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   「コロナ危機」時代に労働運動はどう立ち向かうか?

                    遠井玲子



 新型コロナウイルス感染が世界中に広がった二〇二〇年前半。各国ではこれまで覆い隠してきたいろいろな綻びを露にしている。Black Lives Matterを合言葉にしたアメリカでの人種差別や警察暴力に対する抗議運動もその一つだ。いま世界は大きな岐路に立っている。
 それまでにも貧富の差の拡大は、世界が抱える大きな問題の一つであったが、コロナ危機はそれをいっそう押し広げた。今年四月末、ILO(国際労働機関)が発表した報告書では、コロナ下で職を失い、生計の手段を失う可能性がある人口が、世界で一六億人となると予測した。そのうち一一億人は「途上国・新興国」であり、「先進国」と言われている国々でも、移民、非正規雇用労働者に失業の波が押し寄せている。
 日本国内では「総務省が五月二九日に発表した四月の完全失業率(季節調整値)は2・6%で、前月を0・1ポイント上回り、二カ月連続で悪化。完全失業者数は一七八万人と、前月から六万人増えた。雇われて働く人の数(原数値、前年同月比。役員を除く)は五五八二万人で、三四万人減。女性の非正規の働き手を中心に減少した」(朝日新聞)と報じられている。この流れはとどまることなく強まり続けている。
 むしろ、この機に乗じての強盗的簒奪や、もともと狙いすましていた第四次産業革命がおし進められていることを、怒りをもって見ておかなければならない。
 火事場泥棒としか言いようがない強盗的簒奪が、安倍官邸、経済産業省などと一部企業の癒着の下に行われている。四六六億円予算のアベノマスクの不透明さ。中小企業支援(予算二兆三〇〇〇億円余)事業での「サービスデザイン推進協議会」(二〇一六年に大手広告会社の電通、人材派遣大手のパソナ、ITサービス業のトランスコスモスが設立)による二〇億円さっぴいての電通への丸投げ再委託。観光需要喚起をなぜか経済産業省が所轄する「Go To(強盗)キャンペーン」など数え上げるときりがない。膨大な委託費を安倍や省庁、「お友達企業」がむさぼり食っている。
 あまり報道もされず進んだのが日銀の株価買い支えである。株価が暴落した直後の三月一九日、日銀は「上場投資信託(ETF)を一日あたりでは過去最大となる二〇〇〇億円強買い入れた」と発表した。実体経済はボロボロで、自営業や中小業者が廃業の瀬戸際に追いこまれ、多くの非正規雇用労働者がリストラや雇い止めや無給の一時休業で苦しんでいる一方で、三一兆円もETFにつぎ込んだ日銀のおかげで投資家や株主たちは、何も失うことなくのうのうと「ステイホーム」で株の値上がりを待つだけにしてもらった。
 コロナ危機の中で、巨大独占資本が支配する帝国主義社会の腐敗ぶりが白日の下にさらされている。
 ハイエナたちの火事場泥棒どころではない独占資本家たちの野望が、「ポストコロナ」の名のもとに進んでいる。もとより「働き方改革」は、「第四次産業革命」の露払いだった。二〇一六年のダボス会議から公然と掲げられてきた第四次産業革命は、IoTやAIを用いることで起こす製造業の革新的技術のことを指し、労働生産性を劇的に向上させ、低迷しつつある企業利益の抜本的底上げを狙うものである。日本においても経団連や経済同友会などが強く主張し、その一歩として「働き方改革」が導入された。
 「働き方改革」は派遣法に続いて資本家たちを雇用責任から自由にしていこうとする法制度であり、労働法の前提である「所定の時間」「所定の場所」を限定的なものとし、資本に利益をもたらす労働のみを「価値」として認め、他方で、労働法から除外された「雇用類似の働き方」への誘導を推進するものである。
 いまコロナ危機に乗じ、あらゆる部門で「人と人との接触を減らす」ことを名目に、製造や流通の無人化・自動化が進められ、AI化・ネットワーク化・リモート化によって大規模な人員削減が画策されている。五月二七日、参議院では「スーパーシティ法」(国家戦略特区法改悪)が自公・維新の賛成で可決した。労働力をどれだけAIに置き換えられるのかという実験が国家的事業として始まる。
 技術の革新は社会を変える。これは後戻りしない。しかし生産や流通から生み出される富が社会のものではなく、資本家や株主が私的に占有している資本主義社会の下で、「第四次産業革命」が生み出すのは労働権・生存権を奪われた膨大な労働者の群れという面がある。政権と資本家たちは、そのことをよく知ったうえで、より多くの利潤を得る強欲に駆られ、これを推し進めている。これへの怒り・反抗が資本主義社会を脅かすうねりとなることを恐れ、共謀罪・改悪組織対策犯罪法などを政権は強行成立させ、労働三権(憲法二八条)を破壊する関生弾圧などがおこなわれてきた。
 この時代に労働運動はどう立ち向かうのか、歴史的試練の時期に私たちは立っている。




 

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