の実態だ。
 また、一番高い東京都と一番低い県では、二二三円もの開きがある。都市部と地方の最低賃金の格差が広がり、地方から若者が流出している。こうした社会的問題に対処するためにも全国一律最低賃金が必要だ。
 最低賃金の引き上げが非正規職労働者の賃金引き上げに重要な役割を果たすようになってきている。最低賃金一五〇〇円を目指す運動が、非正規労働者を組織するユニオンを中心に、ナショナルセンターを越えて「最低賃金大幅引き上げキャンペーン実行委員会」が組織されている。こうした運動を促進し、労働運動の重要な一環として最低賃金の引き上げに取り組んでいこう。

 ◆2 最低賃金制度、目安制度の破綻

 最低賃金額は、各都道府県によって異なる。毎年七月頃に中央最低賃金審議会が引き上げの目安額を示し、それを受けて地方最低賃金審議会が八月上旬頃に引き上げ額の答申を行う。そして一〇月頃、各都道府県で新しい最低賃金が発効する。
 最低賃金の引き上げ額は、中央最低賃金審議会の示す目安額に大きく規定されてきた。この間、中央最低賃金審議会は、全国を四ランクに分け、東京など都市部の最低賃金の高い地域の引き上げ額を大きくしてきた(二〇一九年、Aランク二八円、Dランク二六円。二〇一八年、Aランク二七円、Dランク二三円)。その結果、最低賃金の格差は年々拡大してきた。二〇〇九年には、最低賃金の最も高い東京都七九一円、低い沖縄県など六二九円で、その差が一六二円であったが、現在は二二三円もの開きになっている。
 最低賃金のこれ以上の格差拡大を避けたい地方審議会は、中央の目安額を上回る答申を、二〇一八年は二三県、二〇一九年は一九県が行った。このことは、都道府県をランク分けし格差をつける現在の目安制度の破綻を示している。

 ◆3 全国一律最低賃金を求める声の拡大

 最低賃金の地域格差は無視できないものになっている。
 自民党の中でも、今年二月「最低賃金一元化推進議員連盟」が立ち上げられ、参議院選挙の際、「最低賃金の一律化を検討すること」の明記が検討された。
 参議院選挙を前に立憲民主・国民民主・共産党・社民党などで合意した政策合意書の中では、「地域間の大きな格差を是正しつつ最低賃金『一五〇〇円』を目指し、八時間働けば暮らせるルールを実現し、生活を底上げする経済、社会保障を実現し、貧困・格差を解消すること」を掲げた。
 全国知事会は、今年七月、国の施策に関する要望の中で、「地域間格差の拡大につながっているランク制度を廃止し、全国一律の最低賃金制度の実現と同一労働同一賃金の確実な実施。最低賃金の引上げ、これによって影響を受ける中小企業への支援の強化」を求めた。
 このように最低賃金の引き上げを求める声、全国一律を求める声は、確実に広がっている。

 ◆4 非正規労働者の増大と最低賃金引き上げの役割

 ワーキングプアが増大し、社会問題化している。二〇〇七年には生活保護と最低賃金の関係が議論になり、最低賃金法が改正され、「労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮する」ことが明記された(二〇〇八年施行)。
 二〇一八年民間給与実態統計調査結果(国税庁)によれば、正規労働者三三二二万人、非正規労働者一一六七万人(男性三五四万人、女性八一三万人)で、年収二〇〇万円以下のワーキングプアの労働者は、一〇九八万人(男性二九〇万人、女性八〇八万人)。ここから、多くの非正規労働者が二〇〇万円以下のワーキングプアだと考えられる。
 全国加重平均は、二〇〇九年は七一三円だったが、二〇一九年には九〇一円になっている。この一〇年間で、一八八円引き上げられている。とりわけ、二〇一六年からは加重平均で毎年二五円以上の引き上げが行われている。この引き上げによって、最低賃金付近で働く労働者が年々増大している。
 影響率(最低賃金額を改正した後に、改正後の最低賃金額を下回ることとなる労働者割合)は、二〇一六年からは10%を超えている。非正規労働者や低賃金の正社員(高卒初任給など)にとって、最低賃金がこれまでにも増して身近な問題となっている。貧困・格差拡大とのたたかいの上で、最低賃金の引き上げは重要な位置を占めている。

 ◆5 最低賃金引き上げを位置づけ、取り組んでいこう!

 「八時間働けば生活できる社会」の実現のためには、最低賃金一五〇〇円を目指して、最低賃金を大幅に引き上げていくことが必要だ。「最低賃金を一五〇〇円に引き上げよう! 全国一律最低賃金を!」のキャンペーン活動を強めよう。SNS・街頭署名・宣伝・デモなどで訴えよう。また、七月頃の地方最低賃金審議会への意見書・意見陳述などにも取り組むもう。二〇春闘の中でも最低賃金闘争を位置付けて闘おう!




 

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