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   コロナ状況を利用した教育破壊を許すな

                
内山洋一

                    



 コロナ感染が拡大し始めた本年二月、安倍首相は突然全国小中学校の一斉休校を打ち出した。この措置はなんら法的根拠のないものであり、明らかに国家権力による教育への介入である。徹底的に弾劾しなければならない。
 安倍政権はコロナ感染を利用して火事場泥棒的に教育の現場と体制を変えようとした。教育格差が拡大し現場に混乱をもたらしている。一方において「君が代」強制は堅持し「愛国心」教育は強化さている。
 われわれは、コロナ感染拡大を利用した日帝の教育再編攻撃を許してはならない。現場で闘う教職員とともに「愛国心」教育を粉砕していこう。

 ●第1章 一斉休校攻撃を許すな

 本年二月二七日、安倍首相は突如としてコロナ感染対策として小・中・高校の全国一斉休校を打ち出した。これは文科相にも相談せずになされた首相官邸の独断であった。この法的根拠のない政策に対して、各地域の教育委員会は唯々諾々と承認し、「子どもを守る」の美名のもとに首相による教育現場への介入が堂々と強行されたのである。
 日本で文科省が地方自治体の教育委員会に対して、「指導」はできても命令を出すことはできない。ましてや、首相が文科省を飛び越えて、「要請」することは明らかに違法行為なのである。感染予防で休校を決定する権限は各学校の設置者が有していて、地方自治体の教育委員会や学校法人が休校決定の権限を持っている。
 しかし、多くの自治体が論議することもなく、翌日の二八日には休校を実施した。地域の感染状況や、必要な準備期間を設けて休校を遅らせたのは、島根県とごく一部の市町村にとどまった。
 東京都教育委員会は、要請が出された二七日当日に、「準備指示」なるものを各都立学校校長宛に仮通知した。翌日に出された文部科学省の通知を付けて正式な通知とするという異例の行動に出ている。このような短期間では、影響に対する対策を検討することも出来ないことは明らかである。決定権を持った教育委員会自らが権限を放棄することで、事実上、首相の「要請」が「命令」として機能したという事になる。
 コロナ感染拡大に対する安倍による政治的パフォーマンスの色彩が濃い所業であるが、教育行政的には重大な問題をはらんでいる。徹底的に批判しなければならない。
 まず第一に、行政権力の長が法的根拠もなく教育現場に介入した、という問題である。
 敗戦後、日本社会はそれまでの軍国主義教育の反省から教育制度を国家権力とは距離を置いた制度として確立してきた。教育委員会は各自治体の下に組織し、あくまでも地方自治の意思で地域の学校は運営されてきたのである。現在は教育委員会なる制度は有名無実化され、教育行政の官僚的統制機関に成り下がってしまった。しかし教育委員会の歴史的存在意義には、教育を国家権力に委ねないという思想の制度的保障であったのも事実である。
 自治体―教育委員会の頭越しで強行された今回の一斉休校は、教育現場への国家権力による直接的介入を意味し、それは戦後の「民主教育」の根幹を揺るがす問題である。「戦後民主教育」の原則を破壊し、もってファシズム的に再編する攻撃に他ならない。
 第二に、こうした根本的問題をはらみながらも各教育委員会と学校が唯々諾々とこの決定にしたがい、教育現場への国家権力介入を許していることである。
 それは、教育員会という制度を自ら放棄したということであり、教育現場の主導権を国家権力に譲り渡してしまったということだ。今回の一斉休校によって教育員会は、国家権力の出先機関として自らを完成させたのである。
 第三に、このような「戦後民主教育」の根幹を揺るがすような政策が、首相による単なる人気取りとして行われたということである。
 一斉休校は現場の混乱や学生・生徒の混乱など一向に気にすることなく、「コロナ対策の陣頭指揮に立つ首相」を演出するためだけの政策であった。実際、一斉休校に関してコロナ感染対策としての根拠は不明確であり、コロナ感染防止の効果も確認できていない。
 要するに安倍は、思い付きの人気とりに教育を利用し、そこに全国の児童・生徒を巻き込んだということである。一斉休校で給食が停止し、満足な食事ができななくなる子どももいた。これは、国家権力による教育現場への直接的介入であり、「戦後民主教育」の破壊を意味する攻撃となった。
 われわれは教育委員会なるものに何ら幻想も持ってはいないし、闘う教職員に対する弾圧機関であると確認している。しかしながら、だからといって国家権力の教育現場へ露骨な介入を許してはならないのである。カッコつきとはいえ「戦後民主教育」の根底的破壊は、教育のファシズム的再編に他ならないからだ。
 闘う教職員とともに、コロナ状況を利用した国家権力の教育現場への介入を阻止していこう!

 ●第2章 「君が代」強制弾劾

 東京都教育委員会は、本年二月二六日に感染対策として卒業式を簡略化して実施するよう通知を出した。そして二八日の午前中、卒業式後の調査の記入例として「飛沫感染を防ぐために国歌斉唱を含む全ての式歌の斉唱や合唱を行わなかった場合」の記入方法が書かれた事務連絡を出した。そこには、「君が代」斉唱を行わなかったとしても不適切なものとしない、という内容が書かれていたのである。
 このため、当然にも飛沫感染防止から「君が代」斉唱をしない卒業式を計画した学校があった。あわてた都教委は同日の午後、「君が代」斉唱だけはやるように、というこれまでの内容を急転換させた事務連絡を都立学校校長宛に出した。
 ここで都教委が「日の丸・君が代」を強制する法的根拠となっているのは、学習指導要領である。しかし、一斉休校で教育現場では授業も進まず、成績すら付けることが出来なくなっていたのが現場の実態であった。要するに、学習指導要領を実施することは一斉休校で不可能になっていたのである。そもそもが、首相による一斉休校は学習指導要領など根拠にはしていないし、法的根拠などなにもなかったではないか! 「君が代」斉唱強制の根拠に学習指導要領を持ち出すのは、あきらかに都教委の二重規範にほかならない。
 結果として都立学校二五三校で「君が代」斉唱が強行された。最終的判断は各学校に委ねられたとはいえ、これは都教委によるコロナ感染対策を無視した「君が代」斉唱の強制に他ならない。
 今年の都立学校における卒業式は、感染防止のために保護者も在校生も参加できなかった。祝辞も大幅に時間短縮された。卒業生の呼名もない、校歌も歌えない。ただ「君が代」斉唱だけが従来通り行われたのだ。これがコロナ感染状況下における都立学校の卒業式の姿だ。都教委にとって、飛沫感染のリスクより「君が代」斉唱の実施が重要だったのだ。
 子どもたちの健康と生命よりも優先される「君が代」強制こそ、「愛国心」教育の実態に他ならない。都教委を徹底的に弾劾する。

 ●第3章 コロナを利用した「教育再編」を許すな

 東京では六月から段階的に休校が解除された。やっとの再開ではあったが、現場教職員には感染症対策の消毒作業が新たな負担として加わってきた。
 文部科学省の消毒の基準は、「教室やトイレなど幼児・児童・生徒が利用する場所のうち、特に多くの幼児・児童・生徒が手を触れる箇所(ドアノブ、手すり、スイッチ、窓枠、窓の鍵、蛇口のハンドルなど)は、一日一回以上消毒液を用いて清拭する。また、共用の教材、教具、情報機器などについても適切に消毒するとともに、触る前後で手洗いを徹底する」となっている。これらの消毒作業は、感染が終息するまで続く。
 もちろん、校種によって必要な作業は変わってくる。生徒との接触が多い小学校や介護も必要とされる特別支援学校では、負担はさらに大きなものとなる。現場では負担軽減の人員の増加の必要性が切実な要求として叫ばれている。
 一方、コロナ感染状況下において、オンライン教育の重要性が声高に主張されてはいる。しかし、そもそも家にインターネット環境のない家庭も多く、経済格差がそのまま学力格差に直結する事態も起きている。地域によってはタブレットと通信機器を無料で貸し出すところもあるが、それはごく一部に留まっている。オンライン教育は家庭の経済状況によって教育の格差が生じる事態を露わにしているのだ。
 そのような状況にあって、菅政権は「GIGAスクール構想」を打ち出した。これは「児童生徒に一人一台通信端末と、高速大容量の通信ネットワーク環境を整備する」という構想であり、これまでも文科省が推奨してきた教育のICT(情報通信技術)化の徹底である。
 この「GIGAスクール構想」が新たに五〇〇〇億円の市場を開拓するとも言われている。すでに、公教育の現場には、多くの教育産業が参入している。千葉県の公立高校では、学校再開直前にベネッセ子会社の学習支援ソフトを全校に導入することが決定されている。
 つまり、菅政権はコロナ感染拡大状況を利用しながら、教育現場への通信技術導入を飛躍的に増大させようとしているのである。それは、必然的にソフト会社を初めとする民間企業の教育現場への参入を拡大させる。通信技術企業にとって、教育現場は巨大な市場である。自社の技術が教育現場で採用されることになれば、それだけで巨額の利益を得ることができる。
 しかし、その一方で、給食で命を繋いでいたような貧困家庭の子どもたちが一斉休校でまさに命の危険にさらされたことを忘れてはならない! 国家権力と資本が教育現場を食い物にしようとし、「戦後民主主義教育」を破壊し、「愛国心」教育を強制しようと画策していたときに、子どもたちは文字通りの意味において命の危険に直面していたのだ。コロナを利用した「教育再編」を許すな!

 ●第4章 闘う教職員と連帯して「愛国心」教育を粉砕しよう

 〇三年に都教委が「日の丸・君が代」強制のために出した「10・22通達」よって処分された教員は述べで四八〇人になる。反「日の丸・君が代」闘争は戦後類をみない教職員の闘いとして爆発した。卒業式で「君が代」斉唱を拒否した教職員の一部は、ILOとユネスコに申し立てた。両機関は一九年に「教員個人の価値観や意見を侵害する」と見解を出したが、日本政府と教育委員会は勧告を無視し続けている。
 反「日の丸・君が代」の闘いは教職員と市民によって断固として闘われている。国際機関に訴える一方において、コロナ対策の「緊急事態宣言」反対の街頭行動を組織したのは、闘う教職員たちであった。これら教職員は毎年の卒・入学式攻防はもちろんのこと、教育基本法改悪反対闘争、反戦闘争、反改憲、そして反天皇闘争に決起してきている。すなわち、反「日の丸・君が代」を闘っている教職員は、かかる闘いの地平をもって反戦闘争の最前線に立っているのだ。
 闘う教職員と連帯し「愛国心」教育を粉砕しよう!


 


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