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■『戦旗』1617号(7月5日)3面

 現代の「奴隷制」―外国人技能実習制度の廃止を
 
外国人労働者が人間らしく生活できる社会の実現を

                              
兼丸 求
           





 外国人技能実習制度の「適正化」を掲げて、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)が二〇一七年一一月に施行されて、今年で五年になろうとしています。政府は五年を目途に見直しを検討するとしていましたが、一九九三年の技能実習制度創設以降、現在もなお人権侵害や労働基準法違反は一向に減っていません。それどころか、かえって巧妙に労働者受け入れが進んでいます。
 技能実習法施行五年を前にして、「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」を中心に全国各地で技能実習生、移住者問題を取り組む団体が「外国人技能実習制度廃止! 全国キャラバン二〇二二」実行委員会を結成しました。実行委は、外国人技能実習制度の速やかなる廃止と、労働者としての権利を保障され人間らしく生活できる外国人労働者受け入れ制度を求めて、五月二二日から六月一三日まで全国各地でスタンディング、タウンミーティングなどを取り組みました。
 ここでは九州での取り組みを中心に報告します。

●1章 全国キャラバンの声を、政府・技能実習機構に突き付ける

 全国キャラバンは数回の実行委員会を経て、五月二二日沖縄・北海道からスタートしました。沖縄では高良鉄美参議院議員が受け入れ、平和運動センター主催でタウンミーティングが開かれ、移住連の鳥井一平氏が講演をしました。北海道では札幌地域労組のもとに、元技能実習生に話を聞くオープニングイベントが開催され、オンライン配信されました。
 九州はユニオン北九州と外国人技能実習生権利ネットワーク北九州の仲間が、二三日から二九日にかけて宣伝カーで各県をまわり、地元市議会議員、地区労、市民団体の協力を得て、鹿児島中央駅、宮崎駅、大分駅前や長崎の繁華街などでスタンディング、マイク宣伝を行いました。九州では、外国人の中でも技能実習生の割合が大きいのですが、取り組んでいる団体が少なく、初めて聞いたという人たちもいました。
 二七日熊本では、双子の赤ちゃんを死産し死体遺棄容疑で逮捕されたベトナム人技能実習生リンさんを支援しているコムスタカ(外国人と共に生きる会)による「無罪判決を求める支援集会」が開催され、孤立出産をせざるを得ない社会を問うとともに、技能実習制度の廃止とまっとうな移民政策の必要性が訴えかけられました。
 二八日北九州では、小倉駅前で二〇人が集まりスタンディング、ビラ配りと、夕方からは全国キャラバンin北九州集会が開催され、鳥井氏がこれまで取り組んできた経験と実習生を取り巻く現実を詳しく報告しました。四〇人を超える参加者はその報告に真剣に耳を傾けていました。
 二九日からは中国・四国地方に移り、近畿、東海、北陸などで、また東北、関東方面は二七日から地元の労働組合などが中心となり、六月一二日の集約集会に向けてスタンディング、タウンミーティングなどが取り組まれました。多くの外国人労働者を含め二〇〇人が集まった集約集会では各地の取り組みが報告され、技能実習制度の廃止、移住者の人権を訴えたデモ行進は道行く人々の注目を集めていました。
 翌一三日の政府、外国人技能実習機構への要請では、技能実習生の労働組合活動に対する機構の見解や転籍、帰国費用などについての回答を求めました。とりわけ保護した実習生への対応などについて各地の事例をあげ、実習生に寄り添った対応をするよう厳しい追及がされました。

●2章 技能実習生・留学生との共生社会を実現しよう

 古川法務大臣は本年一月一四日の会見で、特定技能制度及び技能実習制度のあり方について「改めるべきは改める」として勉強会を設置し、制度の見直し議論を進めているとしています。しかし、多少の見直しがあったとしても現在の技能実習制度が廃止され、労使対等原則が担保された新たな仕組みが作られない限り、実習生たちは、罵声や暴行に怯え転職の自由さえ制限され、高額な借金を背負ったまま働かざるを得ない状態が今後も続いていきます。そして、どうしても働くのに耐えかねた実習生は、失踪という事態に陥ってしまっている現状が、今現在もあります。
 コロナ禍の中、移民や外国人労働者がいなくてはこの日本社会が成り立っていかない現実が浮き彫りになりました。農業も飲食も建設も、技能実習生たちの労働がなければ成り立たなくなっています。その事実を直視し、労働者としての権利、人権が尊重される受け入れ制度を整備していかなければなりません。
 現在、技能実習生たちはコロナ解雇や日本人による暴力、残業代未払い、転職など様々な理由で苦しみ、各地で相談を望んでいます。各地の支援団体には、その地域に限らず全国各地から相談が来ています。そのような技能実習生の声にしっかりとアンテナを張り相談を受けましょう。
 外国人技能実習生権利ネットワークは毎月一回実習生問題を取り組む全国各地の団体とリモート会議を行い、情報共有と連携を深めています。全国での取り組みを共有化し行政への要請を強めていきましょう。

 


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