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   ・パラリンピックに反対する

                      
高橋宏幸




 ●1章 ナショナリズム煽動=改憲攻撃と一体の東京五輪

 一月二〇日に開会した第二〇一通常国会冒頭の安倍施政方針演説は、東京オリンピック・パラリンピック一色に染め上げられたものであった。
 安倍は、一九六四年に開催された前回東京五輪の聖火リレー最終ランナーの情景描写から演説を開始した。そして、「我が国が、戦後の焼け野原から復興を成し遂げ、自信と誇りを持って、高度成長の新しい時代へと踏み出していく。そのことを、世界に力強く発信するものでありました」とし、「半世紀ぶりに、あの感動が、再び、我が国にやってきます。本年のオリンピック・パラリンピックもまた、日本全体が力を合わせて、世界中に感動を与える最高の大会とする。そして、そこから、国民一丸となって、新しい時代へと、皆さん、共に、踏み出していこう」と演説冒頭を結んだ。
 労働者人民が注視しているのは、安倍晋三自身とその取り巻き閣僚らによる、「森友・加計」疑獄やカジノ(IR)贈収賄事件、「桜を見る会」私物化、「東京高検定年延長」問題に表れた虚偽答弁、公文書改竄、記録の隠蔽・破棄、法解釈の勝手な変更だ。安倍政権に対する労働者人民の怒りの声が沸き上がっているが、施政方針演説はそれらに一切触れていない。
 安倍はこれまで何度も「真摯に反省し、説明責任を果たす」と言いながら、労働者人民が納得できる説明を何一つしていない。むしろ説明するつもりなど初めからないと言った方が正確だろう。
 施政方針演説で安倍が自画自賛する「地球儀を俯瞰する外交」「アベノミクスの三本の矢」の「成果」=外交・経済戦略はどれもが失敗・破綻している。そして昨年一〇月に強行された消費税10%増税は、労働者人民の生活悪化に追い打ちをかけた。内閣府が三月九日発表した一九年一〇~一二月期の国内総生産(GDP)は、年率換算で7・1%減少した。増税の影響が個人消費の落ち込みに直結したことが鮮明な数字となった。
 そして、「危機管理」を得意分野と「自任」し、共謀罪など数々の反動治安立法を強行成立させてきた安倍政権だが、新コロナウィルスによる肺炎対策に対しては対応が完全に後手に回っており、方針が二転三転するという混乱・無策ぶりをさらけ出した。
 すでに新コロナウィルスの感染経路が分からない罹患者が増大する中、突如として政府は全国一斉の臨時休校やスポーツ・文化イベントの開催自粛を要請(事実上の強制)した。しかし、このような中でも、感染症対策本部会合を閣僚が欠席したり、安倍や自民党議員らが、政治資金パーティーや経済界との会食に明け暮れている事が判明した。
 労働者人民の健康不安を軽視し、国会議員としての己の地位を最優先にする姿勢に対して、人民の怒りはさらに高まった。政権支持率は急降下し、不支持率が上回ったのは当然の結果だ。
 腐敗を極める安倍独裁政権は、東京五輪開催=「がんばれニッポン!」の官民あげた大宣伝を隠れ蓑に、挙国一致=国民統合をはかり、これを階級闘争の「一時休戦」期間として最大限に利用して、労働者人民の怒りが鎮静化するのを待ち、追及から逃げ切ろうというのだ。こんな欺瞞を許してはならない。
 われわれは、東京五輪を、昨年からの「天皇代替わり」攻撃=天皇制・天皇制イデオロギーのもとへの国民統合攻撃と連続する、挙国一致体制づくり=ナショナリズム煽動の攻撃として捉えている。
 六四年東京五輪は、日帝の四五年敗戦からの「復興五輪」として位置づけられ、戦犯天皇ヒロヒトが名誉総裁として開会を宣言した。これがヒロヒトの「国家元首」としての再デビューでもあった。
 そして二〇年東京五輪は、安倍政権によって東日本大震災―福島原発事故からの「復興五輪」と位置付けられ、天皇ナルヒトが開会宣言を行い、新天皇「即位」=新「国家元首」として全世界にアピールしようとしている。
 この二つの「復興五輪」=「東京オリンピック」が共通して示しているのは、日帝ブルジョア支配階級の引き起こした侵略戦争の破局=敗戦と、「原発安全神話」によって労働者階級人民をだましつづけた結果としての福島第一原発事故という両者を、あたかも「自然災害」であるかのように扱う犯罪的なレトリックである。
 これらは、「東京オリンピック」と天皇制・天皇制イデオロギーが、日帝ブルジョア支配階級の歴史的な犯罪性を隠蔽し、ブルジョアジーの描き出す「破局」からの「復興物語」を正当化し再生産する「装置」として機能してきたということを意味している。
 さらに安倍は、施政方針演説の最後を、「国のかたちを語るもの。それは憲法です。未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないでしょうか。新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で、共に、その責任を果たしていこうではありませんか」と締めくくり、改憲へと突き進むための東京五輪であることを鮮明にした。
 「夢、希望、未来」などの抽象的美辞麗句を並べて、「天皇代替わり」を、「新たな時代」として人民に強制し、天皇制・天皇制イデオロギーへの国民統合を進めようというのだ。さらには、「世界の真ん中で輝く日本、希望にあふれ誇りある日本を創り上げ」などと、極右日本会議の主張そのままの文言で自民族優越主義煽動し、挙国一致体制を進め、改憲へと突進しようとしているのだ。
 自民党元衆院議長の伊吹文明は、「感染拡大は憲法改正の大きな一つの実験台。緊急事態の一つの例」と語り、新コロナウィルス感染者増大を利用した改憲=緊急事態条項導入を叫んでいる。またこれに日本維新の会内の極右議員も追随し、労働者人民の感染の恐怖に便乗して緊急事態条項導入をもくろんでいるのだ。
 日本労働者階級人民は、疑獄事件隠しと改憲攻撃のための東京オリンピック・パラリンピックに断固反対していかなければならない。安倍を追撃し、一刻も早く打倒しよう。

 ●2章 福島切り捨て=原発事故隠しの「復興五輪」

 安倍は施政方針演説において、「二〇二〇年の聖火が走り出す、そのスタート地点は、福島のJヴィレッジです。かつて原発事故対応の拠点となったその場所は、今、我が国最大のサッカーの聖地に生まれ変わり、子どもたちの笑顔であふれています」と語り、東日本大震災、福島原発事故からの「復興五輪」としての位置づけを強調した。
 つづけて安倍は、「常磐自動車道に続き、本年三月、JR常磐線が全線開通します。これに合わせ、双葉町、大熊町、富岡町の帰還困難区域における避難指示の一部解除に向け、準備を進めます」と述べ、あたかも福島が震災や原発事故から「復興」し、放射能汚染がもはや「過去のもの」になったかの幻想を振り撒いた。
だが、福島をはじめ、被災した労働者階級人民の置かれている現状は安倍の演説とはまったくかけ離れたものである。
 二〇一一年三月一一日に発令された「原子力緊急事態宣言」は原発事故から九年が経過した現在も解除されていない。メルトダウン(炉心溶融)を起こした福島第一原発一~三号機の核燃料デブリが今どうなっているのかも分かっておらず、再臨界を防止するために水をかけ続けるしかない状態だ。
 発生し続ける高濃度汚染水はタンクに貯蔵されているが、あと二年で容量の限界を迎える。政府―東電は汚染水の海洋放出を策動している。
 除染されたのは市街地だけであり、福島県の七割を占める山や森などはまったく除染されていない。気候変動=温暖化の影響で、昨年は大型台風が相次いで日本を直撃し、山や森から放射性物質が市街地へと流れ込んでいる。
 飯館村をはじめ、福島県内には放射能汚染土を詰めたフレコンバックが高く積み上げられ、野ざらしになっている。昨年の台風でフレコンバックが破れ、大量の汚染土が川へと流された。
 原発被災地では高線量が依然として続いており、小児甲状腺がんの子供が増加している。原発収束作業に従事する労働者は、ゼネコンを頂点とした重層的下請け構造の中で、ピンはねを受けながら、収束作業=被曝労働を強制され続けている。これが安倍の振り撒く福島「復興」なるものの現実の姿だ。
 いまだ福島第一原発の廃炉の目途など全然立っておらず、「復興」とは程遠い状況であることは明らかだろう。
 三月二六日から始まる聖火リレーのスタート地点が楢葉町のJビレッジに設定されたことは、原発事故隠しとしての「復興五輪」に込められた安倍政権の悪辣な意図を象徴的に示している。Jビレッジは、爆発事故を起こした福島第一原発から二〇㎞しか離れていない。安倍はここをあえてスタート地点にすることで、福島での放射能汚染の危険性は「過去のもの」という演出をしようとしているのだ。
 われわれは、被災者への支援を打ち切り、帰還=被曝を強制する安倍政権の「復興五輪」を断じて認めることはできない。
 数々の政治私物化の隠蔽、原発事故隠しと原発再稼働強行、改憲強行のための「復興五輪」に反対しよう。




 

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