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    侵略戦争と生存権破壊の時代に

     階級的労働運動の新たな一歩を

                  
遠井玲子

                   
   


 ●1 帝国主義の危機の深まり

 二〇二〇年は、アメリカ帝国主義―トランプ政権によるイラン革命防衛隊のスレイマニ司令官殺害で幕を開けた。
 スレイマニ司令官は、イランによる中東全域におけるシーア派勢力の活動を操り、昨年来の駐イラク米国大使館攻撃などの中心部隊とされている「クドス部隊」のリーダーであり、イラン国内では大きな影響力を持つと言われている。石油利権・戦争利権を求めるアメリカ帝国主義のイラク戦争(二〇〇三年)によって、イラクではバース党支配が打ち倒された。その後、イラク政権はクルド人とシーア派で構成され、シーア派を通してイランの影響力が高まり、「外国人駐留軍隊の追放」などの決議が上がっている。このような中で、スレイマニ司令官がイラクにおいて公然と反米活動をおこなうようになっていた。
 中東支配への力を誇示するがごとき司令官殺害に、ふたたびの大規模戦争かと新年早々の報道は沸き立ったが、イランからの米軍基地への報復攻撃とアメリカによるイラン制裁強化によって事態は沈静化している。
 この乱暴な司令官殺害については、様々な憶測が飛んでいる。
 アメリカは今、バブル最盛期である。GAFA(ガーファ)と呼ばれる巨大IT企業(アップル・アマゾン・グーグル・フェイスブック)の大手四社の時価総額は三兆ドルを超え、アメリカの主要五〇〇社の株価の13%を占めるまでとなり、一〇年前と比較すると五倍強に拡大している。しかし、米国の輸出製造企業の業績は下降してきており、先行き不安の影響か政治色の強い相場になっている。このため、株価最高値圏での利下げ観測と米中貿易戦争の様相のバランスを計りながら株価が決まり、いま株価は上がる方向となっている。米国債も買われて、金利が2%を切る水準になっている。金利が安いので、企業の借入金が二〇一七年のリーマンショック直前より多くなっている。株も債権も高く、金や仮想通貨も上昇してきた。全資産がバブル化し、実体経済とのアンバランスが深まっている。
 これがいつ崩壊するか、それが選挙前であっては、再選をめざすトランプにとっては困る。そこで中東危機を拡大して、石油価格の高騰、シェール企業の利益拡大、戦争特需の期待などを引き起こす選択肢の一つとした、などと言われている。どこまでが真実かは分からないが、今回の事態で、強いアメリカが誇示され、株価・債券は高値を維持しているのは確かだ。
 世界は火種を抱えたままきわめて不安定な状態で推移している。
 このような政治的軍事的覇権争いの背後では、帝国主義諸国は「第四次産業革命」を、しのぎを削って推し進めている。二〇一六年のダボス会議で公然化したこの動きは、IoTやAIを用いることで起こす製造業の革新的技術と言われ、労働生産性を劇的に向上させ、低迷しつつある企業利益の抜本的底上げを狙うものである。ドイツが先鞭を切り、二〇一一年にドイツ工業アカデミーが発表し、IoTの普及を国家プロジェクト(「インダストリー四・〇」)として宣言した。日本においても、経済同友会などが二〇一五年から提言して、後を追っている。
 幾度かの産業革命によって、手工業から機械製工業、工場での大量生産、コンピューターによる自動化を推し進め、資本家階級に巨大な富を蓄積するとともに、労働者の雇用不安定化や賃金低下、社会的地位の低下をもたらしてきた。第四次、五次……と計画されている資本家たちによるこれら産業革命は、今も進行する貧富の格差をさらに押し広げ、企業が必要な時にだけ細切れ仕事を与えられ、社会の一員どころか明日をも知れない運命を多くの労働者に強いていく性格を持っている。資本家たちは「AIによるバラ色の未来」を描いているが、これを享受できるのは一部上層だけである。現在を見るまでもなく、生産力は拡大しているにもかかわらず、圧倒的多数の民衆は弱肉強食の中でしか生きられず、貧困は蓄積し、情報は管理・統制され、権利ははぎ取られ、声をあげることもできない閉塞した社会となる危険性の方が大きい。
 このように帝国主義―巨大独占資本家階級は、ますます狭くなり利益幅の薄くなった世界市場をめぐって、強盗的な覇権争いと、企業利益を劇的に拡大するための労働生産性向上(すなわち労働者階級の零落を促進する技術革新)にのめり込んでいっている。地球環境の破壊もなんのその、昨秋、国連本部で一四歳のグレタ・トゥンベリさんが「よくもまあ!」と怒りの声をあげた通りである。労働者・民衆にとって、侵略戦争と生存権破壊の時代がますます進んでいっているのである。

 ●2 侵略戦争と生存権破壊を競う社会

 日本帝国主義・独占資本も、この侵略戦争と生存権破壊競争に負けじと、超右翼排外主義の権化である安倍政権を押し立てて突っ走っている。
 二〇一八年末、日本企業の海外資産は千兆円を超えた。そして企業の内部留保額は、四六三兆一三〇八億円(二〇一八年度)、七年連続で過去最大である。金融・保険業を加えたベースでは、すでに二〇一七年度に五〇〇兆円を突破し、五〇七兆四四五四億円と、日本の一年間のGDPに匹敵する額をため込むに至った。
 しかしながら他方で、全世界規模で争われている巨大資本間―帝国主義間抗争の渦の中で、日本の独占大企業は存在感をなくし、ジリジリと後退させられている現実がある。軍事力を行使しての資源・市場強奪の侵略戦争は憲法九条の制約のため後塵を拝し、一九九八年から四年連続で世界一位を記録したこともあった「世界競争力ランキング」(スイスIMD)では、二〇一九年には前年から五つも下がり三〇位となっている。少子高齢化による人口減もあり、日本経済への悲観論が広がっている。
 このような危機の深まりを根拠として、これを突破しようとする帝国主義―独占資本の動きが加速している。すなわち、侵略戦争を遂行しうる国家編成と、少子高齢化の下での労働生産性の強化である。
 安倍政権による戦争法の制定、日米共同作戦体制の構築、自衛隊の侵略軍隊化、中東への自衛隊派遣、憲法改悪に向けた一貫した政策は、経団連や経済同友会など独占大ブルジョアジーたちの切実な要求と結びついている。帝国主義-独占資本は、どのような手を使っても侵略国家化を成し遂げなければ生き延びられないのである。
 また国際競争力を高め、より一層の企業収益を上げるための、労働政策が進んでいる。昨年、「働き方改革法」が強行採決された。少し詳しく述べる。
 安倍政権が推し進める「働き方改革」は、日本の労働政策の大きな転換を意味している。二〇一六年八月、経済同友会は「新産業革命による労働市場のパラダイムシフトへの対応」という指針を出し、「戦前の『工場法』をベースに作られた日本の労働法は、『所定の場所』『所定の時間』に『労働時間と成果が比例する業務』に従事することを前提としており、こうした新しい動き(産業構造の変化)に対応していない。……世界の中で競争力を失うことにつながりかねない」と雇用政策の転換を主張した。経営(資本)にとって「価値(=利益)」を生み出さない労働は問題外だという主張も含まれている。おおむね、この線に基づいて「働き方改革」は進んだ。
 全体を貫かれているのは、労働政策の根幹から、労働者保護や雇用(使用責任)というタガを外すことである。かつては「雇用対策推進法」と呼ばれていたものが「労働施策総合推進法」という名に変わり、〝労働生産性の向上〟と〝多様で柔軟な働き方〟がそのテーマとなっている。「副業・兼業」「テレワーク」「雇用類似の働き方」……、これらを労働法の枠を外れるものとして取り扱い、契約労働は「労働法」ではなく、経済産業省による「独占禁止法」のみで運営すればいいという意見まで出している。
 そして労働時間。「青天井の長時間労働を罰則で規制」とあるが、最長月は過労死基準の一〇〇時間であり、時間管理のない「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)も導入された。裁量労働制改悪は、今回は入れることができなかったが、必ず「高プロ」のすそ野として導入されるだろう。すなわち資本が必要とする労働は青天井だが、運輸など人手不足で長時間労働が問題となっている産業を除いては、全体として時間外労働は規制の方向である。残業代金がないと生活できない、という労働者には、「副業・兼業」すればいい、という落としどころがついている。
 〝同一労働同一賃金〟が法制化された。長らく賃金・待遇差別に苦しんでいた非正規雇用労働者にとっては喜ばしいことだが、手放しでは喜べない。すでに非正規雇用労働は、労働者の40%を占め、二十数年に及ぶ賃金下落や年収一〇〇万・二〇〇万円以下の貧困問題として社会問題化してきた。郵政産業労働者ユニオンや全日建連帯労組などが、労働契約法二〇条を使って差別是正の裁判を起こし、いずれも勝利判決を得ている。使い勝手のいい非正規雇用労働者をいっそう拡大していくためには、一定の改善が必要であるとの考えを支配層は持つに至っている。それは正規雇用労働者の待遇・賃金切り下げと連動している。郵政職場では裁判で是正を命じられた正社員の手当そのものを削減してしまうという暴挙がおこなわれている。
 これら労働政策の根本は、生産技術の高度化や社会的協業の発展にともない、いっそうの人件費の削減(労働搾取)を進める法・制度の整備が目的である。資本にとって利益を生み出す労働力のみを「価値ある労働」として絞りあげ、それ以外は、食うや食わず・食えなくても「自己責任」という法体系を整備してしまおうという代物である。まさに生存権の破壊である。
 これに先立って、外国人労働力の導入が決定されているが、大幅な利益を生み出す成長産業として期待はできないが、それとして存続する介護産業や農業、国際競争力のない製造業などの人件費を低いままに置き、それゆえの労働力不足にあてるためのものである。「現代の奴隷制度」と悪評高い技能実習生制度を手直しし、第三世界の労働者を使い捨てていくという差別的な政策が進んでいる。
 このような労働政策の上に提唱される日本版「第四次産業革命」なるものが、どのような反労働者的なものとなるのかは明らかだろう。
 日本帝国主義―独占資本家たちの利益確保のための、むき出しの侵略戦争と生存権破壊の時代が幕を開けるのである。労働者民衆の平和や生存を脅かす状況の到来は、社会の様々な分野に怒りや憤懣を蓄積していく。この矛先を支配階級に向けさせないために、一方で、排外主義の育成、天皇制強化、マスコミ報道の統制などで侵略戦争国家への国民統合の道を掃き清め、他方で、かつての敗戦帝国主義の戦後処理(帝国主義軍隊解体、民主主義的諸権利付与)のもとで成長してきた抵抗勢力の一掃・鎮圧を推し進めてきた。とりわけ後者は、二〇一七年、オリンピックに向けテロ対策の必要性が高まっていると強弁(「世界で最も安全な国」としてオリンピック招致をおこなった舌の根も乾かぬうちに)、国連の越境組織犯罪防止条約の批准国に共謀罪を定める法律の制定が求められていると虚言を弄して、「組織的犯罪」に対する計画段階での強制捜査や処罰を行うことを強く主張し、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画」に対する罪として、テロ等準備罪(共謀罪)を一挙に二七七も新設する法案を成立させた。
 「現代の治安維持法」が整備され、二〇一八年には、その適用も含んで全日建関生支部が標的となった。滋賀県警・大阪府警・京都府警・和歌山県警と、バックには警察本部ぐるみでのでっち上げ弾圧である。司法も一体となり、政権が絡まなければ手がつかないような国家的大弾圧がいま進行している。この弾圧攻撃の恐ろしさは、単に目障りな抵抗勢力を叩き潰すことにとどまらない。それは憲法二八条(労働三権)を否定し、資本の忠実な下僕とならない労働組合を根絶やしにすることを目的とするものである。これは戦前の特高社会、モノが言えない暗黒社会の再来を意味している。
 すでにここ数十年、日本の大独占たちは、「雇用か賃金か」「横並び春闘は終わりだ」「相場賃金ではなく業績に応じろ」と労働組合を企業内下僕に封じ込め、社会勢力としての力を削ぎ落すよう恫喝してきた。連合大企業労組の多くがこれに屈服し、電力系労組は反原発運動に敵対し、自動車関係労組は相場作りを拒否し春闘妥結額さえ明らかにしないという事態が進んできた。
 他方で、日本には真の闘う産別労働組合は、港湾日雇い荷受けの闘いから出発した全港湾や、封建的建設現場での闘いの中で成長してきた全日建連帯労組ぐらいしかないが、全日建の中心的けん引組合・関西生コン支部への国家的な大弾圧と並行して、全港湾の産別最賃交渉拒否や協約破棄などが始まっている。
 地域ユニオンや合同労組などの小規模争議では労使交渉を拒否し、弁護士に丸投げして団体交渉権を形骸化させる事態が横行している。戦前、日本労働運動は産業報国会運動へ強権的に解消させられたが、今や実質的に同様の事態が進行しているのだ。
 一九四五年、日本帝国主義の侵略戦争の敗北によって、戦後の〝平和と民主主義〟の一時代がつくられたが、それは戦勝帝国主義列強による敗戦帝国日本の解体・弱小化のための戦後処理の結果に過ぎなかった。帝国官僚・政治家・天皇・独占資本家、これらに連なる諸反動保守勢力は、これをよしとせず、戦後も一貫して帝国日本の復興をめざしてきた。日本労働者・民衆は、侵略戦争を自らの手で終わらせることができず、のみならず闘う構造を解体して、戦後処理を戦勝帝国主義・米帝に委ねて、戦後の階級闘争を出発させたという負の遺産を持っている。
 そのため、アジア侵略戦争に対する歴史的責任を取ることもできず、今日に至るまで日本軍性奴隷制度、植民地労働者の徴兵や徴用動員に対する謝罪や賠償も、帝国日本の復興を求める反動政治家の手に任せてしまったという負の歴史のままに現在に至っている。いま再び日本帝国主義が、敗戦帝国主義の制約を最後的に取り払い、侵略戦争と民衆の生存権破壊に打って出ようとしているとき、この負の歴史をくつがえそうとしてきた戦後の良心的な人々の闘いをかけて、正念場の闘いに向かうことが必要な状況が訪れている。

 ●3 帝国主義―独占資本と闘う階級闘争構造を構築せよ

 歴史に「たら」「れば」はない。しかし歴史を教訓とすることはできる。今号では詳しく歴史を振り返る紙面はないが、帝国主義の危機が深まり、その綻びが破綻に転化する情勢は必ずどこかでやってくる。
 例えば、一九四五年の帝国日本の敗戦のように。その時、社会主義諸政党は弾圧で壊滅させられ、一握りを除いて思想転向がまん延し、労働組合は解散させられて産業報国会となり、……という惨憺たる壊滅状態で、その時は訪れた。茫然自失の沈黙を破ったのは、炭鉱に強制連行された中国人労働者の決起である。帝国軍隊・特高警察の解体と民主主義的諸権利の容認の下で、帝国日本の解体の一瞬の隙間を縫った火花のように戦後動乱期が引き起こされた。
 その時、再興を狙う独占資本家・天皇・帝国官僚・政治家と対決し、引き続き闘いを進めるアジア反帝・民族解放闘争との連帯・共同を実現していく日本階級闘争の構造を、この動乱期の中でどのように実現しようとしたのか。残念ながら日本共産党の「米軍=解放軍」規定を筆頭に、長期にわたって帝国主義世界とわたり合い、労働者・勤労大衆・被差別民衆が自らを解放するために社会的に結合する連帯の仕組み(階級闘争の構造建設)を明確に指し示す路線と戦略を持った部分は存在しなかったのである。
 とりわけ労働組合運動は、階級闘争の基盤であり、その団結の仕組みは多くの歴史的な経験を積み上げてきている。戦後動乱期の労使攻防の要は、職場での支配権を誰がどのように握るかをめぐる熾烈な闘いである。
 当時、国際労働運動の結集体として世界労連が存在し、産別労働運動の有効性が提起され、日本でも産別会議が結成された。しかし敗戦直後、比較的無傷でいたのは労働組合右派活動家たちであり、当時の日本共産党は産別労働運動指導に多くの過ちや混乱をもち込み、産別労働運動は根付かず、自然発生する職場団結をそのまま固定化した企業内労組が日本労働運動の主流となった(他にも、戦前の皇国賃金にルーツを持つ生活給賃金の果たした役割などあるが今回は触れる紙面はない)。
 これら一連の動乱・攻防のいったんの終息点―戦後階級闘争構造が、いわゆる五五年体制である。
 その敗戦時から七五年、日帝―独占資本家たちは、戦後動乱期の鎮圧、企業内労組主義への労働組合の封じ込め、国際自由労連加盟労組との労使協調・労使一体化をバックとした左派労働運動つぶし・排除、そして社内協議組織以外に労働組合を認めない、圧倒的多数の労働者の非正規雇用・雇用類似の労働者からの労働法はく奪、と歩を進めてきた。
 政治的には、日米安保など帝国主義同盟の締結、軍隊の復活(自衛隊)、そして一九八〇年代以降、公然と「戦後政治の総決算」を掲げて、国家的不当労働行為(総評つぶしの国労攻撃)に打って出、五五年体制の基盤であった総評労働運動を崩壊させて、戦後階級闘争構造の再編成に着手。戦争法、共謀罪……と「積年の悲願」を実現してきた。帝国主義・独占資本にとって、敗戦帝国主義の戦後処理策であった「戦後平和と民主主義」は、戦後動乱期の終息のためにやむなく合意したが、差別分断・弱肉強食・戦争国家化への再編成にとってはジャマモノに他ならなかった。
 私たちが、「階級闘争の構造建設」を明確なテーマとしてかかげたのは、二〇〇〇年初頭である。戦後五五年体制(米帝支配下の〝平和と民主主義〟という土台の上に戦後労働運動・諸民主主義運動、社共)の上にあった階級闘争構造が崩壊していく中で、それまでの反帝・国際主義・階級的労働運動・被差別下層大衆への依拠という指針を、新たな枠組みの中に据えなおし、社共・総評の反対派としてでなく、階級闘争の根拠ある実態としてつくりなおそうと始まった。
 戦後体制の崩壊とともに、いわゆる左派と言われる部分の衰退も始まっていくのだが、企業内労組批判や政治闘争否定など小手先あるいは組合主義的総括に多くが流れ、階級闘争という広い視野でとらえることができたのは極少数でしかなかった。
 「構造建設」は、反帝・国際主義で左派を形成してきた部分が生き残りをかけた現場からの足場つくりに向かうという実践的性格のみならず、この路線は旧来の左翼反対派的性格からの転換をめざすものでもあった。「構造建設」は、帝国主義・独占資本と闘うプロレタリア人民の対抗陣形つくりであると同時に、次の社会を担うに足る主体、その結合、社会勢力化をめざすものである。
 帝国主義(資本主義)世界を批判する種々の団結組織(労働組合、反原発、障害者、女性、部落、在日・滞日……)は、現実を批判するとともに実現すべき何らかの社会構想をもって活動している。これらが個別バラバラのまま、社会的に切磋琢磨されない願望を持っている状態から脱し、現実の闘争においても、次の社会建設においても構造的につながり、成長し続ける枠組み・仕組み作りが必要であることを明確にし、それに取りかかったのである。

 ●4 戦後労働運動四期を推進し、第五期を切り拓こう

 敗戦七五年のこの年、日本の労働者民衆は、侵略戦争に壊滅させられた戦前を超える階級闘争構造の構想と実体を、どれほど確立できるかという年となる。安倍政権の経済政策(アベノミクス)の破綻のみならず、森友・加計・桜を見る会と安倍政権の腐敗ぶり、韓国敵視などの排外主義外交の害毒が、ますますあらわとなっている。
 かつて現在の労働運動を「戦後労働運動第四期」と規定したが、いま私たちはどのような地点に立っているのだろうか。再度、概括しよう。
 戦後第一期の労働運動は、日帝の敗戦と米軍占領下での闘いである。壊滅状態であった階級闘争が、一気に吹き返し戦後革命期を彩った。一九四六年には国鉄労働組合が五〇万名、全逓信従業員組合が四〇万名、民間の組合は合計七〇万名に達した。新聞、放送、国鉄、海員組合、炭鉱、電気産業へと波は広がった。が、前述したように、敗戦で訪れた次の一時代を担う階級闘争構造を構築するものとはならなかった。
 戦後第二期の労働運動は、一九四七年二・一ゼネスト敗北と総評の結成である。米占領軍は、戦争国家であった帝国日本の解体の一つとして、労働組合結成などの諸民主的権利を持ち込んだが、労働組合運動が一気に広がりゼネラルストライキをもって吉田政権打倒を掲げた倒閣運動に立ち上がるや、占領政策に反すると一気に弾圧へと転じた。国際的にも中国革命の勝利や朝鮮戦争の煮詰まりなどがある。一九五〇年、GHQの強い意向で、総評(日本労働組合総評議会)が、日本共産党排除や国際自由労連への接近を内容とする大会基調で結成された。しかし翌一九五一年の二回大会では、総評は平和四原則を決定し、国際自由労連加盟の議案を否決する。戦争と人権抑圧、生存権破壊の時代を生き延びた労働者民衆の平和と生活を求める闘いと、帝国主義の巻き返しが交差した時期であった。
 第三の時期は、いわゆる戦後支配体制と言われる五五年体制に基づく時期である。産別労働運動組織化の敗北、その結果、総評労働運動は企業内労組主義を主流にした経済主義・組合主義的志向を色濃くしたが、動乱期を脱し、一定の安定的な社会構造を確立し、日本社会は「戦後復興」に入っていく。「戦後復興」とは、帝国日本の再興を求めて、米帝の平坦拠点として政治的・経済的な力を支配者たちがつけ、それに伴う経済成長を実現していく時期である。
 しかし一九七〇年代から八〇年代にかけて、「低成長の時代」という資本の利益率が鈍化する時代が訪れた。この突破のためには、資本の下僕は要るが闘う労働組合は要らないという日帝―独占資本家たちによる労働者攻撃が始まっていくのである。国労大弾圧から総評解体、連合への編成である。
 今日の第四期は、新自由主義の破綻と、帝国主義諸列強による侵略戦争と生存権破壊へと日本社会が引き込まれていく時代における労働運動である。この時代を生き延びて闘い抜き、帝国主義―独占資本の支配を覆していける階級闘争の仕組み(構造)を形質ともに切り拓き、次の激動の第五期を迎えうるか否かの歴史的転換点に労働運動は立っていると言っていい。
 反帝国際主義政治闘争を基軸に、アジア―世界の階級闘争と結びつき、独占資本中心社会と闘う労働者、勤労人民、被差別大衆の連帯・結合を推進していくことが必要である。とりわけ労働運動は、非正規雇用労働者が四割近くなり、技能実習生や特定技能の外国人労働者、また「雇用類似の働き方」など、労働者としての権利、人間らしく生活する権利をはぎ取られた労働者が拡大する中で、「八時間働けば生活できる」社会を実現するための団結の仕組みを作り上げることが緊要の課題である。
 今進む産別労働運動つぶしを決して許さず、関生弾圧に示される階級的労組の孤立・個別撃破攻撃をうち破り、労働者階級の団結の仕組みを、一方での「産別(業種別)労働組合」と、他方での地域ユニオン・地域合同労組を含む「地域一般労組」、この二つを、いわば「縦糸と横糸」として各地域で編み上げ、諸政治勢力、市民運動、被差別大衆の解放運動と結びつき、日帝―独占資本と闘う階級闘争の基礎基盤として構築していくことが必要である。
世界各国でも、この時代を生き抜き、勝利への基盤を築くための様々な努力・試行錯誤がおこなわれている。またの機会に紹介したい。
 すでに二〇二〇春闘が始まっている。昨年、独占資本家たちは安倍政権による官製春闘の申し出すら断って、「横並び春闘は終わった」と言い放った。それに追随し、企業内正社員のみの業績に応じた配分要請などの労働組合の後退が進んでいる。企業を、地域を、国境を越えた横並び団結こそが、独占資本家たちを脅かすのである。賃金・福利厚生・権利をめぐる職場要求、諸政策要求、均等待遇・差別禁止や最低賃金要求など、あらゆる手段を使って、春闘を切りひらき、連帯と団結の闘いを広げよう!




 

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