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■医療・公衆衛生を軽視する政策を批判する 病院削減を加速させる医療法改悪法を廃止させよう 新型コロナウイルスによる感染拡大から一年半以上が経過したが、今も感染は収束せず、変異株の発生で感染が拡大する中で、オリンピックが強行された。人々のいのちと暮らし・雇用は脅かされ続けている。 なぜ、日本のコロナ感染者数は、他国より少ないのに、「医療崩壊」が起きているのか。なぜ、感染症病床が満床で入院できず、十分な医療を受けられないまま自宅で命を落とす方が数多くいるのか。この原因は、この間日帝が進めてきた医療や公衆衛生の軽視にある。保健所は削減され、公立病院等の公社化や病院の統廃合計画が進められようとしている。さらに「医療法」改悪によって現場は極限までに追い込められている。こうした現実への批判をつよめ、保健・医療政策を変えさせよう。 ●1章 コロナ禍の中で「医療法」が改悪された コロナ禍の五月二一日、国会において「医療法改正案」(正式名称「良質かつ適切な医療を効率的に提供するための医療法等の一部を改正する法律」)が成立した。この法改悪案に対しては、「全国保険医団体連合会」や病院の労働組合などが反対の声を挙げたが、連日のコロナ報道にかき消され、ほとんどマスコミにも取り上げられることなく自民・公明などの賛成で可決成立した。この法律は、正式名称の「良質かつ適切な医療」を提供するどこか、医療現場の「効率化」を進め、病床の削減を進めるものである。「病床削減を行った病院には、消費税を財源とする給付金を支給する」として、今年度は一九五億円が予算化され、一万一〇〇〇床の削減が誘導される。 また、四三六の公立公的病院の統廃合を行う「地域医療構想」を引き続き実施することが審議の中で明らかになっている。東京都は、入院できずに自宅療養中に死亡した方が四四人もいるのに、九月議会で全ての都立・公社病院の独立法人化に向けた動きを開始しようとしている。コロナ禍の中で医療現場がひっ迫している中にあるにも関わらずこうしたことを行うのは犯罪的であると言わざるを得ない。 そして、この法通りに医療現場の削減が行われれば、平時においても医療崩壊を招きかねない。例えば稼働率75%の一〇〇床の病院が二五床削減すると100%の稼働率となり、単価一八二万四〇〇〇円×二五=四五六〇万円が給付されるが、この病院はほぼ常時100%の稼働率となり新たな患者は受け入れないことになる。 しかも、各都道府県においては、この法律成立前から病院の削減が進められ、大阪府においては二〇〇七年には五四八病院一一万一〇七八床あったものが、五一二病院一〇万四六七一床に削減され、コロナ禍の二〇年一月から二一年二月までに病床を五五四床も削減している。この「改悪医療法」が更に削減を誘導するのである。 ●2章 過労死越えの医師の残業を容認 「改悪医療法」では、医師の働き方改革と称して医師の残業時間を過労死ライン超えの月八〇時間、年間九六〇時間とし、更に「臨時的に必要がある場合月一〇〇時間年一八六〇時間も認めるとしている。医師の増員が叫ばれているにも関わらず、医学部の定数削減はそのままにされ、「医師の仕事を放射線技師や臨床検査技師などへシフト」するとしている。コロナ禍の医療体制づくりと逆行する政策は「感染症急増時にも備えられるように平時から採算性がある対応を考えてもらう」(厚労大臣答弁)というように、命よりも採算性、儲けを大事にする政策を進めようとしている。こんな法律は廃止あるのみである。 ●3章 「日本は病床が多すぎる」大嘘 この法律の根拠となっている「日本は病床が多すぎる」という政府の主張にはごまかしである。日本がOECDに提供しているデータによると、病床数は一五三万床となっているが、これには精神病床や長期入院患者向けの療養病床も含まれているためである。他国と同じように一般病床に限定すると八九万床で、人口一〇〇〇人あたりの病床数は七・六床である。問題はドイツ、フランスに比べて日本の医師数は三割、看護師数は五割程度ときわめて少ないことである。つまり、ドイツ並みの病床数があっても、人手不足で活用しきれない。さらに、重症化した患者を守る最後の砦、集中治療病床数に限ると、日本は一〇万人当り五・二床で、ドイツの15%にすぎない。 ●4章 保健所の削減によって保健所は崩壊寸前 このコロナ禍にあって、コロナになった人たちが連絡し、様々な指示を受ける第一義的な機関に保健所がある。今、保健所は、保健師だけでは足りず、歯科衛生士や放射線技師などの医療関係者、そして医療的知識がない事務職員などが動員され、必死で業務をこなしている。それでもコロナ罹患者への十分な手当ができず、在宅放置によって亡くなる方も増えている。 一九九四年の地域保健法の改悪時より、保健所数は八五二から二〇二一年四七〇カ所へ、保健師は、約三万三七〇〇人から二〇一八年約二万七九〇〇人へと減っている。保健所は、コロナのような感染症対策だけではなく、歯科衛生・母子保健・精神保健などの多岐にわたる命や健康に関する業務を行っている。ここが削減されることは、命をないがしろにしたこの間の新自由主義政策の反映に他ならない。 医療・公衆衛生に従事する労働者や患者などの声に応える体制づくりを行わせ、「改悪医療法」を廃止に向けて奮闘しよう。 |
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