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■『戦旗』1616号(6月20日)6面 島根原発の再稼働を許すな! 大西勇二 島根原発2号機 再稼働阻止! 五月二六日、島根県議会は島根原発二号機の再稼働を正式に承認した。これを受けて島根県知事の丸山は六月二日、再稼働の容認を表明した。この決定を徹底して弾劾する。 島根原発(中国電力)は、全国で唯一、県庁所在地(松江市)に立地する原発で、三基ある原発のうち、一号機は廃炉作業中。二四年三月に稼働開始予定だった三号機は、原子力規制委員会で審査中である。 二号機をめぐっては昨年一〇月、中国電力は安全対策工事の完了時期を二一年度内から二三年二月に延期すると発表しており、再稼働阻止にむけて闘いを強めていかなければならない。 島根原発と島根県庁の距離は、わずか八・五キロ。また、三〇キロ圏には原発がある松江市と島根県の出雲、雲南、安来の三市、鳥取県の境港、米子の二市が入り、圏内人口は約四六万人。日本原子力発電東海第二原発(茨城県)の約九四万人、中部電力浜岡原発(静岡県)の約八三万人に次いで三番目の多さになっている。さらに、寝たきりの高齢者や障害のある人など、避難時に支援の必要な人々は約五万二〇〇〇人にのぼり、東海第二の約三万八〇〇〇人を上回る。一旦事故が起こると福島をもはるかに上回る被害が想定される島根原発の再稼働を決して許してはならない。 現在までに新基準に「合格」したとされる原発は七基だが、地元の「合意」の上に電力会社が再稼働を表明・予定しているのが高浜一、二号機(二三年六、七月)と女川二号機(二四年二月)だ。これに続いて島根原発二号機の再稼働を本格化させようというのだ。島根原発ではプルサーマル発電も計画されている。 規制委の審査が「合格」にもかかわらず、柏崎苅羽六、七号機では、完了したと公表した安全対策工事で、七六カ所の防火工事が終わっていなかったと東電自らが発表。さらにテロ対策の不備が相次いで発覚し、原子力規制委員会から核燃料の移動を禁じる是正措置命令を受けている。規制委は自らが「合格」を出しておきながら是正措置命令を出している。東海第二原発では水戸地裁が避難計画の不備を理由に再稼働を認めない判決を出している。 五月三一日には、札幌地裁が「津波対策の対する安全性の基準を満たしていない」として泊原発の一~三号機のすべての運転を認めない決定を行った。福島第一原発事故以降、原発の運転差し止めを命じた地裁判決は三例目となり、津波対策の不備を理由とした判決は初めてである。規制委員会の審査中という行政判断を待たず運転差し止めが命令されるという、再稼働そのものが根本から問われる事態が露わになっているのである。 福島原発汚染水の海洋放出承認を許すな 五月一八日、原子力規制委員会の会合が開かれ、東電から出されていた汚染水の海洋放出の申請を認める審査書案を了承した。審査書案は六月一七日まで一般からの意見募集を行い、その結果を踏まえて正式に決定するという。現状、汚染水一二九万トンがタンク一〇六一基に溜められており、今でも毎日一三〇トンの新たな汚染水が発生している。この決定に対して福島県漁連、全漁連は改めて「絶対反対」を表明している。 政府と東電は二〇一五年、地元漁業者に対して「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」と約束していた。しかし政府は昨年四月、これを覆して海洋放出方針を決定。さらに今回、規制委員会が海洋放出を承認したのだ。それだけではなく、東電は放出にむけて承認決定前からすでに海底の掘削工事なども行っているのだ。 また、海洋放出にむけて経済産業省資源エネルギー庁は「復興のあと押しはまず知ることから」とし、復興庁の「ALPS処理水について知ってほしい三つのこと」とするチラシが、文部科学省が毎年、全国の小中高校一年生に配布する放射線副読本と共に、昨年一二月ごろから約二三〇万枚配布されている。政府・東電・規制委一体となった暴挙を許さず、福島の人々と連帯して海洋放出阻止の闘いを強化しよう。 ウクライナ侵攻を利用した原発再稼働を許すな! 三月一六日の福島県沖を震源とする地震を受けて、二〇〇万軒を超える停電が首都圏などで発生し、二二日には電力需給ひっ迫警報が初めて発動された。こうした事態を太陽光発電の弱点だとか、原発再稼働が必要という議論の根拠にしようとする動きが強まっている。 さらに、今回のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、このままではこの夏場にも再び、大規模停電が発生するかもしれないとエネルギー安全保障上の危機を煽る言説が飛び交い、原発再稼働の動きが加速している。 温室効果ガス排出量が世界第五位である日本は、二〇年一〇月に「二〇五〇年までの実質ゼロ」を宣言し、昨年四月、菅は気候変動サミットに合せて、二〇三〇年度の中間目標を、「二〇一三年度比26%削減」から「46%削減」へと大きく目標を引き上げ、その姿勢をアピールした。 岸田は二一年一〇月八日、所信表明演説で成長戦略の第一の柱として示した「科学技術立国の実現」に向け、「二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて温暖化対策を成長に繋げる『クリーンエネルギー戦略』を策定し、強力に推進する」と宣言した。 一〇月の衆議院総選挙でも自民党の選挙公約に原発の再稼働だけではなく、小型原子炉や研究段階にある核融合炉の実用化に向けた開発推進を盛り込むなど、原発政策の全面的復活にむけて大きく政策の転換を図った。 昨年、閣議決定された第六次エネルギー基本計画では「東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、二〇五〇年カーボンニュートラルや二〇三〇年度の新たな削減目標の実現を目指すに際して、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」として、三〇年の電源構成を再エネ36~38%、原子力20~22%、石炭19%、LNG20%、石油等2%、水素・アンモニア1%とした。再生エネルギーの割合を増やし、原発依存度を下げたかのような演出を行っている。 福島原発事故前にあった原発は五七基(建設中を含む)。そのうち二四基の廃炉を決定し、残り三三基となっている。そして、現状一〇基の原発の再稼働が強行されているが、その発電量は全体の6・2%(一九年実績)に過ぎない。つまり、三〇年に20~22%というのは廃炉の決まった二四基をのぞくすべての原発の稼働を前提としているのだ。 しかし、決して残りの原発すべての再稼働とは言わない。三〇年まで残り八年と迫った中で仮にすべての原発を稼働させたとしても二〇一三年度比46%の削減というのは、きわめて厳しい数字である。 原発事故以降、原発の再稼働を最優先させるために化石燃料の輸入を維持し続け、再生エネルギーへの政策転換を本気で取り組まずにきたそのつけが、ウクライナ侵攻にともなう世界的な燃料価格の高騰によって一挙に押し寄せてきているのだ。 政府、電力各社は、地球温暖化対応のため、さらには国際公約実現のためなどあらゆる詭弁を弄して原発再稼働の動きを強めてくるであろう。原発再稼働阻止―すべの原発廃炉まで闘いの手を緩めることなく闘おう。 |
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